無窓階とは?判定基準・消防設備・東京消防庁の運用を解説

無窓階とは?判定基準・消防設備・東京消防庁の運用を解説

無窓階とは、消防法施行規則第5条の5に定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階のことです。判定基準、東京消防庁のガラス・足場の運用、無窓階になると必要になる消防用設備等を行政書士が解説します。

結論:無窓階とは「窓がない階」のことではありません。消防法施行令第10条第1項第5号にいう無窓階とは、消防法施行規則第5条の5が定める「避難上又は消火活動上有効な開口部」を一定以上有しない階のことです。窓がずらりと並んでいる階でも、ガラスの種類・厚さ・開き方や、窓の外に消防隊が立てる場所があるかどうかによって無窓階と判定されます。そして無窓階になった瞬間、消火器・屋内消火栓・自動火災報知設備・誘導灯などの設置基準が一段厳しくなります。
「図面上は窓が十分あるのに、消防署から無窓階だと言われた」——テナント入居や内装工事の相談で、最も多い驚きのひとつです。原因のほとんどは、網入りガラスのはめ殺し窓(FIX窓)や、窓の外に足場となる空地がないといった、図面の面積計算だけでは見えない要素にあります。
本記事は、東京都内でオフィス移転・店舗開設・テナント入居を予定している事業者の方に向けて、無窓階の定義と判定方法、東京消防庁の運用基準、無窓階になった場合に必要となる消防用設備等、そして実務上の対応策を、消防法・同施行令・同施行規則・東京都火災予防条例および東京消防庁「予防事務審査・検査基準」に沿って整理した実務ガイドです。


1. 無窓階とは|消防法上の定義と根拠条文

無窓階(むそうかい)とは、建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいいます。この定義は消防法施行令第10条第1項第5号のかっこ書きに置かれています。そして「総務省令で定める」中身が、消防法施行規則第5条の5です。
ここで押さえておきたいのは、無窓階は「窓の有無」ではなく「消防隊が外から進入できるか」「中の人が外へ逃げられるか」で決まるという点です。条文の見出しも「避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階」となっており、窓という言葉は出てきません。

規定 定めている内容
政令 消防法施行令第10条第1項第5号 無窓階という用語の定義(総務省令で定める開口部を有しない階)
省令 消防法施行規則第5条の5第1項 床面積に対する開口部の割合(30分の1)と大型開口部の数
省令 消防法施行規則第5条の5第2項 開口部として認められるための4つの条件
運用基準 東京消防庁「予防事務審査・検査基準Ⅰ」第2章第1節第6「無窓階の取扱い」 ガラスの種類・厚さ、足場の有無、シャッター等の細目

💡 ポイント:無窓階そのものは東京都火災予防条例に定めがある事項ではなく、全国共通の消防法令上の概念です。ただし、判定の細部をどう運用するかは各消防本部の審査基準に委ねられており、東京消防庁管内では上表の「予防事務審査・検査基準Ⅰ」が実務上の判断材料になります。他県の物件では結論が異なることがあります。

「普通階」という用語もセットで覚える

規則第5条の5第1項は、開口部の割合の要件を満たす階を「普通階」と定義しています。つまり法令上は「普通階か、それ以外(=無窓階)か」という切り分けです。実務では「有窓階」という言い方もされますが、これは法令用語ではなく、普通階を指す通称と理解しておくとよいでしょう。


2. 無窓階の判定基準|11階以上と10階以下で要件が違う

消防法施行規則第5条の5第1項は、階の高さによって二段構えの基準を置いています。

(1) 11階以上の階|床面積の30分の1

直径50センチメートル以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が、その階の床面積の30分の1を超える階が普通階です。これを超えなければ無窓階になります。
たとえば床面積600平方メートルの階であれば、30分の1は20平方メートルです。有効な開口部の合計面積が20平方メートルを「超える」ことが必要で、ちょうど20平方メートルでは足りません。

(2) 10階以下の階|30分の1に加えて「大型開口部が2以上」

10階以下の階では、30分の1の要件に加えて、その開口部のなかに次のいずれかの大型開口部が2以上含まれていることが必要です。

  • 直径1メートル以上の円が内接することができる開口部
  • 幅75センチメートル以上かつ高さ1.2メートル以上の開口部

10階以下は消防隊がはしご等で外部から進入する階であるため、進入口として使える大きさの開口部が複数求められている、という趣旨です。

⚠ 注意:面積の合計だけを計算して「30分の1を超えたから大丈夫」と判断するのは、10階以下の階では誤りです。小さな窓をいくら足し合わせても、大型開口部が2以上なければ無窓階になります。逆に、大型開口部が2つあっても合計面積が30分の1以下であれば、やはり無窓階です。両方を同時に満たす必要があります。


3. 開口部として認められるための4つの要件

ここが実務で最もつまずく部分です。窓であれば何でも算入できるわけではなく、消防法施行規則第5条の5第2項が定める次の要件に適合したものだけが、開口部として計算に入ります。11階以上の階では、このうち第2号(空地に面すること)は適用されません。

要件 実務でのチェックポイント
第1号 床面から開口部の下端までの高さが1.2メートル以内であること 腰高窓、カウンター上の高窓は要注意。床から窓下端までを実測する
第2号 道又は道に通ずる幅員1メートル以上の通路その他の空地に面したものであること 隣地境界ぎりぎりに建つビルの側面窓、隣家との狭い隙間に面する窓は算入できない場合がある
第3号 格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有せず、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること 防犯用の面格子、シャッター、ガラスの種類・厚さ、防犯フィルムの有無
第4号 開口のため常時良好な状態に維持されているものであること 窓の前に什器・商品・棚を積む、窓を塞ぐ内装を施すと該当しなくなる

特に第4号は、竣工時は適合していても、営業を始めてから適合しなくなるタイプの要件です。立入検査で「窓の前に段ボールを積まないように」と指導されるのは、この規定が背景にあります。

東京消防庁が緩和的に取り扱う例

東京消防庁の「無窓階の取扱い」では、次のような場合に要件を満たすものとして取り扱うことができるとされています。実務ではこの運用を知っているかどうかで結論が変わることがあります。

  • 踏み台による1.2メートルの確保:不燃材料で造られ、開口部のある壁面と隙間なく床に固定され、高さおおむね30センチメートル以内・奥行き30センチメートル以上・幅は開口部の幅以上で、踏み台上端から開口部下端まで1.2メートル以内であるなど、所定の要件を満たす踏み台を設けた場合
  • 空地の範囲:国又は地方公共団体等が管理する公園、道に通じる広場、傾斜地・河川敷のほか、一定の要件を満たす中庭も「通路その他の空地」として取り扱える場合がある
  • 閉店後に無人となる建物:営業中は規則第5条の5に定める開口部を有するが、閉店後に重量シャッター等を閉鎖することにより無窓階となる階について、防火対象物全体が無人となる場合は、その階を無窓階以外の階として取り扱うことができる


4. 東京消防庁の運用|ガラスの種類と厚さで結論が変わる

規則第5条の5第2項第3号の「外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるもの」に当たるかどうかは、条文を読んだだけでは判断できません。東京消防庁は「予防事務審査・検査基準Ⅰ」のなかで、ガラスの種類・呼び厚さ・窓の開き方(引き違いかFIXか)・破壊作業のできる足場の有無・窓ガラス用フィルムの有無を組み合わせた判定表を示しています。
その要点を整理すると次のとおりです(実際の基準はより多くの区分を含みます。必ず最新の基準と所轄消防署の判断をご確認ください)。

ガラスの種類・厚さ 窓の形式 足場あり 足場なし(フィルムなし・A) 足場なし(フィルムB)
普通板・フロート板・磨き板・型板・熱線吸収・熱線反射ガラス(厚さ8ミリ以下) 引き違い等
同上 FIX(はめ殺し) ×
網入板ガラス・線入板ガラス(厚さ6.8ミリ以下) 引き違い等
網入板ガラス・線入板ガラス(上記以外で厚さ10ミリ以下) 引き違い等 × ×
網入板ガラス・線入板ガラス(厚さを問わない) FIX(はめ殺し) × × ×
強化ガラス・耐熱板ガラス(厚さ5ミリ以下) 引き違い等
同上 FIX(はめ殺し) ×
合わせガラス(PVB30ミル以下、又はEVA中間膜を用いる所定の構成のもの) 引き違い等 ×
合わせガラス(PVB60ミル以下の所定の構成のもの) 引き違い等 × ×
合わせガラス(構成を問わない) FIX(はめ殺し) × × ×
倍強度ガラス 引き違い等・FIX × × ×

凡例は次のとおりです。

  • :規則第5条の5第2項第3号後段に規定する開口部として取り扱うことができる
  • :ガラスの一部を破壊して外部から開放できる部分を開口部として取り扱うことができる(引き違い窓の場合、おおむね2分の1の面積で算定する)
  • ×:開口部として取り扱うことはできない

用語の意味も押さえておいてください。

  • 足場ありとは、避難階、建築基準法施行令第126条の7第5号に規定する構造以上のバルコニー、屋上広場など、破壊作業のできる足場が設けられているものをいいます。
  • 引き違い等とは、引き違い窓・片開き戸・開き戸など、通常は部屋から開放でき、かつガラスの一部を破壊することにより外部から開放できるものをいいます。
  • 窓ガラス用フィルムAは、多積層以外で基材の厚さ100マイクロメートル以下のPET製フィルム、基材の厚さ400マイクロメートル以下の塩化ビニル製フィルム、低放射ガラス(Low-E膜付きガラス)などです。フィルムBは、多積層以外で基材の厚さが100マイクロメートルを超え400マイクロメートル以下のPET製フィルム、多積層で基材の厚さ100マイクロメートル以下のPET製フィルムなどを指します。
  • 普通板ガラス等で厚さが6ミリを超えるものは、ガラスの大きさがおおむね2平方メートル以下かつガラス天端の高さが床から2メートル以下のものに限られます。
  • PVBとはポリビニルブチラール、EVAとはエチレン酢酸ビニル共重合体のことで、いずれも合わせガラスの中間膜に使われる材料です。「ミル」は中間膜の厚さの単位で、30ミルは膜厚0.76ミリメートル、60ミルは膜厚1.52ミリメートルに相当します。なお、EVA中間膜は基準上、特定のメーカーの製品に限られています。
  • 複層ガラスは、これを構成する材料板ガラスごとに上表により評価し、全体の判断を行います(網入板ガラス・線入板ガラスは厚さ6.8ミリ以下のものに限られます)。

⚠ 注意:この表で最も実務への影響が大きいのが、網入板ガラスのはめ殺し窓(FIX窓)はすべて「×」という点です。防火設備として網入りガラスのFIX窓を採用しているビルは都内に多く、外観上は開口部が十分あるのに階全体が無窓階と判定される、という事態が現実に起こります。物件を検討する段階で、窓のガラス種別と開閉方式を必ず確認してください。

シャッター・二重窓・間仕切りの取扱い

東京消防庁の基準では、ガラス以外についても細かな取扱いが定められています。主なものは次のとおりです。

  • 軽量シャッター(JIS A 4704で定めるスラットの板厚が1.0ミリメートル以下のもの)は、煙感知器との連動により解錠した後に屋内外から手動で開放できるもの(非常電源付きに限る)、避難階又はこれに準ずる階に設けられ屋外から消防隊が特殊な工具を用いることなく容易に開放できるもの、屋外から常時手動で解錠できるサムターン付きのものなどが、開口部として取り扱えます。
  • 防火設備であるシャッターは、防災センター等の常時人がいる場所から遠隔操作で開放できるもの、屋内外から電動で開放できるもの(いずれも非常電源付きに限る)、屋外から水圧によって開放できる装置を備え送水口が1階にあるものなどが対象となります。水圧開放装置については、昭和52年12月19日消防予第251号「シャッター等の水圧開放装置に関する取扱いについて」に適合していることが求められます。
  • 間仕切り壁で開口部と室内が区画されている場合でも、開口部と相対する位置に屋内外から手動で開放できる出入口が設けられているときや、通路の幅員がおおむね1メートル以上・高さ1.8メートル以上で間仕切り壁等の出入口と外壁開口部との距離がおおむね10メートル以下であるときなどは、開口部として取り扱える場合があります。

新しいガラスは破壊試験で判定される

基準の表に載っていない新しい種類のガラスについては、東京消防庁の基準に「窓ガラス破壊試験方法」(別記1)と「合わせガラスに係る破壊試験ガイドライン」(別記2)が定められており、その試験結果によって判定されます。合わせガラスの破壊試験ガイドラインは、総務省消防庁の通知「合わせガラスに係る破壊試験ガイドラインの策定及び無窓階の判定等運用上の留意事項について」(平成19年3月27日消防予第111号)を受けたものです。国の通知と東京消防庁の運用基準は、この点で整合が図られています。


5. 無窓階になると何が変わるのか|消防用設備等の設置基準

無窓階と判定されると、その階は地階と同等に扱われ、消防用設備等の設置基準が一段厳しくなります。主な規定を整理します。

消防用設備等 無窓階に適用される基準 根拠条文
消火器具 地階・無窓階・3階以上の階で、床面積50平方メートル以上のもの 消防法施行令第10条第1項第5号
屋内消火栓設備 地階・無窓階・4階以上の階で、別表第一(一)項は100平方メートル以上、(二)項から(十)項まで・(十二)項・(十四)項は150平方メートル以上、(十一)項・(十五)項は200平方メートル以上 消防法施行令第11条第1項第6号
自動火災報知設備 別表第一(二)項イからハまで・(三)項・(十六)項イの地階・無窓階は床面積100平方メートル以上。そのほかは地階・無窓階・3階以上の階で床面積300平方メートル以上 消防法施行令第21条第1項第10号・第11号
誘導灯(避難口誘導灯・通路誘導灯) 別表第一(五)項ロ・(七)項・(八)項・(十)項から(十五)項まで・(十六)項ロについては、地階・無窓階・11階以上の部分が設置対象 消防法施行令第26条第1項第1号・第2号
排煙設備 別表第一(二)項・(四)項・(十)項・(十三)項の地階・無窓階で、床面積1,000平方メートル以上 消防法施行令第28条第1項第3号
避難器具 別表第一(十二)項・(十五)項の3階以上の階又は地階で、収容人員が、無窓階又は地階は100人以上、その他の階は150人以上のもの 消防法施行令第25条第1項第4号

このほか、スプリンクラー設備や連結散水設備などにも、地階・無窓階を基準に取り込む規定があります。対象となる用途は消防法施行令別表第一の項区分で決まりますので、まず自社の建物・テナントがどの項に当たるかを確認してください。用途の考え方は「消防法における建物の用途判定とは?」で詳しく解説しています。

感知器の種別にも影響する

設置の要否だけでなく、設置する感知器の種別にも影響が及びます。自動火災報知設備の感知器については消防法施行規則第23条に定めがあり、同条第5項では、階段・傾斜路、廊下・通路、エレベーターの昇降路等と並んで、地階、無窓階及び11階以上の部分が煙感知器等を設けるべき場所として掲げられています(同項第6号)。熱感知器では足りず煙感知器が必要になる、あるいは設置個数が増えるといった形で、工事費に直接跳ね返ってきます。

📌 コストへの影響:無窓階と判定されると、自動火災報知設備の新設、屋内消火栓の設置、誘導灯の追加といった工事が一度に必要になることがあります。100平方メートル前後の小規模テナントであっても、内装工事とは別枠で数百万円規模の設備投資が生じる場合があり、事業計画そのものを見直さざるを得ないケースもあります。物件の賃貸借契約を締結する前に確認すべき最重要項目のひとつです。


6. 混同しやすい概念との違い|無窓居室・非常用進入口

「無窓」という語が付く制度は複数あり、実務では頻繁に混同されます。根拠となる法律も、判定方法も、効果もそれぞれ異なります。

用語 根拠法令 判定の単位 主な効果
無窓階 消防法施行令第10条第1項第5号、消防法施行規則第5条の5 階ごと 消防用設備等の設置基準が強化される
無窓の居室(採光・換気・排煙等) 建築基準法施行令第116条の2ほか 居室ごと 排煙設備、非常用照明、主要構造部の制限などがかかる
非常用の進入口 建築基準法施行令第126条の6・第126条の7 階ごと(3階以上の階) 進入口又は代替進入口の設置義務がかかる

混乱しやすいのは、建築基準法の非常用進入口の基準を満たしていても、消防法の無窓階判定では不足する(またはその逆)ことがある点です。両者は目的が近いため似た数値が登場しますが、別個に判断されます。建築確認の段階で建築士が問題なしと判断していても、消防同意(消防法第7条)や届出の審査で無窓階の指摘を受けることは珍しくありません。


7. 東京消防庁管内で無窓階が問題になる場面と届出

無窓階の判定が実際に表面化するのは、次の場面です。いずれも東京都火災予防条例に基づく届出の審査と結びついています。

(1) 内装工事・間仕切り変更のとき

間仕切りを新設して窓を室内側から遮ってしまう、窓際に高さのある什器を作り付ける、外壁面にサインボードを設けるといった工事は、開口部の有効性を失わせることがあります。東京消防庁管内では、防火対象物工事等計画届出書を工事に着手する日の7日前までに提出することとされており(東京都火災予防条例第56条)、この審査で無窓階の判定が行われます。

(2) 新たにテナントとして使用を開始するとき

建物又はその一部を新たに使用する場合、防火対象物使用開始届出書を使用を開始する日の7日前までに提出します(東京都火災予防条例第56条の2)。用途が変わることで、同じ階でも必要となる消防用設備等が変わり、無窓階であることの影響が初めて顕在化することがあります。

(3) 立入検査を受けたとき

消防法第4条に基づく立入検査では、開口部の前に物品が積まれていないか(規則第5条の5第2項第4号)などが確認されます。竣工時は適法でも、その後の使い方によって是正指導の対象になり得ます。
東京消防庁管内の届出全体の流れは「東京消防庁管内で必要になる消防届出の種類・期限・根拠法令」に、消防用設備等の設置届については「消防用設備等設置届出書の作成代行は行政書士法違反?」にまとめています。


8. 無窓階と判定されそうなときの実務対応

無窓階の判定は、設計が固まる前であれば手を打てる余地があり、工事が終わってからでは選択肢がほとんど残らないという性質を持ちます。時間軸に沿って対応策を整理します。

  1. 物件選定・契約前:外壁面の窓について、ガラスの種類(網入りかどうか)、呼び厚さ、開閉方式(引き違いかFIXか)、防犯フィルムの有無、窓の外に幅員1メートル以上の通路や空地があるかを確認します。既存の消防用設備等の設置状況から、その階が過去にどう判定されていたかを推測できる場合もあります。
  2. 基本設計の段階:無窓階を回避したい場合、FIX窓を引き違い窓や開き窓に変更する、網入りガラスを別のガラスに置き換える、要件を満たす踏み台を設けるといった設計上の調整が可能です。この段階なら追加費用は限定的です。
  3. 設計確定前に所轄消防署へ事前相談:平面図・立面図・建具表(ガラスの種類と厚さがわかるもの)を持参し、予防課で無窓階の判定について確認します。建具表がないと判定できないため、必ず用意してください。
  4. それでも無窓階になる場合:必要な消防用設備等を織り込んだ工事費を再計算し、事業計画に反映します。建物の位置・構造・設備の状況によっては、消防法施行令第32条の基準の特例が検討できる場合もあります。特例の考え方は「民泊開設の消防「基準の特例申請」完全ガイド」で解説しています。
  5. 使用開始後:開口部の前に物品を置かない、窓を塞ぐ掲示物を貼らないといった維持管理をルール化します。消防用設備等は設置後も点検・報告の義務が続きます(「消防用設備等点検報告制度とは」参照)。

✅ 実務メモ:無窓階の判定に必要な資料は、①各階平面図、②立面図、③建具表(ガラスの種類・呼び厚さ・開閉方式)、④配置図(窓の外の通路・空地の幅員がわかるもの)の4点です。この4点をそろえて事前相談に臨むと、その場でおおよその結論が得られることが多く、後戻りを大幅に減らせます。


9. 行政書士に依頼できること・できないこと

無窓階に関する実務は、複数の専門分野にまたがります。役割分担を最初に決めておくことが、期限管理と費用の両面で効きます。

作業内容 担当できる者 根拠・考え方
無窓階算定書・建具表を含む設計図書の作成 建築士・設計者 建築士法に基づく設計業務
消防用設備等の設計・工事・整備 消防設備士 消防法第17条の5
工事整備対象設備等着工届出書の届出 甲種消防設備士 消防法第17条の14が消防設備士自身に届出義務を課している
防火対象物工事等計画届出書・使用開始届出書などの作成・提出(報酬を得て行う場合) 申請者本人または行政書士 行政書士法第1条の3・第19条
所轄消防署との事前相談・折衝の同席、スケジュール管理 申請者本人または行政書士(技術的説明は設計者・消防設備士) 役割を分けたうえで同席するのが実務上有効

整理すると、「測る・設計する・作る」は建築士と消防設備士、「官公署に提出する書類にまとめる」は行政書士という分担になります。無窓階の判定そのものは、建具表と図面に基づく技術的な検討であり、最終的な判断は所轄消防署が行います。行政書士は、判定結果を踏まえて必要となる届出を洗い出し、期限から逆算したスケジュールを組み、書類を作成・提出する役割を担います。
なお、報酬を得て官公署に提出する書類を作成できるのは、原則として申請者本人か行政書士に限られます(行政書士法第19条第1項)。令和8年(2026年)1月1日施行の改正行政書士法では「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と明確化され、工事代金に含める形での書類作成代行も規制の対象となり得ることがはっきりしました。詳しくは「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」をご覧ください。行政書士制度の公式情報は総務省「行政書士制度」のページで確認できます。


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10. よくある質問

Q1. 無窓階とは何ですか。窓がない階のことですか。

いいえ、窓の有無ではありません。無窓階とは、建築物の地上階のうち、消防法施行規則第5条の5に定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいいます(消防法施行令第10条第1項第5号)。窓が多数あっても、ガラスの種類や開閉方式、窓の外の状況によって開口部として算入できなければ無窓階になります。

Q2. 無窓階かどうかはどのように判定しますか。

11階以上の階では、直径50センチメートル以上の円が内接できる開口部の面積の合計が、その階の床面積の30分の1を超えるかどうかで判定します。10階以下の階では、これに加えて、直径1メートル以上の円が内接できる開口部、又は幅75センチメートル以上かつ高さ1.2メートル以上の開口部が2以上含まれていることが必要です。いずれも満たさない階が無窓階となります。

Q3. 無窓階の根拠条文は消防法の何条ですか。

無窓階という用語の定義は消防法施行令第10条第1項第5号にあり、具体的な判定基準は消防法施行規則第5条の5に定められています。消防法本体に無窓階の定義規定はありません。東京消防庁管内では、これに加えて「予防事務審査・検査基準Ⅰ」第2章第1節第6「無窓階の取扱い」が運用上の判断基準となります。

Q4. 開口部として認められるための条件は何ですか。

消防法施行規則第5条の5第2項により、次の4つに適合する必要があります。第1に、床面から開口部の下端までの高さが1.2メートル以内であること。第2に、道又は道に通ずる幅員1メートル以上の通路その他の空地に面したものであること(11階以上の階では適用されません)。第3に、格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有せず、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。第4に、開口のため常時良好な状態に維持されているものであることです。窓の前に什器や商品を積むと第4号に適合しなくなり、立入検査で是正指導の対象となります。

Q5. 網入りガラスの窓は開口部として認められますか。

東京消防庁の基準では、網入板ガラス・線入板ガラスのうち厚さ6.8ミリメートル以下のものは、引き違い窓等であれば、一部を破壊して外部から開放できる部分(引き違い窓の場合おおむね2分の1の面積)を開口部として算定できます。一方、はめ殺し窓(FIX窓)の場合は開口部として取り扱うことができません。網入りガラスのFIX窓が並ぶ階が無窓階と判定される主な理由がこれです。

Q6. 窓に防犯フィルムを貼ると無窓階になりますか。

フィルムの種類と厚さ、足場の有無によって判定が変わります。東京消防庁の基準では、多積層以外で基材の厚さが100マイクロメートル以下のPET製窓ガラス用フィルムや、基材の厚さ400マイクロメートル以下の塩化ビニル製フィルムは、貼付しない場合と同じ判定が維持されます。これを超える厚さや多積層のフィルムは判定が下がり、破壊作業のできる足場がない場合には開口部として算定できなくなることがあります。フィルムの施工前に、ガラスの種類とあわせて確認してください。

Q7. 無窓階になると、具体的にどの消防設備が必要になりますか。

用途と面積によりますが、消火器具は床面積50平方メートル以上(令第10条第1項第5号)、屋内消火栓設備は用途に応じ100平方メートル・150平方メートル・200平方メートル以上(令第11条第1項第6号)、自動火災報知設備は飲食店等では100平方メートル以上、その他は300平方メートル以上(令第21条第1項第10号・第11号)で設置対象となります。誘導灯(令第26条)、排煙設備(令第28条第1項第3号)、避難器具(令第25条第1項第4号)にも無窓階を基準とする規定があります。

Q8. 建築基準法の「無窓の居室」と同じものですか。

異なります。消防法の無窓階は階ごとに判定し、消防用設備等の設置基準に影響します。建築基準法の無窓の居室は居室ごとに判定し、排煙設備や非常用照明などの基準に影響します(建築基準法施行令第116条の2ほか)。建築確認で問題がなくても、消防同意や消防署への届出の審査で無窓階の指摘を受けることがあります。

Q9. 無窓階になりそうな場合、どうすればよいですか。

設計が固まる前であれば、はめ殺し窓を引き違い窓や開き窓に変更する、ガラスの種類を見直す、要件を満たす踏み台を設けるといった調整が可能です。工事完了後に判明した場合は、必要な消防用設備等を設置するほかありません。建物の位置・構造・設備の状況によっては、消防法施行令第32条による基準の特例が検討できる場合もあります。いずれにせよ、平面図・立面図・建具表・配置図をそろえて所轄消防署へ事前相談することが出発点です。

Q10. 東京以外の物件でも同じ判定になりますか。

消防法施行令第10条第1項第5号および消防法施行規則第5条の5は全国共通です。ただし、ガラスの種類・厚さや足場の有無といった細部の運用は各消防本部の審査基準に委ねられており、東京消防庁管内と他の消防本部とで結論が異なることがあります。物件の所在地を管轄する消防本部・消防署の基準をご確認ください。

Q11. 無窓階に関する届出を行政書士に依頼できますか。費用はどのくらいですか。

防火対象物工事等計画届出書や防火対象物使用開始届出書など、消防署長あてに提出する届出書の作成・提出は行政書士の業務範囲です(行政書士法第1条の3)。報酬額は届出の種類・建物規模・図面の有無によって異なりますので、当事務所の報酬額表をご確認いただくか、物件情報をお知らせのうえお見積りをご依頼ください。継続的な管理が必要な場合は顧問契約もご用意しています。なお、無窓階の算定そのものは設計に関する技術的検討であり、建築士・設計者の領域です。


参考資料

※本記事は2026年8月16日時点で確認した法令および公表資料をもとにした一般的な解説です。法令改正、東京消防庁の審査基準の改正、所轄消防署の運用、個別の建物の状況により結論が変わる場合があります。具体的な案件は、対象建物を管轄する消防署および行政書士へご確認ください。

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