防火管理者の「重複選任」とは?〜無人施設の防火管理に悩む事業者必見!〜

監修:行政書士 萩本昌史|防火管理・消防計画専門サポート

1. はじめに:防火管理者が「いない」[不在」…どうすればいい?

近年、無人営業のジムやレンタルスペース、コインランドリーなど、スタッフが常駐しない事業形態が急増しています。

 

このような施設でも、消防法に基づき「防火管理者」の選任が必要なケースがありますが、

 

「常勤スタッフがいないので、防火管理者を選べない!」

 

というご相談をよくいただきます。

 

今回は、そんなケースで検討される「防火管理者の重複選任」について、東京消防庁の指導方針をもとに、詳しく解説します。

 

2. 防火管理者の「重複選任」とは?

防火管理者の重複選任とは、

 

1人の防火管理者が、複数の防火対象物に対して選任されることを指します。

 

通常は、各事業所ごとに「その場所に勤務する者」を選任するのが原則ですが、やむを得ない事情がある場合には、例外的に1人の防火管理者が複数の建物を管理することが可能です。

3. 東京消防庁が原則として「重複選任」を避ける理由

 

消防法施行令第3条では、防火管理者は、
「防火管理上必要な業務を適切に遂行できる、管理的または監督的立場にある者」
と定められています。

 

そのため、重複選任には次のようなリスクがあります:

リスク 内容

管理困難性

管理物件が多数になると、日常的な巡回・点検が行き届かない

初期対応の不在

その場所にいないため、火災時の初動が遅れる

実態と乖離

無人店舗に「名義だけの管理者」では消防計画が形骸化する


このような背景から、東京消防庁は「原則、各事業所に勤務する者を防火管理者として選任すること」を強く求めています。

4. 例外的に認められる「重複選任」の具体例

では、どのような場合に例外が認められるのでしょうか?

東京消防庁では、以下のような8つのケースで、重複選任を「例外的に可」としています。

1. 複数の建物を管理する貸ビル業者等

 

不動産会社などが複数の店舗・ビルを管理する場合、管理拠点が都内にあることが条件。

 

2. 公共機関や鉄道会社の施設

 

同一団体が一体的に管理している庁舎や駅舎など。

 

3. 外部選任者が別の物件も担当する場合

 

4. 同一団地内の共同住宅(外部選任)

 

5. 賃貸用の共同住宅のオーナー

 

6. 自宅と勤務先で相互に選任される場合

 

7. 公営住宅・社宅で防災上の支障がない構造

 

8. 社会通念上、一体的な管理が合理的な場合

 

(例:近接地に複数の無人店舗を持つ企業)

 

5. 重複選任する場合の「必須条件」

 

重複選任が認められる場合でも、以下の条件を満たす必要があります:

① 防火管理者は「甲種防火管理者」であること

 

→ 小規模施設であっても、乙種では認められません。

 

② 各物件ごとに「防火担当責任者」を置くこと

 

→ 巡回スタッフ・パート・清掃員などが該当します。

 

③ 業務内容と報告体制を明文化し、消防計画に明記すること

 

消防計画には、次のような内容を記載します:

 

防火担当責任者の氏名・役割

 

点検の頻度と方法(例:週2回の巡回)

 

防火管理者への報告方法(例:月1回メールで点検報告)

 

6. 実務アドバイス:無人施設・パート巡回体制で重複選任するには?

 

例えば、「パートスタッフが週1回巡回する無人レンタルスペース」の場合、以下のように体制を組みます。

項目 内容

防火管理者

甲種有資格者(本社勤務の管理職など)

防火担当責任者

巡回清掃を行うパートスタッフ

点検項目

火気、火元、消火器、避難経路、火気設備の目視点検点

検頻度

週1回

報告方法

点検シートをLINE・メール等で送信

消防計画への記載

上記体制・役割分担を明記

7. 重要:事前に「消防署へ相談」が必須!

①重複選任の可否や計画内容については、必ず所轄の消防署と事前に相談しましょう。

②担当の署が複数にまたがる場合 → 東京消防庁「防火管理課」へ

③管轄署が明確な場合 → 直接、その署の予防課へ

相談先:東京消防庁 予防部 防火管理課 指導係
☎️ 03-3212-2111(内線5127)

8. まとめ:重複選任は「最後の手段」

 

防火管理者の重複選任は、制度上可能ではありますが、

 

「あくまで例外」であり、正しく運用しないと意味をなしません。

 

特に、無人施設においては「名義だけ」の防火管理者にならないよう、

 

①従業員との連携体制の構築

 

②消防計画の整備

 

③消防署との事前協議

 

が重要です。

 

9. 防火管理体制のご相談はお任せください

 

当事務所では、無人店舗・などの重複選任対応型の消防計画作成を手がけております。

 

✅ 無人営業施設の消防対応に困っている

 

✅ パートしかいないが、管理者を選びたい

 

✅ 消防署とのやり取りが不安

 

という方は、お気軽にご相談ください。

 

行政書士 萩本昌史

 

防火管理のプロとして、現場に即した「使える消防計画」をご提案します!


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