

【2026年改正対応】
/ 著者:萩本昌史(行政書士)
「点検のついでに、お客様の届出書類も作ってあげている」——消防設備業や防災点検の現場で当たり前に行われてきたこのサービスが、いま行政書士法違反に問われかねません。2026年(令和8年)1月1日施行の改正行政書士法により、報酬を得て他人の消防署提出書類を作成する行為が、名目を問わず違法であることが明確化されたためです。
本記事の結論は単純です。消防署に提出する書類の作成は、原則として行政書士の独占業務。消防設備士・消防設備点検資格者・防火対象物点検資格者・防災管理点検資格者が自ら作れるのは、例外として「自らの点検・工事の記録」に限られます。判断に迷ったときは、消防法令がその書類の作成・届出の主体を「誰」と定めているかを確認すると、切り分けが明確になります。届出・報告の義務を負う主体が関係者(管理権原者)であれば、それは関係者本人か行政書士が作成すべき書類であり、消防法令が有資格者に行わせることを予定している記録であれば、資格者が作成できる書類です。この「原則(独占業務)」と「例外(資格者の記録)」の線引きを、行政書士の視点から条文・告示に基づいて整理します。読み終えれば、自社サービスのどこに違反リスクがあるかがはっきりわかります。
結論からお伝えすると、今回の改正は「新しい禁止行為を作った」ものではなく、これまでも違法だった行為を条文上はっきりさせたものです。消防署も「官公署」に含まれるため、消防署に提出する書類の作成は、改正前から行政書士法の規律対象でした。
今回の改正は行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)によるもので、令和7年(2025年)6月13日に公布され、令和8年(2026年)1月1日から施行されています。公布と同日付で、総務省自治行政局長から各府省官房長等に宛てて改正内容を示す公布通知(総行行第281号)も発出されています。
消防の実務では、改正に先立って総務省消防庁から明確な注意喚起が出ています。令和7年2月25日付「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」(消防予第75号・消防危第30号・消防特第35号)がそれで、火災予防・危険物保安・石油コンビナート等の保安の各分野の手続について、行政書士等でない者が防火対象物の関係者等に代わって提出書類を作成することは行政書士法に違反する旨が示され、関係事業者への周知が求められました。この通知は消防機関に対する周知・注意喚起を内容とするもので、提出された書類の受理を拒否するよう求めるものではありませんが、消防署の窓口で作成者について確認される場面は確実に増えています。
最大のポイントは、業務制限を定める行政書士法第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加えられたことです。これにより、書類作成の対価が「点検料」「コンサルティング料」「サポート費」「商品代金」など、どのような名目であっても、実質的に書類作成への対価であれば「報酬」に当たることが明確になりました。
まず大原則を押さえましょう。消防署は行政書士法にいう「官公署」に含まれます。そのため、消防署に提出する各種の届出・申請・報告書を、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として作成することは、行政書士または行政書士法人だけに認められた独占業務です(行政書士法第1条の3、第19条第1項)。なお、令和7年改正で条の繰下げがあり、業務を定める規定は第1条の3(旧第1条の2)です。これらの書類は本来、提出義務者である関係者(管理権原者)本人が作成するか、行政書士に依頼すべきものです。点検や工事の資格があっても、この原則が変わるわけではありません。
これらはいずれも、届出・報告の義務を負う主体が関係者(管理権原者)である書類です。後述のとおり資格者が自ら作れるのは「点検・工事の結果の記録」に限られ、それらとは異なり、ここに挙げた書類は関係者が官公署に提出する書類を依頼を受けて作成する行為に当たります。点検資格や工事の資格があっても消防法の除外規定は及ばず、報酬を得て業として代わりに作成すれば、行政書士法第19条第1項違反のおそれがあります。
防火管理制度では、収容人員などが一定以上の防火対象物の管理権原者が、資格を持つ者から防火管理者を選任し、防火管理者に消防計画を作成させ、消防計画に基づく業務を行わせます(消防法第8条)。さらに、高層建築物や管理権原が分かれる複合用途防火対象物などでは、各管理権原者が協議して統括防火管理者を定め、全体についての消防計画を作成させます(消防法第8条の2)。災害(地震等)に備える防災管理についても、第36条が同様の仕組みを準用します。
関係する主な書類と、それぞれの「作成・届出の主体」を整理します。
| 書類 | 根拠 | 作成・届出の主体 |
|---|---|---|
| 防火(防災)管理者選任(解任)届出書 | 法第8条・第36条/施行令第3条(防災は第47条)/施行規則第3条の2(防災は第51条の9) | 管理権原者が選任・届出 |
| 消防計画(防火管理に係る消防計画) | 法第8条/施行規則第3条(記載事項) | 防火管理者が作成 |
| 消防計画作成(変更)届出書 | 法第8条/施行規則第3条 | 防火管理者が作成し届出(関係者側) |
| 統括防火(防災)管理者選任(解任)届出書 | 法第8条の2・第36条/施行令第3条の3・第4条(防災は第48条の2)/施行規則第4条の2(防災は第51条の11の3) | 各管理権原者が協議して選任・届出 |
| 全体についての消防計画 | 法第8条の2/施行規則第4条 | 統括防火管理者が作成 |
| 全体についての消防計画作成(変更)届出書 | 法第8条の2/施行規則第4条 | 統括防火管理者が作成し届出(関係者側) |
⚠ 注意:「テンプレートを渡すだけ」でも線引きに注意
実務では、設備業者やコンサルが消防計画のひな形を提供し、内容を実質的に作り込んでいる例もみられます。単なる一般的な書式の提供にとどまるか、当該対象物に合わせて内容を作成(作成代行)しているかで評価は変わり得ます。報酬を得て対象物ごとに消防計画等を作り込む場合は、行政書士に依頼するか、防火管理者本人が作成する形にするのが安全です。記載事項や届出の取扱いは所轄消防署の運用によっても異なるため、事前相談をおすすめします。
消防用設備等を新設・増設したときは、消防用設備等設置届出書の提出が必要です(消防法第17条の3の2、消防法施行令第35条、消防法施行規則第31条の3)。届け出るのは設備を設置した関係者で、設置に係る工事が完了した日から4日以内に、別記様式第1号の2の3の届出書に図書や試験結果報告書を添えて消防長・消防署長に届け出て、検査を受けます。届出者欄に記載されるのは関係者であり、工事を行った消防設備業者ではありません。
この場面では、名前の似た書類が複数登場し、誰が作成・届出できるかが書類ごとに異なります。点検結果報告書と同じく、「関係者名義の届出本体」と「資格者自身の記録」を切り分けて考えることが重要です。
| 書類 | 根拠・性質 | 主体 | 資格者・業者が作成できるか |
|---|---|---|---|
| 工事整備対象設備等 着工届出書 | 法第17条の14。工事着手10日前までの事前届出 | 甲種消防設備士本人 | ○ 自己の届出義務に基づき作成・届出可 |
| 消防用設備等 設置届出書(届出本体) | 法第17条の3の2。関係者名義の官公署提出書類 | 関係者 | × 関係者の届出(除外規定の対象外) |
| 消防用設備等 試験結果報告書(添付書類) | 平成元年消防庁告示第4号。工事・試験結果の記録 | 記録は消防設備士 | ○ 自己の業務結果の記録として作成可 |
⚠ 注意:実務では「事実上の代行」になっていないか
実務では、工事を行った設備業者が設置届の届出本体の作成まで事実上支援している例が多くみられます。しかし届出義務者はあくまで関係者であり、業者が報酬を得て反復継続して届出本体の作成を請け負う形になっていると、行政書士法に抵触するおそれがあります。届出本体は関係者本人が作成するか行政書士に依頼し、業者は自己の記録(試験結果報告書等)の作成にとどめるのが安全です。届出区分や検査の要否は所轄消防署の運用によっても異なるため、事前に確認することをおすすめします。
独占業務のなかでも、行政書士法上の意味合いが特に強いのが消防用設備等特例適用申請書です。これは、防火対象物の位置・構造・設備の状況から判断して、規定の基準と同等以上の防火安全性能が確保されていると消防長・消防署長が認めるときに、技術上の基準を適用しないとする消防法施行令第32条の特例を求める申請です。所轄によって「特例適用申請書」「特例承認・除外願出書」「緩和・除外願出書」など名称は異なりますが、いずれも申請者である関係者が消防長・消防署長の認定(承認)を求める申請書である点は共通です。
この書類が他の届出と性質を異にするのは、単なる事実の届出ではなく、「なぜ基準を適用しなくても同等以上の安全性が保てるのか」という申請理由を、法令解釈をふまえて構成・主張する必要がある点です。これはまさに、官公署に提出する許認可等に関する書類の作成という行政書士の専門領域であり、点検資格や工事の資格で代替できる業務ではありません。報酬を得て関係者に代わって申請書を作成・構成すれば、行政書士法第19条第1項違反のおそれが強くなります。
前章の独占業務の原則には例外があります。消防設備士をはじめとする消防関係の資格者は、消防法によって防火対象物の点検を行う立場を与えられており、自ら実施した点検の結果を記録する行為は、他人に代わって官公署提出書類を作成する行為とは性質が異なるからです(第4章のとおり、行政書士法第19条第1項ただし書の「他の法律に別段の定めがある場合」としても整理できます)。ただし範囲は限定的です。
押さえておきたいのは、消防長・消防署長への報告義務を負うのは防火対象物の関係者(管理権原者)であって、資格者ではないという点です。そのため、資格者が作成できるのは自らが実施した点検の結果を記録した書類(点検票・点検結果総括表・点検者一覧表など)に限られます。これらを関係者に交付するまでが資格者の役割で、消防署に提出する報告書の鑑(報告書本体)は、報告者である関係者が作成・提出すべき書類です。この「点検結果の記録」は消防法令(施行規則・告示の様式)が有資格者に行わせることを予定した業務であり、報酬を得て作成しても行政書士法には抵触しません。資格ごとに整理します。
消防用設備等点検報告制度の根拠は消防法第17条の3の3です。同条は、防火対象物の関係者に対して、一定規模・用途の対象物では消防設備士免状の交付を受けている者または消防設備点検資格者に点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告しなければならないと定めています(報告義務を負うのは関係者です)。点検には半年に1回の機器点検と1年に1回の総合点検があり、報告は特定防火対象物で1年に1回、非特定防火対象物で3年に1回必要です(消防法施行規則第31条の6)。点検結果総括表・点検者一覧表・点検票は、消防庁告示で定められた様式に点検者(資格者)が記入します。
資格者が作成できるのは、次の点検結果の記録に限られます。
一方、これらを束ねて消防署に提出する消防用設備等点検結果報告書の鑑(報告書本体・別記様式)は、報告者である関係者が作成・提出すべき書類であり、資格者の作成範囲には含まれません。
防火対象物点検報告制度の根拠は消防法第8条の2の2です。一定の防火対象物の管理について権原を有する者は、防火管理者の選任状況・消防訓練の実施・避難経路の管理・防炎物品の表示など、防火管理上必要な業務が基準に適合しているかを防火対象物点検資格者に点検させ、毎年1回その結果を消防長または消防署長に報告しなければなりません。
資格者が作成できるのは、次の点検結果の記録に限られます。
消防署に提出する防火対象物点検結果報告書の鑑は、報告者である管理権原者が作成・提出すべき書類です。
地震等の大規模災害に備える防災管理点検報告制度は、消防法第36条が第8条の2の2を準用する形で定められています。大規模・高層の対象物などについて、その管理権原者が、防災管理上必要な業務が適切に行われているかを防災管理点検資格者に点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告しなければなりません(報告義務を負うのは管理権原者です)。
資格者が作成できるのは、次の点検結果の記録に限られます。
消防署に提出する防災管理点検結果報告書の鑑は、報告者である管理権原者が作成・提出すべき書類です。
行政書士法第19条第1項は、行政書士または行政書士法人でない者が、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務(官公署提出書類等の作成)を行うことを禁じています。もっとも同項には次のただし書があります。
📚 行政書士法第19条第1項ただし書
ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
ここで押さえておきたいのは、点検資格者が点検票を作成できる理由は、第一に「他人のために官公署提出書類を作成する行為ではない」からだという点です。点検票・点検結果総括表は、資格者が自ら実施した点検の結果を自らの名義で記録する書類であり、他人に代わって届出書を仕立てる行為とは性質が異なります。そのうえで、消防法令が有資格者にこの記録を行わせる仕組みを定めていることから、ただし書にいう「他の法律に別段の定めがある場合」としても整理できます。
ここで条文を正確に読む必要があります。消防法第17条の3の3・第8条の2の2・第36条は、いずれも「防火対象物の関係者(管理権原者)は、〔資格者〕に点検させ、その結果を…報告しなければならない」という構造になっています。つまり、報告義務を負う主語はあくまで「関係者」であり、消防設備士・点検資格者ではありません。資格者に与えられているのは「点検を行い、その結果を記録する」役割です。
では、なぜ資格者が点検結果の記録を作成しても行政書士法に抵触しないのか。それは、点検票などが資格者自身が実施した点検の結果を記録したものだからです。消防法は一定の対象物について点検を有資格者に行わせる仕組みを定め、消防庁告示はその点検者が点検票等に結果を記入する様式を定めています。点検という事実行為とその結果記録は、消防法令が有資格者に行わせることを予定した一連の業務です。これは「他人の書類を代理で作成する」のではなく「自らの点検結果を記録する」行為であり、行政書士の独占業務の核心とは性質が異なります。
⚠ 注意:報告書の「鑑」は除外規定に該当しない
除外が及ぶのは、あくまで資格者が自ら実施した点検の結果を記録する範囲(点検票・総括表・点検者一覧表)に限られます。
これに対し、消防署に提出する点検結果報告書の鑑(報告書本体)は、報告者である関係者の名義で提出される官公署提出書類です。消防法令は資格者にこの鑑の作成を予定していないため、除外規定には該当しません。したがって、資格者・業者が報酬を得て関係者に代わって鑑を作成すれば、行政書士法第19条第1項違反となるおそれがあります。鑑は本来、報告者である関係者が作成・提出すべき書類です。
「点検は有資格者が行い、その結果を点検票等に記録する」という仕組みは、消防法・同施行令・同施行規則と、これらに基づく消防庁告示に明文の根拠があります。制度ごとに整理すると次のとおりです(なお、これらの様式のうち報告者欄を含む鑑は、報告者である関係者が記載・提出します)。
📚 法令・告示の根拠
■ 消防用設備等点検(消防設備士・消防設備点検資格者)
■ 防火対象物点検(防火対象物点検資格者)
■ 防災管理点検(防災管理点検資格者)
資格者が報酬を得て他人のために作成する場面を前提に、行政書士法上の可否を整理しました。
| 書類の種類 | 主な根拠法令 | 届出・報告の主体(義務者) | 資格者が作成できるか |
|---|---|---|---|
| 消防用設備等 点検票・点検結果総括表等(点検結果の記録) | 消防法第17条の3の3/施行規則第31条の6/告示 | 記録は資格者(報告義務は関係者) | ○ 点検結果の記録として作成可 |
| 防火対象物 点検票(点検結果の記録) | 消防法第8条の2の2 | 記録は資格者(報告義務は関係者) | ○ 点検結果の記録として作成可 |
| 防災管理 点検票(点検結果の記録) | 消防法第36条(第8条の2の2準用) | 記録は資格者(報告義務は関係者) | ○ 点検結果の記録として作成可 |
| 工事整備対象設備等 着工届出書 | 消防法第17条の14/施行規則第33条の18 | 甲種消防設備士本人 | ○ 自己の届出義務に基づき作成・届出可 |
| 消防用設備等 試験結果報告書(設置届の添付書類) | 平成元年消防庁告示第4号 | 記録は消防設備士 | ○ 自己の業務結果の記録として作成可 |
| 各種点検結果報告書の鑑(報告書本体) | 消防法第17条の3の3・第8条の2の2・第36条 | 関係者(報告者) | × 関係者の書類(除外規定の対象外) |
| 防火(防災)管理者選任(解任)届出書/統括防火(防災)管理者選任(解任)届出書 | 消防法第8条・第8条の2・第36条 | 関係者(管理権原者) | × 行政書士の独占業務 |
| 消防計画/全体についての消防計画(計画書の作成) | 消防法第8条・第8条の2/施行規則第3条・第4条 | 防火管理者・統括防火管理者(本人の職務) | × 外部の有償代行は独占業務(本人の職務は別) |
| 消防計画作成(変更)届出書/全体についての消防計画作成(変更)届出書 | 消防法第8条・第8条の2/施行規則第3条・第4条 | 関係者側(管理権原者・防火管理者) | × 行政書士の独占業務 |
| 防火対象物使用開始届出書 | 火災予防条例(東京都火災予防条例第56条の2) | 関係者(使用者等) | × 行政書士の独占業務 |
| 防火対象物工事等計画届出書 | 火災予防条例(東京都火災予防条例第56条) | 関係者(工事等をしようとする者) | × 行政書士の独占業務 |
| 消防用設備等 設置届出書(届出本体) | 消防法第17条の3の2/施行令第35条/施行規則第31条の3 | 関係者(消防設備業者ではない) | × 関係者の届出(除外規定の対象外) |
| 消防用設備等 特例適用申請書 | 消防法施行令第32条 | 関係者(申請者) | × 認定を求める申請(行政書士の専門領域) |
※「○」は資格者が自らの点検・工事の結果の記録として作成できるもの、「×」は資格者でない者・業者が報酬を得て業として他人(関係者)のために作成すると行政書士法第19条第1項違反のおそれがあるものを示します。点検結果報告書については、点検票等の「点検結果の記録」は資格者が作成できる一方、報告者欄を含む「鑑(報告書本体)」は関係者の書類であり除外規定の対象外です。報告書・各種届出の提出義務者はいずれも関係者で、着工届出書のみ甲種消防設備士本人が届出義務者です。
罰則の表記も整理されました。従来の「懲役」は刑法改正に合わせて「拘禁刑」に改められています。行政書士法第19条第1項に違反した者は、第21条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。
さらに重要なのが、第23条の3に整備された両罰規定です。従来は第19条第1項違反で罰せられるのは違反行為をした「個人」だけでした。改正後は、法人の代表者や従業者等がその法人の業務に関して違反した場合、行為者本人に加えて、その法人にも罰金刑が科されることになりました(第23条の3は第21条の2の違反行為を対象に含みます)。
⚠ 注意:会社全体のリスクに直結します
現場の担当者が「サービスの一環」で届出書類を作成しただけでも、両罰規定により会社が罰金刑を受けるリスクがあります。社内研修での周知と、書類作成業務を契約上明確に切り分ける運用が、これまで以上に重要になりました。
建設業許可を受けている事業者にとって、この罰則は刑事罰にとどまらず、許可そのものを失う問題につながります。たとえば、取締役が現場の担当者に指示して、本来は防火対象物の関係者が作成すべき消防署提出書類を報酬を得て作成させた場合、作成した担当者だけでなく、指示した取締役も共犯として問われ得ます。
⚠ 注意:拘禁刑になると建設業許可は取り消され、5年間受けられません
建設業法第8条第7号は、拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者を欠格要件としています。そして同条第12号により、法人の役員等にこれに該当する者がいる場合、その法人自体が欠格要件に該当します。
第8条の柱書は、許可の更新を受けようとする者にも第7号から第14号までが適用されると定めているため、次回の更新が受けられません。それだけでなく、建設業法第29条第1項第2号により、行政庁は許可を取り消さなければならないとされており(必要的取消し)、更新を待たずに許可を失います。取消し後は、欠格要件が解消するまで新たな許可も受けられません。
一方で、罰金にとどまる場合は、行政書士法違反は第8条第8号が列挙する法令(建設業法、施工・労働者使用に関する政令指定の法令、暴力団対策法、刑法第204条等)に含まれないため、直ちに欠格要件には当たりません。拘禁刑になるかどうかで結果が大きく変わります(執行猶予が付いた場合は、猶予期間の満了により刑の言渡しが効力を失えば欠格要件から外れる、というのが実務上の取扱いです)。
書類作成という「サービス」のつもりの行為が、会社の営業基盤そのものを失わせかねないという点は、建設業・消防設備業の経営層に必ず共有しておくべきリスクです。
最も多い誤解です。改正により「いかなる名目によるかを問わず」報酬に当たることが明確化されたため、点検料に実質的に組み込まれた「無料の届出代行」は、報酬を得た作成と評価されるおそれがあります。料金表上の表記だけで安全とは言えません。
違反の要件は「業として」、すなわち反復継続性・事業遂行性のある行為です。ただし一回限りでも、事業として対価を得て行えば行政書士の業務と判断され得るため、「初回だから」という理由で安全になるわけではありません。
消防法が資格者に行わせると定めているのは、あくまで点検とその結果の記録です(消防署への報告義務は関係者が負います)。点検と切り離された届出・申請書類の作成代行までを資格が認めているわけではありません。点検と結果記録は資格者、届出書類の作成は本人または行政書士、という役割分担が基本です。
第19条第1項ただし書は「他の法律に別段の定めがある場合」を除外しています。たとえば建築士法第21条は、建築士の業務として「建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理」を挙げており、設計・工事監理に付随する範囲では建築士がこれらの手続に関与できる場合があります。「有資格者なら一切関与できない」という理解も、逆に「資格があるから何でもできる」という理解も正確ではありません。どの書類を、誰の名義で、どの資格の根拠に基づいて作成・提出するのかを個別に確認することが重要です。
ただし、これは「工事に関わる事業者なら誰でもよい」という意味ではありません。建設業法には、建築士法第21条のような「手続の代理」を認める規定が置かれていません。同法は建設業を「建設工事の完成を請け負う営業」と定義しているにとどまるため(建設業法第2条第2項)、消防施設工事業などの建設業許可を有することは、消防署提出書類を報酬を得て作成できる根拠にはなりません。工事の請負契約に「届出書類の作成」を含めても、その対価は名目を問わず報酬と評価され得る点は第1章のとおりです。
消防署提出書類は、火災予防条例や所轄消防署の運用によって様式や事前相談の取扱いが異なる場合があります。既存建物か新装工事か、テナント入替か用途変更か、消防用設備等の現況はどうかによっても必要書類は変わります。最終的には所轄消防署への事前相談と、書類作成については行政書士への確認をおすすめします。
「この書類は自社で作っていいのか」「点検業務と書類作成をどう切り分けるべきか」——消防関係の届出に精通した行政書士が、改正法を踏まえて適正な体制づくりをサポートします。
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