この記事の結論
消防計画とは、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じて、防火管理上必要な事項をあらかじめ定めた計画です。根拠は消防法第8条第1項、消防法施行令第3条の2第1項、消防法施行規則第3条第1項です。
消防計画を作成し、所轄消防長または消防署長に届け出る義務を直接負うのは防火管理者です(消防法施行規則第3条第1項)。ただしその前提として、管理権原者が防火管理者を定め、消防計画の作成等を行わせる義務を負います(消防法第8条第1項)。防火管理者は管理権原者の指示を受けて作成します。
届出の様式は消防法施行規則 別記様式第1号の2「消防計画作成(変更)届出書」です。新規作成も変更も同じ様式・同じ手続きで、「消防計画変更届出書」という別の書類は存在しません。
消防計画に定める事項は、消防法施行規則第3条第1項第1号イからヲまでの12項目です。甲種・乙種の別は防火管理者の資格の区分であって、記載事項の区分ではありません。
消火訓練と避難訓練を「それぞれ年2回以上」実施しなければならないのは特定用途の防火対象物だけです(消防法施行規則第3条第10項)。非特定用途に法令上の回数の定めはありません。また、訓練を実施するときはあらかじめ消防機関に通報しなければなりません(同条第11項)。
消防計画の届出を怠ったこと自体を直接処罰する規定はありません。ただし消防法第8条第4項の防火管理業務適正執行命令の対象となり、命令に違反すると第41条により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。「消防計画の変更届を出さないと30万円以下の罰金」は誤りで、それは防火管理者選任(解任)届出義務違反(第8条第2項違反、第44条第8号)の罰則です。
報酬を得て業として消防計画作成(変更)届出書を作成できるのは、行政書士および行政書士法人に限られます(行政書士法第1条の3、第19条第1項)。
「消防計画は防火管理者が作るものなのか、それともオーナーが作るものなのか」「変更したときは何という書類を出せばよいのか」「訓練は年に何回やればよいのか」。消防計画のご相談では、こうしたご質問を必ずと言っていいほど受けます。
消防計画は、消防法令の中でも法律・政令・省令の三層にまたがって規定されているため、解説記事によって書いてあることが食い違いやすい分野です。義務者を取り違えたまま届出をすると、消防署の窓口で差し戻しになるだけでなく、防火管理体制そのものが法令に適合しない状態になります。
この記事では、消防法防火管理を専門とする特定行政書士が、消防計画の作成手順をすべて条文の番号を示しながら整理します。あわせて、インターネット上の解説記事に多く見られる誤りについても、条文に当たって訂正します。
消防計画とは、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ、火災の予防、初期対応、避難、訓練、点検などの防火管理上必要な事項をあらかじめ定めた計画です。防火管理者が管理権原者の指示を受けて作成し、所轄消防長または消防署長に届け出ます。
根拠は次の三層構造になっています。この構造を押さえておくと、後述する義務者や罰則の話が整理しやすくなります。
| 階層 | 条文 | 定めている内容 |
|---|---|---|
| 法律 | 消防法第8条第1項 | 管理権原者は、防火管理者を定め、消防計画の作成その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない |
| 政令 | 消防法施行令第3条の2第1項 | 防火管理者は、消防計画を作成し、所轄消防長または消防署長に届け出なければならない |
| 省令 | 消防法施行規則第3条第1項 | 記載事項、管理権原者の指示を受けること、別記様式第1号の2の届出書によること、変更時も同様であること |
ここは実務で最も混乱する部分です。消防計画を作成して届け出るのは防火管理者であり、防火管理者を選任してその業務を行わせるのが管理権原者です。役割を条文どおりに整理すると次のとおりです。
| 主体 | 根拠条文 | 負う義務 |
|---|---|---|
| 管理権原者 | 消防法第8条第1項 | 防火管理者を定め、消防計画の作成、訓練の実施、設備の点検・整備、火気の監督、避難施設等の維持管理、収容人員の管理を行わせる |
| 管理権原者 | 消防法第8条第2項 | 防火管理者を定めたとき・解任したときは、遅滞なく所轄消防長または消防署長に届け出る |
| 防火管理者 | 令第3条の2第1項、規則第3条第1項 | 管理権原者の指示を受けて消防計画を作成し、別記様式第1号の2により届け出る(変更時も同様) |
| 防火管理者 | 令第3条の2第2項 | 消防計画に基づき、消火・通報・避難の訓練の実施、消防用設備等の点検及び整備、火気の使用又は取扱いの監督、避難上・防火上必要な構造及び設備の維持管理、収容人員の管理を行う |
| 防火管理者 | 令第3条の2第3項・第4項 | 必要に応じて管理権原者の指示を求め、誠実に職務を遂行する。火元責任者等に必要な指示を与える |
管理権原者とは
防火対象物の正当な管理権を有し、その防火管理を法律上、契約上または慣習上当然に行うべき立場にある者をいいます。自社ビルであれば通常は所有者である法人の代表者、テナントであればその事業所の賃借人(法人であればその代表者)が該当します。一棟の建物に複数のテナントが入っていれば、管理権原者も複数存在します。
消防計画の作成義務は、防火管理者の選任義務と一体で発生します。防火管理者を選任すべき防火対象物は消防法施行令第1条の2第3項に定められており、用途と収容人員の組み合わせで決まります。
| 区分 | 主な用途(令別表第一) | 収容人員 |
|---|---|---|
| 令第1条の2第3項第1号イ | (6)項ロ(自力避難困難者を入所させる社会福祉施設等)、およびその用途部分がある(16)項イ・(16の2)項 | 10人以上 |
| 令第1条の2第3項第1号ロ | (1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項イ・ハ・ニ、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項=劇場、遊技場、飲食店、物品販売店舗、ホテル、病院、幼稚園、公衆浴場(蒸気・熱気)など | 30人以上 |
| 令第1条の2第3項第1号ハ | (5)項ロ、(7)項、(8)項、(9)項ロ、(10)〜(15)項、(16)項ロ、(17)項=共同住宅、学校、図書館、事務所、工場、倉庫、駐車場など | 50人以上 |
| 令第1条の2第3項第2号 | 新築の工事中の建築物のうち、①地階を除く階数11以上かつ延べ面積1万平方メートル以上、②延べ面積5万平方メートル以上、③地階の床面積の合計5,000平方メートル以上、のいずれかに該当するもの | 50人以上 |
| 令第1条の2第3項第3号 | 建造中の旅客船(総務省令で定めるもの) | 50人以上かつ甲板数11以上 |
収容人員は実際の在館者数ではなく、消防法施行規則第1条の3の算定方法で計算します。用途ごとに「従業者の数+床面積を一定の数値で除した数」などの計算式が定められており、無人の時間帯があってもゼロにはなりません。算定方法の詳細は防火対象物の収容人員の計算方法を用途区分別に徹底解説をご覧ください。
なお、東京消防庁管内では、東京都火災予防条例第55条の3により、上記に該当しない場合でも防火管理者の選任が必要になる建物があります。同一敷地内の屋外タンク貯蔵所または屋内貯蔵所で指定数量の1,000倍以上のもの、指定可燃物1,500平方メートル以上、50台以上を収容する屋内駐車場、令別表第一(10)項の車両の停車場のうち地階に乗降場を有するものです。これらは条文上すべて甲種防火対象物として扱われます。
まず、建物および自社が使用する部分が消防法施行令別表第一のどの項に当たるかを確定します。用途が決まらなければ、収容人員の算定式も、防火管理者の資格区分も、訓練の回数も決まりません。
用途は看板や登記上の業種ではなく、実際の使用実態で判定されます。複数の用途が同一建物にある場合は、主たる用途・従属的用途の考え方により(16)項(複合用途防火対象物)に当たるかを検討します。判定に迷う場合は所轄消防署の予防課に照会するのが確実です。詳しくは消防法における建物の用途判定とは?消防法施行令 別表第1に基づく建物の用途について解説で解説しています。
用途が決まったら、消防法施行規則第1条の3に従って収容人員を算定します。防火管理者の選任義務は防火対象物全体の収容人員で判定されます。テナント単位の人数だけを見て「うちは10人だから不要」と判断するのは誤りです。
(16)項および(16の2)項では、各項の用途と同一の用途に供されている部分をそれぞれ1の防火対象物とみなして算定し、これを合算します(規則第1条の3第2項)。
管理権原者が、消防法施行令第3条に定める資格を有する者のうちから防火管理者を定めます。届出は別記様式第1号の2の2「防火管理者選任(解任)届出書」により、遅滞なく行います(消防法第8条第2項、規則第3条の2第1項)。選任の届出には資格を証する書面の添付が必要です(同条第2項)。
甲種・乙種の区分は次のとおりです。「特定防火対象物だから甲種」という説明を見かけますが、正確には延べ面積による区分です。
| 区分 | 対象(令第3条第1項) | 講習時間(規則第2条の3) |
|---|---|---|
| 甲種防火対象物 | 乙種防火対象物以外のすべて。(6)項ロ系(令第1条の2第3項第1号イ)は面積を問わず甲種。新築工事中の建築物・建造中の旅客船も甲種 | 新規 おおむね10時間 再講習 おおむね2時間 |
| 乙種防火対象物 | 令第1条の2第3項第1号ロ・ハのうち、延べ面積が特定用途系で300平方メートル未満、その他の用途で500平方メートル未満のもの | おおむね5時間 |
資格の取得ルートは講習だけではありません。防災に関する学科を修めて卒業し実務経験1年以上の者(令第3条第1項第1号ロ)、消防職員で管理的または監督的な職に1年以上あった者(同号ハ)、規則第2条に列挙された者(労働安全衛生法の安全管理者、防火対象物点検資格者、甲種危険物取扱者である危険物保安監督者、一級建築士で実務経験1年以上など。同号ニ)にも資格が認められます。
また、収容人員300人以上の特定用途防火対象物の甲種防火管理者には再講習の受講義務があります(令第4条の2の2第1号、規則第2条の3)。
選任された防火管理者が、管理権原者の指示を受けて消防計画を作成します(規則第3条第1項)。記載すべき事項は次章で詳述します。
消防署のウェブサイトには用途・規模別の記載例が用意されていますが、記載例をそのまま社名だけ差し替えて提出するのは避けてください。消防計画は「その建物の実態に応じて」定めることが条文上要求されており(規則第3条第1項柱書「防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ」)、実態と乖離した計画は防火管理業務が計画どおりに行われていない状態を自ら作り出すことになります。
別記様式第1号の2「消防計画作成(変更)届出書」に消防計画本体を添えて、所轄消防長または消防署長に提出します。実務上は防火管理者選任(解任)届出書と同時に提出するのが一般的です。
「消防計画変更届出書」という書類は存在しません
規則第3条第1項の末尾は「防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。」と定めています。新規作成も変更も同一の様式(別記様式第1号の2)・同一の手続きです。様式の表題も「消防計画作成(変更)届出書」であり、該当する側に丸を付けて提出します。
また、この様式は「第3条、第51条の8関係」とされており、防火管理に係る消防計画と防災管理に係る消防計画で共通です。
提出期限について、規則には日数の定めがありません。条文は「作成し……届け出なければならない」とするのみです。したがって作成・変更の都度、遅滞なく提出することになります。「変更後○日以内」といった期限を示す解説は条文上の根拠がありません。
消防計画は届け出て終わりではありません。防火管理者は消防計画に基づき、訓練の実施、消防用設備等の点検及び整備、火気の使用又は取扱いの監督、避難上・防火上必要な構造及び設備の維持管理、収容人員の管理を行わなければなりません(令第3条の2第2項)。
次のような変化があったときは、消防計画を変更し、あらためて届出を行います。
変更が必要になるケースの具体例は消防計画の変更が必要なケースとは?詳しく解説!で整理しています。人事異動で防火管理者が不在になる場合の取扱いは人事異動で防火管理者が不在になった場合の対処方法・手続きについてをご覧ください。
一般の防火対象物(令第1条の2第3項第1号)の消防計画に定めるべき事項は、消防法施行規則第3条第1項第1号イからヲまでの12項目です。甲種・乙種で記載事項が変わることはありません。甲種・乙種は防火管理者の資格の区分であって、消防計画の内容の区分ではないからです。
| 号 | 定める事項 |
|---|---|
| イ | 自衛消防の組織に関すること |
| ロ | 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること |
| ハ | 消防用設備等または特殊消防用設備等の点検及び整備に関すること |
| ニ | 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること |
| ホ | 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること |
| ヘ | 定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること |
| ト | 防火管理上必要な教育に関すること |
| チ | 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること |
| リ | 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること |
| ヌ | 防火管理についての消防機関との連絡に関すること |
| ル | 増築、改築、移転、修繕または模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者またはその補助者の立会いその他火気の使用または取扱いの監督に関すること |
| ヲ | イからルまでのほか、防火対象物における防火管理に関し必要な事項 |
新築の工事中の建築物(仮使用認定を受けた部分を除く)および建造中の旅客船については、規則第3条第1項第2号により、消火器等の点検及び整備、避難経路の維持管理及び案内、火気の使用または取扱いの監督、工事中に使用する危険物等の管理、ならびに第1号イ・トからヌまでの事項を定めます。
| 場合 | 根拠 | 追加する事項 |
|---|---|---|
| 防火管理業務の一部を関係者・従業員以外の者に委託しているとき | 規則第3条第2項 | 受託者の氏名及び住所(法人は名称及び主たる事務所の所在地)、受託者が行う業務の範囲及び方法。消防法第17条の3の3による消防用設備等の点検は除く |
| 管理権原が分かれている防火対象物のとき | 規則第3条第3項 | 当該防火対象物の当該権原の範囲 |
| 地震防災対策強化地域内の一定の施設 | 規則第3条第4項・第5項 | 警戒宣言発令時の自衛消防の組織、地震予知情報・警戒宣言の伝達、避難誘導、応急対策、防災訓練、教育及び広報の6事項 |
| 南海トラフ地震防災対策推進地域内の一定の施設 | 規則第3条第6項・第7項 | 津波からの円滑な避難の確保、防災訓練の実施、教育及び広報の3事項 |
| 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域内の一定の施設 | 規則第3条第8項・第9項 | 同上の3事項 |
消火訓練と避難訓練をそれぞれ年2回以上実施しなければならないのは、令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項の防火対象物に限られます(消防法施行規則第3条第10項)。
事務所ビル、共同住宅、学校、工場、倉庫などの非特定用途については、法令上の回数の定めがありません。消防計画に自ら定めた回数を実施することになります。「年1回以上の総合訓練が義務」という説明を見かけますが、条文上の根拠はありません。
見落とされやすい義務|訓練実施前の消防機関への通報
規則第3条第11項は、第10項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならないと定めています。訓練を実施したこと自体は問題なくても、この事前通報が漏れているケースが少なくありません。東京消防庁管内では「自衛消防訓練通知書」を提出します。
なお、防災管理に係る消防計画に基づく避難訓練は年1回以上です(規則第51条の8第3項)。地震および特殊災害を想定した訓練であり、防火管理の消火・避難訓練とは別のものです。防災管理制度の対象については防災管理が必要な建物で解説しています。
消防計画作成(変更)届出書を提出しなかったこと自体を直接処罰する規定はありません。消防計画の届出義務は消防法施行規則第3条第1項(省令)に置かれており、法律に届出義務の規定がないため、直罰規定を置くことができないからです。
ただし「罰則がないから出さなくてよい」ということではありません。防火管理上必要な業務が法令の規定または消防計画に従って行われていないと認められる場合、消防長または消防署長は管理権原者に対し必要な措置を命ずることができ(消防法第8条第4項)、この命令に違反すると刑事罰の対象になります。
| 違反の内容 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 消防計画作成(変更)届出書を提出しなかった | 規則第3条第1項 | 直接の罰則規定なし |
| 防火管理者の選任・解任の届出を怠った | 消防法第8条第2項 | 第44条第8号:30万円以下の罰金または拘留 |
| 防火管理者選任命令に従わなかった | 消防法第8条第3項 | 第42条第1項:6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(第45条第3号により法人にも罰金) |
| 防火管理業務適正執行命令に従わなかった | 消防法第8条第4項 | 第41条:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第45条第3号により法人にも罰金) |
| 消防用設備等の点検結果を報告しない・虚偽報告 | 消防法第17条の3の3 | 第44条第11号:30万円以下の罰金または拘留(第45条第3号により法人にも罰金) |
| 防火対象物点検の結果を報告しない・虚偽報告 | 消防法第8条の2の2第1項 | 第44条第11号:30万円以下の罰金または拘留(第45条第3号により法人にも罰金) |
| 立入検査の拒否・資料提出命令の拒否 | 消防法第4条第1項 | 第44条第2号:30万円以下の罰金または拘留 |
よく見かける誤りの訂正
「消防計画の変更届を出さないと30万円以下の罰金」という記述をインターネット上で見かけますが、これは誤りです。30万円以下の罰金または拘留(第44条第8号)が科されるのは防火管理者選任(解任)届出義務違反(第8条第2項違反)であって、消防計画の届出義務違反ではありません。
また、「懲役」という刑名は令和7年6月1日に施行された刑法等の一部を改正する法律により「拘禁刑」に一本化されています。現行法で「懲役○年」と記載している解説は、改正前の条文に基づくものです。
一棟の建物に複数のテナントが入っているなど管理権原が分かれている場合、各管理権原者がそれぞれ防火管理者を選任し消防計画を作成するだけでは足りません。建物全体を統括する仕組みが別に必要になります。
統括防火管理者を協議して定めなければならないのは、次の防火対象物のうち管理権原が分かれているものです(消防法第8条の2第1項、令第3条の3)。
| 対象 | 根拠 |
|---|---|
| 高層建築物(高さ31メートルを超える建築物) | 法第8条の2第1項 |
| (6)項ロ、(16)項イ((6)項ロ部分があるもの)で、地階を除く階数3以上かつ収容人員10人以上 | 令第3条の3第1号 |
| (1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項イ・ハ・ニ、(9)項イ、(16)項イで、地階を除く階数3以上かつ収容人員30人以上 | 令第3条の3第2号 |
| (16)項ロで、地階を除く階数5以上かつ収容人員50人以上 | 令第3条の3第3号 |
| (16の3)項(準地下街) | 令第3条の3第4号 |
| 地下街のうち消防長または消防署長が指定するもの | 法第8条の2第1項 |
統括防火管理者は、管理権原者の確認を受けて「全体についての防火管理に係る消防計画」を作成し、別記様式第1号の2の2の2により届け出ます(令第4条の2第1項、規則第4条第1項)。統括防火管理者の選任(解任)の届出は、これとは別の別記様式第1号の2の2の2の2によります(法第8条の2第4項、規則第4条の2)。
テナントの消防計画は全体計画に適合していなければなりません
消防法第8条の2第3項は、各テナントの防火管理者が作成する消防計画は、統括防火管理者が作成する全体についての消防計画に適合するものでなければならないと定めています。ビル全体の避難経路や自衛消防組織の編成と矛盾する内容をテナントの消防計画に書くことはできません。
なお、統括防火管理者に係る選任命令・適正執行命令には直接の罰則規定がなく、消防法第5条の2第1項の使用禁止・停止・制限命令の対象となります。
統括防火管理者制度の詳細は統括防火管理者と協議会の設置|複合建物における防火管理の要点を行政書士が徹底解説および複合用途防火対象物・あなたのビルの「統括防火管理者」は必要?法令根拠と役割を開設をご覧ください。
消防計画に関連して提出する書類を、根拠条文と様式番号とともに整理します。様式番号まで確認しておくと、消防署の窓口で書類を取り違えることがなくなります。
| 届出書 | 根拠条文 | 様式(消防法施行規則) | 届け出る者 |
|---|---|---|---|
| 防火管理者選任(解任)届出書 | 法第8条第2項、規則第3条の2 | 別記様式第1号の2の2 | 管理権原者 |
| 消防計画作成(変更)届出書 | 法第8条第1項、令第3条の2第1項、規則第3条第1項 | 別記様式第1号の2 | 防火管理者 |
| 統括防火管理者選任(解任)届出書 | 法第8条の2第4項、規則第4条の2 | 別記様式第1号の2の2の2の2 | 管理権原者(協議して定める) |
| 全体についての消防計画作成(変更)届出書 | 法第8条の2第1項、令第4条の2第1項、規則第4条第1項 | 別記様式第1号の2の2の2 | 統括防火管理者 |
| 防火・防災管理者選任(解任)届出書 | 法第36条第1項において準用する法第8条第2項、規則第51条の9 | 別記様式第1号の2の2 | 管理権原者 |
| 防災管理に係る消防計画作成(変更)届出書 | 令第48条第1項、規則第51条の8第1項 | 別記様式第1号の2(防火・防災共通) | 防災管理者 |
| 自衛消防組織設置(変更)届出書 | 法第8条の2の5第2項、規則第4条の2の15 | 別記様式第1号の2の2の3の3 | 管理権原者 |
| 防火対象物点検結果報告書 | 法第8条の2の2第1項、規則第4条の2の4第3項 | 消防庁長官が定める様式 | 管理権原者 |
| 消防用設備等点検結果報告書 | 法第17条の3の3、規則第31条の6第3項・第5項 | 消防庁長官が定める様式 | 関係者(所有者・管理者・占有者) |
※ 様式番号は消防法施行規則の別記様式によります。東京消防庁では独自の様式番号(「第○号様式」)を併用している書類がありますので、提出前に所轄消防署の様式をご確認ください。
報酬を得て業として、消防計画作成(変更)届出書などの官公署に提出する書類を作成できるのは、行政書士および行政書士法人に限られます。これは行政書士法第1条の3および第19条第1項が定める制限です。
令和8年1月1日に施行された行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)により、第19条第1項は次の条文になっています。
(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。(ただし書略)
総務省自治行政局長通知(令和7年6月13日付け総行行第281号)は、この改正の趣旨について、「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目であっても、対価を受領して業として官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示するものと説明しています。つまり、改正が新たに違法行為を作り出したのではなく、従来から違法であったものを条文上明確にしたものです。
したがって、消防設備業者・ビル管理会社・コンサルタント会社が、報酬を得て業として消防計画作成(変更)届出書を作成することは、行政書士法第19条第1項に違反します。違反には第21条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され、令和8年1月1日施行の第23条の3(両罰規定)により、その法人にも100万円以下の罰金が科されます。
資格ごとの守備範囲
行政書士……官公署に提出する書類の作成(行政書士法第1条の3)、自ら作成した書類の提出手続の代理(第1条の4第1号)
防火管理者……消防計画の作成と、これに基づく訓練・自主検査・火気管理の遂行(消防法第8条第1項、令第3条の2)
消防設備士……消防用設備等の工事・整備(消防法第17条の5)
防火対象物点検資格者・防災管理点検資格者……点検の実施と点検結果の記録の作成
点検業者が作成できるのは点検結果の記録までです。消防署に提出する報告書の鑑は管理権原者・関係者名義の官公署提出書類ですので、報酬を得て業として代わりに作成すれば行政書士法第19条第1項違反となります。
詳しくは消防署への提出書類作成と行政書士法違反の防止についておよび消防計画の代行を行政書士に依頼するときの注意点 – 行政書士法違反となるケースも解説をご覧ください。
消防計画および防火管理に関する主な業務の報酬額は次のとおりです(すべて税抜表示。別途消費税を申し受けます)。
| 対象業務 | 内容 | 報酬額(税抜) |
|---|---|---|
| 消防計画作成(変更)届出書 | 新規作成(小規模) | 30,000円~55,000円 |
| 新規作成(中規模) | 50,000円~65,000円 | |
| 新規作成(大規模) | 80,000円~160,000円 | |
| 変更(規模を問わず) | 15,000円~40,000円 | |
| 防火・防災管理者選任(解任)届出書 | 選任(解任)届出書のみ | 8,000円~20,000円 |
| 消防計画作成届出書と一括の場合 | 6,000円~ | |
| 全体についての消防計画作成(変更)届出書 | 新規作成 | 80,000円~150,000円 |
| 統括防火(防災)管理者選任届出書 | 新規 | 20,000円~40,000円 |
| 変更 | 10,000円~ | |
| 自衛消防訓練実施結果報告書(通知書) | 届出のみ | 5,000円~20,000円 |
金額に幅があるのは、建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって作業量が変わるためです。正式なお見積りは、建物の情報を確認させていただいたうえでご提示いたします。実費(交通費、証明書取得費用等)は別途申し受けます。初回のご相談は無料です(2回目以降のご相談は1時間につき5,500円。ご依頼いただいた場合は無料)。最新の料金は報酬額一覧をご確認ください。
作成し、所轄消防長または消防署長に届け出る義務を直接負うのは防火管理者です(消防法施行令第3条の2第1項、消防法施行規則第3条第1項)。ただし防火管理者は管理権原者の指示を受けて作成しなければならず、その前提として管理権原者が防火管理者を定め、消防計画の作成等を行わせる義務を負っています(消防法第8条第1項)。したがって「防火管理者が作成し、管理権原者がその内容に責任を負う」という関係になります。防火管理者選任(解任)届出書の届出義務者は管理権原者ですので、届出書によって届出者が異なる点に注意が必要です。
「消防計画変更届出書」という書類は存在しません。新規作成のときと同じ消防法施行規則 別記様式第1号の2「消防計画作成(変更)届出書」を使い、該当する側を選択して提出します。規則第3条第1項の末尾が「防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。」と定めており、作成と変更は同一様式・同一手続きだからです。この様式は「第3条、第51条の8関係」とされており、防火管理に係る消防計画と防災管理に係る消防計画で共通です。
消防計画作成(変更)届出書を提出しなかったこと自体を直接処罰する規定はありません。届出義務が消防法施行規則第3条第1項という省令に置かれており、法律に届出義務の規定がないため直罰規定を置けないからです。ただし、防火管理上必要な業務が法令の規定または消防計画に従って行われていないと認められる場合、消防長または消防署長は管理権原者に必要な措置を命ずることができ(消防法第8条第4項)、この命令に違反すると第41条により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され、第45条第3号により法人にも同額の罰金が科されます。なお「30万円以下の罰金または拘留」は防火管理者選任(解任)届出義務違反(第8条第2項違反、第44条第8号)の罰則であり、消防計画の届出とは別のものです。
一般の防火対象物(消防法施行令第1条の2第3項第1号)については、消防法施行規則第3条第1項第1号イからヲまでの12項目です。自衛消防の組織、火災予防上の自主検査、消防用設備等の点検及び整備、避難施設の維持管理及び案内、防火上の構造の維持管理、定員の遵守その他収容人員の適正化、防火管理上必要な教育、訓練の定期的な実施、災害発生時の消火活動・通報連絡・避難誘導、消防機関との連絡、工事中の火気監督、その他必要な事項です。甲種・乙種で記載事項が変わることはありません。甲種・乙種は防火管理者の資格の区分であって、消防計画の内容の区分ではないためです。
消火訓練と避難訓練をそれぞれ年2回以上実施しなければならないのは、消防法施行令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項の防火対象物です(消防法施行規則第3条第10項)。事務所ビル、共同住宅、学校、工場、倉庫などの非特定用途については、法令上の回数の定めがなく、消防計画に定めた回数を実施します。また、これらの訓練を実施するときはあらかじめ消防機関に通報しなければなりません(同条第11項)。防災管理に係る避難訓練は年1回以上です(規則第51条の8第3項)。
消防法施行規則第3条第1項は「作成し……届け出なければならない」と定めるのみで、日数による期限を定めていません。したがって作成・変更の都度、遅滞なく提出することになります。実務上は防火管理者選任(解任)届出書と同時に提出するのが一般的です。なお、防火管理者選任(解任)届出書の側は消防法第8条第2項が「遅滞なく」と定めています。
不要にはなりません。管理権原が分かれている建物では、各管理権原者がそれぞれ防火管理者を選任し、その権原の範囲について消防計画を作成します(消防法第8条第1項、消防法施行規則第3条第3項)。そのうえで、建物全体については統括防火管理者が「全体についての防火管理に係る消防計画」を作成します(消防法第8条の2第1項)。テナントの消防計画は、全体についての消防計画に適合するものでなければなりません(消防法第8条の2第3項)。
あります。防火管理上必要な業務の一部を、関係者およびその建物で勤務している従業員以外の者に委託している場合、消防計画に受託者の氏名及び住所(法人の場合は名称及び主たる事務所の所在地)、受託者が行う業務の範囲及び方法を定めなければなりません(消防法施行規則第3条第2項)。ただし、消防法第17条の3の3による消防用設備等・特殊消防用設備等の点検は、この記載の対象から除かれています。委託先を変更したときは消防計画の変更にあたりますので、届出が必要です。
記載例を出発点にすることは問題ありませんが、実態に合わせて修正せずに提出するのは避けてください。消防法施行規則第3条第1項は「防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ」定めることを求めています。実態と異なる自衛消防組織の編成や訓練計画を記載すると、その計画に従って業務が行われていない状態となり、消防法第8条第4項の命令の対象になり得ます。
報酬を得て業として作成を請け負うことは、行政書士法第19条第1項に違反します。消防計画作成(変更)届出書は官公署に提出する書類であり、その作成を業として行えるのは行政書士および行政書士法人に限られるからです(行政書士法第1条の3)。違反には第21条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され、令和8年1月1日施行の第23条の3により法人にも100万円以下の罰金が科されます。総務省自治行政局長通知(令和7年6月13日付け総行行第281号)は、「手数料」「コンサルタント料」等の名目を問わないことが従来からの解釈であると説明しています。なお、選任された防火管理者が自ら作成することは、法令上の職務の遂行ですので問題ありません。
※本記事は2026年8月20日時点の法令に基づいて作成しています。条文はe-Gov法令検索の法令APIで取得した現行条文を確認したうえで記載しています。用途判定・収容人員算定・消防計画の内容についての最終的な判断は所轄消防署が行い、消防本部によって運用が異なる場合があります。個別の案件は所轄消防署の予防課または当事務所にご確認ください。
当事務所は東京消防庁管内の消防署届出を専門としています。用途判定と収容人員の算定から、防火管理者選任(解任)届出書・消防計画作成(変更)届出書の作成、消防署との事前協議、提出までを一貫してお引き受けします。
代表は特定行政書士であるとともに、消防設備士・防火対象物点検資格者・防災管理点検資格者を保有しています。書類の形式を整えるだけでなく、その建物で実際に運用できる消防計画をご提案できることが当事務所の強みです。初回のご相談は無料です。
萩本 昌史(はぎもと まさし)
特定行政書士/消防設備士/防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者
行政書士萩本昌史事務所 代表
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