この記事の結論
1. 東京消防庁(消防署)から届く文書は、「お知らせ」「通知」といった名称ではなく、どの条文に基づく文書かで重さが決まります。報告や資料の提出を求める文書(消防法第4条第1項)に応じないと、30万円以下の罰金又は拘留の対象です(同法第44条第2号)。
2. 立入検査結果通知書が届いたら、指摘事項ごとの改修日または改修予定日を改修(計画)報告書で消防署長へ報告します。東京消防庁が様式を定めており、電子申請でも提出できます。
3. 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備の未設置は通知日から14日、一定の複数管理義務違反は通知日から2か月を経過しても同じ違反が残っていると、建物の名称・所在地・違反の内容が公表されます(東京都火災予防条例第64条の3、同条例施行規則第25条の3・第25条の4)。
4. 指摘に従わなければ警告、さらに命令へ進みます。命令の前には原則として弁明の機会が与えられます(行政手続法第13条第1項第2号)。命令に違反すると最も重いもので3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金刑です(消防法第39条の2の2、第45条第1号)。
5. 命令への審査請求の期間は、措置命令・使用禁止等命令・物件の除去等命令は命令を受けた日の翌日から30日(消防法第5条の4)、防火管理や消防用設備等に関する命令は行政不服審査法の原則どおり3か月です。審査請求をしても命令の効力は止まりません(行政不服審査法第25条第1項)。
6. 消防署を名乗る不審な訪問や電話もあります。消防職員の証票の提示を求め(消防法第4条第2項)、東京消防庁の公式サイトで調べた番号に自分でかけ直して確認してください。
「消防署から封書が届いたが、何を求められているのかわからない」「立入検査のあとに通知書を渡されたが、そのままにしている」「“消防署の方から来た”という人に消火器の交換を勧められた」。消防の手続のご相談のうち、最初の一歩でつまずいているケースの多くは、届いた文書が何なのかを見分けられていないことが原因です。
消防署からの文書には、日程調整の連絡のように返事をすれば済むものもあれば、放置すると罰則や公表につながるものもあります。そして、期限の数え方は文書の種類ごとに違います。最初に文書の種類を正しく見分ければ、次にやるべきことと期限はほぼ自動的に決まります。
本記事では、東京都内(東京消防庁管内)で店舗・事務所・ビルを所有、管理、使用している方に向けて、消防署から文書や連絡が届いたときの見分け方と、文書の種類ごとの法的な意味・期限・対応を、消防法・行政手続法・行政不服審査法・東京都火災予防条例・同条例施行規則の条文、総務省消防庁の通知、東京消防庁の公表資料に沿って整理します。条文はすべて2026年10月25日時点で原文を確認しています。立入検査そのものの流れや、よく指摘される事項は「消防署の立入検査とは|根拠条文・指摘事項・改修報告・罰則を解説」で詳しく解説しています。
最初に確認するのは、本物か、何の文書か、誰あてで、いつまでかの3点です。この3つが決まれば、対応の大半は決まります。
東京消防庁には、消防署を名乗る人物の訪問について都民から問い合わせが寄せられています。共同住宅のオーナーのもとに「消防署のほうから来ました」と名乗る3人組が訪れ、建物のセキュリティ関係の調査をさせてほしいと持ちかけた事例で、東京消防庁は「消防署ではセキュリティ関係の調査は行っておりません」と回答し、警察への相談も案内しています(東京消防庁「東京消防庁に寄せられた都民の声(令和5年5月分)」)。
確かめ方は次の2つです。
・訪問の場合:消防職員は、立入検査をするときに市町村長の定める証票を携帯し、関係のある者から請求があれば示さなければなりません(消防法第4条第2項)。提示を求めることは正当な対応です。
・文書・電話の場合:文書や電話で示された番号ではなく、東京消防庁の公式サイトで調べた管轄消防署の代表番号に自分でかけ直し、担当係と文書の内容を確認します。
消防法に基づく通知や命令で、特定の業者と契約することや、代金を振り込むことを求められることはありません。そのような要求がある文書や連絡は、まず疑ってください。
文書の重さを決めるのは、表題の「お知らせ」「通知」「お願い」といった言葉ではなく、根拠になっている条文です。文書の本文や末尾に記載された条文を確認し、次の表に当てはめてください。
| 届いた文書・連絡 | 根拠と法的な性格 | 対応しないと |
|---|---|---|
| 立入検査の日程調整の連絡 | 消防法第4条第1項。検査の予告。法律上、事前通告の義務はない | 検査を拒み、妨げ、忌避すると30万円以下の罰金又は拘留(第44条第2号) |
| 資料の提出・報告を求める文書 | 消防法第4条第1項。法律に基づく提出命令・報告の求め | 提出・報告をしない、虚偽の提出・報告は30万円以下の罰金又は拘留(第44条第2号) |
| 立入検査結果通知書 | 消防法第4条第1項の立入検査で認められた違反等の通知。改修(計画)報告書の提出を求められる | 違反が続けば警告・命令へ。一部の違反は通知日から14日または2か月で公表の対象 |
| 警告書 | 消防法に規定はない。違反処理の段階として、命令の前に行われる措置 | 履行されなければ命令へ進む |
| 弁明の機会の付与の通知 | 行政手続法第13条第1項第2号、第30条。命令(不利益処分)をする前に意見を述べる機会 | 期限までに弁明書を出さなければ、意見を述べないまま処分の判断に進む |
| 命令書 | 消防法第5条第1項、第5条の2第1項、第5条の3第1項、第8条第3項・第4項、第17条の4など。行政処分。法的な義務が課される | 命令違反は罰則。標識の設置等による公示 |
| 公表に関する周知 | 東京都火災予防条例第64条の3第2項。公表をしようとするときの関係者への周知 | 是正されなければ東京消防庁ホームページ等で公表 |
| 点検報告・届出に関する案内 | 消防法第17条の3の3、第8条の2の2、第8条第2項など。法令上の義務の履行を促す案内 | 点検結果の未報告は30万円以下の罰金又は拘留(第44条第11号。第45条第3号で両罰) |
| 法令改正・制度のリーフレット | 周知・広報 | 文書自体に義務はないが、改正内容が自分の建物に当たるかの確認が必要 |
消防法の命令は、「権原を有する関係者」(第5条第1項)、「管理について権原を有する者」(第8条第1項・第3項)、「関係者で権原を有するもの」(第17条の4第1項)にあてて出されます。テナントビルでは、建物全体の設備はビル所有者、各テナントの専用部分の防火管理はテナントの管理権原者、というように、違反の内容によって対応すべき人が変わります。誰に権原があるかは、建物の所有関係、賃貸借契約、管理委託契約の内容によって決まります。まず文書の名あて人を確認し、自分あてでない場合も、名あて人(ビル所有者・管理会社・テナント)へ速やかに共有してください。
期限は、文書に記載された日付のほか、法令で決まっているものがあります。特に、公表までの期間(第3章)と審査請求の期間(第4章)は、通知を受けた日・命令を受けた日を基準に自動的に進みます。封筒を開けた日ではなく、文書を受け取った日を記録しておいてください。
消防署から届く文書は、大きく報告・資料の提出の求め、違反の通知と指導、行政処分(命令)の3つに分かれます。法的な効果が違うので、対応の優先度も違います。
消防法第4条第1項は、消防長又は消防署長が「火災予防のために必要があるとき」に、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は消防職員に立入検査・質問をさせることができると定めています。
この規定による資料の提出や報告をしない、あるいは虚偽の資料・報告を出した者は、30万円以下の罰金又は拘留に処せられます(消防法第44条第2号)。「お願い」という表現であっても、第4条第1項に基づく求めであれば、応じないことには罰則があります。根拠条文が書かれていない場合は、管轄消防署に根拠を確認してください。
総務省消防庁が各消防本部の執務の参考として示している「立入検査標準マニュアル」は、検査の結果判明した消防法令違反等を通知すること、その通知は原則として文書(通知書)で行うことを示しています(平成21年9月11日付け消防予第379号による改正)。東京消防庁管内では、これが立入検査結果通知書です。
同じく「違反処理標準マニュアル」は、違反が是正されない場合の措置を、警告(一次措置)、命令(二次措置)、使用禁止等の命令(三次措置)という段階で整理しています。警告は消防法に条文がある処分ではなく、命令に進む前の段階で行われる措置です。なお、これらのマニュアルは消防組織法第37条に基づく助言として示されたもので、実際の運用は消防本部ごとに定められています。
命令は、法律に基づいて義務を課す行政処分です。主な命令は次のとおりです。
・措置命令(第5条第1項):防火対象物の改修、移転、除去、工事の停止又は中止その他の必要な措置
・使用禁止・停止・制限命令(第5条の2第1項):命令が履行されない場合や、命令では危険を除去できない場合
・物件の除去等の命令(第5条の3第1項)
・防火管理者選任命令(第8条第3項)、防火管理業務適正執行命令(第8条第4項)
・消防用設備等の設置・維持命令(第17条の4第1項・第2項)
命令をした場合、消防長又は消防署長は標識の設置その他総務省令で定める方法で、その旨を公示しなければなりません(消防法第5条第3項。第5条の2第2項、第8条第5項、第17条の4第3項などで準用)。標識は建物やその敷地に設置でき、所有者・管理者・占有者はその設置を拒んだり妨げたりできません(第5条第4項)。
立入検査結果通知書は、最も多く届く文書です。やることは、指摘事項ごとに改修日または改修予定日を決めて、改修(計画)報告書で消防署長へ報告することです。
東京消防庁は、立入検査結果通知書に記載された違反指摘事項について、改修日または改修予定日を消防署長へ報告する改修(計画)報告書の様式を定めています。東京都火災予防条例や同条例施行規則に定めのある届出ではなく、東京消防庁が様式を定めて提出を求めている報告です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報告する人 | 防火対象物の所有者、占有者又は管理者 |
| 提出先 | 管轄の消防署 |
| 様式 | 改修(計画)報告書(別記様式第24号)。指摘事項が多い場合は別記様式第24号その2 |
| 記載する内容 | 報告日、報告先の消防署名、防火対象物の名称・所在地、関係者の職名・氏名、検査結果通知書の交付日、指摘事項と改修をした日又は改修を計画している日 |
| 提出方法 | 電子申請、窓口、郵送等。窓口・郵送は原則1部(控えが必要なら写しを添える) |
| 電子申請の注意点 | 違反指摘事項の入力欄は5件まで。6件以上は別記様式第24号その2に記載して添付 |
テナントの入れ替え等に伴う報告の場合は、名称欄に「○○ビル2階(△△テナント)」のようにテナントが入る階とテナント名を書き、関係者欄にはテナントの関係者の職名・氏名を書きます(東京消防庁「改修(計画)報告書」記入要領)。
改修予定日は、実際に実行できる日で書いてください。設備工事が必要な指摘なら、消防設備業者の見積りと工期、ビル所有者の承諾、工事に伴う届出(消防用設備等の着工届・設置届、工事等計画届出書など)の期間を見込んで日付を決めます。書類の届出だけで解消できる指摘(防火管理者選任届出書、消防計画作成届出書など)は、届出の準備ができ次第、早めに解消できます。
東京都火災予防条例第64条の3第1項は、消防総監が、防火対象物の設備、管理等の状況が法令に違反する場合に、都民が利用する際の判断に資するためその旨を公表することができると定めています。公表の対象と期間は、同条例施行規則第25条の3・第25条の4が次のように定めています。
| 公表の対象となる違反 | 対象となる防火対象物 | 公表される時期 |
|---|---|---|
| 設置義務のある屋内消火栓設備、スプリンクラー設備又は自動火災報知設備が設置されていない違反 | 令別表第一に掲げる防火対象物 | 立入検査の結果を通知した日から14日を経過した日に、なお同一の違反が認められる場合 |
| 複数管理義務違反(防火管理者の選任、消防計画の作成・届出、訓練の実施、消防用設備等の点検報告などの義務違反が同時に2以上あるもの。立入検査の日前3年以内に、同じ関係者が同じ防火対象物又はその部分で複数管理義務違反をしたことがある場合に限る) | 消防法第8条第1項の防火対象物で、令別表第一(2)項・(3)項・(16)項イに掲げるもの | 立入検査の結果を通知した日から2か月を経過した日に、なお同一の違反が認められる場合 |
公表の方法は、東京消防庁ホームページへの掲載と、東京消防庁本部・管轄消防署(分署・出張所を含む)での閲覧です。公表されるのは、防火対象物の名称及び所在地、違反の内容(必要に応じて店舗等の名称を含む)などです。公表をしようとする場合、消防総監は関係者にその旨を周知するものとされています(条例第64条の3第2項)。公表中の違反が是正されたことが確認されれば、その内容は削除されます(規則第25条の4第3項)。
公表は罰則とは別の制度で、命令が出る前でも対象になり得ます。建物名と所在地がインターネット上に掲載されれば、集客、テナント誘致、取引先の評価に影響します。立入検査結果通知書を受け取った日から期間が進むことを前提に、改修の計画を立ててください。
警告書や命令書が届くのは、指摘が是正されないまま時間が経った場合や、火災危険が大きいと判断された場合です。この段階では、期限が法令で決まっている手続が出てきます。
消防法の命令は法律に根拠がある処分なので、行政手続法が適用されます(地方公共団体の機関の処分でも、根拠が条例又は規則に置かれているものを除き適用される。行政手続法第3条第3項)。行政庁が不利益処分をしようとする場合は、聴聞又は弁明の機会の付与という意見陳述の手続を執らなければなりません(同法第13条第1項)。違反処理標準マニュアルは、消防法第5条第1項、第5条の2第1項、第5条の3第1項、第8条第4項に基づく命令などを、弁明の機会の付与の対象として挙げています。
弁明の機会を与えるとき、行政庁は弁明書の提出期限までに相当な期間をおいて、次の事項を書面で通知しなければなりません(行政手続法第30条)。
・予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
・不利益処分の原因となる事実
・弁明書の提出先及び提出期限
弁明は、口頭が認められた場合を除き弁明書を提出して行い、証拠書類等を添えることができます(同法第29条)。すでに改修した、改修工事の契約を結んだ、事実関係が違う、といった事情があれば、写真・契約書・図面などを添えて具体的に書きます。
ただし、公益上、緊急に処分をする必要がある場合(同法第13条第2項第1号)や、法令で技術的な基準が明確にされていて、専らその基準を満たしていないことを理由に基準に従うよう命じる処分で、その事実が客観的な方法で確認された場合(同項第3号)などは、意見陳述の手続が省略されることがあります。弁明の機会があることを前提に待たないことが大切です。
| 命令(根拠) | 命令に違反した場合(法人への罰金刑) | 審査請求の期間 |
|---|---|---|
| 措置命令(第5条第1項。改修・移転・除去・工事の停止等) | 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金(第39条の3の2)。法人は1億円以下(第45条第1号) | 30日(命令を受けた日の翌日から) |
| 使用禁止・停止・制限命令(第5条の2第1項) | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(第39条の2の2)。法人は1億円以下(第45条第1号) | 30日(命令を受けた日の翌日から) |
| 物件の除去等の命令(第5条の3第1項) | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第41条第1項第1号)。法人は100万円以下(第45条第3号) | 30日(命令を受けた日の翌日から) |
| 防火管理者選任命令(第8条第3項) | 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(第42条第1項第1号)。法人は50万円以下(第45条第3号) | 3か月(処分があったことを知った日の翌日から) |
| 防火管理業務適正執行命令(第8条第4項) | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第41条第1項第2号)。法人は100万円以下(第45条第3号) | 3か月(処分があったことを知った日の翌日から) |
| 消防用設備等の設置命令(第17条の4) | 設置しなかった場合、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第41条第1項第5号)。法人は3,000万円以下(第45条第2号) | 3か月(処分があったことを知った日の翌日から) |
| 消防用設備等の維持命令(第17条の4) | 維持のため必要な措置をしなかった場合、30万円以下の罰金又は拘留(第44条第12号)。法人は30万円以下(第45条第3号) | 3か月(処分があったことを知った日の翌日から) |
条文はいずれも消防法。拘禁刑と罰金は情状により併科されることがある(第39条の2の2第2項、第39条の3の2第2項、第41条第2項)。
消防法第5条の4は、第5条第1項、第5条の2第1項、第5条の3第1項の命令についての審査請求の期間を、命令を受けた日の翌日から起算して30日と定めています。火災の危険を早く除く必要があるため、行政不服審査法の原則より短くされています。
一方、第5条の4が挙げていない命令、つまり第8条第3項・第4項の防火管理に関する命令や第17条の4の消防用設備等の設置・維持命令は、行政不服審査法第18条第1項の原則どおり、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月です。「消防の命令は30日」「3か月あるから大丈夫」と一律に考えると、期間を誤ります。
行政庁は、審査請求ができる処分を書面でするとき、審査請求ができる旨、審査請求をすべき行政庁、審査請求ができる期間を書面で教示しなければなりません(行政不服審査法第82条第1項)。命令書が届いたら、まず教示欄を確認してください。
審査請求をしても、命令の効力は止まりません。
審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げません(行政不服審査法第25条第1項)。執行停止は審査庁が必要と認めた場合に限られます(同条第2項)。審査請求で争っている間も、命令に従わなければ命令違反の状態が続きます。改修を進めながら争うのか、改修そのものの要否を争うのかを、早い段階で決めてください。
裁判所に処分の取消しを求める取消訴訟は、処分があったことを知った日から6か月が原則です(行政事件訴訟法第14条第1項)。訴訟の代理は弁護士の業務です。
点検結果の報告や届出についての案内が届いた時点では、すでに報告・届出の期限を過ぎていることが多くあります。案内の内容が自分の建物に当たるかを確認し、当たるなら速やかに提出します。
提出先は、いずれも建物を管轄する消防署長です。
| 報告・届出(義務を負う人) | 時期 | 怠った場合 |
|---|---|---|
| 消防用設備等点検結果報告書 (防火対象物の関係者(第17条の3の3)) |
特定防火対象物は1年に1回、その他は3年に1回 | 30万円以下の罰金又は拘留(第44条第11号。第45条第3号で両罰) |
| 防火対象物点検結果報告書 (管理権原者(第8条の2の2第1項)) |
1年に1回 | 30万円以下の罰金又は拘留(第44条第11号。第45条第3号で両罰) |
| 防火管理者選任(解任)届出書 (管理権原者(第8条第2項)) |
選任・解任後遅滞なく | 30万円以下の罰金又は拘留(第44条第8号) |
| 消防計画作成(変更)届出書 (管理権原者(作成は防火管理者。消防法施行規則第3条第1項)) |
作成・変更のとき | 直接の罰則はないが、防火管理業務適正執行命令(第8条第4項)の対象になり得る |
| 防火対象物使用開始届出書 (防火対象物を使用しようとする者(東京都火災予防条例第56条の2第1項)) |
使用開始日の7日前まで | 届出をせずに使用すると10万円以下の罰金(同条例第67条の2第4号) |
点検を消防設備業者や点検資格者に委託していても、報告の義務は関係者・管理権原者から移りません。消防用設備等の点検報告の詳細は「消防用設備等点検報告制度とは」、防火対象物点検は「防火対象物点検とは」で解説しています。
同じ案内でも、建物の状況によって必要な手続が変わります。次の4点を確認してください。
・既存の建物か、新装工事をしたか:内装の模様替えや間取りの変更をしたなら、防火対象物工事等計画届出書(東京都火災予防条例第56条)が出ているか
・テナントの入れ替えがあったか:新しいテナントの使用開始届出書、防火管理者選任届出書、消防計画作成届出書が出ているか
・用途が変わったか:事務所が飲食店や物販店に変わると、令別表第一の項が変わり、消防用設備等や防火管理者の要否が変わることがある
・消防用設備等の現況:直近の点検票で不良箇所が指摘されたまま残っていないか、設備が撤去・移設されていないか
消防署を名乗る、あるいは消防署と関係があるように装って、点検や交換の契約を迫る業者がいます。東京消防庁は、突然訪問して消火器や漏電火災警報器などの点検・販売・リースについて十分な説明をしないまま作業を進め、料金を請求する被害について注意を呼びかけています。
東京消防庁が事業所向けに挙げている手口は、出入りの点検業者を装って訪問する、専門知識のない担当者に「10年以上使用すると交換が必要」「毎年交換が必要」などと説明する、あいまいな返事を承諾と受け取って作業をする、契約内容を説明せずに署名・押印を求める、といったものです(東京消防庁「悪質な訪問点検・販売・リースに注意」)。
事業所でのトラブル防止策(東京消防庁の案内から)
・社員証などで、本当に出入りの業者か確認する
・防火管理者などに連絡し、直近の点検状況を確認する
・契約内容を確認してから署名・押印する。その場で支払わず、必要に応じて他の業者にも見積りを依頼する
・機能点検や薬剤の詰替えには、防火管理者などが立ち会って内容を確認する
・消火器を持ち帰る場合は、代わりの消火器を設置させる
・不審に思ったら、最寄りの消防署に相談する。契約内容や金額については消費生活センターに相談する
事業者が営業のために結んだ契約は、原則として特定商取引法のクーリング・オフ等の規定の適用から除かれます(特定商取引法第26条第1項第1号)。会社や店舗の名義で契約すると、後から解除できない場合があるということです。契約の実態によって判断が分かれることもあるため、署名する前に立ち止まり、迷ったら消防署や消費生活センターに相談してください。
消防署から届いた文書への対応は、書類の作成・提出、意見陳述、不服申立て、工事、点検と、担い手が分かれます。
| 対応 | 担い手 | 根拠 |
|---|---|---|
| 改修(計画)報告書、未提出の届出書(防火管理者選任届出書、消防計画作成届出書、使用開始届出書など)の作成 | 行政書士 | 行政書士法第1条の3第1項 |
| 上記の書類の消防署への提出手続の代理 | 行政書士 | 行政書士法第1条の4第1項第1号 |
| 行政書士が作成できる書類に係る許認可等に関する弁明の機会の付与の手続の代理 | 行政書士(弁護士法第72条の法律事件に関する法律事務に当たるものを除く) | 行政書士法第1条の4第1項第1号 |
| 行政書士が作成できる書類に係る許認可等に関する審査請求の代理と、その書類の作成 | 特定行政書士 | 行政書士法第1条の4第1項第2号・第2項 |
| 取消訴訟などの裁判手続 | 弁護士 | 弁護士法 |
| 消防用設備等の工事・整備 | 消防設備士 | 消防法第17条の5 |
| 防火対象物点検 | 防火対象物点検資格者 | 消防法第8条の2の2第1項 |
「許認可等」には行政手続法第2条第3号の許認可等のほか書類の受理が含まれ(行政書士法第1条の4第1項第1号かっこ書き)、不服申立ての対象を申請に対する処分に限っていません。そのため、命令のような不利益処分であっても、行政書士が作成できる書類に係る許認可等に関するものであれば、特定行政書士が審査請求を代理できます。
報告書・届出書の作成を有償で代行できるのは行政書士だけです
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として官公署に提出する書類を作成することができません(行政書士法第19条第1項)。違反した者は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます(同法第21条の2)。消防設備業者が改修工事を請け負い、改修(計画)報告書や届出書の作成を工事代金や手数料に含めて行うことも、この規定に当たります。点検業者が作成できるのは点検票などの点検結果の記録までです。詳しくは「消防署提出書類の作成代行は行政書士法違反」をご覧ください。
当事務所の代表 萩本昌史は、日本行政書士会連合会の研修課程を修了した特定行政書士です(行政書士法第1条の4第2項)。消防設備士、防火対象物点検資格者、防災管理点検資格者の資格も有しており、指摘事項の内容を設備・管理の両面から確認したうえで、書類の作成と消防署との調整を行います。報酬は報酬額表をご覧ください。改修(計画)報告書など報酬額表にない業務は、指摘事項の内容を確認したうえで個別にお見積りします。
文書の重さは表題ではなく根拠条文で決まります。消防法第4条第1項に基づく報告・資料提出の求めであれば、応じないことに罰則があります(第44条第2号)。
報告書は、改修日又は改修予定日を報告するものです。予定日までに改修しなければ違反は残り、公表の対象になる違反なら、通知日から14日又は2か月を経過した時点で同一の違反が認められれば公表されます。
30日になるのは第5条第1項、第5条の2第1項、第5条の3第1項の命令だけです(第5条の4)。第8条第3項・第4項や第17条の4の命令は、行政不服審査法の原則どおり3か月です。命令書の教示欄で必ず確認してください。
審査請求は処分の効力・執行を妨げません(行政不服審査法第25条第1項)。執行停止の決定がない限り、命令の義務は続きます。
命令の名あて人は、違反の内容について権原を有する者です。設備の違反ならビル所有者、テナントの防火管理の違反ならテナントの管理権原者、というように分かれます。自分あての文書でなくても、名あて人と情報を共有し、誰が何をいつまでに行うかを決めてください。
消防署の指摘に対応する工事や点検であっても、どの業者に依頼するかは関係者が選びます。消防署の名前を出して契約を急がせる業者には、その場で契約せず、管轄消防署に確認してください。
文書や電話で示された番号ではなく、東京消防庁の公式サイトで調べた管轄消防署の代表番号に自分でかけ直し、担当係と文書の内容を確認してください。訪問の場合は、消防職員が携帯している証票の提示を求めることができます(消防法第4条第2項)。消防法に基づく通知や命令で、特定の業者との契約や代金の振込みを求められることはありません。
指摘事項ごとに改修日又は改修予定日を決め、改修(計画)報告書(別記様式第24号)で管轄の消防署長へ報告します。報告するのは防火対象物の所有者、占有者又は管理者で、電子申請、窓口、郵送等で提出できます。書類の届出で解消できる指摘は早めに届出を済ませ、設備工事が必要な指摘は業者の工期を見込んで実行できる予定日を書いてください。
改修(計画)報告書は東京消防庁が様式を定めて求めている報告で、東京都火災予防条例や同条例施行規則に提出期限の定めはありません。通知書の記載や消防署の指示を確認してください。ただし、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備の未設置は通知日から14日、一定の複数管理義務違反は通知日から2か月を経過して同一の違反が認められると公表されるため(同条例施行規則第25条の4第1項)、早めの報告と改修が必要です。
警告は、消防法に条文がある処分ではなく、命令に進む前の段階で行われる措置です。命令は、消防法第5条第1項、第5条の2第1項、第8条第3項・第4項、第17条の4などに基づく行政処分で、違反すると罰則があり、標識の設置等で公示されます(第5条第3項ほか)。命令の前には、原則として弁明の機会が与えられます(行政手続法第13条第1項第2号)。
消防法第5条第1項(措置命令)、第5条の2第1項(使用禁止等命令)、第5条の3第1項(物件の除去等の命令)の命令は、命令を受けた日の翌日から起算して30日です(第5条の4)。第8条第3項・第4項や第17条の4の命令は、行政不服審査法第18条第1項により、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月です。審査請求先と期間は命令書に教示されます(行政不服審査法第82条第1項)。
よくありません。審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げません(行政不服審査法第25条第1項)。審査庁が執行停止をしない限り、命令の義務は続き、従わなければ命令違反の罰則の対象になり得ます。
消防法第4条第1項に基づく求めであれば、資料を提出しない、報告をしない、虚偽の資料・報告を出すことは、30万円以下の罰金又は拘留の対象です(第44条第2号)。根拠が書かれていない場合は、管轄消防署に根拠条文を確認したうえで対応してください。
違反の内容について権原を有する人が対応します。建物全体の消防用設備等の違反はビル所有者、テナントの専用部分の防火管理や内装の違反はテナントの管理権原者というように分かれることが多く、実際には所有関係や賃貸借契約、管理委託契約の内容で決まります。文書の名あて人を確認し、ビル所有者・管理会社・テナントの間で情報を共有してください。
その場で契約や支払いをせず、出入りの業者かどうか、直近の点検状況を防火管理者などに確認してください。東京消防庁は、不審に思ったら最寄りの消防署に、契約内容や金額については消費生活センターに相談するよう案内しています。事業者が営業のために結んだ契約は、原則としてクーリング・オフの対象外です(特定商取引法第26条第1項第1号)。
頼めません。行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として官公署に提出する書類を作成することができません(行政書士法第19条第1項)。違反した者は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(同法第21条の2)。工事費や手数料に含める形でも同じです。
違反を是正し、管轄消防署に是正したことを確認してもらいます。消防総監は、公表中の違反が是正されたことを確認した場合、その内容を削除するものとされています(東京都火災予防条例施行規則第25条の4第3項)。
1. 本物か:東京消防庁の公式サイトで調べた番号で管轄消防署に確認する
2. 何の文書か:根拠条文を見て、報告の求め・違反の通知・命令のどれかを判断する
3. 誰あてか:名あて人を確認し、ビル所有者・管理会社・テナントで共有する
4. 期限はいつか:受け取った日を記録する。公表は通知日から14日又は2か月、審査請求は30日又は3か月
5. 何を出すか:改修(計画)報告書、未提出の届出書、弁明書を、実行できる計画とともに出す
6. 誰に頼むか:書類は行政書士、審査請求は特定行政書士、工事は消防設備士、裁判は弁護士
消防署からの文書は、早い段階で対応するほど選択肢が多く、費用も小さく済みます。立入検査結果通知書や警告書が届いた、何の文書かわからない、という場合は、文書を手元に置いたままご相談ください。
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・消防法(昭和23年法律第186号)第4条、第5条、第5条の2、第5条の3、第5条の4、第8条、第8条の2の2、第17条の3の3、第17条の4、第17条の5、第39条の2の2、第39条の3の2、第41条、第42条、第44条、第45条
・消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条
・東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第56条、第56条の2、第64条の3、第67条の2
・火災予防条例施行規則(昭和37年東京都規則第100号)第25条の3、第25条の4
・行政手続法(平成5年法律第88号)第2条、第3条、第13条、第29条、第30条
・行政不服審査法(平成26年法律第68号)第18条、第25条、第82条
・行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)第14条
・行政書士法(昭和26年法律第4号)第1条の3、第1条の4、第19条、第21条の2
・特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)第26条
・総務省消防庁「「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」の一部改正について」(平成21年9月11日付け消防予第379号)
・東京消防庁「改修(計画)報告書」
・東京消防庁「悪質な訪問点検・販売・リースに注意」
・東京消防庁「東京消防庁に寄せられた都民の声(令和5年5月分)」
・e-Gov法令検索:消防法
・e-Gov法令検索:行政手続法
・e-Gov法令検索:行政不服審査法
・東京都例規集:火災予防条例
・東京都例規集:火災予防条例施行規則
・総務省消防庁:消防予第379号(立入検査・違反処理マニュアルの改正)
・東京消防庁:改修(計画)報告書
・東京消防庁:悪質な訪問点検・販売・リースに注意
・東京消防庁:東京消防庁に寄せられた都民の声(令和5年5月分)
この記事を書いた人
萩本昌史(はぎもと まさし)/特定行政書士
保有資格:特定行政書士、消防設備士、防火対象物点検資格者、防災管理点検資格者
行政書士萩本昌史事務所/東京の消防手続支援ステーション
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本記事は2026年10月25日時点で確認した法令・公的資料をもとにした一般的な解説です。法令改正、管轄消防署の運用、個別の建物の用途・規模・権原関係、届いた文書の内容により結論が変わる場合があります。具体的な案件は、対象建物を管轄する消防署および行政書士にご確認ください。
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