防火対象物の収容人員の計算方法を用途区分別に徹底解説

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はじめに

建物における火災時の避難安全性を確保するため、消防法では「防火対象物」に応じた収容人員の算定が義務付けられています。特に収容人員は、防火管理者選任義務や消防用設備設置義務の基準となる重要な数値です。

 

この記事では、消防法施行令別表第1および収容人員の算定要領をベースに、防火対象物の用途ごとの具体的な収容人員の計算方法を、わかりやすく徹底解説します!

 

 

1. 基本ルール:収容人員の定義と意義

収容人員とは、「防火対象物に出入り、または滞在する人の数」を基準とし、建物用途ごとに定められた方法で算出する人数を指します。次のケースで重要になります。

防火管理者の選任要否

  • 消防法施行令別表第1 ⑹項ロ
    老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。)、介護老人保健施設、老人福祉法認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの
    ⑵ 救護施設
    ⑶ 乳児院
    ⑷ 障害児入所施設
    ⑸ 障害者支援施設
             10人以上
  • 特定防火対象物  30人以上
  • 非特定防火対象物 50人以上

消防用設備等の設置義務の有無

建物の設計・避難計画作成時

2. 用途別 収容人員の具体的算定方法

各防火対象物の用途別に、収容人員の計算方法を詳しく解説します。

2-1.劇場・映画館・集会場(1項)

対象:劇場、映画館、演芸場、公会堂、集会場

算定方法:以下の合計

  • 従業者の数
  • 客席部分:固定椅子席:椅子の数
  • 長椅子席:正面幅を0.4mで除した数(端数切捨)
  • 立見席:床面積/0.2㎡
  • その他部分:床面積/0.5㎡

具体例:

固定椅子席300席、立見エリア40㎡、その他スペース20㎡、従業員5人の場合
→ 300人+(40÷0.2=200人)+(20÷0.5=40人)+5人=545人

2-2.キャバレー・カフェー・遊技場等(2項・3項)

対象:キャバレー、カフェー、カラオケBOX、飲食店、遊技場

算定方法:以下の合計

  • 従業者の数
  • 遊技機器設置数(使用者数)
  • 固定椅子席(正面幅0.5mで除算)
  • その他:床面積/3㎡

具体例:

カラオケ個室10室(各定員4名)、休憩スペース30㎡、従業員2人
→ (10×4)+(30÷3=10)+2=52人

2-3.物品販売店舗・展示場(4項)

対象:百貨店、マーケット、展示場

算定方法:以下の合計

  • 従業者の数
  • 飲食・休憩部分:床面積/3㎡
  • その他部分:床面積/4㎡

具体例:

店舗販売エリア400㎡、フードコートエリア90㎡、従業員10人
→ (400÷4=100人)+(90÷3=30人)+10=140人

2-4.宿泊施設 ⑸項イ

算定方法:以下の合計

  • 従業者の数
  • 宿泊室:洋式(ベッド数)
  •     和式(床面積/6㎡、簡易宿所は3㎡)
  • 集会・飲食・休憩部分:固定椅子席(正面幅0.5m)
  • その他: 床面積/3㎡

2-5.共同住等 ⑸項ロ

対象:共同住宅、寄宿舎、下宿

算定方法:

居住者数による
共同住宅・寄宿舎は居住者数で算定

2-6.病院・診療所・社会福祉施設 ⑹項

対象:病院、診療所⑹項イ

算定方法:以下の合計
  • 従業者数
  • 病床数
  • 待合室面積/3㎡

対象:社会福祉施設・その他社会福祉施設 ⑹項ロ及びハ

算定方法:以下の合計
  • 従業者数
  • 老人,乳児,幼児,身体障害者,知的障害者その他の要保護者の数

対象:幼稚園・特別支援学校等

算定方法:以下の合計
  • 教職員の数
  • 幼児・児童・生徒の数

2-7.学校 ⑺項

対象:学校

算定方法:以下の合計

  • 教職員の数
  • 幼児・児童・生徒の数

2-8.図書館、博物館 ⑻項

対象:図書館、博物館

算定方法:以下の合計

  • 従業者の数
  • 閲覧室,展示室,展覧室,会議室又は休憩室の床面積の合計/3㎡

2-9.蒸気浴場、熱気浴場、公衆浴場等 ⑼項

対象:蒸気浴場、熱気浴場、公衆浴場等

算定方法:以下の合計

  • 従業者の数
  • 浴場,脱衣場,マッサージ室及び休憩の用に供する部分の床面積の合計/3㎡

2-10.神社、寺院、教会等 ⑾項

対象:神社、寺院、教会等

算定方法:以下の合計

  • 神職,僧侶,牧師その他従業者の数
  • 礼拝,集会又は休憩の用に供する部分の床面積の合計/3㎡

2-11. (10)項 停車場 (12)項 工場、作業場、スタジオ等 (13)項 車庫、駐車場、航空機格納庫 (14)項 倉庫

対象:停車場・工場、作業場、スタジオ等・車庫、駐車場、航空機格納庫・倉庫

算定方法:

  • 従業者の数

2-12.事務所等 ⒂項

対象:事務所、オフィス、ビル

算定方法:

  • 従業者の数
  • 主として従業者以外の者が使用する部分の床面積/3㎡

2-13.複合用途防火対象物 ⒃項イ・ロ

対象:複合用途防火対象物

算定方法:

  • 各部分の用途に応じて個別算定し、合算

2-14.地下街(16の2項)

対象:地下街

算定方法:

  • 各部分の用途に応じて個別算定し、合算

2-15.連続地下道 ⒃の3項

対象:地下道に面した建築物(特定用途を含む)

算定方法:

  • 各用途ごとに区分し、通常通り算定して合算

3. 特別なケース:仮使用建物・複合用途建物の場合

仮使用の承認を受けた建物は、仮使用部分を本来の用途とみなして収容人員を算出します。

4. 注意すべきポイント

  • 従業者数は常時勤務者数が基準です(非常勤でも常時勤務なら算入)。
  • 固定椅子のある場合は席数優先(床面積ではなく椅子基準)。
  • 用途未確定部分は3㎡/人で暫定計算されることがあります。

 

収容人員の算定は、消防計画や避難計画策定にも不可欠です。

5. まとめ

防火対象物における収容人員の算定は、

 

【用途区分】を正確に特定し、
【定められた方法】で人数を積算する

 

ことが求められます。

 

算定ミスは、防火管理義務や消防設備設置義務に大きな影響を与えるため、十分な注意が必要です。
疑問点や不安がある場合は、ぜひ専門の消防設備士・行政書士・消防庁相談窓口へご相談ください!

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