人事異動で防火管理者が不在になった場合の対処方法・手続きについて

人事異動などにより防火管理者が不在となった場合、消防法や関連法令に従って速やかに新しい防火管理者を選任し、所轄の消防署へ必要な手続きを行わなければなりません。以下では、行政書士の立場から実務上のポイントを解説しながら、その具体的な流れや注意点を詳しくご説明します。

目次
1. 防火管理者の選任が必要な建物・事業所とは
2. 防火管理者が不在となった場合のリスク
3. 新任防火管理者の選任手続きの流れ
 3.1 新任防火管理者の資格確認
 3.2防火管理者選任届出書の提出
 3.3防火管理業務の引き継ぎ
4. 防火管理者選任後に行うべきこと
 4.1 社内体制の再整備
4.2従業員への周知・教育
 5. 外部専門家への相談や支援の活用
6. 防火管理者が不在となりそうなときの予防策
 6.1複数名の資格取得を推奨
 6.2引き継ぎマニュアルの整備
 6.3異動時期のタイミングを考慮し、事前に準備
7.まとめ

1. 防火管理者の選任が必要な建物・事業所とは

消防法施行令第4条などで定められている「防火管理者の選任が義務づけられる建物」に該当する場合には、防火管理者の不在は違反となり得ます。具体的には、下記のような一定規模以上の建物・事業所が該当します。

 

延べ面積や用途が消防法令で定める基準以上の建築物
共同住宅の一部を除き、不特定多数の人が利用する施設(飲食店、商業施設、ホテル、病院など)
事務所・工場などで延べ面積が法定の基準を超えるもの
一般的には、“甲種防火管理者”の資格保有者を選任するケースが多いですが、建物の用途や規模によっては“乙種防火管理者”でもよい場合があります。いずれにしても、防火管理者が不在の期間を作らないことが重要です。

2. 防火管理者が不在となった場合のリスク

防火管理者が不在のまま、何も手続きを行わずに放置した場合、以下のようなリスクが生じます。

 

消防法令違反となり、消防署から是正指導・勧告などを受ける可能性がある。
火災等の緊急時の避難誘導や防火安全対策が適切に行われなくなる。
防火管理上必要な事項(消防計画の、避難訓練など)を実施・管理する責任者が不在となり、社内体制に混乱を招く。
重大な事故や火災が発生した場合、企業の社会的信用の失墜や損害賠償問題にもつながる。

3. 新任防火管理者の選任手続きの流れ

 

3.1 新任防火管理者の資格確認

まずは新たに防火管理者を選任できる職員(または外部委託先など)を確認します。

 

資格要件:甲種または乙種防火管理者の資格を有していること。
甲種防火管理者講習修了者であれば、ほとんどの規模の施設で防火管理者になれます。
乙種防火管理者は対象となる建物・事業所が限定されます。
権限付与の必要性:防火管理者は社内で一定の権限を持ち、防火上必要な業務を実施する立場にあることが求められます。管理権限・実務推進のための地位づけを明確にすることが重要です。

3.2防火管理者選任届出書の提出

新たに防火管理者が決まったら、遅滞なく管轄の消防署へ「防火管理者選任届出書」を提出します。消防署の窓口または消防署が公開している様式を使用し、以下の内容を記載するのが一般的です。

 

施設の名称・所在地
建物の用途・構造・延べ面積
防火管理者の氏名・資格区分(甲種または乙種)
選任年月日
前任防火管理者の退任日・退任理由(人事異動など)
建物の管理主体(事業主や管理会社)の名称・代表者名
注意点としては、前任防火管理者の退任日との整合をとり、なるべく空白期間がないように手続きを進めることが挙げられます。

3.3防火管理業務の引き継ぎ

防火管理者が交代する際には、防火管理上必要な書類や実施していた業務を円滑に引き継ぐ必要があります。具体的には以下のようなものが挙げられます。

 

消防計画(避難訓練計画、消火訓練計画などを含む)
防災マニュアルおよび過去の点検結果や訓練報告書類
定期点検報告に関する書類
各種設備(消火器、火災報知設備、避難器具など)の設置状況や点検記録
前任者からの引き継ぎが不十分だと、新任者が業務内容を把握しきれず、必要な防火管理の実務に支障を来す恐れがあります。

4. 防火管理者選任後に行うべきこと

4.1 社内体制の再整備

新任の防火管理者が中心となり、改めて社内の防火管理体制やマニュアルを見直します。人事異動によって避難誘導責任者や各フロアの防火管理補助者などの顔ぶれが変わる場合も多いです。

 

フロア・部署ごとの防火管理補助者の任命
火災報知器、避難口、消火器などの位置関係の再確認
訓練の実施スケジュールの更新

4.2従業員への周知・教育

新任防火管理者を中心に、火災発生時の初動対応、避難方法、消火器の使い方などを含む防火教育を定期的に実施します。特に人事異動直後は、新しい配置の職員が多いため、防災意識を高めるよい機会です。

 

安全衛生委員会やミーティングなどで新任防火管理者の存在を周知
消防計画に沿った避難訓練・消火訓練の実施

5. 外部専門家への相談や支援の活用

人事異動時期には他の業務も増えやすく、防火管理者としての業務を社内だけで完結するのが難しい場合もあります。そのような場合には、防火管理業務をサポートする外部専門家(行政書士・防災コンサルタントなど)に相談するのも選択肢です。書類作成代行や消防署とのやり取りのサポートなどが得られるため、手続きの負担を大幅に軽減できます。

6. 防火管理者が不在となりそうなときの予防策

最後に、今後同様の事態を避けるための対策をまとめます。

6.1複数名の資格取得を推奨

大規模事業所や人事異動の多い企業では、予め複数名が防火管理者の資格を取得しておくことで、急な異動でも速やかに交代要員を確保しやすくなります。

6.2引き継ぎマニュアルの整備

前任者が退任する際に、チェックリスト形式で引き継ぎ項目を整理しておくと、交代時に漏れがなくなります。

6.3異動時期のタイミングを考慮し、事前に準備

毎年人事異動が行われる時期が分かっている場合は、事前に消防署への届出書類の様式を確認しておく、資格保有者の状況を社内で把握しておくなど、準備を進められます。

7.まとめ

人事異動で防火管理者が不在になった場合、まずは速やかに新任の防火管理者を選任し、所轄消防署へ届出を行うことが最重要です。そのうえで、前任者からの書類や実務の引き継ぎをしっかり行い、新体制での防火管理を適切に進めましょう。

 

もし「適切な資格者が社内におらず、どう選任していいか分からない」「届出書類の作成や消防署とのやり取りが負担」という場合は、行政書士に依頼することも可能です。消防法に基づいた正しい手続きを踏むことで、会社としての防災体制を万全に整え、万が一の際の被害を最小限に抑えることにつなげられます。

 

人事異動のタイミングは忙しくなりがちですが、消防法令遵守と安全管理の観点から、防火管理者の不在を絶対に放置しないよう、早めの対応を心がけましょう。

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