

結論:消防署の立入検査は、消防法第4条を根拠に「火災予防のために必要があるとき」に行われます。時間帯の制限も、事前通告の義務も、法律にはありません。平成14年の消防法改正で、それまで条文にあった「日出から日没まで」という時間制限と事前通告の規定が削除されたためです。営業時間中に予告なく来ることは、法律上まったく問題がありません。
そして、立入検査そのものより重いのはその後です。指摘を放置すれば措置命令(消防法第5条第1項)に進み、命令が出れば標識の設置その他の方法で公示されます。命令に違反すれば2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金、使用停止命令に違反すれば3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金刑という水準の罰則が用意されています。東京都内では、これとは別に東京都火災予防条例第64条の3に基づく違反対象物の公表制度もあります。
本記事は、東京都内(東京消防庁管内)で飲食店・物販店・雑居ビル・事務所・工場を運営、管理されている事業者・ビルオーナー・テナントの方に向けて、立入検査の法令根拠、消防職員にできることとできないこと、検査の流れと改修(計画)報告書、よく指摘される事項、措置命令へ進む段階、公表制度、罰則、審査請求の期限、そして行政書士に依頼できる範囲までを、消防法・同施行規則・東京都火災予防条例・東京消防庁の運用に沿って整理した実務ガイドです。
立入検査とは、消防長又は消防署長が火災予防のために必要があるときに、消防職員に建物へ立ち入らせ、位置・構造・設備・管理の状況を検査させ、関係者に質問させる制度です(消防法第4条第1項)。同時に、関係者に対して資料の提出を命じ、又は報告を求めることもできます。
条文は次のように定めています。
消防法第4条第1項
消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。
ここが最も誤解されている点です。かつて消防法第4条第1項には、立入検査を日出から日没までの時間内に限るという制限と、あらかじめ関係者に通告しなければならないという規定がありました。しかし平成13年9月1日の新宿歌舞伎町ビル火災(44名死亡)を受けた平成14年の消防法改正で、この2つはいずれも削除されました。
現在の条文にあるのは「火災予防のために必要があるとき」という要件だけです。したがって、深夜営業の店舗に営業時間中の夜間に来ることも、事前連絡なく来ることも、法律上は適法です。「予告なしに来たから違法だ」という主張は成り立ちません。
ただし実務上は、書類の準備や関係者の立会いが必要な場合、事前に日程調整の連絡が入ることが多くあります。「連絡が入るのが通常」であって「連絡が義務」ではない——この区別を押さえてください。
対象は「あらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所」です。店舗、事務所、工場、倉庫、共同住宅の共用部などが該当します。
一方、個人の住居には、関係者の承諾を得た場合か、火災発生のおそれが著しく大で特に緊急の必要がある場合でなければ立ち入ることができません(同項ただし書)。マンションの各住戸内がこれにあたります。店舗併用住宅では、店舗部分と住居部分で扱いが変わります。
消防長又は消防署長は、火災予防のため特に必要があるときは、消防対象物および期日又は期間を指定して、管轄区域内の消防団員に立入検査・質問をさせることができます(消防法第4条の2第1項)。消防職員の場合と違い、対象と期日・期間をあらかじめ特定する必要がある点が異なります。年末の火災予防運動期間などに行われるものがこれにあたります。
立入検査には、消防職員側にも守るべきルールがあります。消防法第4条第2項から第4項までが定めています。
| 区分 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| できること | 関係者に対して資料の提出を命じる | 消防法第4条第1項 |
| 関係者に対して報告を求める | 消防法第4条第1項 | |
| 関係のある場所に立ち入って位置・構造・設備・管理の状況を検査する | 消防法第4条第1項 | |
| 関係のある者に質問する | 消防法第4条第1項 | |
| 守るべきルール | 個人の住居には原則として立ち入れない | 消防法第4条第1項ただし書 |
| 市町村長の定める証票を携帯し、関係のある者の請求があるときは提示しなければならない | 消防法第4条第2項 | |
| 関係者の業務をみだりに妨害してはならない | 消防法第4条第3項 | |
| 検査・質問で知り得た関係者の秘密をみだりに他に漏らしてはならない | 消防法第4条第4項 |
証票の提示は「請求があるとき」です。消防職員には携帯義務がありますが、提示するのは関係者から求められたときと定められています(消防法第4条第2項)。身分に疑問があるときは、遠慮なく提示を求めてください。ただし、提示を受けたうえで検査を拒めば、罰則の対象になります。
立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した場合、資料の提出をせず、虚偽の資料を提出した場合、報告をせず、又は虚偽の報告をした場合は、消防法第44条第2号により30万円以下の罰金又は拘留です。法人の従業者等が業務に関して違反した場合は、同法第45条第3号の両罰規定により法人にも罰金刑が科されます。「今日は忙しいので帰ってください」と追い返すことは、法律上は拒否にあたり得ます。日程の再調整をお願いするのであれば、その旨を明確に伝えて協議してください。
東京消防庁管内での一般的な流れは次のとおりです。
立入検査から是正までの流れ
1 立入検査の実施(事前連絡がある場合とない場合があります)
2 現場の確認と関係書類の確認、関係者への質問
3 立入検査結果通知書の交付(違反指摘事項が記載されます)
4 改修(計画)報告書の提出(別記様式第24号。改修日又は改修予定日を消防署長へ報告)
5 改修の実施
6 必要に応じて再検査
7 是正されない場合 → 警告 → 措置命令(消防法第5条第1項等)→ 公示
検査の結果、法令違反や改善すべき事項があれば、立入検査結果通知書が交付されます。ここに記載された「違反指摘事項」が、以後の手続の出発点になります。東京消防庁では、立入検査結果通知書を電子メールで交付する取扱いも行われています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| だれが | 建物の所有者、占有者又は管理者 |
| 何を | 改修(計画)報告書(別記様式第24号/指摘事項が多い場合は別記様式第24号その2を添付) |
| 何を報告するか | 立入検査結果通知書に記載された違反指摘事項の改修日又は改修予定日 |
| どこへ | 管轄の消防署(予防課防火管理係又は防火査察係)。電子申請・窓口・郵送 |
| 部数 | 窓口・郵送は原則1部(控えが必要な場合は自分で用意) |
| 手数料 | 不要 |
ここでの書き方が、その後を大きく分けます。改修予定日を根拠なく先に設定すると、期日どおりに改修できず、再検査で同じ指摘を受けることになります。設備工事を伴うものは業者の見積りと工程を、届出書類の未提出は作成に要する期間を踏まえて、実現可能な日付を書いてください。そして書いた日付は必ず守る——これが、措置命令へ進ませないための最も確実な方法です。
指摘は、大きく分けて「書類が出ていない」「日常の管理ができていない」「設備が足りない・動かない」の3種類です。東京消防庁の違反対象物公表制度の対象となる違反例も参考にしながら整理します。
| 分類 | よくある指摘事項 | 根拠 |
|---|---|---|
| 防火管理関係 | 防火管理者が選任されていない/選任(解任)届出書が未提出 | 消防法第8条第1項・第2項 |
| 消防計画が作成されていない/作成(変更)届出書が未提出 | 消防法施行令第3条の2第1項 | |
| 消火・通報・避難の訓練が実施されていない | 消防法第8条第1項、東京都火災予防条例第55条の4 | |
| 統括防火管理者が選任されていない/全体についての消防計画が未作成 | 消防法第8条の2 | |
| 避難関係 | 避難階段・避難通路に物品が置かれている | 消防法第8条の2の4、東京都火災予防条例第54条 |
| 防火戸・防火シャッターの前に什器が置かれ閉鎖できない | 消防法第8条の2の4 | |
| 階段に敷物が敷かれている/従業時間中に避難口が施錠されている | 東京都火災予防条例第54条 | |
| 消防用設備等関係 | 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備の未設置 | 消防法第17条第1項 |
| 点検結果報告書が未提出(消防用設備等点検・防火対象物点検) | 消防法第17条の3の3、第8条の2の2第1項 | |
| 誘導灯が消灯している/消火器が期限切れ・所定の位置にない | 消防法第17条第1項 | |
| 火気・危険物関係 | 火を使用する設備の設置届出が未提出/離隔距離が確保されていない | 東京都火災予防条例第57条第1項ほか |
| 少量危険物・指定可燃物の届出が未提出/貯蔵取扱いの基準に不適合 | 東京都火災予防条例第58条第1項、第30条、第31条 | |
| 内装・その他 | カーテン・じゅうたん・展示用合板に防炎表示がない | 消防法第8条の3 |
| 防火対象物工事等計画届出書・使用開始届出書が未提出のまま使用している | 東京都火災予防条例第56条、第56条の2 |
目を引くのは、上位の指摘の多くが「届出が出ていない」ことだという点です。設備投資が必要な指摘は限られており、書類を整えれば解消するものが相当数を占めます。防火管理者の選任と消防計画については「防火管理者の選任が必要な建物とは|収容人員10人・30人・50人の判定基準」と「消防計画の作成手順と記載事項|届出義務者・様式第1号の2・訓練回数を条文で解説」、訓練の回数は「自衛消防訓練は年2回必要?総合訓練・部分訓練の回数を消防法と東京都火災予防条例から解説」をご覧ください。届出の全体像は「消防届出は行政書士へ|東京の届出一覧・期限・依頼できる範囲を解説」に一覧があります。
立入検査で指摘を受けただけでは、まだ行政処分ではありません。しかし、改修されない状態が続くと、消防法上の命令へ進みます。命令は段階的に用意されています。
消防長又は消防署長は、防火対象物の位置・構造・設備・管理の状況について、火災の予防に危険であると認める場合、消火・避難その他の消防の活動に支障になると認める場合、火災が発生したならば人命に危険であると認める場合その他火災の予防上必要があると認める場合には、権原を有する関係者に対し、改修、移転、除去、工事の停止又は中止その他の必要な措置をなすべきことを命ずることができます。
命令が出ると「公示」されます(消防法第5条第3項・第4項)
消防長又は消防署長は、命令をした場合には標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければなりません(第3項)。総務省令で定める方法とは「公報への掲載その他市町村長が定める方法」です(消防法施行規則第1条)。
そして標識は、命令に係る防火対象物又はその場所に設置することができ、所有者・管理者・占有者は標識の設置を拒み、又は妨げてはなりません(第4項)。建物に標識が立つということです。
この公示の仕組みは、第5条の2(使用禁止等)、第5条の3(物件の除去等)、第8条第3項・第4項(防火管理者関係)、第8条の2第7項(統括防火管理者関係)、第8条の2の5第4項(自衛消防組織関係)、第17条の4(消防用設備等関係)の各命令にも準用されています。
さらに重い処分が、建物の使用の禁止・停止・制限です。次のいずれかに該当する場合に命じられます。
第1号 第5条第1項、第5条の3第1項、第8条第3項・第4項、第8条の2第5項・第6項、第8条の2の5第3項、第17条の4第1項・第2項の命令が出されたにもかかわらず、その措置が履行されず、履行されても十分でなく、又は期限までに完了する見込みがないため、引き続き危険であると認める場合
第2号 これらの命令によっては危険を除去することができないと認める場合
営業ができなくなる処分です。第1号は「命令に従わなかったこと」が前提ですから、措置命令の段階できちんと対応すれば、ここには進みません。
消防長、消防署長その他の消防吏員は、防火対象物において火災の予防に危険であると認める行為者、又は危険であると認める物件・消防活動に支障になると認める物件の所有者等に対し、消防法第3条第1項各号の措置(火気使用の禁止・停止・制限、残火の始末、危険物等の除去、放置物件の整理又は除去)を命ずることができます。
避難階段に置かれた段ボールや廃棄物が、この対象になります。権原を有する者を確知できないときは、その者の負担で消防職員に除去等をさせることもできます(同条第2項)。
| 命令 | 根拠 | どんなときに出るか |
|---|---|---|
| 防火管理者を定めるべき命令 | 消防法第8条第3項 | 防火管理者が定められていないと認める場合 |
| 防火管理業務を適正に行うべき命令 | 消防法第8条第4項 | 防火管理上必要な業務が法令又は消防計画に従って行われていないと認める場合 |
| 消防用設備等の設置・維持命令 | 消防法第17条の4第1項・第2項 | 消防用設備等が技術基準に従って設置・維持されていないと認める場合 |
命令や罰則とは別に、東京都には違反を公表する仕組みがあります。根拠は東京都火災予防条例第64条の3です。
東京都火災予防条例第64条の3(防火対象物の設備、管理等の状況の公表)
消防総監は、防火対象物の設備、管理等の状況が法、令及びこの条例の規定に違反する場合は、都民が当該防火対象物を利用する際の判断に資するため、その旨を公表することができる。
東京消防庁の運用では、消防用設備等のうち屋内消火栓設備、スプリンクラー設備又は自動火災報知設備の未設置による設置義務違反などについて、違反内容を関係者に通知してから一定期間経過後もなお同一の違反が認められる場合に、建物名称・所在・違反の内容が東京消防庁のホームページおよび管轄消防署等の窓口で公表されます。
この制度は、平成21年11月の高円寺南の雑居ビル火災を受けた一斉立入検査で、一度是正させても違反が繰り返される実態が明らかになったことを踏まえ、都民が建物の安全情報を得て利用を判断できるようにするために創設されたものです。
公表は、罰則よりも事業への影響が大きい場合があります。建物名と所在地がインターネット上に掲載されれば、テナント誘致、集客、金融機関の評価、保険の引受け、取引先の与信判断にまで及びます。そして公表を避ける方法はひとつだけ——通知された期間内に是正することです。
命令違反の罰則は、消防法の中でも最も重い部類に属します。特に法人に対する両罰規定の金額に注目してください。
| 違反の内容 | 根拠条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 立入検査を拒み、妨げ、忌避した/資料の提出をせず、虚偽の資料を提出した/報告をせず、虚偽の報告をした | 消防法第4条第1項・第44条第2号 | 30万円以下の罰金又は拘留 |
| 使用禁止・停止・制限命令(第5条の2第1項)に違反した | 消防法第39条の2の2 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(情状により併科) |
| 措置命令(第5条第1項)に違反した | 消防法第39条の3の2 | 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金(情状により併科) |
| 法人の従業者等が上記2つの違反行為をした | 消防法第45条第1号 | 法人に1億円以下の罰金刑 |
| 物件の除去等の命令(第5条の3第1項)に違反した | 消防法第41条第1項第1号 | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(情状により併科) |
| 防火管理業務の適正執行命令(第8条第4項)に違反した | 消防法第41条第1項第2号 | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(情状により併科) |
| 消防用設備等の設置命令(第17条の4)に違反して設置しなかった | 消防法第41条第1項第5号 | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金/法人に3,000万円以下の罰金刑(第45条第2号) |
| 防火管理者を定めるべき命令(第8条第3項)に違反した | 消防法第42条第1項第1号 | 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(情状により併科) |
| 消防用設備等の維持のため必要な措置をしなかった | 消防法第44条第12号 | 30万円以下の罰金又は拘留 |
| 防火管理者の選任(解任)の届出を怠った | 消防法第8条第2項・第44条第8号 | 30万円以下の罰金又は拘留 |
| 点検結果の報告をせず、又は虚偽の報告をした | 消防法第8条の2の2第1項/第17条の3の3・第44条第11号 | 30万円以下の罰金又は拘留 |
| (条例)少量危険物等の届出をせず、検査を拒み・妨げ・忌避して貯蔵取扱いをした | 東京都火災予防条例第58条第1項・第67条の2第6号 | 10万円以下の罰金(第68条で両罰) |
数字の並びが、この制度の設計思想を語っています。届出の懈怠は30万円、命令違反は200万円・300万円、そして法人には1億円。「指摘された時点」ではまだ罰則の話ではありません。指摘を放置して命令に至ったときに、桁が変わります。そして万一火災が発生した場合、命令違反や公表の事実は、民事上の責任や保険金支払いの判断にも影響します。
この期間を知らないまま権利を失う例があります。消防法第5条第1項(措置命令)、第5条の2第1項(使用禁止等)、第5条の3第1項(物件の除去等)の命令についての審査請求ができる期間は、行政不服審査法の原則である3か月ではありません。
消防法第5条の4は、行政不服審査法第18条第1項本文の期間を「当該命令を受けた日の翌日から起算して30日」と定めています。火災危険の除去を急ぐ必要があるため、通常より短く設定されているのです。不服があるなら、30日以内に動く必要があります。
なお、立入検査そのものや立入検査結果通知書の交付は、行政処分(不利益処分)ではありませんので、審査請求の対象にはなりません。争えるのは「命令」が出てからです。逆に言えば、通知書の段階で消防署と協議し、実情に即した改修計画を提示していくのが実務上の正攻法です。
この審査請求の手続は、特定行政書士が代理することができます(行政書士法第1条の4第1項第2号・同条第2項)。詳しくは第11章で解説します。当事務所は特定行政書士です。
立入検査は「準備できる検査」です。予告なく来ても困らない状態を、平時につくっておけます。
建物に備えておく書類
・防火管理者選任(解任)届出書の副本(受付印のあるもの)
・消防計画作成(変更)届出書と消防計画書の副本
・自衛消防訓練実施結果報告書の副本
・消防用設備等点検結果報告書の副本
・防火対象物点検結果報告書の副本(対象建物の場合)
・防火対象物使用開始届出書・工事等計画届出書の副本
・火を使用する設備の設置届出書、少量危険物・指定可燃物の設置届出書の副本
・防火管理維持台帳(防火対象物点検の対象建物では記録・保存が義務。消防法施行規則第4条の2の4第2項)
・カーテン・じゅうたん等の防炎製品の証明/設備の保守点検記録
副本が見つからないという相談は非常に多くあります。テナント交代や担当者の退職で行方不明になるのが典型です。管轄消防署で控えを確認できる場合がありますので、平時に所在を確定させておいてください。
指摘の多くは、その日の現場の状態で決まります。避難階段・避難通路に物を置かない、防火戸と防火シャッターの下に什器や商品を置かない、避難口を従業時間中に施錠しない、誘導灯を消灯させない、消火器を所定の位置に置く——これらは費用をかけずに今日から直せるものです。「検査の日だけ片づける」のではなく、常時その状態を保つことが、そのまま防火管理の実行にあたります。
雑居ビルでは、共用部(階段・廊下・防火戸)はビル所有者、専有部(内装・什器・火気設備)はテナントというのが一般的な整理です。しかし消防法上の「関係者」「権原を有する者」は、実態に即して判断されます。賃貸借契約でどちらが管理すると定めているかも重要な資料になります。指摘を受けてから責任の所在を探すのではなく、入居時に整理しておいてください。入居時の手続は「テナント入居・内装工事の消防法チェックポイント|届出一覧」にまとめています。
違法ではありません。事前通告の義務は平成14年の消防法改正で条文から削除されています。同時に「日出から日没まで」という時間制限もなくなりました。現在の要件は「火災予防のために必要があるとき」だけです(消防法第4条第1項)。
拒み、妨げ、忌避した場合は30万円以下の罰金又は拘留です(消防法第44条第2号)。法人にも両罰規定が及びます(第45条第3号)。日程の調整を申し出ることと、拒否することは別です。
立入検査結果通知書を受けたら、改修(計画)報告書(別記様式第24号)を提出します。放置すれば警告、措置命令へ進み、命令が出れば公示され、建物に標識が設置され得ます(消防法第5条第3項・第4項)。
30日です。消防法第5条の4により、審査請求の期間は命令を受けた日の翌日から起算して30日とされています。行政不服審査法の原則(3か月)とは違います。
個人の住居には、承諾がなければ原則として立ち入れません(消防法第4条第1項ただし書)。例外は、火災発生のおそれが著しく大で特に緊急の必要がある場合に限られます。共用部は対象です。
点検報告は指摘事項のごく一部です。防火管理者の選任、消防計画の作成と届出、訓練の実施、避難経路と防火戸の管理、防炎表示——これらは消防用設備等点検では確認されません。設備点検制度そのものは「消防用設備等点検報告制度とは|周期・報告期限・自分でできる範囲を行政書士が解説【東京】」をご覧ください。
立入検査への対応は、行政書士が関与できる部分が広い分野です。指摘事項の相当数が「届出書が出ていない」ことだからです。
改修(計画)報告書も、未提出の各種届出書も、消防署長という官公署に提出する書類ですので、その作成は行政書士の業務です(行政書士法第1条の3第1項)。官公署へ提出する手続の代理も、行政書士の業務範囲に含まれます(同法第1条の4第1項第1号)。
そして、行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業としてこれらの書類作成業務を行うことができません(同法第19条第1項)。違反した者は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます(同法第21条の2)。
【2026年最新】「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が条文に明記されました
令和7年法律第65号による行政書士法の一部改正が令和8年1月1日に施行され、第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言が加えられました。
総務省自治行政局長通知「行政書士法の一部を改正する法律の公布について」(令和7年6月13日 総行行第281号)は、この改正について、行政書士でない者が「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目であっても、対価を受領して、業として官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示したものだ、と説明しています。
「立入検査対応は無料で代行します」「点検料金に届出書の作成も含みます」という説明であっても、実質的に対価を受け取っていれば違法になり得ます。
不利益処分だから行政書士は関われない、というのは誤りです。行政書士法第1条の4第1項第2号が定める要件は、処分が不利益処分かどうかではなく、「行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する」不服申立てであるかどうかだからです。
行政書士法第1条の4第1項第2号
前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
同項第1号かっこ書き(第2号にも適用)
許認可等=行政手続法第2条第3号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。
同条第2項
前項第二号に掲げる業務は、日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(=特定行政書士)に限り、行うことができる。
条文が「許認可等に関する」と書いていることが重要です。「許認可等を求める申請に対する処分」に限る、とは書かれていません。そのうえ、かっこ書きの定義は行政手続法第2条第3号の許認可等に加えて「当該書類の受理」まで含めています。消防関係の各種届出書の受理も、ここに入ります。
さらに、行政手続法第2条第4号ロは「申請により求められた許認可等を拒否する処分」を、そもそも不利益処分から除外しています。つまり「不利益処分か否か」で線を引く整理は、条文の構造とかみ合いません。許可の取消処分、営業停止処分、防火管理者を定めるべき命令のような不利益処分であっても、行政書士が作成できる書類に係る許認可等に関するものであれば、特定行政書士が審査請求の代理と書類作成を行えます。
実務上さらに重要なのは、命令が出る前の段階です。
消防法の措置命令は、法律に根拠のある処分ですので、行政手続法が適用されます。同法第3条第3項は、地方公共団体の機関がする処分のうちその根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものを適用除外としており、消防法という法律に根拠がある命令はこれにあたらないためです。
したがって、行政庁が不利益処分をしようとする場合には、聴聞(許認可等を取り消す処分など)又は弁明の機会の付与という意見陳述のための手続が執られます(行政手続法第13条第1項)。この意見陳述の手続における代理は、行政書士法第1条の4第1項第1号の業務であり、特定行政書士に限られません(同条第2項が特定行政書士に限定しているのは第2号だけです)。ただし、弁護士法第72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものは除かれます。
当事務所は特定行政書士です
行政書士 萩本昌史は、日本行政書士会連合会の研修課程を修了した特定行政書士です(行政書士法第1条の4第2項)。
そのため、立入検査の指摘を受けた段階での書類整備にとどまらず、措置命令等に先立つ聴聞・弁明の機会の付与の手続の代理、そして命令に対する審査請求の代理と書類作成まで、一貫してお引き受けできます。
個別の処分がこの範囲に含まれるかは、その処分がどの書類に係る許認可等に関するものかによって判断します。命令の取消訴訟など裁判手続に移行する場合は弁護士の業務ですので、必要に応じて連携します。
| 手続・作業 | 担当する専門家 |
|---|---|
| 改修(計画)報告書(別記様式第24号)の作成・提出 | 行政書士 |
| 防火管理者選任(解任)届出書の作成・提出 | 行政書士(防火管理者の資格取得は本人が受講する) |
| 消防計画作成(変更)届出書・消防計画書の作成・提出 | 行政書士(防火管理体制は事業者が決定する) |
| 自衛消防訓練実施結果報告書の作成・提出 | 行政書士 |
| 防火対象物使用開始届出書・工事等計画届出書の作成・提出 | 行政書士 |
| 火を使用する設備・少量危険物等の届出書の作成・提出 | 行政書士 |
| 所轄消防署との事前相談・指摘事項の整理・スケジュールの逆算 | 行政書士 |
| 措置命令等に先立つ聴聞・弁明の機会の付与の手続の代理 | 行政書士(行政書士法第1条の4第1項第1号。特定行政書士に限られない) |
| 措置命令等に対する審査請求の代理・提出書類の作成 | 特定行政書士(同項第2号・同条第2項。当事務所は特定行政書士です) |
| 命令の取消訴訟など裁判手続 | 弁護士 |
| 消防用設備等の点検・工事・整備、着工届出書 | 消防設備士・消防設備点検資格者 |
| 防火対象物点検、点検票の作成 | 防火対象物点検資格者 |
| 避難階段・防火戸まわりの改修設計、建築確認手続 | 建築士・設計者 |
立入検査の指摘は、そのほとんどが「期限内に是正すれば終わる」ものです。問題になるのは、何を、いつまでに、誰が行うのかが決まらないまま時間だけが過ぎることです。行政書士法との関係は「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」で詳しく整理しています。
当事務所の報酬額は報酬額表に掲載しています(すべて税抜)。金額に幅を持たせているのは、建物の規模・用途、指摘事項の数、未提出の届出の量、消防署との協議の回数によって作業量が変わるためです。正式なお見積りは、立入検査結果通知書を拝見したうえでご提示します。複数物件を管理される不動産管理会社・ビルオーナー向けに顧問契約もご用意しています。
消防法第4条第1項です。消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は消防職員に、あらゆる仕事場・工場・公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入って、消防対象物の位置・構造・設備・管理の状況を検査させ、関係のある者に質問させることができます。なお消防団員による立入検査は消防法第4条の2に別に定めがあり、消防対象物および期日又は期間を指定して行われます。
法律上の義務としての事前通告はなく、時間帯の制限もありません。かつて消防法第4条第1項にあった「日出から日没まで」という時間制限と事前通告の規定は、平成13年の新宿歌舞伎町ビル火災を受けた平成14年の消防法改正で削除されました。実務上は日程調整の連絡が入ることが多いものの、それは運用であって義務ではありません。
拒み、妨げ、又は忌避した場合、資料の提出をせず若しくは虚偽の資料を提出した場合、報告をせず若しくは虚偽の報告をした場合は、消防法第44条第2号により30万円以下の罰金又は拘留です。法人の従業者等が業務に関して違反した場合は、同法第45条第3号の両罰規定により法人にも罰金刑が科されます。日程の再調整をお願いすることと、拒否することは別ですので、事情がある場合はその旨を伝えて協議してください。
個人の住居には、関係者の承諾を得た場合か、火災発生のおそれが著しく大であるため特に緊急の必要がある場合でなければ立ち入ることができません(消防法第4条第1項ただし書)。ただし、階段・廊下・機械室などの共用部は立入検査の対象です。店舗併用住宅では、店舗部分と住居部分で扱いが分かれます。
記載された違反指摘事項について、改修日又は改修予定日を「改修(計画)報告書」(別記様式第24号)で消防署長に報告します。提出者は建物の所有者・占有者又は管理者で、管轄消防署へ電子申請・窓口・郵送のいずれかで提出します(原則1部、手数料不要)。指摘事項が多い場合は別記様式第24号その2を添付します。実現可能な日付を書き、その日付を守ることが、措置命令へ進ませない最も確実な方法です。
警告を経て措置命令(消防法第5条第1項)に進みます。命令が出ると標識の設置その他の方法で公示され(同条第3項、消防法施行規則第1条により「公報への掲載その他市町村長が定める方法」)、建物又はその場所に標識が設置され得ます(同条第4項)。それでも是正されなければ使用の禁止・停止・制限命令(同法第5条の2第1項)に至り、営業ができなくなります。
措置命令(第5条第1項)違反は、消防法第39条の3の2により2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金(情状により併科)。使用禁止・停止・制限命令(第5条の2第1項)違反は、同法第39条の2の2により3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(情状により併科)です。さらに法人の従業者等が業務に関してこれらの違反行為をした場合、同法第45条第1号により法人に1億円以下の罰金刑が科されます。消防用設備等の設置命令違反は同法第41条第1項第5号(法人は第45条第2号により3,000万円以下の罰金刑)です。
東京都火災予防条例第64条の3を根拠に、消防総監が、防火対象物の設備、管理等の状況が法、令及び条例の規定に違反する場合に、都民が当該防火対象物を利用する際の判断に資するため公表することができる制度です。東京消防庁の運用では、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備又は自動火災報知設備の未設置による設置義務違反などについて、違反内容を関係者に通知してから一定期間経過後もなお同一の違反が認められる場合に、建物名称・所在・違反の内容が東京消防庁のホームページおよび管轄消防署等の窓口で公表されます。平成21年11月の高円寺南の雑居ビル火災を受けた一斉立入検査を契機に創設されました。
命令を受けた日の翌日から起算して30日以内です。消防法第5条の4が、第5条第1項・第5条の2第1項・第5条の3第1項の命令についての審査請求に関する行政不服審査法第18条第1項本文の期間を30日と定めています。行政不服審査法の原則である3か月ではありませんので注意が必要です。なお、立入検査そのものや立入検査結果通知書の交付は行政処分ではないため、審査請求の対象になりません。この審査請求の手続は、特定行政書士が代理することができます(行政書士法第1条の4第1項第2号・同条第2項)。
改修(計画)報告書や、未提出の各種届出書の作成・提出は行政書士の業務です(行政書士法第1条の3第1項、第1条の4第1項第1号)。指摘事項の整理、所轄消防署との事前相談、是正スケジュールの逆算も支援できます。当事務所は特定行政書士ですので、命令に対する審査請求の代理と書類作成までお引き受けできます(同項第2号・同条第2項)。命令の取消訴訟など裁判手続に移行する場合は弁護士の業務ですので、必要に応じて連携します。
立入検査で本当に危ないのは、指摘そのものではなく、改修(計画)報告書を出さないまま時間が過ぎることです。報告書に「いつまでに、誰が、何をするか」を書いて出しておけば、消防署は経過を見てくれます。逆に、何も返さないまま放置すると、警告を経て措置命令へ進み、標識の設置と公表という段階に入ります。
立入検査結果通知書(別記様式第23号)と建物の図面をお送りいただければ、指摘事項の法令根拠の整理、是正方法の検討、改修(計画)報告書(別記様式第24号)の作成、未提出だった届出書のとりまとめ、所轄消防署との事前相談まで、行政書士として一貫してご支援します。命令が出てしまった後の審査請求も、特定行政書士として代理いたします。
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