目次
1. 建物の用途判定とは?
1-1 用途判定が重要な理由
2. 消防法施行令 別表第1に基づく防火対象物の分類
3. 用途判定の具体例
3-1 :オフィスビル内の飲食店
3-2:1階がスーパー、2階以上が住宅の建物
3-2 :ホテルの中にカジノが併設
4. 同一敷地内の複数の建物が存する場合
4-1 原則:用途判定は棟ごとに行う
4-2 例外:主用途への機能的従属がある場合
(1)管理権原が同一であること
(2)利用者が同一または密接に関係していること
(3)利用時間が同じであること
4-3 面積基準による「みなし従属」
5. 同一建物内の用途混在の場合:複合用途防火対象物の考え方
5-1 原則
5-2 例外
(1) 機能従属 管理・利用・時間における従属性の三要件
(2) みなし従属 面積による従属性の認定
5-3 別表に基づく用途別の従属施設例
5-4 一般住宅と政令別表対象物との判定基準
6. 実務上の留意点
7. まとめ
消防法では、防火対象物(火災予防のために規制が適用される建築物等)を用途別に分類し、それぞれの用途に適した防火基準を設定しています。
用途を正しく判定しないと、以下のような問題が発生する可能性があります。
そのため、建築物の所有者や管理者は消防法施行令別表第1を基準として、建物の用途を正確に判定する必要があります。

消防法施行令の別表第1では、防火対象物を用途ごとに分類し、それぞれの防火基準を明確にしています。以下、各用途の具体例を示します。
| 分類(項) | 防火対象物の用途分類(具体例) |
|---|---|
| (1)項 | イ: 劇場、映画館、演芸場又は観覧場ロ: 公会堂又は集会場 |
| (2)項 | イ: キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの ロ: 遊技場又はダンスホール ハ: 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業を営む店舗((1)項イ、(4)項、(5)項イ及び(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているものを除く。)その他これに類するものとして総務省令で定めるもの ニ:カラオケボックスその他遊興のための設備又は物品を個室(これに類する施設を含む。)において客に利用させる役務を提供する業務を営む店舗で総務省令で定めるもの |
| (3)項 | イ: 待合、料理店その他これらに類するものロ: 飲食店 |
| (4)項 | 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場 |
| (5)項 | イ: 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するものロ: 寄宿舎、下宿又は共同住宅 |
| (6)項 | イ: 次に掲げる防火対象物(1) 次のいずれにも該当する病院(火災発生時の延焼を抑制するための消火活動を適切に実施することができる体制を有するものとして総務省令で定めるものを除く。)(i) 診療科名中に特定診療科名(内科、整形外科、リハビリテーション科その他の総務省令で定める診療科名をいう。(2)(i)において同じ。)を有すること。(ii) 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第七条第二項第四号に規定する療養病床又は同項第五号に規定する一般病床を有すること。(2) 次のいずれにも該当する診療所(i) 診療科名中に特定診療科名を有すること。(ii) 四人以上の患者を入院させるための施設を有すること。(3) 病院((1)に掲げるものを除く。)、患者を入院させるための施設を有する診療所((2)に掲げるものを除く。)又は入所施設を有する助産所(4) 患者を入院させるための施設を有しない診療所又は入所施設を有しない助産所ロ:次に掲げる防火対象物(1) 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第一項に規定する要介護状態区分が避難が困難な状態を示すものとして総務省令で定める区分に該当する者(以下「避難が困難な要介護者」という。)を主として入居させるものに限る。)、有料老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。)、介護老人保健施設、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の二第四項に規定する老人短期入所事業を行う施設、同条第五項に規定する小規模多機能型居宅介護事業を行う施設(避難が困難な要介護者を主として宿泊させるものに限る。)、同条第六項に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの(2) 救護施設(3) 乳児院(4) 障害児入所施設(5) 障害者支援施設(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第四条第一項に規定する障害者又は同条第二項に規定する障害児であつて、同条第四項に規定する障害支援区分が避難が困難な状態を示すものとして総務省令で定める区分に該当する者(以下「避難が困難な障害者等」という。)を主として入所させるものに限る。)又は同法第五条第八項に規定する短期入所若しくは同条第十七項に規定する共同生活援助を行う施設(避難が困難な障害者等を主として入所させるものに限る。ハ(5)において「短期入所等施設」という。)ハ: 次に掲げる防火対象物(1) 老人デイサービスセンター、軽費老人ホーム(ロ(1)に掲げるものを除く。)、老人福祉センター、老人介護支援センター、有料老人ホーム(ロ(1)に掲げるものを除く。)、老人福祉法第五条の二第三項に規定する老人デイサービス事業を行う施設、同条第五項に規定する小規模多機能型居宅介護事業を行う施設(ロ(1)に掲げるものを除く。)その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの(2) 更生施設(3) 助産施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童養護施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第七項に規定する一時預かり事業又は同条第九項に規定する家庭的保育事業を行う施設その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの(4) 児童発達支援センター、児童心理治療施設又は児童福祉法第六条の二の二第二項に規定する児童発達支援若しくは同条第三項に規定する放課後等デイサービスを行う施設(児童発達支援センターを除く。)(5) 身体障害者福祉センター、障害者支援施設(ロ(5)に掲げるものを除く。)、地域活動支援センター、福祉ホーム又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第七項に規定する生活介護、同条第八項に規定する短期入所、同条第十二項に規定する自立訓練、同条第十三項に規定する就労移行支援、同条第十四項に規定する就労継続支援若しくは同条第十七項に規定する共同生活援助を行う施設(短期入所等施設を除く。)ニ: 幼稚園又は特別支援学校 |
| (7)項 | 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの |
| (8)項 | 図書館、美術館、博物館その他これらに類するもの |
| (9)項 | イ: 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するものロ: イに掲げる公衆浴場以外の公衆浴場 |
| (10)項 | 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場(旅客の乗降又は待合いの用に供する建築物に限る。) |
| (11)項 | 神社、寺院、教会その他これらに類するもの |
| (12)項 | イ: 工場又は作業場ロ: 映画スタジオ又はテレビスタジオ |
| (13)項 | イ: 自動車車庫又は駐車場ロ: 飛行機又は回転翼航空機の格納庫 |
| (14)項 | 倉庫 |
| (15)項 | 前各項に該当しない事業場(上記1~14項のいずれにも分類されない事業所) |
| (16)項 | イ: 複合用途防火対象物のうち、その一部が(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの ロ: イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物 |
| (16の2)項 | 地下街 |
| (16の3)項 | 建築物の地階((16の2)項に掲げるものの各階を除く。)で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたもの((1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。) |
| (17)項 | 文化財保護法の規定によって重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡若しくは重要な文化財として指定され、又は旧重要美術品等の保存に関する法律の規定によって重要美術品として認定された建造物 |
| (18)項 | 延長50メートル以上のアーケード |
| (19)項 | 市町村長の指定する山林 |
| (20)項 | 総務省令で定める舟車 |
この分類に基づき、それぞれの用途に応じた防火設備や避難計画の策定が求められます。
用途判定は単純に「建物の名称」だけでなく、実際の使用状況や面積割合を考慮して行います。
原則として、同一敷地内に複数の建物(防火対象物)がある場合、それぞれの建物ごとに「政令別表第1」に基づいて用途を判定します。これにより、それぞれの建物に対して必要な防火管理体制や消防設備の設置基準が個別に適用されます。
ただし、用途の性格上、明らかに「主たる用途」に従属している建物・施設であると認められる場合には、用途判定において主たる用途に含めて扱うことができます。これは、以下のような条件に該当する場合です。
建築設備(電気・空調・水道など)の設置・維持・改修等に対して全体的な権限を持っている者が、主用途部分と従属部分で同一である必要があります。
主用途部分の利用時間と、従属的用途部分の利用時間が重なることが求められます。
さらに、以下の2つの要件を満たす場合には、機能的な従属性が明確でなくても「主用途に従属する部分」として扱うことができます。
ただし、政令別表第1の(2)項ニ(カラオケボックス等)、(5)項イ(ホテルなど)、(6)項イ(病院・診療所)など、特定の用途に該当する部分は、この面積要件による「みなし従属」の対象外とされています。
同一の建物内で、政令別表第1の同一「項」内の異なる「号」(イ・ロ・ハなど)が混在する場合には、「複合用途防火対象物」として扱います。この場合、それぞれの用途に応じて必要な防火管理体制・設備を判断しなければなりません。
消防法施行令第1条の2第2項後段では、特定の条件を満たす建物部分を「主たる用途に従属するもの」として、用途を一体として扱うことを認めています。
これらを満たす付帯施設(例:社員食堂、売店、専用駐車場等)は、主用途に含めることができます。
以下の2条件を満たす場合も、従属的な部分として主用途に包含される可能性があります:
ただし、特定の用途(民泊やカラオケボックス等)は除外されます。
以下は、代表的な防火対象物ごとに従属施設と認められる代表例です:
一般住宅とその他の防火対象物が混在する建物においては、以下の条件で用途の区分を決定します。
用途判定では、区画(壁・扉など)の有無は考慮されず、利用実態を重視して判断されます。また、機械室やロビーなどの共用部分は、それぞれの用途面積に応じて按分(割り当て)して用途を定めます。
消防法における用途判定は、建物の防火安全対策を適切に行うために重要な役割を担っています。
「消防法施行令別表第1」は、判定の基礎であり、例外として主たる用途と機能従属の関係性、面積比率による「みなし従属」、複合用途の判定など、実務上は多様なケースがあります。実態に即した判定を行い、適切な防火管理を行うことで、安全で安心な建築物運用につなげていきましょう。