民泊開設の消防「基準の特例」完全ガイド|用途判定・自動火災報知設備・スプリンクラー免除

民泊開設の消防「基準の特例」完全ガイド|用途判定・自動火災報知設備・スプリンクラー免除

この記事の結論
1. 民泊(住宅宿泊事業法の届出住宅)は、原則として消防法施行令別表第一(5)項イ(旅館・ホテル・宿泊所)として扱われます。根拠は総務省消防庁の通知(平成29年10月27日付け消防予第330号)です。
2. (5)項イになると、自動火災報知設備が延べ面積に関係なく必要になります。これは東京独自の上乗せではなく、消防法施行令第21条第1項第1号イという国の政令の定めです。
3. 一般住宅として扱われるのは、①人を宿泊させる間に住宅宿泊事業者(家主)が不在とならない旨の届出をしていることと、②宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下であることの両方を満たす場合だけです。どちらか一方では(5)項イになります。
4. 負担を抑える道は2段階です。まず法令に制度化された緩和(特定小規模施設用自動火災報知設備、区画によるスプリンクラー設備・誘導灯の免除)を確認し、それでも基準に合わない部分について個別の基準の特例(消防法施行令第32条)を検討します。
5. 東京都内では、住宅宿泊事業の届出に添付する消防法令適合通知書のほか、防火対象物使用開始届出書(使用開始の7日前まで)などの届出が必要です。工事を伴う場合は着手前の届出もあります。


「住宅として使っていた物件だから、そのまま民泊にできるはず」。この思い込みが、民泊開設でつまずく最大の原因です。民泊は宿泊者が就寝する施設のため、消防法令上は旅館・ホテルと同じ用途で扱われることがあり、住宅のままでは消防用設備等が足りていないことが少なくありません。


本記事は、東京都内で民泊開設を検討するオーナー・事業者に向けて、消防法令上の用途判定、必要になる消防用設備等、基準の特例と各種の免除規定、消防法令適合通知書と届出までを、消防法・消防法施行令・消防法施行規則の条文と、総務省消防庁・東京消防庁の公表資料をもとに整理したものです。


民泊の消防法令上の用途はこう決まる

消防用設備等の設置義務は、建物の「用途」ごとに決まります。したがって、民泊の消防を考えるときの出発点は、必ず用途判定です。


民泊(住宅宿泊事業)とは、住宅宿泊事業法第3条第1項の届出をして、住宅に人を宿泊させる事業のことをいいます。消防法令上、その届出住宅は原則として消防法施行令別表第一(5)項イ(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)に掲げる防火対象物またはその部分として取り扱われます。


これを定めているのが、総務省消防庁予防課長通知「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて」(平成29年10月27日付け消防予第330号)です。同通知はただし書で、住宅として取り扱える場合を例外的に定めています。


一戸建て住宅を民泊にする場合

判定は2段階です。まず「人を宿泊させる間、その住宅に家主が不在となるか」を見ます。不在となるなら、面積にかかわらず(5)項イです。不在とならない場合にだけ、次に宿泊室の床面積の合計を見て、50平方メートル以下であれば住宅として取り扱われます。


ここでいう宿泊室とは、宿泊者の就寝の用に供する室のことです。家主の居住・不在の判断は、一戸建て住宅の場合は棟(建物)単位で行います。


共同住宅の一室を民泊にする場合

共同住宅では、まず民泊を行う「住戸」ごとに上記の方法で用途を判定し、そのうえで棟全体の用途を決めます。家主の居住・不在の判断は住戸単位です。


棟の用途は、昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」により判定します。(5)項イと判定された住戸が棟の9割以上を占めれば棟全体が(5)項イ、9割未満であれば複合用途防火対象物である(16)項イになります。


建物の類型 条件 消防法令上の用途
一戸建て住宅 人を宿泊させる間、家主が不在となる (5)項イ 宿泊施設
一戸建て住宅 家主が不在とならない、かつ宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超える (5)項イ 宿泊施設
一戸建て住宅 家主が不在とならない、かつ宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下 一般住宅
共同住宅 住戸ごとに判定し、(5)項イとなる住戸が棟の9割以上 棟全体が(5)項イ 宿泊施設
共同住宅 住戸ごとに判定し、(5)項イとなる住戸が棟の9割未満 (16)項イ 複合用途防火対象物
共同住宅 すべての住戸が一般住宅扱い (5)項ロ 共同住宅

よくある誤解
「宿泊室が50平方メートル以下なら一般住宅扱い」という説明を見かけますが、これは正確ではありません。50平方メートル以下という基準が働くのは、家主が不在とならない旨の届出をしている場合だけです。家主不在型であれば、宿泊室が10平方メートルでも(5)項イになります。
また、消防予第330号は、この取扱いをする場合には、火災の発生時に消火・延焼防止・人命救助を住宅宿泊事業者等が行うことについて確認することが適当である、としています。届け出れば自動的に住宅扱いになるわけではありません。


用途判定の考え方そのものについては、消防法の用途判定とは?令別表第一の項の決め方・従属用途・みなし従属を解説と店舗併用住宅の用途判定|50㎡以下なら一般住宅扱いになる条件とはもあわせてご覧ください。


(5)項イになると何が必要になるのか

用途が(5)項イになると、住宅では求められなかった消防用設備等が一度に必要になります。主なものを条文の根拠とともに整理します。


対応事項 (5)項イとしての基準 根拠
自動火災報知設備 延べ面積を問わずすべてに必要 令第21条第1項第1号イ
消火器具 延べ面積150平方メートル以上。これに満たなくても、地階・無窓階・3階以上の階で床面積50平方メートル以上の階には必要 令第10条第1項第2号イ、同項第5号
避難口誘導灯・通路誘導灯 すべての階に必要(区画による免除あり) 令第26条第1項第1号・第2号
スプリンクラー設備 地階を除く階数が11以上の建物は建物全体、平屋建以外で延べ面積6,000平方メートル以上、11階以上の階 ほか(区画による免除あり) 令第12条第1項第3号・第4号・第11号イ・第12号
防炎物品 カーテン・じゅうたん等に防炎性能を有するものを使用 法第8条の3第1項
防火管理者の選任と消防計画 建物全体の収容人員が30人以上のとき 法第8条第1項、令第1条の2第3項第1号ロ
消防用設備等の点検・報告 機器点検6か月に1回・総合点検1年に1回、報告は1年に1回 法第17条の3の3、規則第31条の6
避難経路図の掲示 宿泊室内の見やすい場所に、避難経路と火災の伝達方法を示して掲示(東京消防庁の指導) 東京消防庁「新たに民泊を行おうと考えている皆様へ」

すでに設置されている消防用設備等があれば重複して設置する必要はありません。逆に、建物の規模・形状や無窓階の有無によっては、上表以外の設備が必要になることもあります。無窓階の判定については無窓階とは?判定基準・消防設備・東京消防庁の運用を解説で解説しています。


複合用途((16)項イ)になった場合の違い

共同住宅の一部だけを民泊にして棟が(16)項イになった場合、設備によって「棟全体で判断するもの」と「用途部分ごとに判断するもの」が分かれます。自動火災報知設備・誘導灯・スプリンクラー設備は棟単位、消火器具は用途部分ごとです(令第9条ただし書)。


自動火災報知設備は、(16)項イでは延べ面積300平方メートル以上で棟全体に必要になります(令第21条第1項第3号イ)。ただし、民泊などの特定用途部分の床面積の合計が延べ面積の10分の1以下で、かつ300平方メートル未満のときは、民泊部分のみで足りる取扱いがあります。


防火管理者と消防計画

建物全体の収容人員が30人以上になると、管理権原者は防火管理者を選任し、防火管理者が消防計画を作成して届け出なければなりません。収容人員の算定方法は収容人員の計算方法|消防法施行規則第1条の3の用途別算定表、選任の考え方は防火管理者の選任が必要な建物とは|収容人員10人・30人・50人の判定基準で詳しく解説しています。


消防計画の記載事項は消防法施行規則第3条第1項に定められており、東京消防庁は用途・規模別の消防計画作成例と作成基準を公表しています。作成手順は消防計画の作成手順と記載事項|届出義務者・様式第1号の2・訓練回数を条文で解説をご覧ください。


基準の特例(消防法施行令第32条)とは

基準の特例とは、消防用設備等の技術上の基準をそのまま満たせないときに、別の安全策を講じることで「基準によらなくても支障ない」と消防長または消防署長に認めてもらう仕組みです。


消防法施行令第32条(基準の特例)
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。


条文を読むと分かるとおり、判断するのは消防長または消防署長であって、申請すれば通るものではありません。また「設備をつけずに済ませる裏技」でもありません。代替の安全策によって同等以上の安全性を示すことが前提です。


特例の前に、制度化された緩和を確認する

実務では、いきなり令第32条の特例を検討するのは遠回りです。民泊でよく使われる緩和のうち、特定小規模施設用自動火災報知設備・スプリンクラー設備の免除・誘導灯の免除は、いずれも省令に要件が書かれた制度化された緩和であり、令第32条の個別特例とは別物だからです。


検討する順序
1. 用途判定を確定させる((5)項イか、(16)項イか、一般住宅か)
2. 省令で制度化された緩和が使えるかを確認する(特定小規模施設用自動火災報知設備、区画によるスプリンクラー設備・誘導灯の免除)
3. それでも基準に適合しない部分について、代替の安全策を整理して令第32条の特例を検討する


自動火災報知設備を軽くする特定小規模施設用自動火災報知設備

小規模な民泊では、通常の自動火災報知設備に代えて、簡易な「特定小規模施設用自動火災報知設備」(特小自火報)を用いることができます。根拠は消防法施行令第29条の4第1項と、これを受けた「特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」(平成20年総務省令第156号)です。


特小自火報が使える3つの型

同省令第2条第1号は、特定小規模施設を次の3つに分けて定義しています。民泊で該当し得るのは主にこの3類型です。


型 建物の状況 根拠
① 民泊単独の棟((5)項イ)で、延べ面積が300平方メートル未満のもの 省令第2条第1号イ
② (16)項イのうち小規模特定用途複合防火対象物。民泊などの特定用途部分の床面積の合計が、延べ面積の10分の1以下で、かつ300平方メートル未満のもの 省令第2条第1号ロ、規則第13条第1項第2号
③ (16)項イのうち、民泊((5)項イ)と共同住宅((5)項ロ)以外の用途に供される部分がなく、民泊部分の床面積が300平方メートル未満で、棟の延べ面積が300平方メートル以上500平方メートル未満のもの 省令第2条第1号ハ

②と③は混同されがちですが、別の規定です。②は「特定用途がごく一部しかない複合用途ビル」、③は「民泊と住戸だけでできている中規模のアパート・マンション」を想定しています。③には店舗や事務所が1つでも入っていると使えません。


無線式・電池式の利点と注意点

特小自火報には、受信機・感知器・音響装置を配線で接続する方式のほか、無線式の連動型警報機能付感知器を用いる方式があります。総務省消防庁のリーフレットは、後者について次の利点を挙げています。


・電池式の感知器は、電源の配線工事が不要
・感知器同士が無線通信を行うものは、感知器間の配線工事が不要
・感知器自体が警報音を発するため、音響装置の設置が不要
・すべての感知器が連動して警報音を発する場合、受信機の設置が不要
・受信機や中継器を設置せず感知器のみの場合、工事に消防設備士の資格が不要で、工事に着手する前の届出も不要(設置工事完了後の届出は必要)


一方で、電波環境等によって感知器同士の無線通信ができない場合や、建物階数等によって設置できない場合があります。また、建物の状況によっては、廊下等の共用部でも警報音が発せられるように感知器の設置を指導されることがあります。


連動型住宅用火災警報器は代わりになりません
見た目が似ているため取り違えが起きますが、連動型住宅用火災警報器は感知性能等が異なるため、特定小規模施設用自動火災報知設備として使用することはできません。住宅用のものを買って取り付けても、消防用設備等としては認められません。


区画によるスプリンクラー設備・誘導灯の免除

民泊で最も金額が動くのがスプリンクラー設備です。ここでは、なぜ必要になるのか、どう免除されるのかを分けて説明します。


なぜ11階建てのマンションで棟全体が対象になるのか

共同住宅((5)項ロ)のままなら、スプリンクラー設備が必要なのは11階以上の「階」だけです(令第12条第1項第12号)。ところが用途が(5)項イや(16)項イに変わると、令第12条第1項第3号が働き、地階を除く階数が11以上の防火対象物は建物全体がスプリンクラー設備の対象になります。


つまり、11階建てマンションの1室を民泊にしただけで、棟全体にスプリンクラー設備が要求され得るということです。区画による免除が実務で重視されるのは、この落差を埋めるためです。


スプリンクラー設備の免除(消防法施行規則第13条)

免除の根拠は、令第12条第1項各号の「総務省令で定める部分」を定めた消防法施行規則第13条です。棟が(16)項イか(5)項イ単独かで、適用される項が変わります。


棟の用途 根拠 区画の主な要件
(16)項イ(民泊+共同住宅等) 規則第13条第1項第1号の2 居室を耐火構造の壁及び床で区画/内装は主たる廊下等が準不燃材料、その他が難燃材料/区画する壁・床の開口部の合計8平方メートル以下、一の開口部4平方メートル以下/開口部は特定防火設備である防火戸(煙感知器連動等)/(5)項イ等に供する各独立部分の床面積がいずれも100平方メートル以下
(5)項イ(民泊単独の棟) 規則第13条第2項 特定主要構造部を耐火構造とした建築物の階(地階・無窓階を除く)の部分/耐火構造の壁及び床で区画/内装・開口部の要件は上記と同様/床面積が10階以下の階では200平方メートル以下、11階以上の階では100平方メートル以下

これらの区画を有する場合、原則として10階以下のスプリンクラー設備が免除されます。なお、(16)項イの規定は、民泊・共同住宅・一部の福祉施設以外の用途部分が棟に存在しないことが前提です。1階に店舗が入っていると、この号は使えません。


誘導灯の免除(消防法施行規則第28条の2)

誘導灯の免除は、規則第28条の2第1項第4号の2(避難口誘導灯)と同条第2項第3号の2(通路誘導灯)に定められています。対象は(16)項イで、区画の要件はスプリンクラーの場合とほぼ同じですが、これに加えて民泊部分の主たる出入口が、直接外気に開放され、火災時の煙を有効に排出できる廊下・階段等に面していることが必要です。


要件を満たすと、原則として民泊が存する階以外の階(地階・無窓階・11階以上の階を除く)の誘導灯が免除されます。民泊が存する階そのものの誘導灯は免除されません。


ここを取り違えないでください
スプリンクラー設備と誘導灯の免除は、消防法施行規則に要件が書かれた制度上の免除です。令第32条の特例とは別の手続きになります。まず規則の区画要件を平面図で確認し、それを満たせない部分についてはじめて令第32条の特例を検討する、という順序で進めてください。


家主不在型は「関係者不在施設」の対策も必要

家主不在型の民泊は、火災が起きたときに現場で対応できる人がいません。総務省消防庁は令和8年3月27日付け消防予第115号で「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」を発出し、宿泊施設を含む関係者不在施設の初動対応(消防機関への通報、避難誘導、初期消火)について実効性を確保する対策を示しています。


東京消防庁も、防火管理義務対象物のうち令別表第一(5)項イの宿泊施設で営業時間中に従業員が不在となる時間帯があるものを対象に、「関係者不在の宿泊施設に対する防火安全対策」として、関係者不在宿泊施設用の消防計画追加事項例を公表しています。


収容人員30人以上で防火管理者の選任が必要になる民泊では、消防計画にこの追加事項を織り込むことが求められます。詳しくは関係者不在施設の防火管理|無人・省人化施設の消防計画と応急対策の検証を解説および無人店舗・24時間ジム・民泊の防火管理|関係者不在施設ガイドラインと用途別の義務で解説しています。


東京で必要な届出と消防法令適合通知書

東京消防庁管内で民泊を開設するときに関わる手続きを、根拠と期限で整理します。すべてが常に必要になるわけではなく、工事の有無・設備の内容・用途判定の結果によって変わります。


手続き 根拠 期限 届出・申請する人
消防法令適合通知書交付申請書(別記様式第1) 住宅宿泊事業法施行要領、消防予第389号 住宅宿泊事業の届出に間に合うように 住宅宿泊事業法第3条第1項・第4項の届出をしようとする者
防火対象物工事等計画届出書 東京都火災予防条例第56条 工事着手の7日前まで 工事を依頼した方
消防用設備等(特殊消防用設備等)設置計画届出書 東京都火災予防条例第58条の2第1項第1号 工事着手の10日前まで 工事を依頼した方
工事整備対象設備等着工届出書 消防法第17条の14 着工の10日前まで 工事をする甲種消防設備士
防火対象物使用開始届出書 東京都火災予防条例第56条の2 使用開始の7日前まで 実際に使用しようとする方
消防用設備等設置届出書 消防法第17条の3の2、規則第31条の3第1項 工事完了後4日以内(届出と検査がセット) 関係者(所有者・管理者・占有者)
基準の特例等適用申請書(第25号様式) 消防法施行令第32条ほか 特例の適用を受けようとするとき 特例を受けようとする方
防火・防災管理者選任(解任)届出書 消防法第8条第2項 選任・解任後遅滞なく 管理権原者
消防計画作成(変更)届出書 消防法第8条第1項、規則第3条第1項 作成・変更したとき 管理権原者(作成は防火管理者)

民泊は(5)項イまたは(16)項イ(民泊部分あり)に当たるため、消防用設備等設置届出書は令第35条第1項第1号により延べ面積を問わず対象になります。「小規模だから設置届はいらない」ということはありません。設置届については消防用設備等設置届出書の作成代行は行政書士法違反?届出者・4日以内の期限・罰則を解説、使用開始届については防火対象物使用開始届出書とは|期限7日前・添付書類・罰則を解説で詳しく解説しています。


消防法令適合通知書の位置づけと流れ

消防法令適合通知書は、届出住宅が消防法令に適合していることを消防機関が確認して交付する書類です。住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が、都道府県知事等は届出時にあわせて提出を求めることとしており、これを受けて総務省消防庁が消防予第389号(平成29年12月26日)で交付事務の取扱いを示しています。


流れは次のとおりです。


1. 申請者が、別記様式第1「消防法令適合通知書交付申請書」により管轄消防署に交付を申請する
2. 消防機関が立入検査等を実施し、消防法令への適合状況を調査する
3. 適合していれば、別記様式第2により消防法令適合通知書が交付される。交付できない場合は、その旨と理由が申請者に回答される


設備が整っていなければ交付されません。開設スケジュールの中で最も早く着手すべき手続きが、消防署への事前相談だという理由がここにあります。


基準の特例等適用申請書(第25号様式)

東京消防庁で令第32条等の特例の適用を受けようとするときは、「基準の特例等適用申請書」(第25号様式)を管轄消防署に提出します。申請するのは、基準の特例を受けようとする方(入居する方、テナントで営業する方、建物の所有者)です。


添付するのは、東京消防庁の審査基準による特例適用基準に適合していることが分かる図書です。特例の運用は東京消防庁の予防事務審査・検査基準に定められているため、区画図・面積計算・内装仕様といった技術資料を、その基準に沿った形で用意する必要があります。窓口持参・郵送のほか、電子申請にも対応しています。


物件を契約する前に、消防の見通しを立てませんか
民泊の消防でいちばん多い失敗は、物件を借りたあとで用途判定と設備の不足が判明することです。11階建てマンションの1室というだけで、棟全体のスプリンクラー設備が論点になることもあります。
物件の所在地・階数・延べ面積・間取り、家主居住型か不在型か、宿泊室の床面積の合計をお知らせいただければ、消防法令上の用途判定の見通し、必要になる消防用設備等、特定小規模施設用自動火災報知設備や区画による免除・令第32条の特例が使えるかどうか、消防法令適合通知書と各届出のスケジュールまで、順序立てて整理してご案内します。
初回のご相談は無料です。
お問い合わせフォームから相談する
お電話でも承ります 03-6783-6727(平日9:00〜18:00/土日祝日はフォームで受付)
行政書士萩本昌史事務所|東京の消防手続支援ステーション


当事務所の報酬額

民泊開設で関わることの多い届出の報酬額は次のとおりです(税抜)。


業務 報酬額(税抜)
防火対象物使用開始(変更)届出(新規) 10,000円〜40,000円
防火対象物工事等計画届出書 20,000円〜50,000円
防火・防災管理者選任(解任)届出書(消防計画作成届出書と一括の場合) 6,000円〜
消防計画作成(変更)届出書(新規作成・小規模) 30,000円〜55,000円
消防法令適合通知書交付申請書、基準の特例等適用申請書、消防用設備等設置届出書 個別にお見積り

金額に幅があるのは、建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって作業量が変わるためです。最新の料金は報酬額表をご確認ください。


民泊開設をスムーズに進める5つのステップ

順序を間違えると、後戻りの費用が大きくなります。次の順で進めてください。


1. 物件契約の前に消防署へ事前相談する

東京消防庁は「開業の準備に先立って、必ず最寄りの消防署に相談してください」としています。事前相談では、家主居住型・不在型の区分と宿泊室面積を記入した事前相談記録書のほか、使用する階の全体平面図、建物の延べ面積・階数、設置済みの消防用設備等の情報が必要になります。


2. 用途判定を先に固める

(5)項イ・(16)項イ・一般住宅のどれになるかで、必要な設備がまったく変わります。判定するのは管轄消防署です。自己判断で設備の見積りを取っても、判定が変われば作り直しになります。


3. 制度化された緩和から検討する

特定小規模施設用自動火災報知設備が使えるか、区画によるスプリンクラー設備・誘導灯の免除が使えるかを、平面図をもとに確認します。ここで解決できれば、特例申請そのものが不要になります。


4. 技術資料と申請書の役割を分ける

区画図・面積計算書・設備の設計図書は、設計者や消防設備士が準備します。一方、消防署に提出する申請書・届出書は官公署に提出する書類ですから、報酬を得て業として作成できるのは行政書士(または行政書士法人)です。


5. 住宅宿泊事業の届出と足並みをそろえる

消防法令適合通知書は住宅宿泊事業の届出時に提出を求められます。消防の検査に合格してから通知書が出るまでの時間を織り込み、逆算してスケジュールを組んでください。


よくある質問

Q1. 民泊には必ず自動火災報知設備が必要ですか

消防法令上の用途が(5)項イ(宿泊施設)と判定された場合は、延べ面積に関係なく必要です(消防法施行令第21条第1項第1号イ)。ただし延べ面積300平方メートル未満などの要件を満たせば、簡易な特定小規模施設用自動火災報知設備を用いることができます。


Q2. 家主が住みながら民泊をすれば設備は不要になりますか

家主が居住しているだけでは足りません。人を宿泊させる間に住宅宿泊事業者が不在とならない旨の届出をしていることに加えて、宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下であることが必要です(消防予第330号)。両方を満たしてはじめて住宅として取り扱われます。


Q3. 宿泊室が50平方メートル以下なら必ず一般住宅扱いですか

いいえ。家主不在型であれば、宿泊室の面積にかかわらず(5)項イになります。50平方メートルという基準が働くのは、家主が不在とならない場合だけです。


Q4. マンションの一室を民泊にすると、建物全体にスプリンクラー設備が必要になりますか

地階を除く階数が11以上のマンションでは、そのおそれがあります。共同住宅((5)項ロ)のままなら11階以上の階だけが対象ですが、用途が(5)項イや(16)項イに変わると令第12条第1項第3号により建物全体が対象になるためです。規則第13条の区画要件を満たせば、原則として10階以下が免除されます。


Q5. スプリンクラー設備や誘導灯の免除を受けるには特例申請が必要ですか

区画による免除は、消防法施行規則第13条・第28条の2に要件が定められた制度上の免除であり、令第32条の特例とは別です。まず規則の要件を満たすかどうかを平面図で確認してください。要件を満たせない部分について代替の安全策で対応する場合に、はじめて基準の特例等適用申請書を提出することになります。


Q6. 連動型住宅用火災警報器を付ければ自動火災報知設備の代わりになりますか

なりません。連動型住宅用火災警報器は感知性能等が異なるため、特定小規模施設用自動火災報知設備として使用することはできません(総務省消防庁リーフレット)。


Q7. 消防法令適合通知書とは何ですか。必ず必要ですか

届出住宅が消防法令に適合していることを消防機関が確認して交付する書類です。住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)により、届出時にあわせて提出することが求められています。消防法上の許認可ではなく、消防予第389号に基づく交付事務として運用されています。


Q8. 特例申請の書類は設備業者に作ってもらえますか

区画図や面積計算書などの技術資料は、設計者や消防設備士が準備できます。しかし、消防署に提出する申請書・届出書は官公署に提出する書類です。行政書士または行政書士法人でない者が、報酬を得て業としてこれを作成することは、行政書士法第19条第1項に違反します(罰則は同法第21条の2、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)。申請者本人が作成するか、行政書士に依頼してください。


Q9. 家主不在型で特に気をつけることは何ですか

火災時に現場で対応する人がいないことです。総務省消防庁は令和8年3月27日付け消防予第115号で「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」を示しており、東京消防庁も関係者不在宿泊施設用の消防計画追加事項例を公表しています。防火管理義務が生じる規模であれば、消防計画にこれらを織り込む必要があります。


Q10. 特区民泊や旅館業の簡易宿所でも消防の扱いは同じですか

消防予第330号は、届出住宅以外の防火対象物で旅館業法第3条第1項の許可を受けた営業が行われる場合などであって、届出住宅と同様の利用形態であることが確認できるときは、届出住宅と同じ判定方法を準用するとしています。実際の取扱いは、対象建物を管轄する消防署にご確認ください。


参照した法令・公的資料

・消防法(昭和23年法律第186号)第8条、第8条の3、第9条の2、第17条の3の2、第17条の14
・消防法施行令(昭和36年政令第37号)第9条、第10条、第12条、第21条、第26条、第29条の4、第32条、第35条、別表第一
・消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条、第13条、第28条の2、第31条の3
・特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成20年総務省令第156号)第2条、第3条
・東京都火災予防条例 第56条、第56条の2、第58条の2
・住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第3条
・総務省消防庁「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(通知)」(平成29年10月27日付け消防予第330号)
・総務省消防庁「住宅宿泊事業の届出に伴う消防法令適合通知書の交付について」(平成29年12月26日付け消防予第389号)
・総務省消防庁「民泊における消防法令上の取扱い等に関するリーフレット」(令和8年3月時点版)
・総務省消防庁「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」(令和8年3月27日付け消防予第115号)
・昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」
・東京消防庁「新たに民泊を行おうと考えている皆様へ」
・東京消防庁「関係者不在の宿泊施設に対する防火安全対策」
・東京消防庁 申請様式「基準の特例等適用申請書」「防火対象物使用開始届出書」「消防用設備等(特殊消防用設備等)設置計画届出書」
・行政書士法(昭和26年法律第4号)第1条の3、第19条第1項、第21条の2


この記事を書いた人
萩本昌史(はぎもと まさし)/特定行政書士
保有資格:特定行政書士、消防設備士、防火対象物点検資格者、防災管理点検資格者
行政書士萩本昌史事務所/東京の消防手続支援ステーション
〒157-0061 東京都世田谷区北烏山7-25-8-401
TEL 03-6783-6727/FAX 03-6750-2225
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東京都内の消防署への各種届出、消防計画の作成、防火対象物点検・防災管理点検を取り扱っています。


本記事は2026年8月24日時点で確認した法令・公的資料をもとにした一般的な解説です。法令改正、火災予防条例、管轄消防署の運用、個別の建物・事業内容により結論が変わる場合があります。具体的な案件は、対象建物を管轄する消防署および行政書士にご確認ください。

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