防災管理が必要な建物とは|対象規模・防災管理者・届出・罰則を条文で解説

防災管理が必要な建物とは|対象規模・防災管理者・届出・罰則を条文で解説

防災管理が必要な建物を、消防法第36条と消防法施行令第46条(=第4条の2の4)の条文から判定します。地階を除く階数11以上で1万㎡以上、5〜10で2万㎡以上、4以下で5万㎡以上、地下街は1,000㎡以上が対象です。防災管理者は防火管理者と同一人でなければなりません。届出・防災管理点検・罰則までを特定行政書士が解説します。

この記事の結論
防災管理とは、地震と特殊災害(毒性物質・生物剤・放射性物質の発散等)による被害を軽減するための制度です。火災を対象とする防火管理とは別の制度で、根拠は消防法第36条です。
防災管理が必要な建物は、消防法施行令第46条により同令第4条の2の4の防火対象物と定められています。つまり防災管理対象物=自衛消防組織の設置義務対象物で、範囲は完全に一致します。
規模の基準は、地階を除く階数が11以上で延べ面積1万㎡以上、5~10で2万㎡以上、4以下で5万㎡以上、および地下街で延べ面積1,000㎡以上です。
防災管理者は、防火管理者と同一の者でなければなりません(消防法第36条第2項)。防火管理業務も防災管理者に行わせる、と条文で定められているためです。
防災管理者選任(解任)届出を怠ると、消防法第44条第8号により30万円以下の罰金または拘留の対象となります。防災管理点検結果の未報告・虚偽報告は同条第11号で、こちらは法人にも罰金が科されます(第45条第3号)。


「うちのビルは防災管理者が必要なのか」「防火管理者を置いているのに、さらに防災管理者も要ると言われた」。大規模建物の管理を担当されている方から、こうしたご相談をよくいただきます。


防災管理制度は、平成19年の消防法改正で創設され、平成21年6月1日に施行された比較的新しい制度です。防火管理制度と名前が似ているため混同されやすく、対象範囲・資格・届出・罰則のいずれについても誤った説明が流通しています。


この記事では、消防法防火管理を専門とする特定行政書士が、防災管理が必要な建物の判定基準を消防法・消防法施行令・消防法施行規則の条文そのものに当たって整理し、防災管理者の資格、届出、点検報告、罰則までを一貫して解説します。記載はすべて条文・東京消防庁の公表資料に基づいています。



防災管理制度とは|火災以外の災害に備える制度


防災管理とは、地震その他の火災以外の災害による被害を軽減するため、大規模な防火対象物の管理権原者に対し、防災管理者の選任、防災管理に係る消防計画の作成・届出、避難訓練の実施などを義務付ける制度です。根拠は消防法第36条で、防火管理に関する第8条から第8条の2の3までの規定を、火災以外の災害について読み替えて準用する構造をとっています。


項目 内容
根拠条文 消防法第36条第1項(第8条〜第8条の2の3を読み替えて準用)
対象となる災害 地震/毒性物質の発散その他総務省令で定める原因による特殊な災害(消防法施行令第45条)
対象となる建物 消防法施行令第46条(=同令第4条の2の4の防火対象物)
義務を負う者 管理権原者
実際に業務を行う者 管理権原者が選任した防災管理者(=防火管理者と同一人)
届出先 所轄の消防長または消防署長
施行日 平成21年6月1日(自衛消防組織の設置義務と同時施行)


対象となる「火災以外の災害」は地震と特殊災害の2つ


消防法施行令第45条は、防災管理を要する災害を次の2つに限定しています。

  • 地震(第1号)
  • 毒性物質の発散その他の総務省令で定める原因により生ずる特殊な災害(第2号)

第2号の「総務省令で定める原因」は、消防法施行規則第51条の3により、毒性物質またはこれと同等の毒性を有する物質の発散、生物剤・毒素の発散、放射性物質または放射線の異常な水準の放出、およびこれらのおそれがある事故と定められています。いわゆるNBC災害(核・生物・化学災害)を想定した規定です。


ここを誤解しないでください
防災管理の対象災害に風水害・火山災害・テロ一般は含まれません。条文上は地震と特殊災害の2つに限定されています。「防災」という言葉の一般的な語感から範囲を広く説明している解説が見受けられますが、法令上の防災管理はこの2類型です。



防火管理制度との違い


防火管理と防災管理は、目的も対象範囲も異なる別制度です。ただし現場では一体的に運用されます。


比較項目 防火管理 防災管理
根拠 消防法第8条 消防法第36条
対象災害 火災 地震・特殊災害
対象建物の決め方 用途区分と収容人員(30人/50人/10人) 用途区分と階数・延べ面積
選任する者 防火管理者(甲種・乙種) 防災管理者(甲種防火+防災の両資格)
訓練 消火・通報・避難(特定防火対象物は消火・避難を年2回以上) 避難訓練を年1回以上(消防法施行規則第51条の8第3項)
点検報告 防火対象物点検(防火対象物点検資格者) 防災管理点検(防災管理点検資格者)

防火管理者の選任基準そのものについては、防火管理者の選任の必要な建物と実務フローで詳しく解説しています。



防災管理が必要な建物|3つの判定パターン


防災管理が必要な建物は、消防法施行令第46条が「第4条の2の4の防火対象物とする」と定めています。第4条の2の4は自衛消防組織の設置を要する防火対象物を定めた条文ですから、防災管理対象物と自衛消防組織設置対象物は完全に同一の範囲です。ここを押さえておくと、判定も届出の段取りも一気に整理できます。


大前提:まず防火管理義務対象物であること
消防法施行令第4条の2の4は「法第8条第1項の防火対象物のうち、次に掲げるもの」と規定しています。つまり防火管理者の選任義務がある建物であることが前提です。東京消防庁も「建築物その他の工作物(防火管理が義務となる対象物に限る。)」と説明しています。



① 単一用途の建物|対象用途に該当し、かつ規模基準を満たすもの


消防法施行令第4条の2の4第1号は、対象用途に該当する防火対象物のうち、次のいずれかに該当するものを対象としています。


地階を除く階数 延べ面積 条文
11以上 1万㎡以上 第1号イ
5以上10以下 2万㎡以上 第1号ロ
4以下 5万㎡以上 第1号ハ

「地階を除く階数」ですから、地下階は階数に算入しません。一方、延べ面積には地階部分も含めて算入します。この違いを取り違えると判定を誤ります。



対象用途の一覧(消防法施行令別表第一)


条文上の対象用途は「別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項から(十二)項まで、(十三)項イ、(十五)項及び(十七)項」です。具体的には次のとおりです。


別表第一の項 用途(条文の表現と具体例)
(一)項 イ 劇場、映画館、演芸場、観覧場/ロ 公会堂、集会場
(二)項 キャバレー、ナイトクラブ、遊技場、ダンスホール、性風俗関連特殊営業店舗、カラオケボックス等
(三)項 イ 待合、料理店/ロ 飲食店
(四)項 百貨店、マーケットその他の物品販売店舗、展示場
(五)項イのみ 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
(六)項 イ 病院、診療所、助産所/ロ 避難が困難な要介護者等の入所施設/ハ 老人デイサービスセンター、保育所等/ニ 幼稚園、特別支援学校
(七)項 小学校・中学校・高等学校・大学・専修学校・各種学校等
(八)項 図書館、博物館、美術館等
(九)項 イ 蒸気浴場・熱気浴場等の公衆浴場/ロ その他の公衆浴場
(十)項 車両の停車場、船舶・航空機の発着場(旅客の乗降・待合いの用に供する建築物に限る)
(十一)項 神社、寺院、教会等
(十二)項 イ 工場、作業場/ロ 映画スタジオ、テレビスタジオ
(十三)項イのみ 自動車車庫、駐車場
(十五)項 前各項に該当しない事業場(一般的なオフィスビルはここ)
(十七)項 重要文化財等に指定・認定された建造物

対象用途に含まれないもの(要注意)
次の用途は、条文の列挙から外れているため対象用途ではありません。

  • (五)項ロ:寄宿舎、下宿、共同住宅(マンション・社員寮)
  • (十三)項ロ:飛行機・回転翼航空機の格納庫
  • (十四)項:倉庫(物流施設)
  • (十六の三)項:準地下街
  • (十八)項アーケード、(十九)項山林、(二十)項舟車

特に、(九)項は公衆浴場であって共同住宅ではありません。大規模な共同住宅や大規模物流倉庫は、それ単体では防災管理の対象になりません。



② 複合用途防火対象物(別表第一(十六)項)の場合


複合用途防火対象物では、判定が二段構えになります。建物全体の階数と、対象用途部分がどの階に存するかの両方を見て、対象用途部分の床面積の合計で判断します(消防法施行令第4条の2の4第2号)。


建物の階数(地階を除く) 対象用途部分の所在 対象用途部分の床面積の合計
11以上 全部または一部が11階以上の階に存する 1万㎡以上
11以上 全部が10階以下で、全部または一部が5〜10階に存する 2万㎡以上
11以上 全部が4階以下に存する 5万㎡以上
5以上10以下 全部または一部が5階以上の階に存する 2万㎡以上
5以上10以下 全部が4階以下に存する 5万㎡以上
4以下 (区分の定めなし) 5万㎡以上

ここで面積に算入するのは対象用途部分の床面積であって、建物全体の延べ面積ではありません。たとえば1階から3階が駐車場((十三)項イ・対象用途)、4階以上が共同住宅((五)項ロ・対象外)という建物では、共同住宅部分の面積は算入しません。


複合用途防火対象物の考え方そのものについては、複合防火対象物とは?種類と防火管理上の留意点を徹底解説および用途判定のポイント:主たる用途・従属的用途・複合用途防火対象物の考え方もあわせてご覧ください。



③ 地下街(別表第一(十六の二)項)の場合


地下街は、延べ面積1,000㎡以上で防災管理の対象となります(消防法施行令第4条の2の4第3号)。階数の要件はありません。


「(十六の二)項=地下街」です
別表第一(十六の二)項は地下街のみを指します。地下鉄の駅は(十)項(車両の停車場)、地下駐車場は(十三)項イ、物流倉庫は(十四)項であって、(十六の二)項ではありません。また、建築物の地階が連続して地下道に面する準地下街は(十六の三)項で、防災管理の対象用途には含まれていません。



判定の手順


  1. その建物が消防法第8条第1項の防火対象物(防火管理者の選任義務がある建物)かを確認する
  2. 用途を別表第一に当てはめ、対象用途に該当するかを確認する(複合用途なら(十六)項として第2号で判定)
  3. 地階を除く階数を数える
  4. 単一用途なら延べ面積、複合用途なら対象用途部分の床面積の合計を算出する
  5. 上記の表に当てはめる
  6. 該当するなら、防災管理者の選任義務と自衛消防組織の設置義務が同時に発生する

用途の当てはめ自体に迷う場合は、消防法における建物の用途判定とは?消防法施行令 別表第1に基づく建物の用途について解説で判定の考え方を確認できます。



防災管理者|資格・選任・防火管理者との関係



防災管理者は防火管理者と同一の者でなければならない


これは実務上もっとも重要な論点です。消防法第36条第2項は次のように定めています。


前項の建築物その他の工作物のうち第八条第一項の防火対象物であるものにあつては、当該建築物その他の工作物の管理について権原を有する者は、同項の規定にかかわらず、前項において読み替えて準用する同条第一項の防災管理者に、第八条第一項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務を行わせなければならない。


つまり、防災管理対象物では防火管理業務も防災管理者が行うことになるため、結果として防災管理者と防火管理者は同一人となります。東京消防庁も「防火管理業務と一体的に業務を行う必要があることから、防災管理者には、防火管理者と同一の者を選任します」と明示しています。


同様に、管理権原が分かれている場合の統括防災管理者と統括防火管理者も同一人となります(消防法第36条第3項)。



防災管理者の資格(消防法施行令第47条)


防災管理者は、防災管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的または監督的な地位にある者で、次のいずれかに該当する者です。


号 資格要件
第1号 甲種防火管理講習の修了者等(令第3条第1項第1号イまたはロ)で、防災管理講習の課程を修了した者(もっとも一般的なルート)
第2号 令第3条第1項第1号ロに掲げる者で、1年以上の防災管理の実務経験を有する者
第3号 市町村の消防職員で、管理的または監督的な職に1年以上あった者
第4号 上記に準ずる者で、防災管理者として必要な学識経験を有すると認められる者(規則第51条の5)

防災管理新規講習の時間はおおむね4時間30分、甲種防火管理新規講習と併せて実施する場合はおおむね12時間です(消防法施行規則第51条の7)。実務では、この併催講習(甲種防火・防災管理新規講習)を受講するのが通例です。


再講習にも注意
防災管理についても防災管理再講習の制度があります(消防法施行規則第51条の7第4項、おおむね2時間)。甲種防火管理再講習と併せて実施する場合はおおむね3時間です。防災管理点検の際、防災管理維持台帳に防災管理再講習の修了証の写しを編冊することが求められています(規則第51条の12第1項第1号)。



防災管理者の責務(消防法施行令第48条)


  • 防災管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長または消防署長に届け出る(第1項)
  • 消防計画に基づき、避難の訓練の実施その他防災管理上必要な業務を行う(第2項)
  • 必要に応じて管理権原者の指示を求め、誠実に職務を遂行する(第3項)

避難訓練は年1回以上実施しなければなりません(消防法施行規則第51条の8第3項)。この訓練は地震および特殊災害を想定した訓練であり、防火管理に基づく消火・通報・避難訓練とは目的が異なります。



防災管理に係る消防計画に定める事項(消防法施行規則第51条の8)


防災管理に係る消防計画は、防火管理に係る消防計画とは別に定めるべき事項が法定されています。大きく3つの柱で構成されます。


区分 定めるべき主な事項
基本的事項
(第1号)
自衛消防の組織/避難通路・避難口等の避難施設の維持管理と案内/定員の遵守その他収容人員の適正化/防災管理上必要な教育/避難訓練その他の訓練の定期的な実施/関係機関との連絡/訓練結果を踏まえた消防計画の検証と見直し
地震対策
(第2号)
地震発生時の被害想定と対策/地震による被害軽減のための自主検査/必要な設備・資機材の点検整備/家具・什器等の落下・転倒・移動防止措置/通報連絡、避難誘導、救出、救護等の応急措置
特殊災害対策
(第3号)
毒性物質の発散等の災害発生時における通報連絡および避難誘導

消防計画そのものの作り方は消防計画の作成手順とポイントを徹底解説、変更が必要になる場面は消防計画の変更が必要なケースとは?詳しく解説!で解説しています。



統括防災管理者が必要になる場合


防災管理対象物のうち管理について権原が分かれているものでは、管理権原者が協議して統括防災管理者を定めなければなりません(消防法第36条第1項において読み替えて準用する第8条の2第1項)。統括防災管理者は次の業務を行います。

  • 建物全体についての防災管理に係る消防計画の作成・届出(消防法施行令第48条の3第1項)
  • その計画に基づく避難の訓練の実施
  • 廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理(同条第2項)

統括防火管理者制度そのものについては、統括防火管理者と協議会の設置|複合建物における防火管理の要点を行政書士が徹底解説で詳しく扱っています。



防災管理対象物は自衛消防組織の設置義務対象でもある


前述のとおり、消防法施行令第46条は防災管理対象物を「第4条の2の4の防火対象物」と定義しています。第4条の2の4は自衛消防組織の設置対象を定めた条文ですから、防災管理者を選任すべき建物は、必ず自衛消防組織も設置しなければならない建物です。両者はセットで検討します。


項目 内容
根拠 消防法第8条の2の5、消防法施行令第4条の2の4・第4条の2の5・第4条の2の8
設置義務者 管理権原者。複数あるときは共同して設置(令第4条の2の5第2項)
編成 統括管理者と自衛消防要員。初期消火・通報連絡・避難誘導・応急救護の各班におおむね2名以上
統括管理者の資格 自衛消防組織の業務に関する講習(自衛消防業務講習)の修了者等(令第4条の2の8第3項)
届出 自衛消防組織設置(変更)届出書を遅滞なく所轄消防長または消防署長へ(法第8条の2の5第2項)

なお、複合用途防火対象物(別表第一(十六)項)については、自衛消防組織を置く義務を負うのは対象用途に供される部分の管理権原者に限られます(消防法施行令第4条の2の5第1項かっこ書き)。防災管理者の選任義務との範囲の違いに注意してください。


東京消防庁管内では、統括管理者の資格取得のための自衛消防業務新規講習が、防災センター技術講習と併せて実施されています。自衛消防業務再講習は、新規(再)講習を修了した日以後における最初の4月1日から5年以内ごとに受講します。



防災管理点検報告制度|1年に1回の報告義務


防災管理対象物の管理権原者は、防災管理点検資格者に点検させ、その結果を所轄の消防長または消防署長に報告しなければなりません(消防法第36条第1項において読み替えて準用する第8条の2の2第1項)。


項目 内容
報告義務者 管理権原者(点検業者ではありません)
点検を実施する者 防災管理点検資格者(消防法施行規則第51条の12第3項)
周期 1年に1回(規則第51条の12第2項が準用する第4条の2の4第1項)
記録の保存 防災管理維持台帳に記録し保存(規則第51条の12第1項)
特例認定 消防長等の検査で基準適合と認められれば3年間点検・報告義務が免除(法第36条第1項において準用する第8条の2の3、規則第51条の16)

報告義務は点検業者に移転しません
条文の構造は「管理について権原を有する者は……点検させ、その結果を……報告しなければならない」です。点検を外部に委託しても、報告義務を負うのは建物側の管理権原者であり、未報告の罰則を受けるのも管理権原者です。


防火対象物点検も義務付けられている建物では、防火対象物点検と防災管理点検を併せて実施し、いずれも基準に適合した場合に限り、点検済みである旨の表示を付すことができます(消防法第36条第4項)。点検制度全般は防火対象物点検とは|対象建物・設備点検との違い・特例認定を解説をご覧ください。



届出・報告の一覧と期限


届出・報告 根拠 義務者 時期
防火・防災管理者選任(解任)届出書 消防法第36条第1項において準用する第8条第2項、規則第51条の9 管理権原者 選任・解任後遅滞なく
防災管理に係る消防計画作成(変更)届出書 消防法施行令第48条第1項、規則第51条の8第1項 防災管理者 作成・変更したとき
統括防災管理者選任(解任)届出書 消防法第36条第1項において準用する第8条の2第4項、規則第51条の11の3 管理権原者(協議) 選任・解任後遅滞なく
全体についての防災管理に係る消防計画作成(変更)届出書 消防法施行令第48条の3第1項、規則第51条の11の2 統括防災管理者 作成・変更したとき
自衛消防組織設置(変更)届出書 消防法第8条の2の5第2項 管理権原者 設置・変更後遅滞なく
防災管理点検結果報告書 消防法第36条第1項において準用する第8条の2の2第1項 管理権原者 1年に1回

東京消防庁管内では、防火管理者と防災管理者の選任届は「防火・防災管理者選任(解任)届出書」という共通様式で提出します。防火管理者と防災管理者が同一人であることが前提の様式設計になっています。



罰則|「届出義務違反」と「命令違反」は別物です


防災管理に関する罰則は、届出を怠った場合と消防長・消防署長の命令に従わなかった場合とで、適用条文も刑の重さもまったく異なります。ここを一括りにした説明が多いので、条文ごとに整理します。


違反の内容 根拠 罰則 法人の両罰
防災管理者の選任・解任の届出を怠った 第36条第1項において準用する第8条第2項 第44条第8号:30万円以下の罰金または拘留 なし
防災管理点検の結果を報告しない・虚偽報告 第36条第1項において準用する第8条の2の2第1項 第44条第11号:30万円以下の罰金または拘留 あり(第45条第3号)
防災管理者選任命令に従わなかった 第36条第1項において準用する第8条第3項 第42条第1項第1号:6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 あり(第45条第3号)
防災管理業務適正執行命令に従わなかった 第36条第1項において準用する第8条第4項 第41条第1項第2号:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 あり(第45条第3号)
点検済表示に関する規制違反・除去命令違反 第36条第1項において準用する第8条の2の2第3項・第4項 第44条第3号・第17号:30万円以下の罰金または拘留 第3号はあり
統括防災管理者の選任命令・適正執行命令に従わなかった 第36条第1項において準用する第8条の2第5項・第6項 直接の罰則規定なし(第5条の2第1項の使用禁止・停止・制限命令の対象) —
自衛消防組織の設置命令に従わなかった 第8条の2の5第3項 直接の罰則規定なし(第5条第3項・第4項を準用し、公示等の対象) —

「懲役」ではなく「拘禁刑」です
令和7年6月1日施行の刑法等の一部改正により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。消防法の罰則も同様です。「懲役」と記載している解説は、改正前の記述です。



届出書類は誰が作成できるか|行政書士法の制限


防災管理に関する届出書・報告書は、いずれも消防長または消防署長に提出する官公署提出書類です。したがって、報酬を得て業として他人に代わって作成できるのは、原則として行政書士(行政書士法人を含む)に限られます(行政書士法第1条の3、第19条第1項)。


令和8年1月1日施行の改正行政書士法(令和7年法律第65号)は、第19条第1項を「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として……」と改め、この業務制限を条文上明確化しました。あわせて第23条の3の両罰規定が新設され、違反行為をした法人にも100万円以下の罰金が科されます。違反者本人は第21条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。


資格ごとの守備範囲を整理すると

  • 防災管理者…防災管理に係る消防計画を自らの職務として作成する(消防法施行令第48条第1項)。自分で作成し届け出ることは当然に適法です
  • 防災管理点検資格者…点検を実施し、点検票等の点検結果の記録を作成する
  • 行政書士…管理権原者・防災管理者の依頼を受けて、報酬を得て官公署提出書類を作成し、自ら作成した書類の提出手続を代理する(行政書士法第1条の3、第1条の4第1項第1号)

点検業者が作成できるのは点検結果の記録までです。消防署に提出する報告書の鑑は管理権原者名義の官公署提出書類ですから、報酬を得て業として代わりに作成すれば行政書士法第19条第1項に違反します。


この論点は、消防署への提出書類作成と行政書士法違反の防止についてで、総務省消防庁予防課長通知(令和7年2月25日付 消防予第75号ほか)を含めて詳しく解説しています。



当事務所の報酬額(防災管理関係)

報酬額は 報酬額表 をご覧ください。
防火・防災管理者選任(解任)届出書、消防計画作成(変更)届出書、統括防火(防災)管理者選任届出書、自衛消防組織設置(変更)届出書、防災管理点検結果報告書など、防災管理に関連する届出の報酬額を業務ごとに掲載しています(すべて税抜)。金額に幅があるのは、建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって作業量が変わるためです。防災管理対象物は大規模建物ですので、消防計画は上限に近い区分となるのが通例です。
実費は別途申し受けます。正式なお見積りは、建物の情報を確認させていただいたうえでご提示いたします。初回のご相談は無料です。



よくある質問



防災管理者と防火管理者は別の人を選任できますか。

できません。消防法第36条第2項は、防災管理対象物の管理権原者は防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務を防災管理者に行わせなければならないと定めています。したがって防災管理者と防火管理者は同一人となり、東京消防庁も「防災管理者には、防火管理者と同一の者を選任します」としています。管理権原が分かれている建物の統括防災管理者と統括防火管理者も同様に同一人です(同条第3項)。



大規模なマンションですが、防災管理者は必要ですか。

原則として不要です。共同住宅は消防法施行令別表第一(五)項ロに該当しますが、防災管理の対象用途は「(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項から(十二)項まで、(十三)項イ、(十五)項及び(十七)項」であり、(五)項ロは列挙から外れています(消防法施行令第4条の2の4第1号)。ただし、共同住宅と店舗・事務所等が混在する複合用途防火対象物((十六)項)の場合は、店舗・事務所部分が対象用途となるため、その部分の床面積の合計で判定します。共同住宅部分の面積は算入しません。



延べ面積5万㎡の大規模物流倉庫は防災管理の対象になりますか。

倉庫単体であれば対象になりません。倉庫は消防法施行令別表第一(十四)項ですが、防災管理の対象用途に(十四)項は含まれていません。ただし、倉庫に事務所部分((十五)項)が併設され複合用途防火対象物と判定される場合は、事務所部分等の対象用途部分の床面積の合計で判定することになります。用途判定そのものが結論を左右しますので、平面図と使用実態をもとに所轄消防署に確認することをおすすめします。



地階を含めて12階建てですが、地上は10階です。どちらで判定しますか。

地上10階として判定します。消防法施行令第4条の2の4は「地階を除く階数」と規定しているため、地下階は階数に算入しません。この場合は「5以上10以下」に当たり、延べ面積2万㎡以上で対象となります。ただし延べ面積には地階部分の床面積も含めて算入します。階数の数え方と面積の数え方でルールが異なる点にご注意ください。



防災管理者になるにはどの講習を受ければよいですか。

もっとも一般的なのは、甲種防火管理講習と防災管理講習の両方を修了するルートです(消防法施行令第47条第1項第1号)。両講習を併せて実施する場合の講習時間はおおむね12時間です(消防法施行規則第51条の7第3項)。このほか、令第3条第1項第1号ロに掲げる者で1年以上の防災管理の実務経験を有する者、市町村の消防職員で管理的・監督的な職に1年以上あった者なども資格を有します。いずれの場合も、その建物で管理的または監督的な地位にあることが必要です。



防災管理の避難訓練は年に何回必要ですか。

年1回以上です(消防法施行規則第51条の8第3項)。これは地震および特殊災害を想定した避難訓練であり、防火管理に基づく消火・通報・避難訓練とは別に実施します。特定防火対象物では防火管理に係る消火訓練・避難訓練が年2回以上必要ですので、防災管理対象物ではこれに加えて防災管理の避難訓練を年1回以上行うことになります。訓練の実施結果は防災管理維持台帳に記録し、消防計画の内容の検証と見直しに反映させることが求められています(規則第51条の8第1項第1号ト)。



防災管理点検はどのくらいの頻度で必要ですか。免除される制度はありますか。

1年に1回、防災管理点検資格者に点検させ、結果を所轄の消防長または消防署長に報告します(消防法第36条第1項において準用する第8条の2の2第1項、消防法施行規則第51条の12第2項が準用する第4条の2の4第1項)。免除制度としては特例認定があり、消防長または消防署長の検査を受けて基準に適合していると認められると、認定の日から3年間は点検・報告義務が免除されます(同項において準用する第8条の2の3、規則第51条の16)。



防災管理者の選任届を出し忘れた場合、どのような罰則がありますか。

消防法第44条第8号により、30万円以下の罰金または拘留の対象となります。同号は「第八条第二項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)……の規定による届出を怠つた者」と規定しており、防災管理者の選任・解任の届出義務違反が明文で含まれています。なお、この第8号については法人に対する両罰規定(第45条)の適用はありません。これに対し、防災管理点検結果の未報告・虚偽報告(第44条第11号)は第45条第3号により法人にも罰金が科されます。



防災管理者を選任すると、自衛消防組織も必ず必要になりますか。

必要になります。消防法施行令第46条が、防災管理を要する建築物その他の工作物を「第4条の2の4の防火対象物」=自衛消防組織の設置を要する防火対象物と定義しているためです。両制度は対象範囲が完全に一致しており、平成21年6月1日に同時施行されました。管理権原者は、統括管理者と自衛消防要員からなる自衛消防組織を置き、自衛消防組織設置(変更)届出書を遅滞なく所轄消防長または消防署長に届け出ます(消防法第8条の2の5第2項)。管理権原者が複数あるときは共同して設置します(令第4条の2の5第2項)。



防災管理の届出書類を管理会社や点検業者に作ってもらってもよいですか。

その会社が報酬を得て業として管理権原者に代わって作成しているのであれば、行政書士法第19条第1項に違反します。令和8年1月1日施行の改正行政書士法は「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と明記しており、管理委託料や点検料に含まれている場合、無料サービスと説明されている場合でも、実質的に対価を受領していれば同様です。違反者は第21条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、新設された第23条の3の両罰規定により法人にも100万円以下の罰金が科されます。一方、防災管理者本人が自らの職務として消防計画を作成し届け出ること、防災管理点検資格者が点検票等の点検結果の記録を作成することは、いずれも適法です。



まとめ


  • 防災管理は、地震と特殊災害による被害軽減のための制度で、根拠は消防法第36条です
  • 対象建物は消防法施行令第46条=第4条の2の4。防火管理義務対象物であることが前提で、地階を除く階数11以上・1万㎡以上/5〜10・2万㎡以上/4以下・5万㎡以上、地下街は1,000㎡以上
  • 共同住宅((五)項ロ)と倉庫((十四)項)は対象用途ではありません
  • 防災管理者は防火管理者と同一人(消防法第36条第2項)。甲種防火管理講習+防災管理講習の修了が一般的なルートです
  • 防災管理対象物は自衛消防組織の設置義務対象物と同一。防災管理者選任と自衛消防組織設置はセットで検討します
  • 避難訓練は年1回以上、防災管理点検は1年に1回報告
  • 選任届出義務違反は30万円以下の罰金または拘留、命令違反はより重く、最大で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です

防災管理対象物は、いずれも大規模で管理権原が複雑に分かれている建物です。防災管理者・統括防災管理者・自衛消防組織・防災管理点検の4つが同時に問題となり、届出も複数の様式にまたがります。判定と書類作成でお困りの際は、平面図・各階の用途一覧・面積表・管理権原の状況が分かる資料をご用意のうえ、お気軽にご相談ください。



参照した法令・公的資料


  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条、第8条の2、第8条の2の2、第8条の2の3、第8条の2の5、第36条、第41条、第42条、第44条、第45条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の4、第4条の2の5、第4条の2の8、第45条、第46条、第47条、第48条、第48条の2、第48条の3、別表第一
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の4、第51条の3、第51条の5、第51条の7、第51条の8、第51条の9、第51条の11の2、第51条の11の3、第51条の12、第51条の16
  • 行政書士法(昭和26年法律第4号)第1条の3、第1条の4、第19条、第21条の2、第23条の3
  • 行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号) 令和8年1月1日施行
  • 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号) 令和7年6月1日施行(拘禁刑への一本化)
  • 東京消防庁「防災管理制度について」(防火管理 実践ガイド)
  • 東京消防庁「平成21年6月1日施行 自衛消防組織の設置」
  • 総務省消防庁予防課長ほか「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」(令和7年2月25日付 消防予第75号、消防危第30号、消防特第35号)

※本記事は2026年8月16日時点の法令に基づいて作成しています。個別の建物の判定は、所轄消防署の予防課による用途判定・面積算定の確認が必要です。



この記事を書いた人


萩本 昌史(はぎもと まさし)
特定行政書士/消防設備士/防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者
行政書士萩本昌史事務所 代表
東京の消防手続支援ステーション 運営
〒157-0061 東京都世田谷区北烏山7-25-8-401
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