危険物施設の設置・管理・届出を徹底解説!~東京都条例と全国自治体のポイント~【行政書士が解説】

危険物施設の設置・管理・届出を徹底解説!~東京都条例と全国自治体のポイント~【行政書士が解説】

私たちの生活に密接に関わる「危険物施設」について、その安全な設置・管理、そして必要な届出について解説いたします。特に、**東京都の火災予防条例を具体的な例に挙げながら、全国の自治体における共通点や注意点**にも触れていきますので、企業の担当者様や事業主様はぜひ最後までお読みください。

1. 危険物施設とは?その種類と定義

 

まず、「危険物施設」とはどのようなものを指すのでしょうか。
消防法では、火災予防の観点から「危険物」を明確に定義しています。そして、この危険物を貯蔵したり取り扱ったりする場所が「危険物施設」と呼ばれます。

 

具体的には、「危険物の規制に関する政令」において、以下のように様々な種類の施設が区分されています。

 

 

 

1.1製造所:

危険物を製造する施設です。

1.2貯蔵所:

危険物を貯蔵する施設には、いくつかの種類があります。

屋内貯蔵所:

屋内に危険物を貯蔵・取扱う貯蔵所

屋外タンク貯蔵所:

屋外に設置されたタンクで危険物を貯蔵・取扱う貯蔵所。

地下タンク貯蔵所:

地盤面下に埋設されたタンクで危険物を貯蔵・取扱う貯蔵所。

簡易タンク貯蔵所:

簡易タンクで危険物を貯蔵・取扱う貯蔵所。

移動タンク貯蔵所:

車両に固定されたタンクで危険物を貯蔵・取扱う貯蔵所(タンクローリーなどが該当します)。

屋外貯蔵所:

屋外の場所で特定の危険物を貯蔵・取扱う貯蔵所。

1.3取扱所:

危険物を取扱う施設です。

給油取扱所:

給油設備で自動車等に燃料を直接給油したり、容器に詰め替えたりする場所(ガソリンスタンドなどが該当します)。

販売取扱所:

店舗で容器入りの危険物を販売する場所。

移送取扱所:

配管とポンプなどにより危険物の移送を行う施設。

 

これらの施設を設置する、または位置、構造、設備を変更する際には、市町村長等の許可が必要となります。許可を受けた後も、完成検査を受け、技術上の基準に適合していると認められなければ使用できません

2. 危険物施設の管理と届出の基本(全国共通ルール)

 

危険物施設の管理・届出は、「消防法」とその下位法令である「危険物の規制に関する政令」によって全国一律の基準が定められています。これらの法令は、火災や災害の発生を防止し、公共の安全を維持するための基本的な枠組みを提供しています。

 2.1. 危険物貯蔵・取扱いの技術上の基準

 

危険物の貯蔵や取扱いにおいては、以下のような共通の技術基準が定められています。

 

火気の使用制限:

みだりに火気を使用しないこと。

整理・清掃:

常に整理整頓し、不必要な物件を置かないこと。

温度・湿度・圧力の管理:

計器を監視し、危険物の性質に応じた適正な状態を保つこと。

漏れ・あふれ・飛散の防止:

必要な措置を講じること。

容器の適正管理:

危険物の性質に適応し、破損等がない容器を使用し、粗暴な取扱いをしないこと。

静電気対策:

静電気が発生するおそれのある設備には、有効な除去装置を設けること。

 

また、各施設の特性に応じた具体的な基準も詳細に定められています。
例えば、
屋外貯蔵タンクには防油堤の設置義務があります。
移動タンク貯蔵所は、移送前に底弁やマンホール、消火器等の点検を十分に行う
必要があります。

 

 2.2. 施設の位置、構造及び設備の技術上の基準

 

危険物施設の物理的な要件についても厳格な基準があります。

 

距離の保持:

製造所は、住居、学校、病院、文化財などから一定の距離を保たなければなりません。

建築材料:

屋根を不燃材料で造り、窓や出入口には防火設備を設けるなどの基準があります。

床の構造:

液状危険物を取り扱う建築物の床は、危険物が浸透しない構造とし、傾斜と貯留設備を設ける必要があります。

換気・照明:

適切な採光、照明、換気設備を設けることが義務付けられています。

タンク・配管:

タンクの構造や設備、配管の強度、耐熱性、漏えい防止などについても詳細な基準があります。

 

2.3. 必要な届出・検査・保安体制

 

危険物施設では、以下のような手続きが必要です。

 

設置・変更の許可:

製造所、貯蔵所、取扱所の設置や位置・構造・設備の変更には、市町村長等の許可が必要です。

完成検査:

設置または変更後、使用開始前に完成検査を受け、基準適合の確認が必要です。

保安検査:

特定の屋外タンク貯蔵所や移送取扱所は、定期的な保安検査が義務付けられています。

定期点検記録:

政令で定める製造所等は、定期的に点検を行い、その記録を作成・保存しなければなりません。

危険物保安統括管理者:

一定規模以上の事業所では、危険物保安統括管理者を選任し、事業所全体の危険物保安業務を統括管理させる必要があります。

危険物保安監督者:

政令で定める製造所等では、甲種または乙種危険物取扱者で実務経験を有する者を危険物保安監督者として定め、危険物取扱作業の保安監督を行わせる必要があります。

予防規程:

政令で定める製造所等では、火災予防のための予防規程を定め、市町村長等の認可を受ける必要があります。

自衛消防組織:

政令で定める数量以上の危険物を貯蔵・取扱う事業所は、自衛消防組織を設置しなければなりません。

 

3. 東京都の火災予防条例による追加規制

 

  • 全国共通の消防法や政令の基準に加え、各市町村は地域の特性や実情に応じて、条例で追加の火災予防基準を定めることができます
    東京都の場合、「火災予防条例」がこれにあたります。
    この条例は、
    消防法に基づく火を使用する設備の位置、
    構造及び管理の基準、
    住宅用火災警報器の設置及び維持に関する基準、
    指定数量未満の危険物等の貯蔵及び取扱いの技術上の基準、
    消防用設備等の技術上の基準の付加、
    火災に関する警報の発令中における火の使用の制限
    など、多岐にわたる事項を定めています。

3.1. 少量危険物・指定可燃物に関する基準(東京都火災予防条例)

 

消防法で定める「指定数量」未満の危険物や、火災予防条例で独自に定める「指定可燃物」は、その数量や種類に応じて、東京都の条例でさらに詳細な基準が設けられています。(市町村もその条例で基準を定めています。)

 

少量危険物(指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物)

貯蔵・取扱いの遵守事項:

防火上安全な場所での実施、火気の使用制限(やむを得ない場合は安全措置)、適切な材質の容器の使用、地震動等による災害防止措置、漏れ・あふれ・飛散防止措置、発火原因となる接近・接触・混合の回避、くず・かすの安全な処理、整理清掃の徹底、自動販売機の原則禁止などが定められています。

少量危険物貯蔵取扱所の位置、構造及び設備の基準:
標識・掲示板:

少量危険物貯蔵取扱所である旨や危険物の品名・数量などを表示した標識・掲示板の設置。

空地・境界:

屋外貯蔵取扱所では、排水溝などで境界を明示し、幅2メートル以上の空地を確保するか、防火上有効な塀を設けること。

屋内施設:

壁、柱、床、天井を特定不燃材料で造るか覆うこと、液状危険物を取り扱う床は浸透しない構造で傾斜・ためますを設けること、開口部には防火戸またはドレンチャー設備を設けることなど。

設備:

危険物を取り扱う機械器具は漏れ防止構造とし、加熱・乾燥設備は直火を用いない構造を原則とする、温度・圧力測定装置、静電気除去装置、配管の強度・耐熱性・腐食防止・漏えい点検などの詳細な基準があります。

タンク

: 屋外、屋内、地下、移動タンクの種類に応じた詳細な基準(厚さ、水圧試験、固定方法、錆止め、通気管、安全装置、注入口、弁、配管、漏れ検知、防油堤など)が設けられています。

 

指定可燃物(東京都火災予防条例で定める数量以上の可燃性物品)

貯蔵・取扱いの基準:

容器への収納・表示、係員以外の出入禁止、危険物との区分整理、炎・火花・高温体との接近回避、積載高さ制限、自己発熱性物品の管理などが定められています。

指定可燃物貯蔵取扱所の位置、構造及び設備の基準:
標識・掲示板:

指定可燃物貯蔵取扱所である旨などを表示した標識・掲示板の設置。

空地:

屋外貯蔵取扱所では、容器等の種類や数量に応じて空地の幅を確保するか、防火上有効な塀を設けること。

屋内施設:

特定数量以上の可燃性固体類等を屋内で貯蔵・取扱う場合は、特定不燃材料で造られた室内で行うこと。

消火設備:

数量に応じて消火器具、大型消火器、水噴霧消火設備、固定泡消火設備などの設置義務があります。

綿花類等:

綿花類等の集積方法や設備に関する詳細な基準が設けられています。

 

3.2. その他の火気使用設備等に関する届出

 

東京都火災予防条例では、特定の火気使用設備等を設置したり、関連する工事を行う際に、事前に消防署長への届出を義務付けています。これには、炉、厨房設備、乾燥設備、サウナ設備、変電設備、急速充電設備、発電設備、蓄電池設備、ネオン管灯設備などが含まれます。

 

また、以下の行為についても事前に消防署長への届出が必要です。

 

防火対象物の工事等計画:

特定の防火対象物の建築、修繕、用途変更など。

観覧場等での催物開催:

多数の者を収容する催しの種類、期間、人員など。

消防活動に支障を及ぼすおそれのある行為:

火災と紛らわしい煙や火炎を発する行為、煙火の打ち上げ、水道の断水、道路工事など。

防火管理に係る消防計画:

防火管理者が作成した消防計画。

ずい道工事等にかかる火災等の災害予防計画:

地下街やずい道の工事など。

消防設備業の届出:

消防設備業を営む者。

 

 4. 全国自治体における対応の重要性

 

これまで見てきたように、消防法や危険物の規制に関する政令は全国共通の基本的な基準を提供しています。しかし、各市町村が定める火災予防条例は、その地域の気候、地理的条件、都市の構造、既存の建築物の状況などを考慮して、より具体的な追加基準や、時には異なる規制を設けることがあります。

 

したがって、危険物施設の設置や管理を行う際には、必ず対象となる施設が所在する地域の自治体の条例を確認することが不可欠です。例えば、東京都の条例では細かな離隔距離や構造に関する基準が定められている一方、他の自治体では異なる規定が存在する可能性があります。

 

5. 行政書士からのアドバイス

 

危険物施設の設置・管理・届出は、多岐にわたる法令と専門知識が求められる非常に複雑な分野です。これらの手続きを怠ったり、基準に適合しない状態で運営したりすることは、火災や爆発といった重大な事故に繋がるだけでなく、厳しい罰則の対象となる可能性があります [消防法39_2, 41, 43, 44, 45, 66, 67, 67_2, 68]。

 

例えば、消防法では、危険物を許可なく貯蔵・取扱った場合や、措置命令に違反した場合に拘禁刑や罰金刑が科されることがあります。また、東京都の火災予防条例においても、少量危険物や指定可燃物の貯蔵・取扱いの基準違反、各種届出義務違反に対して罰金刑が規定されています [消防法66, 67, 67_2]。

 

行政書士は、これらの複雑な法令を正確に解釈し、お客様の状況に応じた最適な手続きをサポートする専門家です。

 

5.1法令調査と適用基準の特定:

どの法令が適用されるのか、どのような基準を満たす必要があるのかを明確にします。

5.2書類作成と申請代行:

許可申請書や届出書の作成、添付書類の準備、関係機関への提出などを代行します。

5.3関係機関との調整:

消防署をはじめとする関係行政機関との事前相談や調整を行い、スムーズな手続きを支援します。

5.4コンプライアンス体制構築の支援:

継続的な法令遵守のための体制づくりをサポートします。

 

「どこから手をつけて良いか分からない」「この基準で合っているか不安だ」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、行政書士にご相談ください。計画段階から専門家が関わることで、時間やコストの無駄を省き、法令違反のリスクを未然に防ぐことができます。

 

まとめ

 

危険物施設は、その性質上、適切な管理と厳格な法令遵守が求められます。消防法と政令による全国共通の基準に加え、各自治体の条例による地域特有の規制も存在するため、常に最新かつ正確な情報を把握し、適切な手続きを行うことが、企業の社会的責任であり、何よりも人命と財産を守る上で不可欠です。

 

当事務所では、危険物施設に関する様々な手続きをサポートしております。お気軽にお問い合わせください。

 

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