【建物一棟貸しの場合】防火管理者や統括防火管理者は必要?所有者の責任は?

【建物一棟貸しの場合】防火管理者や統括防火管理者は必要?所有者の責任は?

1.はじめに

不動産オーナー必見!建物を一棟貸しした場合、消防法上、防火管理者や統括防火管理者を選任する必要があるのか?
この記事では、建物の「管理権原」に着目して、防火管理に関する法的義務や実務上の注意点を、行政書士がわかりやすく解説します。

2. そもそも「防火管理者」とは?

防火管理者とは、一定規模以上の建物において、火災予防のために必要な業務を管理する責任者です。具体的には以下のような業務を担います。

  • 消防計画の作成と実施
  • 日常的な点検・防火教育
  • 防火訓練の実施・記録の保存
  • 消防署への届出・報告

これらはすべて、消防法第8条および同施行令第3条に基づき義務づけられています。

3.一棟貸しの場合、防火管理者は誰が選任するのか?

ポイントとなるのは、建物の管理権限(管理権原)が誰にあるです。

3.1借主に管理権原があるケース

建物を一棟丸ごと貸しており、借主が全ての使用・管理を行っている場合
👉 借主(テナント)が防火管理者を選任する義務を負います。

 

所有者には防火管理者の選任義務はありません。

3.2 所有者が共用部を管理しているケース

一棟貸しであっても、エントランス・階段・屋上などの共用部分を所有者が管理している場合、
👉 所有者がその共用部分について防火管理者を選任する必要がある可能性があります

 

この場合、借主との調整が必要です。

 

3.3所有者の管理する部分が建物に存在する場合
👉 所有者がその管理する部分について防火管理者を選任する必要がある可能性があります

4.統括防火管理者の選任が必要なケースとは?

4.1統括防火管理者とは

統括防火管理者とは、1つの建物内に複数の管理権原者がいる場合に、防火管理を統括調整するために設けられる役職です(消防法第8条の2)。

4.2統括防火管理者の選任が必要な場合

統括防火管理者の選任が必要となるのは、以下のいずれかに該当する防火対象物で、その管理について権原が分かれている場合です。

  1. 高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう)
  2. 地下街(地下の工作物内に設けられた店舗、事務所その他これらに類する施設で、連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたものをいう。)で、その管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するもの。
  3. その他政令で定める防火対象物
  4. これには、具体的に以下のいずれかに該当する防火対象物が含まれます:消防補施行令第三条の三

    • ◦別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項イ、ハ及びニ、(9)項イ並びに(16)項イに掲げる防火対象物のうち、地階を除く階数が三以上で、かつ収容人員が三十人以上のもの。
    • ◦別表第一(16)項ロに掲げる防火対象物のうち、地階を除く階数が五以上で、かつ、収容人員が五十人以上のもの。
    • ◦別表第一(16の3)項に掲げる防火対象物。

4.3一棟貸しで統括防火管理者は必要?

原則として、一棟貸しで借主が単独で管理している建物には、統括防火管理者の選任は不要です。
なぜなら「複数の管理権原者がいない」からです。

 

ただし、以下のような場合には必要となることがあります。

 

ケース 統括防火管理者
一棟内に複数のテナントが入っている 必要(所有者が選任することが多い)
共用部分を所有者が管理し、専有部分はテナントが管理 必要(所有者が選任)
全館を1事業者が使用 管理不要

5.実務でのチェックポイント(所有者向け)

チェック項目 内容
賃貸借契約書に管理責任の所在を明記しているか? 借主が防火管理者を選任する責任を記載することでトラブル防止になります。
共用部(階段、エレベーター、屋上など)の管理を誰が担うか? 所有者が管理する場合、共用部に対する防火管理責任が発生します。
消防署への届出は誰が行うか? 防火管理者選任届、消防計画作成届など、借主と明確に役割分担しておくべきです。
自主管理か、管理会社へ業務委託しているか? 管理会社経由で防火管理対応をする場合も、契約内容に注意が必要です。

6.不動産オーナーの実務対策

  1. 賃貸借契約書に明記
  2. 防火管理者の選任義務は借主が負うこと
  3. 消防計画の作成・訓練実施の責任分担
  4. 消防計画のチェック
  5. 借主が作成した消防計画に共用部の扱いが明記されているか
  6. 消防署との相談

曖昧な管理分担がある場合は、所轄消防署に事前相談を行うのがベストです。

7.まとめ

項目 回答
一棟貸し防火管理者が必要なのは誰か? 借主(管理権原者)
一棟貸しで統括防火管理者は必要か? 原則不要(ただし共用部等管理が分かれる場合は要)
所有者が対応すべきことは? 契約書整備、消防署との連携、共用部管理の整理

8.行政書士によるサポートのご案内

一棟貸しや複合用途ビルにおける防火管理に関して、

  1. 消防計画・全体についての消防計画の作成
  2. 防火管理者の選任支援・統括防火管理者の選任支援
  3. 所轄消防署への届出代行
  4. テナント全般の防火管理のコンサルティング

など、実務的なご支援が可能です。

 

この記事が「防火管理」に不安のある不動産オーナー様のお役に立てれば幸いです。

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