少量危険物の種類及び指定数量に関する解説:消防法及び関連条例の適用

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行政書士として、皆様の事業所の安全管理をサポートしている萩本昌史です。 今回は、見落とされがちながらも、火災予防上非常に重要な「少量危険物」について、その種類と「指定数量」を分かりやすく解説します。

1.少量危険物とは?その重要性

消防法では、火災の危険性が高い物質を「危険物」と定め、その貯蔵や取扱いについて厳しい規制を設けています。しかし、皆さんの事業所では、消防法上の「指定数量」に満たない危険物を取り扱っているケースも多いのではないでしょうか?。
ここで登場するのが「少量危険物」という概念です。「少量危険物」とは、具体的には、「危険物の規制に関する政令」(以下、「危険物政令」といいます)で定められた「指定数量」の5分の1以上、指定数量未満の危険物を指します。
たとえ指定数量未満であっても、これらの物質が引き起こす火災は甚大な被害をもたらす可能性があります。そのため、消防法では、指定数量未満の危険物についても、市町村条例(東京都の場合、「火災予防条例」)に基づき、貯蔵や取扱いの技術上の基準が定められています。

2.危険物の種類と指定数量を徹底解説!

それでは、消防法で定められた危険物の「類別」「品名」、そしてそれぞれに割り当てられた「指定数量」を見ていきましょう。これらの情報は、「危険物政令」の別表第一に記載されています。

第一類:酸化性固体

塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類:50キログラム (kg)

硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類:300キログラム (kg)

その他、これらのいずれかを含有するもの:1,000キログラム (kg)

第二類:可燃性固体

硫化りん、赤りん、硫黄:100キログラム (kg)

鉄粉、金属粉、マグネシウム:500キログラム (kg)

引火性固体(固形アルコールその他一気圧において引火点が40度未満のもの):1,000キログラム (kg)

その他、これらのいずれかを含有するもの:1,000キログラム (kg)

第三類:自然発火性物質及び禁水性物質

カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りん:10キログラム (kg)

アルカリ金属(カリウム及びナトリウムを除く)及びアルカリ土類金属、有機金属化合物(アルキルアルミニウム及びアルキルリチウムを除く):50キログラム (kg)

金属の水素化物、金属のりん化物、カルシウム又はアルミニウムの炭化物:300キログラム (kg)

その他、これらのいずれかを含有するもの:300キログラム (kg)

第四類:引火性液体

特殊引火物(ジエチルエーテル、二硫化炭素その他一気圧において発火点が100度以下、又は引火点が零下20度以下で沸点が40度以下のもの):50リットル (L)

第一石油類(非水溶性)(アセトン、ガソリンその他一気圧において引火点が21度未満のもの):200リットル (L)

第一石油類(水溶性):400リットル (L)

アルコール類(一分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和一価アルコールなど):400リットル (L)

第二石油類(非水溶性)(灯油、軽油その他一気圧において引火点が21度以上70度未満のもの):1,000リットル (L)

第二石油類(水溶性):2,000リットル (L)

第三石油類(非水溶性)(重油、クレオソート油その他一気圧において引火点が70度以上200度未満のもの):2,000リットル (L)

第三石油類(水溶性):4,000リットル (L)

第四石油類(ギヤー油、シリンダー油その他一気圧において引火点が200度以上250度未満のもの):6,000リットル (L)

動植物油類(動物の脂肉等又は植物の種子若しくは果肉から抽出したものであって、一気圧において引火点が250度未満のもの):10,000リットル (L)

第五類:自己反応性物質

第一種自己反応性物質:10キログラム (kg)

第二種自己反応性物質:100キログラム (kg)

その他、これらのいずれかを含有するもの:100キログラム (kg)

第六類:酸化性液体

(特定の品名は記載なし):300キログラム (kg)

3.複数の危険物を扱う場合の注意点

異なる品名や指定数量の危険物を同じ場所で貯蔵・取り扱う場合、それぞれの危険物の数量を当該危険物の指定数量の5分の1の数量で除し、その「商の和」が1以上になると、その場所は「少量危険物貯蔵取扱所」とみなされ、条例の規制対象となります。これは、少量ずつでも、複数の危険物が集まることで火災リスクが高まるためです。

4.少量危険物貯蔵取扱所の技術上の基準

「東京都火災予防条例」では、少量危険物貯蔵取扱所に対し、火災予防上の様々な基準を設けています。例えば、以下の措置が求められます。

表示と掲示板の設置:

見やすい場所に**「少量危険物貯蔵取扱所」である旨の標識**や、危険物の品名、最大数量、防火に関する必要な事項を掲示した掲示板を設ける必要があります 。

安全な場所の確保:

貯蔵・取扱いは防火上安全な場所で行い、火気の使用を避けること。やむを得ず火気を使用する場合は、通風や換気、区画などの安全措置が必要です。

容器の管理:

危険物の性質に適した安全な材質の容器を使用し、容易に破損し、又は栓等が離脱しないものであること。地震動等による転倒、転落、破損を防ぐための固定や柵、滑り止めの設置、他の物品の落下防止措置も重要です。

漏洩・飛散防止:

危険物が漏れたり、あふれたり、飛散したりしないよう必要な措置を講じること。

静電気除去:

静電気が蓄積するおそれのある設備には、当該静電気を有効に除去する装置を設けること 。

消火設備の設置:

少量危険物貯蔵取扱所には、消火器具を設置しなければなりません。
これらの基準は、火災の発生を防ぎ、万が一の際の被害を最小限に抑えるために非常に重要です。

4.まとめ

今回は、消防法における「少量危険物」の種類と「指定数量」について詳しく解説しました。指定数量に満たないからといって、安全対策を怠って良いわけではありません。むしろ、各自治体の**「火災予防条例」に基づいて、よりきめ細やかな管理が求められます。**
もし、ご自身の事業所でどのような危険物を取り扱っているのか、どの数量から規制対象となるのか、また、どのような対策が必要なのかご不明な点がありましたら、お近くの消防署や専門家である行政書士にご相談ください。適切な知識と対策で、皆様の安全な事業活動をサポートします!

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