無人店舗・24時間ジム・民泊の防火管理|関係者不在施設ガイドラインと用途別の義務【行政書士が解説】

この記事の結論

関係者不在施設とは、営業時間中に施設関係者が不在となる時間帯がある防火対象物のことです。無人店舗、24時間営業のトレーニングジム、民泊、インターネットカフェ、コインランドリー、レンタル収納スペースなどが該当します。

総務省消防庁は令和8年3月27日、「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」(消防予第115号)を発出しました。従来の「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドライン」(令和7年3月28日付け消防予第135号)は、この通知をもって廃止され、対象が関係者不在施設全般に拡大されています。

無人でも防火管理の義務は消えません。収容人員は「従業者の数+床面積を一定の数値で除した数」で算定される(消防法施行規則第1条の3)ため、スタッフが常駐していない時間帯があっても収容人員はゼロにならず、防火管理者の選任義務(消防法第8条第1項)が生じ得ます。

必要な対策は業態ではなく「用途」で決まります。無人コンビニ・無人販売所は(4)項、24時間ジム・コインランドリーは(15)項、インターネットカフェ・漫画喫茶は(2)項ニ、民泊は原則(5)項イ、サウナは(9)項イです(消防法施行令別表第一)。

民泊は原則として(5)項イ(旅館・ホテル・宿泊所)として扱われます。ただし、宿泊させる間に事業者が不在とならない旨の届出をしており、かつ宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下のときは、住宅として取り扱われます(平成29年10月27日付け消防予第330号)。

ガイドライン自体に罰則はありません。消防組織法第37条に基づく助言だからです。ただし、その内容を消防計画に定めたうえで実行しなければ、消防法第8条第4項の防火管理業務適正執行命令の対象となり、命令違反は第41条(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)に当たります。


「スタッフが常駐していないのだから、防火管理者は要らないはずだ」「無人店舗に消防法上の義務があるとは考えていなかった」。無人店舗や24時間ジムの開設をお手伝いする中で、こうしたお話をよく伺います。


しかし消防法令は、その建物に人が常駐しているかどうかで義務を分けていません。義務の起点は用途と収容人員であり、どちらも「無人であること」を理由に軽くなる仕組みにはなっていないからです。むしろ、火災に気づく人・初期消火する人・避難を誘導する人がその場にいないという点で、関係者不在施設は危険性が高い側として扱われます。


この記事では、消防法防火管理を専門とする特定行政書士が、令和8年3月に総務省消防庁が発出した「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」の内容と、無人店舗・24時間ジム・民泊それぞれについて法令上どのような義務が生じるのかを、条文と一次資料に当たって整理します。どこまでが法令上の義務で、どこからがガイドラインの推奨事項なのかを明示して解説します。


関係者不在施設とは|消防庁ガイドラインの定義


関係者不在施設とは、消防法施行令別表第一に掲げる防火対象物のうち、営業時間中に施設関係者が不在となる時間帯があるものをいいます。これは総務省消防庁「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」(令和8年3月)が「2 対象とする防火対象物」で定めている範囲です。


「無人店舗」という法令用語はありません。消防法令上の位置づけを考えるときは、この関係者不在施設という枠組みで捉えるのが正確です。


ガイドラインが想定している施設


ガイドラインが主に想定している関係者不在施設として、次の施設が例示されています。


インターネットカフェ/カラオケボックス/ホテル・旅館/簡易宿所/民泊/コンビニエンスストア/冷凍食品販売店/屋内ゴルフ練習場/書店/衣料品店/貸し会議室/ワーキングブース/レンタル収納スペース/トレーニングジム/サウナ など


ここに挙がっていない業態でも、避難に介助が必要な方が利用する施設など、利用者の属性による危険性を考慮する必要がある場合は同様に検討が必要である旨が明記されています。列挙は限定列挙ではありません。


また、完全な無人ではなくても省人化を進めている施設について、消火・通報・避難誘導などの自衛消防活動に配慮が必要な場合は、ガイドラインに準じた対策を講じることとされています。


ガイドラインの対象外となる小規模施設


次の施設はガイドラインの対象外とされています。


小規模な施設であって、利用者が立ち入ることが想定される場所のすべてにおいて、安全な場所に通ずる避難口を容易に見通し、かつ、識別できるもの


ワンフロアで出入口が一目で見渡せる小型のコインランドリーなどが想定されます。ただし対象外になるのはガイドラインの適用だけであって、消防法上の防火管理義務や消防用設備等の設置義務が免除されるわけではありません。ここを混同しないでください。


消防予第115号とは|令和8年3月27日の消防庁通知


「関係者不在施設における防火安全対策ガイドラインについて」(令和8年3月27日付け消防予第115号)は、消防庁予防課長から各都道府県消防防災主管部長・各消防本部消防長・非常備町村消防防災主管部局長あてに発出された通知です。


宿泊施設限定から関係者不在施設全般へ


この分野の指針は、次の順で整備されてきました。


時期通知対象
令和7年3月28日消防予第135号「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドラインについて」宿泊施設のみ
令和8年3月27日消防予第115号「関係者不在施設における防火安全対策ガイドラインについて」関係者不在施設全般


消防予第135号は、消防予第115号をもって廃止されています。宿泊施設ガイドラインの内容は新ガイドラインに包含されているため、現在参照すべきは消防予第115号のほうです。旧ガイドラインを前提に作成した消防計画や社内マニュアルがある場合は、根拠の記載を差し替えてください。


ガイドラインの法的性質は「助言」


消防予第115号は、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたものです。通知文にその旨が明記されています。したがって、ガイドラインに書かれた対策を実施しなかったこと自体を直接処罰する規定はありません。


ただし、これを「守らなくてよい」と読むのは誤りです。理由は2つあります。


第一に、ガイドラインは消防計画に落とし込むことを前提にしています。通知の「記」の1は、ガイドラインが「特に消防計画に定めるべき事項の詳細やその検討手順について示したもの」であると説明しています。消防計画に定めた事項は、防火管理者が実行すべき業務(消防法第8条第1項、消防法施行令第3条の2第2項)になります。

第二に、消防計画に従って防火管理業務が行われていないと認められる場合、消防長または消防署長は管理権原者に必要な措置を命ずることができます(消防法第8条第4項)。この命令に違反すると第41条により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となり、第45条第3号により法人にも同額の罰金が科されます(両罰規定)。


つまり、ガイドライン自体には罰則がなくても、ガイドラインを踏まえた消防計画を作り、それを守らなければ罰則につながるという構造です。


なお通知は、消防法第8条の規定が適用されない施設(防火管理者の選任義務がない小規模な施設)についても、関係者が施設利用者に対して負う安全配慮義務の観点からガイドラインに基づき万全を期すよう指導されたい、としています。義務対象外だから何もしなくてよい、とは書かれていません。


業態別の用途判定|義務の起点はここ


無人店舗に必要な防火管理と消防用設備等は、「無人かどうか」ではなく「消防法施行令別表第一のどの項に当たるか」で決まります。同じ「無人店舗」でも、物品を販売するのか、機器を使わせるのか、宿泊させるのかで用途が変わり、必要な設備も選任基準もまったく違うものになります。


業態令別表第一防火管理者の選任(収容人員)
無人コンビニ・無人販売所・書店・衣料品店(4)項30人以上
インターネットカフェ・漫画喫茶・カラオケボックス(2)項ニ30人以上
民泊(原則)・簡易宿所・ホテル・旅館(5)項イ30人以上
サウナ(蒸気浴場・熱気浴場)(9)項イ30人以上
24時間ジム・コインランドリー・レンタルオフィス等(15)項50人以上


(15)項に含まれる例:トレーニングジム、コインランドリー、レンタルオフィス、貸会議室、ワーキングブース、レンタル収納スペース、屋内ゴルフ練習場。根拠は消防法施行令第1条の2第3項第1号です。


用途が決まると、必要になる消防用設備等も変わります。同じ床面積でも、用途によって設置義務の有無が入れ替わります。


令別表第一消火器自動火災報知設備
(2)項ニ 個室型店舗面積を問わず面積を問わず
(4)項 物品販売店舗150㎡以上300㎡以上
(5)項イ 民泊・宿泊施設150㎡以上面積を問わず
(9)項イ サウナ150㎡以上200㎡以上
(15)項 事業場300㎡以上1,000㎡以上


根拠:消火器=消防法施行令第10条第1項。自動火災報知設備=同令第21条第1項。上表は主たる用途のみの建物を前提とした一般的な基準であり、地階・無窓階・3階以上の階に該当する場合や複合用途防火対象物の場合は別の基準が加わります。


(2)項ニに当たると設備の負担が跳ね上がる


上表で目を引くのが(2)項ニです。消火器も自動火災報知設備も面積を問わず必要になります。


(2)項ニは、令別表第一で「カラオケボックスその他遊興のための設備又は物品を個室(これに類する施設を含む。)において客に利用させる役務を提供する業務を営む店舗で総務省令で定めるもの」と定義され、消防法施行規則第5条第2項第1号がこれを「個室(これに類する施設を含む。)において、インターネットを利用させ、又は漫画を閲覧させる役務を提供する業務を営む店舗」と具体化しています。


個室ブース型のワーキングスペースや、個室型のリラクゼーション施設を計画している場合、この(2)項ニに当たるかどうかで初期投資が大きく変わります。用途判定は所轄消防署が行いますので、内装工事の設計段階で必ず事前相談してください。用途判定の考え方は消防法における建物の用途判定とは?消防法施行令 別表第1に基づく建物の用途について解説で詳しく解説しています。


300平方メートル未満なら特定小規模施設用自動火災報知設備が使える


(2)項ニや(5)項イのように面積を問わず自動火災報知設備が必要な用途でも、延べ面積が300平方メートル未満であれば、通常の自動火災報知設備に代えて「特定小規模施設用自動火災報知設備」を設置することができます。根拠は「特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」(平成20年総務省令第156号)第2条第1号イおよび第3条第1項です。


無線連動型の警報機能付感知器で構成できるため、受信機・配線工事を伴う一般的な自動火災報知設備に比べて工事費を抑えられます。小規模な民泊や個室型店舗では実務上の標準的な選択肢です。民泊の設備緩和については民泊開設の消防「基準の特例申請」完全ガイド|自動火災報知設備・スプリンクラーの免除と緩和もあわせてご覧ください。


無人でも防火管理者は必要か|収容人員は床面積で決まる


無人店舗でも防火管理者の選任義務は生じます。収容人員は「その場にいる人数」ではなく、消防法施行規則第1条の3に定められた算定方法で機械的に計算される数値だからです。


収容人員の定義は、消防法施行令第1条の2第3項第1号イのかっこ書きにあり、「当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数」とされています。実際の在館者数を数えるわけではありません。


用途ごとの算定方法


用途算定方法(規則第1条の3)選任基準
(4)項 物品販売店舗従業者の数+主として従業者以外の者の使用に供する部分〔飲食・休憩=床面積÷3㎡/その他=床面積÷4㎡〕30人以上
(2)項ニ 個室型店舗従業者の数+客席部分〔固定式いす席=席数/その他=床面積÷3㎡〕30人以上
(5)項イ 民泊・宿泊施設従業者の数+宿泊室〔洋式=ベッド数/和式=床面積÷6㎡〕+集会・飲食・休憩部分30人以上
(15)項 事業場従業者の数+主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積÷3㎡50人以上


計算してみると義務対象になる


例1|24時間ジム((15)項)

トレーニングフロアの床面積が150平方メートル、常駐の従業者なし。

150 ÷ 3 = 50人 → (15)項は50人以上で防火管理者の選任義務あり。該当します。


例2|無人コンビニ((4)項)

売場部分の床面積が120平方メートル、常駐の従業者なし。

120 ÷ 4 = 30人 → (4)項は30人以上で選任義務あり。該当します。


例3|戸建て民泊((5)項イ)

宿泊室が洋室3室・ベッド計6台、従業者なし。

収容人員は6人 → 30人に達しないため防火管理者の選任義務なし。ただし自動火災報知設備は面積を問わず必要です。


例3が示すとおり、防火管理者の選任義務と消防用設備等の設置義務は別の制度です。「防火管理者が要らない=消防法の規制がかからない」ではありません。収容人員の詳しい算定方法は防火対象物の収容人員の計算方法を用途区分別に徹底解説、選任の判断手順は防火管理者の選任の必要な建物と実務フローをご覧ください。


誰が義務を負うのか


防火管理者を選任する義務を負うのは、防火対象物の管理について権原を有する者(管理権原者)です(消防法第8条第1項)。運営会社が無人で店舗を運営していても、義務が委託先の警備会社や清掃業者に移ることはありません。


また、防火管理者は「管理的又は監督的な地位にある者」から選ぶ必要があります(消防法施行令第3条第1項柱書)。無人施設で担当者が複数店舗を掛け持ちする「重複選任」は、東京消防庁では原則として避けるべきものとされています。詳しくは関係者不在施設の防火管理|消防計画に追加する記載事項と応急対策の検証で解説しています。


民泊の消防法令上の取扱い|(5)項イか住宅か


住宅宿泊事業法に基づく届出住宅は、原則として消防法施行令別表第一(5)項イ(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)またはその部分として取り扱われます。根拠は「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて」(平成29年10月27日付け消防予第330号)です。


住宅として扱われる例外


同通知はただし書きで、次の2つをいずれも満たす場合に届出住宅を住宅として取り扱うとしています。


① 人を宿泊させる間、住宅宿泊事業者が不在とならない旨の届出が行われていること(住宅宿泊事業法施行規則第4条第3項第10号)

② 宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下であること


この2要件は「かつ」の関係です。家主が居住していても宿泊室が50平方メートルを超えれば(5)項イになり、宿泊室が50平方メートル以下でも家主不在型であれば(5)項イになります。いわゆる家主不在型の民泊は、面積にかかわらず(5)項イです。


ここでいう「宿泊室」とは、住宅宿泊事業法施行規則第4条第4項第1号チ(4)に規定する宿泊者の就寝の用に供する室です。リビングや浴室・トイレは含まれません。


また同通知は、この例外の取扱いをする場合には、火災の発生時に消火・延焼の防止・人命の救助を当該住宅宿泊事業者等が行うことについて確認することが適当としています。単に居住しているだけでなく、火災時に動ける体制が前提になっています。


旅館業法の許可を受けた民泊も同じ判定


消防予第330号「第2 その他」の1は、届出住宅以外の防火対象物であっても、旅館業法第3条第1項の許可を受けた営業が行われる場合などで、届出住宅と同様の利用形態であることが確認できるときは、上記の判定を準用するとしています。簡易宿所営業による民泊も、実態が同じであれば同じ枠組みで判定されます。


なお、マンションの一室で民泊を行う場合は、その住戸ごとに用途を判定したうえで、棟ごとの用途を「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号)により判定することとされています。一室が(5)項イになれば、建物全体が(16)項イの複合用途防火対象物になり得る点に注意が必要です。


ガイドラインが求める防火安全対策


ガイドラインは、施設の火災危険性を確認したうえで、対応する対策を消防計画に盛り込むという手順を示しています。対策は次の5分野・7つの表に整理されています。


分野主な対策
利用者に対する情報の提供(表2-1)施設関係者が不在となる旨とその時間帯を利用者に周知する。予約時・利用開始時の双方で周知する。自動消火設備がない場合は、施設側による初期消火ができないことも伝える
平時の火災予防(表2-2)喫煙ルールの周知、調理器具・レンジフードの清掃、電気機器・配線の定期点検、コンセント周りの清掃、防炎製品の使用、避難経路の維持管理、ごみ置場の施錠など放火防止
早期覚知と通報(表2-3)自動火災報知設備の遠隔移報装置、遠隔監視カメラ、自動火災報知設備と連動した火災通報装置、同一建物内の事業所間連携
避難誘導(表2-4)放送設備による遠隔アナウンス、自動火災報知設備と連動したデジタルサイネージ、セキュリティ機器で施錠している出入口の解錠対策
初期消火(表2-5)出火危険のある場所周辺への消火器の増設、消火器の設置位置と使用方法の利用者への周知、人命危険が特に高い場合の自動消火設備の設置
消防隊への情報提供(表2-6)早期に現場へ駆けつける体制、出火場所・避難者・逃げ遅れた者の情報を収集して伝える要領、消防隊が連絡をとる緊急連絡先の明確化
教育・訓練(表2-7)関係者がいる時間帯と不在の時間帯の双方を想定した訓練、遠隔監視による火災覚知を想定した応急対策訓練、オンライン研修の活用


見落とされやすい2点


1つ目は、入退出管理用のセキュリティ機器による施錠です。24時間ジムや貸会議室では、会員カードや暗証番号で出入口を施錠している例が一般的です。ガイドラインは、火災が発生した際に出入口の施錠を速やかに解除する対策を講じることを求めています。自動火災報知設備と連動して解錠する方法などが挙げられています。


これは消防法第8条の2の4(避難上必要な施設等の管理)とも直結する論点です。避難口が開かない状態は、防火管理上もっとも重い問題のひとつです。


2つ目は、利用者に「避難を最優先とするよう周知する」という考え方です。ガイドラインは、初期消火や通報についても利用者に協力を求めることを示していますが、いずれも身の安全を確保し、避難を最優先としたうえで、安全確保の範囲内における協力という位置づけです。利用者に消火活動を期待する設計にはなっていません。


応急対策の検証|「盛期火災まで2分」という目標時間


ガイドラインは、施設に火災危険性が1つでも確認された場合、消防計画の実効性を確認するための検証を求めています。検証するのは次の3つの対応行動が目標時間内に完了できるかどうかです。


① 火災発生場所の確認 警報設備の作動後、火災の発生場所を確認する

② 避難誘導 放送による呼びかけ、または警報設備以外の音声による周知(遠隔からの機械操作を含む)

③ 消防機関への通報 模擬通報。時間の測定は電話機で119番を押下するまで


目標時間の考え方は次のとおりです。ガイドラインは、火災発生の際に感知器が作動してから早ければ2分程度で出火室が盛期火災に至るおそれがあるという前提を置いています。


ガイドライン記載の計算例

歩行速度1メートル毎秒、避難口までの最も遠い距離20メートルの場合

避難時間 20メートル ÷ 1メートル毎秒 = 20秒

目標時間 120秒 - 20秒 = 100秒

この100秒以内に①〜③の対応行動を完了する必要があります。


繰り返し訓練しても目標時間内に完了できない場合は、ガイドライン「7 防火安全対策の充実・強化」により、常駐勤務者の配置、警備会社等への一部委託、放送設備のスピーカー増設、遠隔アナウンス機器の導入、デジタルサイネージ、遠隔移報装置、遠隔監視設備、自動火災報知設備と連動した火災通報装置、自動消火装置の設置といった強化策を講じることとされています。


なお、施設全体にスプリンクラー設備が設置されている場合や、消防法施行規則第12条の2・第13条によりスプリンクラー設備の設置を要しない構造に該当する場合は、この検証の対象外とされています。ただし対象外であっても、消防法施行規則第3条に基づく定期的な消火・通報・避難の訓練は別途必要です。


関係者不在施設に関する罰則


「届出義務違反」と「命令違反」では、適用条文も刑の重さもまったく異なります。ここを区別せずに「消防法違反は罰金」とまとめている解説が多いのですが、実務上は決定的な違いです。


違反の内容根拠罰則両罰
防火管理者の選任・解任の届出を怠った第8条第2項第44条第8号:30万円以下の罰金または拘留なし
防火管理者選任命令に従わなかった第8条第3項第42条第1項:6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金あり(第45条第3号)
防火管理業務適正執行命令に従わなかった第8条第4項第41条:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金あり(第45条第3号)
消防用設備等の設置命令に従わなかった第17条の4第41条:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金あり(第45条第2号)
消防用設備等の点検結果を報告しない・虚偽報告第17条の3の3第44条第11号:30万円以下の罰金または拘留あり(第45条第3号)
使用禁止・停止・制限命令に従わなかった第5条の2第1項第39条の2の2:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金あり(法人1億円以下)


「拘禁刑」は、令和7年6月1日施行の刑法等の一部改正により「懲役」と「禁錮」を一本化した刑名です。改正前の解説記事に「懲役」と書かれている場合は、現行法では拘禁刑と読み替えてください。


消防計画の作成・変更の届出を怠ったこと自体を直接処罰する規定はありません。消防計画の届出義務は消防法施行規則第3条第1項(省令)に置かれており、法律に届出義務の規定がないため直罰規定を置けないからです。「消防計画を出さないと30万円以下の罰金」という説明を見かけますが、それは第8条第2項の防火管理者選任・解任届の罰則(第44条第8号)と混同したものです。


ただし、消防計画を作成しないこと・作成した計画に従わないことは、前述のとおり第8条第4項の命令の対象であり、命令に従わなければ第41条が適用されます。


消防署への届出と書類作成|行政書士法の位置づけ


無人店舗・24時間ジム・民泊を開設するとき、東京消防庁管内では次の届出が必要になります。


届出書根拠期限
防火対象物工事等計画届出書東京都火災予防条例第56条工事着手日の7日前まで
防火対象物使用開始届出書東京都火災予防条例第56条の2使用開始日の7日前まで
防火管理者選任(解任)届出書消防法第8条第2項選任・解任後遅滞なく
消防計画作成(変更)届出書消防法第8条第1項、消防法施行規則第3条第1項作成・変更したとき(選任届と併せて提出するのが一般的)
工事整備対象設備等着工届出書消防法第17条の14着工の10日前まで(甲種消防設備士が届出)
消防用設備等設置届出書消防法第17条の3の2工事完了後4日以内(消防法施行規則第31条の3第1項)


ガイドラインを踏まえて消防計画を見直した場合は、消防計画作成(変更)届出書を提出します。「消防計画変更届出書」という名称の様式はなく、正式名称は消防法施行規則別記様式第1号の2の消防計画作成(変更)届出書です。新規作成と変更で同じ様式を使います。


書類作成を誰に頼めるか


報酬を得て、業として、消防署に提出する書類を作成できるのは行政書士および行政書士法人だけです。行政書士または行政書士法人でない者が報酬を得て業としてこれを行えば、行政書士法第19条第1項に違反します(罰則は第21条の2:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)。


令和8年1月1日施行の改正行政書士法(令和7年法律第65号)は、第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言を明記しました。総務省の通知は、この改正が「『手数料』や『コンサルタント料』等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示する」ものであると説明しています。改正が新たに違法行為を作ったのではなく、従来から違法だったものを条文で確認したものです。


あわせて第23条の3(両罰規定)が新設され、法人の従業者等が違反行為をしたときは、行為者を罰するほかその法人にも100万円以下の罰金が科されます。


無人店舗の運営支援サービスや民泊の運営代行サービスの中には、消防署への届出書類の作成まで一括して請け負うと案内しているものがあります。報酬に含まれている以上、名目が「運営代行費」であっても第19条第1項の適用を免れません。この点は消防署への提出書類作成と行政書士法違反の防止についてで詳しく解説しています。


なお、消防設備士が自ら行う工事整備対象設備等着工届出書の届出(消防法第17条の14)は消防設備士自身の義務であり、行政書士法の問題は生じません。点検資格者が作成する点検票・点検結果総括表・試験結果報告書も、点検という技術的行為の記録であって官公署提出書類の作成とは区別されます。


当事務所の報酬額


関係者不在施設の開設・見直しでは、消防計画作成(変更)届出書、防火・防災管理者選任(解任)届出書、防火対象物使用開始届出書、防火対象物工事等計画届出書、自衛消防訓練実施結果報告書などのご依頼を承っています。


報酬額は報酬額表をご覧ください。

金額に幅があるのは、建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって作業量が変わるためです。正式なお見積りは、建物の情報を確認させていただいたうえでご提示いたします。

報酬額表にない業務は個別にお見積りいたします。実費(交通費、証明書取得費用等)は別途申し受けます。初回のご相談は無料です。


よくある質問


関係者不在施設ガイドラインに従わないと罰則がありますか。


ガイドライン自体に罰則はありません。「関係者不在施設における防火安全対策ガイドラインについて」(令和8年3月27日付け消防予第115号)は、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたものだからです。ただし、ガイドラインを踏まえて消防計画に定めた事項は防火管理者が行うべき業務になり、その業務が消防計画に従って行われていないと認められる場合、消防長または消防署長は管理権原者に必要な措置を命ずることができます(消防法第8条第4項)。この命令に違反すると第41条により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となり、第45条第3号により法人にも同額の罰金が科されます。


スタッフが常駐していない無人店舗でも防火管理者は必要ですか。


必要になる場合があります。防火管理者の選任義務は収容人員で決まり、収容人員は実際の在館者数ではなく消防法施行規則第1条の3の算定方法で計算されるためです。たとえば(15)項に当たる24時間ジムでは、主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3平方メートルで除して算定するため、床面積150平方メートルであれば収容人員50人となり、選任義務の基準(50人以上)に達します。(4)項の物品販売店舗であれば売場部分の床面積を4平方メートルで除し、120平方メートルで30人となって基準(30人以上)に達します。


24時間営業のトレーニングジムは令別表第一の何項ですか。


一般にトレーニングジムやコインランドリー、レンタルオフィス、貸会議室、レンタル収納スペースは、消防法施行令別表第一(15)項(前各項に該当しない事業場)として取り扱われます。(15)項の場合、防火管理者の選任は収容人員50人以上、消火器は延べ面積300平方メートル以上、自動火災報知設備は延べ面積1,000平方メートル以上で必要です。ただし施設内にサウナ(蒸気浴場・熱気浴場)を設ける場合はその部分が(9)項イに当たり得るなど、実態により判定が変わります。用途判定の最終的な判断は所轄消防署が行いますので、設計段階で事前相談してください。


インターネットカフェは面積が小さくても自動火災報知設備が必要ですか。


必要です。個室(これに類する施設を含む)においてインターネットを利用させ、または漫画を閲覧させる役務を提供する店舗は、消防法施行令別表第一(2)項ニに該当します(消防法施行規則第5条第2項第1号)。(2)項ニは同令第21条第1項第1号イにより延べ面積を問わず自動火災報知設備の設置対象で、消火器も同令第10条第1項第1号イにより面積を問わず必要です。ただし延べ面積300平方メートル未満であれば、通常の自動火災報知設備に代えて特定小規模施設用自動火災報知設備を設置することができます(平成20年総務省令第156号第2条第1号イ、第3条第1項)。


民泊は消防法上どの用途になりますか。


住宅宿泊事業法に基づく届出住宅は、原則として消防法施行令別表第一(5)項イ(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)またはその部分として取り扱われます(平成29年10月27日付け消防予第330号)。ただし、人を宿泊させる間に住宅宿泊事業者が不在とならない旨の届出が行われており、かつ宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下であるときは、住宅として取り扱われます。この2つは「かつ」の関係であり、家主不在型の民泊は面積にかかわらず(5)項イになります。宿泊室とは宿泊者の就寝の用に供する室をいい、リビングや浴室・トイレは含みません。


無人店舗の防火管理者を複数店舗で兼任させることはできますか。


東京消防庁では、防火管理者の重複選任は原則として避けるべきものとされています。防火管理者は消防法施行令第3条第1項により「防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある者」から選任する必要があり、複数施設を兼任すると巡回や初動対応が不十分になるおそれがあるためです。例外的に認められる場合でも、甲種防火管理者の資格、各施設への防火担当責任者の配置、消防計画への役割分担の明記といった条件が求められます。事前に所轄消防署へご相談ください。


会員カードで施錠している出入口は、火災のときどうすればよいですか。


ガイドラインは、入退出管理用のセキュリティ機器により出入口が施錠されている場合について、火災が発生した際に出入口の施錠を速やかに解除する対策を講じることを求めています。自動火災報知設備と連動して解錠する方法などが示されています。避難口が開かない状態は消防法第8条の2の4(避難上必要な施設等の管理)の観点からも問題となるため、消防計画に解錠の手順と担当者を明記し、訓練で実際に解錠できることを確認してください。


応急対策の検証における「目標時間」はどう設定しますか。


ガイドラインは、火災発生の際に感知器が作動してから早ければ2分程度で出火室が盛期火災に至るおそれがあることを前提に、120秒から避難に要する時間を差し引いた残りを目標時間とする考え方を示しています。歩行速度を1メートル毎秒、避難口までの最も遠い距離を20メートルとする例では、避難時間20秒を差し引いた100秒が目標時間となります。この時間内に、火災発生場所の確認・避難誘導・消防機関への通報の3つを完了できるかを訓練で検証します。なお、施設全体にスプリンクラー設備が設置されている場合や、消防法施行規則第12条の2・第13条により設置を要しない構造に該当する場合は、この検証の対象外です。


消防署への届出書類の作成を運営代行会社に頼んでもよいですか。


報酬を得て業として消防署提出書類を作成できるのは行政書士および行政書士法人だけです。行政書士または行政書士法人でない者が報酬を得て業としてこれを行えば行政書士法第19条第1項に違反し、第21条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。令和8年1月1日施行の改正により同項に「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と明記されたため、「運営代行費」「コンサルティング料」といった名目であっても適用を免れません。あわせて第23条の3の両罰規定により、法人にも100万円以下の罰金が科されます。


令和7年3月の宿泊施設向けガイドラインはまだ使えますか。


使いません。「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドラインについて」(令和7年3月28日付け消防予第135号)は、令和8年3月27日付け消防予第115号をもって廃止されました。宿泊施設ガイドラインの内容は新しい「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」に包含されているため、現在参照すべきは消防予第115号のほうです。旧ガイドラインを根拠として記載している消防計画や社内マニュアルがある場合は、記載を差し替えてください。


まとめ


関係者不在施設とは、営業時間中に施設関係者が不在となる時間帯がある防火対象物です。

令和8年3月27日付け消防予第115号により、消防庁が関係者不在施設全般を対象とするガイドラインを示しました。従来の宿泊施設限定ガイドライン(消防予第135号)は廃止されています。

必要な義務は用途で決まります。無人コンビニは(4)項、24時間ジムは(15)項、インターネットカフェは(2)項ニ、民泊は原則(5)項イです。

収容人員は床面積から算定されるため、無人でも防火管理者の選任義務が生じ得ます。逆に、選任義務がなくても消防用設備等の設置義務は別に判断されます。

ガイドライン自体に罰則はありませんが、消防計画に定めた業務を行わなければ消防法第8条第4項の命令の対象となり、命令違反は第41条(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、法人にも両罰)です。


関係者不在施設は、消防法令が前提としてきた「関係者がその場にいる」という状態から外れた運営形態です。だからこそ、消防計画を実態に合わせて作り込むことの価値が大きくなります。用途判定の段階から所轄消防署と協議を重ね、設備投資と運用体制の落としどころを設計することが、結果として最も費用対効果の高い進め方になります。


東京消防庁管内で無人店舗・24時間ジム・民泊の開設や、既存施設の消防計画見直しをご検討の方は、当事務所へご相談ください。初回相談は無料です。


参照した法令・公的資料


  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第2項・第3項・第4項、第8条の2、第8条の2の4、第17条の3の2、第17条の3の3、第17条の4、第17条の14、第24条第25条、第39条の2の2、第41条、第42条、第44条、第45条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2第3項・第4項、第3条、第3条の2第10条第1項第21条第1項別表第一
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第1条の3第3条第5条第2項、第12条の2、第13条、第31条の3
  • 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成20年総務省令第156号)第2条第1号第3条
  • 総務省消防庁「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」(令和8年3月)
  • 消防庁予防課長「関係者不在施設における防火安全対策ガイドラインについて」(令和8年3月27日付け消防予第115号
  • 消防庁予防課長「関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドラインについて」(令和7年3月28日付け消防予第135号。消防予第115号により廃止
  • 消防庁予防課長「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて」(平成29年10月27日付け消防予第330号
  • 消防庁予防課長・消防庁安全救急課長「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号)
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
  • 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)、同法施行規則(平成29年厚生労働省・国土交通省令第2号)第4条
  • 東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第56条、第56条の2
  • 行政書士法(昭和26年法律第4号)第1条の3、第1条の4、第19条第1項、第21条の2、第23条の3(令和7年法律第65号による改正後・令和8年1月1日施行)
  • 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号) 令和7年6月1日施行(拘禁刑への一本化)


※本記事は2026年8月19日時点の法令および総務省消防庁の通知に基づいて作成しています。用途判定の最終的な判断は所轄消防署が行い、消防本部によって運用が異なる場合があります。個別の案件は所轄消防署の予防課または当事務所にご確認ください。


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この記事を書いた人


萩本 昌史(はぎもと まさし)

特定行政書士/消防設備士/防火対象物点検資格者防災管理点検資格者

行政書士萩本昌史事務所 代表
東京の消防手続支援ステーション 運営

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