消防署への提出書類作成と行政書士法違反の防止について

令和7年2月25日付で総務省消防庁予防課長より「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」の通知(消防予第75号、消防危第30号、消防特第35号)が発出され、消防署への提出書類作成業務が行政書士の独占業務であることが明確化されました。

コラム|消防届出と行政書士法


防火対象物の関係者名義で消防署へ届出る書類の作成代行は、行政書士の独占業務です

令和8年(2026年)1月1日施行の改正行政書士法により、非行政書士による書類作成の規制がさらに明確化されました。消防法関連の手続きにおける適法性を解説します。


近年、消防法令に基づく各種手続において、行政書士以外の者が消防署に提出する書類を作成し、報酬を得るケースが問題視されています。これに対し、令和7年2月25日付で総務省消防庁予防課長・危険物保安室長・特殊災害室長より「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」の通知(消防予第75号、消防危第30号、消防特第35号)が発出されました。


さらに、令和8年(2026年)1月1日に改正行政書士法が施行され、非行政書士による書類作成業務の禁止がより厳格化されています。本記事では、改正法の内容を踏まえ、消防署へ提出する書類作成の適法性について解説します。

1. 改正行政書士法のポイント(2026年1月1日施行)

令和7年(2025年)6月6日に成立した「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)が、令和8年(2026年)1月1日に施行されました。この改正は、行政書士制度のあり方を大きく見直すもので、消防関連の届出業務にも直接影響します。

📋 改正の5つのポイント

  • 「使命」の明記 ― 従来の「目的」規定が「行政書士の使命」に改められ、社会的責任がより明確に位置づけられました
  • 「職責」の新設 ― 品位の保持、法令・実務への精通、デジタル社会への対応(努力義務)が明文化されました
  • 業務制限の明確化 ― 第19条に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言が追加。コンサル料・手数料・サービス料等の名目を問わず違法となることが明記されました
  • 特定行政書士の業務範囲拡大 ― 行政書士が作成できる書類であれば、実際に作成していなくても不服申立ての代理が可能に
  • 両罰規定の整備 ― 業務制限違反や名称使用制限違反について、違反者個人だけでなく所属する法人も処罰対象

⚠ 罰則の強化

改正後の罰則は「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」です。また、両罰規定により、違反行為を行った個人だけでなく、所属する法人に対しても罰金刑が科されます。

2. 行政書士法に基づく書類作成業務の独占

改正行政書士法では、以下のように規定されています。


改正後 第1条の3(業務)

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。


改正後 第19条第1項(業務の制限)

行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。


改正前の第19条では「業として(中略)業務を行うことができない」とのみ規定されていましたが、改正後は「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されました。


一方、ただし書きにある「他の法律に別段の定めがある場合」は、消防法令においても重要な除外規定となります。この点については次のセクションで詳しく解説します。


原則:消防署への提出書類(防火対象物の届出、危険物施設の許可申請、消防計画の提出等)を有償で作成できるのは、行政書士または行政書士法人に限られます


消防設備業者、建築士、コンサルタント、元消防職員等が「サービス料」「手数料」「コンサル料」「顧問料」等いかなる名目であっても報酬を得て作成することは、原則として行政書士法違反となります。


ただし、消防法等の他の法律で特定の資格者に書類作成が義務付けられている場合は、行政書士法第19条のただし書きにより除外されます(次セクション参照)。

3. 「他の法律に別段の定めがある場合」の除外規定

行政書士法第19条第1項のただし書きでは、「他の法律に別段の定めがある場合」は行政書士の独占業務から除外されると規定しています。消防法令に当てはめると、以下の場合が該当すると考えられます。


⚠ 重要な前提

以下の除外規定は、いずれも「自ら点検・工事等を実施した者が、その結果に付随する報告書を作成する場合」に限られます。自ら実施していない点検や工事について、報告書の作成のみを請け負う行為は、消防法上の根拠を持たないため、行政書士法違反に該当する可能性が極めて高くなります。

3-1. 消防設備士・消防設備点検資格者による点検結果報告書

消防法 第17条の3の3

防火対象物の関係者は、(中略)政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、(中略)その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。


消防法第17条の3の3は、一定の防火対象物において消防設備士又は消防設備点検資格者に消防用設備等の点検を義務付けています。自ら点検を実施した消防設備士・消防設備点検資格者が、その点検結果に基づいて「消防用設備等点検結果報告書」を作成することは、消防法が直接定めた業務の一環であり、行政書士法の除外規定に該当すると考えられます。

3-2. 防火対象物点検資格者による点検結果報告書

消防法 第8条の2の2

一定の防火対象物の管理について権原を有する者は、(中略)防火対象物点検資格者に、当該防火対象物における防火管理上必要な業務等について点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。


防火対象物点検資格者が自ら点検を実施した結果に基づいて「防火対象物点検結果報告書」を作成することは、消防法第8条の2の2に定められた業務に付随するものであり、行政書士法の除外に該当すると考えられます。

3-3. 防災管理点検資格者による点検結果報告書

消防法 第36条(第8条の2の2の準用)

一定の防火対象物の管理について権原を有する者は、防災管理点検資格者に、当該防火対象物における防災管理上必要な業務等について点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。


防災管理点検資格者が自ら点検を実施した結果に基づいて「防災管理点検結果報告書」を作成することも、消防法第36条に基づく業務に付随するものであり、同様に除外に該当すると考えられます。

3-4. 消防設備士(甲種)による着工届

消防法 第17条の14

甲種消防設備士は、工事整備対象設備等の工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の10日前までに、(中略)消防長又は消防署長に届け出なければならない。


消防法第17条の14は、甲種消防設備士が自ら行う工事について着工届の届出を義務付けています。この場合の届出書の作成も、消防法が直接規定する業務に付随するものであり、除外規定に該当すると考えられます。

3-5. 除外規定に該当しないケース

⚠ 以下の行為は除外規定に該当しません

次のような場合は、消防法上の根拠がなく、行政書士法違反となる可能性が高いため、十分にご注意ください。


×
自ら点検・工事を実施していない報告書の代行作成

消防設備士等の資格を有していても、自ら点検・工事を実施せず、書類作成のみを報酬を得て請け負う場合は、消防法上の業務に付随するものとは認められず、行政書士法違反に該当する可能性が極めて高いです。

×
消防計画の作成、防火管理者選任届出書、防火対象物使用開始届出書、消防設備設等置届出書の作成代行

消防計画作成届出書、防火管理者選任届出書、防火対象物使用開始届出書、消防設備設置等届出書などは、消防法上、特定の資格者に作成が義務付けられている書類ではありません。これらの書類を報酬を得て作成できるのは、行政書士または行政書士法人に限られます。

×
名目を変えた実質的な書類作成代行

改正行政書士法では「いかなる名目によるかを問わず」と明記されています。「コンサル料」「サービス料」「顧問料」「手数料」等に含める形で実質的に書類作成の対価を得ることは、明確に行政書士法違反となります。

4. 行政書士以外の者による書類作成の問題点

行政書士以外の者が、官公署に提出する書類を報酬を得て作成・届出した場合、その書類が直ちに無効となるとは限りません。しかし、以下のような重大な問題が生じます。


1.行政書士法違反の成立

改正行政書士法第19条に違反し、行政書士又は行政書士法人以外の者が報酬を得て官公署に提出する書類を作成した場合、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象となります。さらに、改正法で整備された両罰規定により、違反者個人だけでなく、その者が所属する法人も罰金刑を科されます。


2.書類の審査・受理への影響

官公署(消防署など)の審査担当者が、書類の作成者が適法でないことを認識した場合、書類の受理を拒否する可能性があります。令和7年の消防庁通知および改正行政書士法の施行により、消防署での審査の厳格化が進むことが予想されます。


3.書類の効力の問題

仮に官公署が提出書類を受理したとしても、後から「違法に作成された書類」であることが発覚した場合、行政手続の適正性に疑義が生じ、書類の効力が否定される可能性があります。許可や認可の前提となる書類であれば、許可の取消しや行政指導の対象になることもあり得ます。


4.申請者・法人への影響

行政書士資格を持たない者に依頼した事業者(申請者)も、手続きの不備や遅延、許可の取消しなどのリスクを負います。改正法の両罰規定により、書類を作成した者が所属する法人自体も処罰の対象となり得ます。法令遵守・コンプライアンスを掲げる企業にとって、慎重に管理すべき重要なリスクです。

5. 消防署へ提出する書類と行政書士の業務範囲

消防署への提出書類には、以下のようなものがあります。これらの書類を行政書士等でない者が他人の依頼を受け、いかなる名目であっても報酬を得て作成した場合、行政書士法違反となります。


🔥 火災予防に関する手続き

  • 防火管理者選任届出書
  • 消防計画作成・変更届出書
  • 防火対象物使用開始届出書
  • 立入検査結果報告書


⚠ 危険物保安に関する手続き

  • 危険物貯蔵所設置許可申請書
  • 危険物取扱者選任届出書
  • 変更届出書(貯蔵施設・取扱設備の変更等)
  • 設置完了検査申請書

🏭 石油コンビナート等の保安に関する手続き

  • 危険物施設保安計画届出書
  • 保安監督者選任届出書

6. まとめ

消防関連の手続きは行政書士にご依頼ください

行政書士以外の者が報酬を得て作成した書類は、「直ちに無効」とはならない場合もありますが、受理拒否、効力の否定、許可の取消しなどのリスクが高まります。
令和8年(2026年)1月1日施行の改正行政書士法により、「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て書類作成を行うことが禁止され、両罰規定により法人も処罰の対象となりました。
消防法令上、消防設備士や点検資格者が自ら実施した点検・工事に付随する報告書の作成は除外されますが、消防計画の作成・各種届出書の作成などは行政書士の独占業務です。消防庁通知と相まって、消防署での審査はさらに厳格化されることが予想されます。
消防法に基づく手続きの適法な運用のため、必ず行政書士に相談し、確実に手続きを進めましょう。


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