防火対象物点検の重要性:制度から点検項目まで徹底解説!

防火対象物点検の重要性:制度から点検項目まで徹底解説!

私たちの安全な暮らしを支える建物は、火災のリスクと常に隣り合わせです。万が一の火災から命と財産を守るためには、日頃からの火災予防対策と、万全の備えが欠かせません。この「日頃からの対策」の中心にあるのが「防火管理」であり、それを支える重要な制度が「防火対象物点検」です。
今回は、この防火対象物点検について、その制度の趣旨から、類似の「防災管理点検」との違い、点検が必要な建物の基準、そして点検を担う「防火対象物点検資格者」と具体的な点検項目まで、詳しく解説します。

 

--------------------------------------------------------------------------------

1. 防火対象物点検制度の趣旨

防火管理の基本精神は、「自分の建物や事業所は自分で守る」という考え方に基づいています。消防法では、火災の発生を防止し、万一火災が発生した場合でも被害を最小限に抑えるため、防火対象物(山林、舟車、船舶、建築物その他の工作物など)の関係者(所有者、管理者、占有者)に、防火管理者を定め、防火管理に係る消防計画に基づき必要な業務を行うことを義務付けています。
この防火管理業務や、建物に設置されている消防用設備等が、法律や命令に規定された基準に適合しているかを定期的に確認し、その結果を消防長または消防署長に報告する制度が「防火対象物点検」です。この制度の趣旨は、専門的な知識を持つ者による点検を通じて、火災の予防と人命・財産の保護を確実にすることにあります。

2. 防火対象物点検と防災管理点検の比較

「防火対象物点検」と混同されやすいものに「防災管理点検」があります。これらの点検は、対象とする災害の種類と目的が異なります。

防火対象物点検:

目的:

火災の発生を防止し、火災による被害を軽減することに特化しています。

点検事項:

防火管理に関する業務、消防用設備等の設置・維持、消防用水、消火活動上必要な施設など、主に火災予防と消火活動に関連する事項が対象となります。

防災管理点検:

目的:

火災以外の災害(特に地震)による被害の軽減を図ることを目的としています。東京都においては、「東京都震災対策条例」や「東京都帰宅困難者対策条例」に基づいて、地震発生時における混乱や事故の防止、そして帰宅困難者対策などが重視されます。

点検事項:

震災に備えての事前計画、震災時の活動計画、施設再開までの復旧計画などが含まれ、従業員の一斉帰宅抑制や、救出・救護資器材の準備、非常用物品の備蓄などが点検されます。
両者は異なる目的を持つものの、建物全体の安全性を確保し、災害時の被害を最小限に抑えるという共通の目標のために連携して実施されます。

3. 点検が必要な防火対象物の基準

防火対象物点検は、火災予防上特に必要と認められる大規模な建物や、不特定の多数の人が出入りする建物に義務付けられています。具体的には、消防法第8条第1項の防火対象物のうち、政令で定めるものとされています。
消防法に基づき、防火対象物点検が必要となる建物の主な基準は以下の通りです:

3.1別表第一に掲げられる特定の用途の建物で、延べ面積が1,000平方メートル以上のもの。

例えば、劇場、映画館、飲食店、物品販売店舗、病院、学校、ホテル、共同住宅、工場、倉庫などが該当します(別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項、(十六の三)項に掲げられるもの)。

3.2上記以外の特定の用途の建物で、延べ面積が1,000平方メートル以上のもののうち、消防長または消防署長が火災予防上特に必要と認めて指定するもの。

具体例としては、車両の交通の用に供される部分や駐車の用に供される部分で、床面積が一定以上のものなどが挙げられます。
避難階以外の階に、別表第一の特定の用途に供される部分が存在する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階または地上に直通する階段が2以上設けられていないもの(屋外に設けられているなど、総務省令で定める避難上有効な構造を有する階段の場合は1以上)。

3.3その他、消防設備士等による点検が特に必要と総務省令で定められる防火対象物。

4. 防火対象物点検資格者と点検項目の詳細

防火対象物点検は、「防火対象物における火災の予防に関する専門的知識を有する者で総務省令で定める資格を有するもの」(防火対象物点検資格者)が行う必要があります。

4.1防火対象物点検資格者とは:

火災予防に関する専門知識を持ち、総務省令で定める資格を有する者です。

 

具体的な資格例としては、安全管理者、危険物保安監督者、1級建築士などが挙げられ、これらに準ずる者で総務省令で定める学識経験を有する者も含まれます。また、総務大臣が指定する防災に関する学科や課程を修めて卒業し、1年以上の防火管理の実務経験を有する大学・高等専門学校卒業者も該当します。

 

東京都では、防災に関する専門知識を習得するための防火安全技術講習を修了した者も防火対象物点検資格者として認められます。

4.2点検項目(点検対象事項)の詳細:

防火対象物点検資格者が点検する項目は多岐にわたります。これらは、主に「防火管理上必要な業務」と「消防の用に供する設備、消防用水または消火活動上必要な施設」の設置および維持に関する事項に大別され、それぞれが法令に定める「点検基準」に適合しているかを確認します。

 

主な点検項目は以下の通りです:

 

防火管理業務に関する事項:

 

防火計画の作成・変更:

消防計画が適切に作成され、実態に合っているかを確認します。

 

消火・通報・避難訓練の実施:

訓練が計画通りに実施され、その内容が適切であるかを確認します。

 

火気使用・取扱いの監督:

火気を使用する設備や器具の管理状況、火元責任者の設置状況などを確認します。特定の火気設備(炉、厨房設備、変電設備、急速充電設備、蓄電池設備など)については、離隔距離、構造、安全装置、燃料供給、排気など、詳細な技術基準への適合が求められます。

 

避難・防火構造の維持管理:

廊下、階段、避難口、防火戸、防火壁、内装などの避難上・防火上必要な構造が適切に維持されているかを確認します。特に、避難通路の確保や防火戸の自動閉鎖装置の機能などが重要視されます。

 

収容人員の管理:

定員が守られ、過剰な収容による避難上の支障がないかを確認します。

 

防火教育の実施:

従業員等への防火教育が計画的に行われているかを確認します。

 

消防機関との連絡:

消防機関への報告・届出が適切に行われているかを確認します。

 

工事中の火気使用監督:

増改築等の工事中の火災予防対策や、火気使用の監督体制を確認します。

 

自衛消防組織:

自衛消防組織の編成状況や活動能力、装備(防火衣、ヘルメット、消火資機材、救助用具など)を確認します。

 

震災対策:

震災に備えての事前計画、震災時の活動計画、施設再開までの復旧計画などが消防計画に盛り込まれているか、また、従業員が施設内に待機するための飲料水、食糧などの備蓄状況も確認されます。

 

危険物・指定可燃物の貯蔵・取扱い:

指定数量未満の危険物や指定可燃物の貯蔵・取扱場所における容器、地震動対策、換気、静電気除去装置、配管の安全性、消火設備の設置状況なども点検対象です.

 

消防用設備等の設置・維持に関する事項:

 

消火設備:

消火器、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備などの種類、設置場所、数量、放水量、水源、加圧送水装置、非常電源などが基準に適合しているかを確認します。

 

警報設備:

自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、非常警報器具・設備などの感知器の種類、設置場所、警戒区域、受信機、非常電源などが基準に適合しているかを確認します。

 

避難設備:

避難器具(金属製避難はしご、救助袋、緩降機)、誘導灯、誘導標識などの設置場所、数量、種類、非常電源などが基準に適合しているかを確認します。

 

消防用水:

消防水利(池、泉水、井戸、水そうなど)の設置場所、有効水量、接近容易性などが基準に適合しているかを確認します。

 

消火活動上必要な施設:

排煙設備、連結送水管、非常コンセント設備、無線通信補助設備、非常用エレベーターなどの設置場所、構造、機能などが基準に適合しているかを確認します。

まとめ

防火対象物点検は、建物における火災予防と災害時の安全確保のための重要な取り組みです。専門的な知識を持つ「防火対象物点検資格者」が、消防法や関連法令に基づく詳細な点検項目に従って、建物全体の防火管理体制と消防用設備等の維持管理状況を厳しくチェックすることで、私たちの日々の安心が守られています。
定期的な点検を通じて、建物の安全性を維持し、万が一の事態に備えることの重要性を改めて認識し、日頃から防火意識を高めていきましょう。

お問い合せ
 

店舗・オフィスの入居や、消防署への届出でお困りの方、

ぜひご相談ください。

【初回相談は無料です】

03-6783-6727
受付時間 :  08:00~18:00 土日祝日も受付 運営 行政書士萩本昌史事務所