「新しくテナントを借りてお店を始めるけれど、防火管理者は必要なのか」「自社ビルに防火管理者を置く基準が分からない」と悩む方は少なくありません。
結論からいうと、防火管理者が必要かどうかは、建物の用途区分と収容人員で決まります。消防法では、一定の防火対象物について、管理権原者に防火管理者の選任を義務付けており、防火管理者は消防計画の作成、訓練、火気管理、避難施設の維持管理などを担います。
この記事では、防火管理者が必要となる建物の基準、収容人員の考え方、資格や役割、さらにテナントビルで問題になりやすい統括防火管理者まで、実務目線で整理して解説します。

防火管理者の選任義務の根拠は消防法第8条で、一定の防火対象物について、その管理について権原を有する者が防火管理者を定め、防火管理上必要な業務を行わせる仕組みになっています。選任後は、防火・防災管理者選任(解任)届出が必要であり、あわせて防火管理者が作成した消防計画の届出も必要です。
この制度は、火災を未然に防ぎ、万一火災が発生したときでも被害を最小化するための「ソフト面」の中核です。建物の安全を守るうえで、防火管理者は重要な役割を担います。
防火管理者の要否は、単に「広い建物かどうか」では決まりません。消防法令では、防火対象物を用途で区分し、その用途ごとに収容人員の基準を設けています。建物の危険性や利用者の避難困難性に応じて、規制の厳しさが変わるのが特徴です。
防火管理者の選任基準は、一般に次のように整理できます。
特定防火対象物には、飲食店、物品販売店舗、旅館・ホテル、遊技場など、不特定多数の者が出入りする用途が含まれます。これに対し、事務所、共同住宅、学校、図書館、工場、倉庫などは、主として関係者が利用する非特定防火対象物として扱われます。
実務では、まず次の3点を確認します。
この3点を整理しないまま判断すると、防火管理者の選任要否や統括防火管理の要否を誤りやすくなります。
実務で最も誤解が多いのが、収容人員の考え方です。収容人員は「今そこにいる人数」ではなく、用途ごとに定められた算定方法によって求めます。
そのため、「うちの従業員は5人しかいないから大丈夫」とは限りません。店舗部分の客席、売場面積、従業者数、居住者数など、用途に応じた数え方をするため、実務では平面図や面積表を確認しながら判断することが多くなります。
複合用途の建物では、事務所、店舗、共同住宅など複数の用途が混在するため、収容人員や防火管理体制の見方が複雑になります。特にテナントビルでは、自分の区画だけではなく、建物全体の用途構成や各階の利用状況、共用部の管理状況まで確認する必要があります。
テナント単位の感覚だけで判断すると、建物全体としては防火管理者や統括防火管理者が必要であるにもかかわらず、見落としてしまうことがあります。
老人ホーム、障害者支援施設など、自力避難が困難な利用者を想定する施設は、通常の特定用途より厳しい扱いです。こうした施設は、収容人員10人以上で防火管理者の選任が必要になります。
このため、「小規模だから大丈夫」と考えるのは危険です。利用者の属性によって、面積よりも先に防火管理体制の整備が必要になる場合があります。
雑居ビルや複合用途ビルでは、一部に飲食店や診療所などの特定用途が入るだけで、建物全体の防火管理の見え方が変わることがあります。特に、管理権原が分かれている建物では、個別テナントごとの対応だけでなく、建物全体の統括体制が必要になるケースがあります。
用途認定の細かな当てはめ、複合用途の扱い、実際の収容人員の見方、届出書類の添付範囲などは、全国一律に一言で断定しにくい部分があります。法令の根拠は共通でも、実務では所轄消防署が図面・現況・使用形態を見て判断するため、迷う事案では事前相談が重要です。
防火管理者を選任した場合は、管理権原者が防火・防災管理者選任(解任)届出を行います。また、防火管理者は消防計画を作成し、消防計画作成(変更)届出を行います。
実務では、防火管理者の選任だけで満足してしまい、消防計画の作成や届出が後回しになることがあります。しかし、防火管理は継続的な運用が前提ですので、届出だけでなく、実際に運用できる計画になっているかが重要です。
防火管理者には一定の資格要件が必要です。一般には、建物の規模や用途に応じて、甲種防火管理講習または乙種防火管理講習の修了者などが選任対象になります。
実務では、単に講習修了証があるだけでなく、その建物で必要な区分に合う資格かどうかを確認することが大切です。
複数のテナントが入る建物では、各テナントが別々に防火管理をしているだけでは、共用部や全体避難の整合が取れません。そのため、一定の要件を満たす建物では、各テナントの防火管理者をまとめる統括防火管理者の選任が必要になります。
特に、高層建築物や、一定規模以上の特定防火対象物・非特定防火対象物で、管理権原が分かれている建物では、統括防火管理者と全体についての消防計画が問題になります。テナント単位の判断にとどまらず、建物全体の防火管理体制を確認する必要があります。
これは典型的な誤解です。収容人員は、用途ごとの法令上の算定方法で求めるため、従業員数だけでは決まりません。店舗なら客席や売場、共同住宅なら居住者、複合用途なら各用途部分の合算が問題になります。
自社の占有部分が小さくても、建物全体で基準人数に達することがあります。また、(6)項ロのように10人以上で義務が生じる用途もあるため、「小規模だから不要」とは一概に言えません。
防火管理者は、名前だけ置けばよい制度ではありません。消防計画の作成、消火・通報・避難訓練、火気管理、避難施設の維持管理、消防用設備等の点検・整備の実施体制など、継続的な業務が求められます。
防火管理者が必要かどうかは、用途区分と収容人員で判断するのが基本です。
また、収容人員は感覚で決めるのではなく、法令所定の方法で算定する必要があります。テナントビルや複合用途建物では、建物全体の見方が必要になることもあります。
さらに、複数テナントが入る建物では、統括防火管理者や全体についての消防計画が必要になる場合があります。
自社の建物やテナントが該当するか迷う場合は、用途、面積、階数、収容人員、管理権原の状況を整理したうえで、所轄消防署の予防課に相談するのが確実です。判断を誤ると、選任漏れや届出漏れにつながるため、早めの確認をおすすめします。
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