防火対象物使用開始届出書とは|期限7日前・添付書類・罰則を解説

防火対象物使用開始届出書は、消防法ではなく東京都火災予防条例第56条の2に基づく届出です。使用開始の7日前までに消防署長へ提出し、指定防火対象物等では使用開始前の消防検査も必要になります。届出義務者・添付図書・工事等計画届出書との違い・罰則を行政書士が解説します。

防火対象物使用開始届出書とは?提出期限・添付書類・消防検査・罰則を行政書士が解説【東京】

結論:防火対象物使用開始届出書は、消防法ではなく東京都火災予防条例第56条の2第1項に基づく届出です。建物または建物の一部を使用しようとする者が、使用を開始する日の7日前までに、所轄の消防署長へ提出します。届出をせずに、または虚偽の届出をして防火対象物を使用した者には10万円以下の罰金が定められており(同条例第67条の2第4号)、法人にも罰金刑が科されます(同第68条・両罰規定)。
「内装業者さんが出してくれていると思っていた」「オープンの3日前に消防署から検査の連絡が来て慌てた」——オフィス移転や店舗開設のご相談で、最も多いトラブルがこの届出です。工事を伴う場合は防火対象物工事等計画届出書(同条例第56条)とセットになり、さらに一定の建物では使用開始前に消防署長の検査を受けなければなりません(同条例第56条の2第3項)。この検査で是正指摘を受けると、オープン日そのものが動きます。
本記事は、東京都内(東京消防庁管内)でオフィス移転・店舗開設・テナント入居を予定している事業者の方に向けて、防火対象物使用開始届出書の法令根拠、届出義務者と期限、添付図書、使用開始前の検査、工事等計画届出書との使い分け、そして実務でつまずきやすい点を、消防法・同施行令・同施行規則・東京都火災予防条例・同施行規則および総務省消防庁「火災予防条例(例)」に沿って整理した実務ガイドです。


1. 防火対象物使用開始届出書とは|条文上の根拠

防火対象物使用開始届出書とは、消防法施行令別表第一に掲げる防火対象物(建物)またはその部分を使用しようとする者が、使用開始の7日前までに消防署長へ提出する届出書のことです。根拠は東京都火災予防条例第56条の2第1項で、様式は火災予防条例施行規則第12条の2に定める別記第3号様式の2です。

東京都火災予防条例 第56条の2第1項(防火対象物の使用開始の届出等)
令別表第一各項に掲げる防火対象物又はその部分を使用(一時使用を除く。以下この条において同じ。)しようとする者(前条第一項各号(新築を除く。)に掲げる行為をしたのち使用しようとする者を含む。)は、当該防火対象物又はその部分の使用を開始する日の七日前までに、規則で定めるところによりその旨を消防署長に届け出なければならない。


なぜ消防法ではなく「条例」なのか

消防法本体に、防火対象物の使用開始を届け出させる規定はありません。この届出は、各市町村(東京都の特別区の存する区域等では東京都)が定める火災予防条例に基づく手続です。総務省消防庁が全国の消防本部に示している「火災予防条例(例)」(昭和36年11月22日自消甲予発第73号)第43条が、この届出の全国的なひな形になっています。
制度の趣旨は、建物が実際に使われはじめる前に、消防機関が用途・使用形態・収容人員・避難施設・消防用設備等の状況を把握し、火災危険を事前に取り除くことにあります。消防用設備等の設置届出(消防法第17条の3の2)が「設備」を見る手続であるのに対し、使用開始届は「その建物を、だれが、どう使うのか」を見る手続だと考えると整理しやすくなります。

規定 定めている内容
全国の準則 総務省消防庁「火災予防条例(例)」第43条 令別表第一に掲げる防火対象物((19)項・(20)項を除く)を使用しようとする者は、使用開始の日の7日前までに消防長(消防署長)に届け出る
条例 東京都火災予防条例第56条の2第1項 届出義務・期限(使用開始の7日前まで)・届出先(消防署長)
条例 東京都火災予防条例第56条の2第2項(第56条第2項を準用) 添付図書
条例 東京都火災予防条例第56条の2第3項 指定防火対象物等は使用開始前に消防署長の検査を受ける
規則 火災予防条例施行規則第12条の2 様式(別記第3号様式の2)
規則 火災予防条例施行規則第12条の2の2 検査の種別(使用検査・中間検査)
罰則 東京都火災予防条例第67条の2第4号・第68条 10万円以下の罰金・法人への両罰規定

💡 ポイント:東京都火災予防条例と総務省消防庁の火災予防条例(例)は、「使用開始の日の7日前まで」「消防長(消防署長)へ届け出る」という骨格が一致しています。ただし条番号は自治体ごとに異なります(東京都は第56条の2、条例(例)は第43条)。東京都以外の物件では、必ずその市町村の火災予防条例を確認してください。


対象となる建物|令別表第一各項((19)項・(20)項を除く)

対象は消防法施行令別表第一各項に掲げる防火対象物またはその部分です。ただし、条例第56条第1項第1号のかっこ書きが「令別表第一各項((19)項及び(20)項を除く。次条において同じ。)」と定めており、この「次条」が第56条の2にあたるため、(19)項(市場、貯木場その他これらに類する工作物)と(20)項(舟車)は対象から外れます。この点も条例(例)第43条と同じ整理です。
裏を返すと、事務所((15)項)、飲食店((3)項ロ)、物品販売店舗((4)項)、共同住宅((5)項ロ)、診療所((6)項イ)など、令別表第一に掲げられる用途はほぼすべて対象です。「小さな事務所だから不要」ということはありません。条文に面積による除外規定は置かれていません。


2. だれが・いつまでに・どこへ|届出の5要素

項目 内容 根拠
だれが 防火対象物またはその部分を使用しようとする者(テナントとして入居する事業者、建物全体を使用する所有者・借主) 条例第56条の2第1項
何を 防火対象物使用開始届出書(別記第3号様式の2 規則第12条の2
いつまでに 使用を開始する日の7日前まで 条例第56条の2第1項
どこへ 建物の所在地を管轄する消防署長(実際の窓口は消防署の予防課) 条例第56条の2第1項
添付書類 防火対象物の概要表、平面図、立面図、断面図、室内仕上表、建具表ほか審査に必要な図書 条例第56条の2第2項(第56条第2項準用)・規則第12条第2項


届出義務者は「使用しようとする者」=入居する事業者

条文の主語は「使用しようとする者」です。ビルのオーナーでも、内装工事の施工業者でも、設計事務所でもありません。テナント入居であれば、そのテナント区画を使う事業者自身が届出義務者になります。
実務では内装業者や設計事務所が代行して窓口へ持ち込むことが多く、そのために「業者が出してくれるもの」という誤解が生まれます。しかし、他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類を業として作成できるのは、原則として行政書士・行政書士法人に限られます(行政書士法第1条の3、第19条第1項)。届出が漏れたときに責任を負うのは、あくまで届出義務者である使用者です。契約時に「誰が、いつ、どの届出を出すのか」を書面で確認しておくことをおすすめします。

なお、条例第56条第4項および第56条の2第4項は、建物の所有者に対し、使用者へ適正な届出を行うよう求める努力義務を課しています。オーナー側にも、テナントの届出状況を確認する立場が条例上想定されているということです。


「使用開始日の7日前まで」は最低ラインであって、目標日ではない

7日前という期限は、あくまで条例上の下限です。届出を受けた消防署は内容を審査し、後述する検査の日程を調整します。図面の不足や記載内容の確認があれば補正のやりとりが発生し、検査で是正指摘があれば工事のやり直しが必要になることもあります。ちょうど7日前に提出して、その7日間ですべてが終わる前提で計画を組むと、まず間に合いません。
当事務所では、内装図面が固まった段階(使用開始の1か月以上前)で所轄消防署へ事前相談し、工事着手の7日前までに工事等計画届出書、使用開始の2〜3週間前までに使用開始届出書を提出するスケジュールをおすすめしています。


3. 工事等計画届出書との違い|どちらが必要か

防火対象物工事等計画届出書(条例第56条)は「工事に着手する前」の届出、防火対象物使用開始届出書(条例第56条の2)は「使い始める前」の届出です。両者は別の手続であり、工事を伴うテナント入居では両方とも必要になります。

比較項目 防火対象物工事等計画届出書 防火対象物使用開始届出書
根拠 東京都火災予防条例第56条第1項 東京都火災予防条例第56条の2第1項
様式 別記第3号様式(規則第12条) 別記第3号様式の2(規則第12条の2)
届出者 建築・修繕・模様替え・間取り変更・用途変更等の行為をしようとする者 防火対象物またはその部分を使用しようとする者
期限 当該行為に着手する日の7日前まで 使用を開始する日の7日前まで
対象 指定防火対象物等(一定の用途・規模のもの) 令別表第一各項((19)項・(20)項を除く)
適用除外 建築基準法第6条第1項・第6条の2第1項の確認を受けた場合等(第56条第1項ただし書)/一時的な使用のために行う場合 一時使用(この場合は条例第56条の3の一時使用届出)
罰則 なし(条例第67条の2に列挙されていない) 10万円以下の罰金(条例第67条の2第4号)


工事をした後に使用する人も、使用開始届が必要

条例第56条の2第1項のかっこ書きは、届出義務者に「前条第一項各号(新築を除く。)に掲げる行為をしたのち使用しようとする者を含む」と念を押しています。つまり、内装工事について工事等計画届出書を提出していても、それとは別に使用開始届出書を提出しなければならないということです。「工事の届出を出したから、もう届出は済んでいる」という誤解は、この一文で否定されています。
新築については、このかっこ書きから除かれています。もっとも、東京消防庁の様式(別記第3号様式の2)の「工事等種別」欄には「新築」の選択肢が設けられており、実務上は新築建物の使用開始についてもこの届出書が用いられています。新築案件では、建築確認・消防同意(消防法第7条)、消防用設備等の設置届出・検査(同法第17条の3の2)とあわせて、提出書類の全体像を所轄消防署に確認してください。


建築確認を受けていても、使用開始届は免除されない

条例第56条第1項ただし書は、建築基準法第6条第1項・第6条の2第1項の確認を受けた場合等について、工事等計画届出書を不要としています。建築確認の過程で消防同意(消防法第7条)を経ており、消防機関が内容を把握しているためです。

⚠️ 注意:このただし書は第56条(工事等計画の届出)だけの規定です。第56条の2(使用開始の届出)には同じただし書がありません。建築確認を受けた建物であっても、使用開始届出書は必要です。ここは実務で最も取り違えられるポイントです。


「指定防火対象物等」とは何か

条例に頻出する指定防火対象物等は、条例第56条第1項第1号で定義されています。かみくだくと、令別表第一各項((19)項・(20)項を除く)のうち、①消火器具の設置が必要なもの(消防法施行令第10条第1項各号)、または②自動火災報知設備の設置が必要な一定の類型のもの(同令第21条第1項第1号(令別表第一(13)項ロを除く)・第3号・第7号)を指し、③同令第10条第1項第5号に掲げる部分(地階・無窓階・3階以上の階で床面積50平方メートル以上)を有する防火対象物も含まれます。

条項 主な内容(要約)
令第10条第1項第1号 劇場等((1)項イ)、キャバレー等・遊技場・カラオケボックス等((2)項)、入院施設のある病院・診療所等((6)項イ(1)〜(3))、老人短期入所施設等((6)項ロ)、地下街・準地下街・文化財((16の2)項〜(17)項)、および火を使用する設備・器具を設けた飲食店等((3)項)(いずれも面積を問わない)
令第10条第1項第2号 公会堂等((1)項ロ)、物品販売店舗((4)項)、旅館・共同住宅((5)項)、診療所・社会福祉施設・幼稚園等((6)項イ(4)・ハ・ニ)、浴場((9)項)、工場・駐車場・倉庫((12)項〜(14)項)、火を使用する設備・器具のない飲食店等((3)項)で延べ面積150平方メートル以上
令第10条第1項第3号 学校((7)項)、図書館等((8)項)、停車場((10)項)、神社・寺院等((11)項)、事務所等((15)項)で延べ面積300平方メートル以上
令第10条第1項第4号 少量危険物・指定可燃物を貯蔵し、または取り扱うもの
令第10条第1項第5号 地階・無窓階・3階以上の階で、床面積50平方メートル以上のもの
令第21条第1項第1号 カラオケボックス等、旅館・ホテル、入院施設のある病院・診療所、宿泊を伴う社会福祉施設など(面積を問わない)
令第21条第1項第3号 劇場等、飲食店、物品販売店舗、特定用途複合((16)項イ)などで延べ面積300平方メートル以上
令第21条第1項第7号 避難階以外の階に特定用途があり、その階から避難階または地上に直通する階段が2以上設けられていないもの

💡 実務上の目安:東京都内のオフィスビルや飲食ビルのテナント区画は、この定義に当てはまることがほとんどです。指定防火対象物等に該当すると、使用開始届出書の提出だけでなく、使用開始前の消防検査(条例第56条の2第3項)が必須になります。該当するかどうかは用途と延べ面積、階、無窓階かどうかで決まります。無窓階の判定については「無窓階とは?判定基準・消防設備・東京消防庁の運用を解説」で詳しく整理しています。


4. 使用開始前の消防検査|届出とセットの手続

指定防火対象物等を使用しようとする者は、使用開始前に消防署長の検査を受けなければなりません(東京都火災予防条例第56条の2第3項)。これは届出書を提出すれば終わりという手続ではなく、現場で実際に確認を受ける手続です。
火災予防条例施行規則第12条の2の2は、この検査を次の2種類と定めています。

検査の種別 内容
使用検査 指定防火対象物等に係る工事等が完了した場合に行う検査
中間検査 使用検査を補完するため、火災予防上・消防活動上重大な影響を及ぼすと認められる部分で、工事等の完了後に行う使用検査が困難な部分について、工事等の完了前に行う検査(隠蔽される部分など)

検査の実施対象・実施時期その他の必要な事項は消防総監が定めるとされており(同条第2項)、運用の細目は東京消防庁の予防事務審査・検査基準によります。

⚠️ よくある落とし穴:電子申請や郵送で届出をした場合でも、検査は自動では設定されません。東京消防庁も、電子申請・郵送で届け出た場合は管轄消防署に連絡して検査の日程を相談するよう案内しています。「書類を送ったから終わり」と考えていると、オープン当日に検査未了という事態になります。

検査では、避難通路の幅員や物品の置き方、防火戸まわりの状況、消防用設備等の設置状況、防炎物品の使用状況などが確認されます。図面どおりに施工されていない、什器が避難通路にはみ出している、防火戸の閉鎖が妨げられているといった指摘は珍しくありません。指摘を受ければ是正して再確認となり、その分だけ使用開始が後ろにずれます。


5. 実務ではどう運用されるか|スケジュールの逆算

テナント入居(内装工事あり)の標準的な流れを、使用開始日から逆算して整理します。時期の目安は東京消防庁管内の一般的なもので、所轄消防署や案件の規模によって前後します。

時期の目安 やること 根拠・備考
使用開始の1〜2か月前 用途判定・収容人員の確認、平面図をもって所轄消防署の予防課へ事前相談 法令上の義務ではないが実務上ほぼ必須
工事着手の10日前まで 工事整備対象設備等着工届出書(消防用設備等の工事を行う場合) 消防法第17条の14/届出者は甲種消防設備士
工事着手の10日前まで 消防用設備等の設置計画の届出(誘導灯、非常警報設備、連結送水管など) 条例第58条の2第1項
工事着手の7日前まで 防火対象物工事等計画届出書 条例第56条第1項
工事着手の7日前まで 火気使用設備等の設置の届出(厨房設備、変電設備など該当する場合) 条例第57条第1項
設置日(工事を伴う場合は工事着手日)の10日前まで 少量危険物貯蔵取扱所・指定可燃物貯蔵取扱所の届出(該当する場合) 条例第58条第1項
使用開始の7日前まで 防火対象物使用開始届出書 条例第56条の2第1項
工事完了後4日以内 消防用設備等設置届出書を提出し、検査を受ける 消防法第17条の3の2、消防法施行規則第31条の3第1項
使用開始前 消防署長の検査(指定防火対象物等の場合) 条例第56条の2第3項
防火管理者を定めたとき遅滞なく 防火管理者選任(解任)届出書、消防計画作成(変更)届出書 消防法第8条第1項・第2項

📌 ここが盲点:使用開始届出書(条例)と消防用設備等設置届出書(消防法)は、根拠も期限も検査も別建てです。前者は「使用開始の7日前まで(事前)」、後者は「工事完了後4日以内(事後)」。期限の向きが逆なので、工程表に落とすときは必ず分けて管理してください。届出の全体像は「消防届出は行政書士へ|東京の届出一覧・期限・依頼できる範囲を解説」にまとめています。


確認しておくべき5つの前提条件

どの届出がいくつ必要になるかは、次の5点で決まります。ご相談の際にこの5点を整理しておくと、話が早く進みます。

確認項目 なぜ必要か
①新築か、既存建物か 建築確認・消防同意の有無で工事等計画届出の要否が変わる(条例第56条第1項ただし書)
②新装工事か、テナント入替か、居抜きか 工事を伴わない入居でも使用開始届は必要。工事があれば工事等計画届出も必要
③用途変更があるか 用途が変われば令別表第一の項が変わり、必要な消防用設備等も変わる
④消防用設備等の現況 既設設備の能力不足・未設置がないか。設置や改修があれば着工届・設置届が発生する
⑤収容人員と階・面積 防火管理者の要否(消防法第8条)、指定防火対象物等への該当性、無窓階の判定に直結する

用途判定は「消防法における建物の用途判定とは?消防法施行令 別表第1に基づく建物の用途について解説」、収容人員の算定は「防火対象物の収容人員の計算方法を用途区分別に徹底解説」で解説しています。


6. 例外・特例が問題になる場面


一時的な使用は「一時使用届出書」になる

条例第56条の2第1項は、対象から一時使用を除いています。イベント出店や期間限定のポップアップストアなど、一時的に不特定の者が出入りする店舗等として使用する場合は、別に防火対象物一時使用届出書(条例第56条の3第1項、規則第12条の3、別記第3号様式の3)を、一時的な使用を開始する日の7日前までに提出します。どちらに当たるかの線引きは使用の期間や形態によって判断されるため、迷う場合は所轄消防署に確認してください。


工事を伴わない「居抜き入居」でも届出は必要

前のテナントの内装をそのまま使う居抜き入居では、工事がないため工事等計画届出書は不要です。しかし使用開始届出書は必要です。条文が求めているのは「使用しようとする」という事実であって、工事の有無ではないからです。むしろ居抜きの場合は、前テナントの用途と自社の用途が同じかどうか(例:喫茶店の跡に居酒屋、物販店の跡に学習塾)によって必要な消防用設備等が変わることがあり、注意が必要です。


用途変更と既存不適格の問題

技術上の基準が改正された場合、既存の建物の消防用設備等には改正後の基準は適用されず、従前の規定が適用され続けます(消防法第17条の2の5第1項。いわゆる既存不適格)。ただし、特定防火対象物(不特定多数の者が出入りする飲食店・物品販売店舗・旅館・病院など)については、この例外が適用されず、常に現行基準への適合が求められます(同条第2項第4号)。消火器・避難器具その他政令で定めるものも、同様に常に現行基準が適用されます(同条第1項かっこ書き)。事務所ビルの一室が飲食店に変わるようなケースでは、この点が費用に直結します。
また、建物の位置・構造・設備の状況から、政令で定める基準によらなくても同等以上の防火安全性能が確保できると消防長または消防署長が認める場合には、消防法施行令第32条による基準の特例が検討できることがあります。特例の考え方は「民泊開設の消防「基準の特例申請」完全ガイド|自動火災報知設備・スプリンクラーの免除と緩和」で具体例とともに解説しています。


所轄消防署による運用の差

使用開始届出書は条例に基づく手続であるため、市町村(消防本部)が変われば条番号も様式も添付図書の運用も変わります。東京消防庁管内であっても、添付を求められる図書の細かさ、検査の実施時期、事前相談の受け方には署ごとの差があります。「前の店舗のときはこれで通った」が通用するとは限りません。物件ごとに、その物件を管轄する消防署に確認するのが原則です。


7. 届出書の書き方|別記第3号様式の2の記載ポイント

東京消防庁の様式は、東京消防庁「防火対象物使用開始届出書」のページからダウンロードできます。令和5年10月13日の火災予防条例施行規則の改正により様式と記入例が変更されていますので、古い様式を使い回さないよう注意してください。

記載欄 書き方のポイント
届出者 使用しようとする者の住所・電話番号・氏名。法人の場合は法人名と代表者の役職・氏名を併記する
防火対象物の概要(建物欄) 所在地・名称・構造・階層・建築面積・延べ面積・用途。建物全体の数値を記入する
防火対象物の概要(事業所欄) テナント入居等の場合に記入。事業所名・電話番号・使用する階(複数階ならすべて)・床面積・用途
用途 消防法施行令別表第一の項番号で記入する(例:(3)項ロ 飲食店、(15)項 事務所)。建物全体と自社区画の両方を書く
工事等種別 建物全体なら新築・増築・改築・用途変更・移転・模様替え・修繕等から選択。事業所単位なら「その他」欄に具体的に記入する(例:事業所入居に伴う間仕切り変更工事)
使用開始日 実際に使いはじめる日。この日から逆算した7日前が提出期限になる
設計者・施工者 会社名・担当者名・電話番号

様式の備考には、防火安全技術講習修了者が届出内容の消防関係法令への適合性を調査した場合は修了証の写しを添付すること石油機器技術管理講習修了者が地震動等により作動する安全装置を設けることとされている設備または器具を設置(変更)する場合は修了証の写しを添付することも定められています。該当する場合は忘れずに添付してください。また、同一敷地内に管理権原が同一である2以上の防火対象物がある場合は、主要な防火対象物のみを本届出書とし、他は防火対象物の概要欄を別紙として作成・添付することができます。


提出方法は3つ|窓口・郵送・電子申請

東京消防庁では、窓口持参・郵送のほか、電子申請による提出も受け付けています。ただし、電子申請・郵送のいずれの場合も、検査が必要な物件では管轄消防署に連絡して検査日程を相談する必要があります。提出そのものは省力化できても、検査の段取りは省略できません。


8. よくある誤解と注意点


誤解1「消防法に基づく届出でしょう?」

違います。東京都火災予防条例第56条の2に基づく、条例上の届出です。消防法に規定はありません。この違いは実務に直結します。条例である以上、物件が東京都外にあれば、その市町村の条例を見なければならないからです。


誤解2「出さなくても罰則はない」

あります。東京都火災予防条例第67条の2第4号は、第56条の2第1項の届出をせず、もしくは虚偽の届出をし、または同条第3項の検査を拒み・妨げ・忌避して防火対象物を使用した者を、10万円以下の罰金に処すると定めています。さらに同条例第68条の両罰規定により、法人の代表者や従業者がその法人の業務に関して違反した場合は、行為者を罰するほか、法人にも罰金刑が科されます。

📝 対比しておくと理解しやすい点:工事等計画届出書(第56条)には罰則がありません(条例第67条の2に列挙されていないため)。一方、使用開始届出書(第56条の2)には罰則があります。「工事の届出のほうが重い」という感覚は、条例上はむしろ逆です。なお、消防用設備等設置届出書(消防法第17条の3の2)、工事整備対象設備等着工届出書(同法第17条の14)、防火管理者選任届出書(同法第8条第2項)の届出を怠った場合は、消防法第44条第8号により30万円以下の罰金または拘留の対象となります。


誤解3「内装業者が出してくれる」

届出義務者は使用しようとする者です。業者が窓口へ持参してくれること自体はありますが、義務者は変わりません。また、他人の依頼を受け報酬を得て業としてこれらの書類を作成できるのは、原則として行政書士・行政書士法人に限られます(行政書士法第19条第1項)。「工事費に届出代行費用が含まれている」と言われた場合は、誰が作成するのかを確認してください。詳しくは「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」をご覧ください。


誤解4「工事等計画届出書を出したから使用開始届は不要」

必要です。条例第56条の2第1項のかっこ書きが「前条第一項各号(新築を除く。)に掲げる行為をしたのち使用しようとする者を含む」と明記しています。工事の届出と使用の届出は別です。


誤解5「建築確認を受けたから届出は要らない」

建築確認による適用除外(条例第56条第1項ただし書)は工事等計画届出書だけの話です。使用開始届出書には適用されません。


誤解6「7日前に出せば必ずオープンに間に合う」

7日前は条例上の下限です。指定防火対象物等では使用開始前の検査が必要で、日程調整や是正対応の時間は別に見込む必要があります。オープン日から逆算し、余裕をもって提出してください。


誤解7「小規模な事務所は対象外」

条例第56条の2第1項に、面積による除外はありません。令別表第一各項((19)項・(20)項を除く)に掲げる防火対象物またはその部分であれば対象です。ただし、使用開始前の検査が必要になるかどうかは「指定防火対象物等」に当たるかで変わります。


誤解8「東京で通ったやり方は全国どこでも通る」

通りません。条例である以上、条番号・様式・添付図書・検査の運用は市町村ごとに異なります。多店舗展開している事業者ほど、この点で足をすくわれます。出店先ごとに、管轄消防本部の条例と様式を確認してください。


9. 行政書士に依頼できる範囲と費用

防火対象物使用開始届出書は、消防署長という官公署に提出する書類ですので、その作成は行政書士の業務です(行政書士法第1条の3第1項)。官公署へ提出する手続の代理も、行政書士の業務範囲に含まれます(同法第1条の4第1項第1号)。そして、行政書士または行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業としてこれらの書類作成業務を行うことができません(同法第19条第1項)。

手続・作業 担当する専門家
防火対象物使用開始届出書・工事等計画届出書の作成・提出 行政書士(行政書士法第1条の3・第1条の4)
防火管理者選任(解任)届出書・消防計画作成(変更)届出書の作成・提出 行政書士(消防計画の内容そのものは防火管理者が決定する)
工事整備対象設備等着工届出書 甲種消防設備士(消防法第17条の14で届出義務者が法定されている)
消防用設備等の工事・整備、消防用設備等試験結果報告書 消防設備士
平面図・立面図・断面図・建具表などの設計図書の作成 建築士・設計者

着工届は消防法が届出義務者を甲種消防設備士と定めているため、行政書士が代わって届け出ることはできません。「行政書士に頼めばすべて終わる」わけではなく、消防設備士・建築士との役割分担を最初に整理しておくことが、結局いちばん早いというのが実務の実感です。消防用設備等設置届出書の届出者の考え方は「消防用設備等設置届出書の作成代行は行政書士法違反?消防届出と法令遵守を徹底解説」で詳しく整理しています。
当事務所の報酬額は、防火対象物使用開始(変更)届出、防火対象物工事等計画届出書とも報酬額表に掲載しています(すべて税抜)。金額に幅を持たせているのは、建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって作業量が変わるためです。正式なお見積りは、建物の情報を確認させていただいたうえでご提示します。出店が続く事業者向けに顧問契約もご用意しています。


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「使用開始の7日前まで」に間に合わせるには、その前段にある工事等計画届出書・着工届・設置届まで含めて逆算する必要があります。届出が1本抜けているだけで消防検査が受けられず、オープン日そのものが動きます。
建物の所在地・用途・使用する階と床面積・工事の有無・使用開始予定日をお知らせいただければ、必要な消防届出の洗い出し、提出期限を逆算したスケジュール表の作成、所轄消防署への事前相談、届出書の作成・提出、検査日程の調整まで、行政書士として一貫してご支援します。
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行政書士 萩本昌史事務所|東京の消防手続支援ステーション


10. よくある質問


Q1. 防火対象物使用開始届出書とは何ですか。消防法に基づく届出ですか。

建物または建物の一部を使用しようとする者が、使用を開始する日の7日前までに消防署長へ提出する届出書です。根拠は消防法ではなく、東京都火災予防条例第56条の2第1項です。総務省消防庁が示す「火災予防条例(例)」第43条が全国的なひな形になっており、多くの市町村が同じ趣旨の規定を置いていますが、条番号や様式は自治体ごとに異なります。


Q2. 防火対象物使用開始届出書はいつまでに、どこへ提出しますか。

使用を開始する日の7日前までに、建物の所在地を管轄する消防署長(窓口は消防署の予防課)へ提出します。東京消防庁管内では、窓口持参・郵送のほか電子申請も利用できます。ただし7日前は条例上の下限であり、審査・検査の日程調整や是正対応の時間を考えると、実務上は2〜3週間前の提出をおすすめします。


Q3. 防火対象物使用開始届出書は、だれが届出者になりますか。ビルのオーナーですか、内装業者ですか。

条文上の届出義務者は「使用しようとする者」です。テナント入居であれば、その区画を使用する事業者自身が届出義務者になります。オーナーや内装業者ではありません。なお、東京都火災予防条例第56条の2第4項(第56条第4項を準用)は、防火対象物またはその部分の所有者に対し、使用者へ適正な届出を行うよう求める努力義務を課しています。


Q4. 防火対象物工事等計画届出書を提出しました。使用開始届出書も必要ですか。

必要です。東京都火災予防条例第56条の2第1項は、届出義務者に「前条第一項各号(新築を除く。)に掲げる行為をしたのち使用しようとする者を含む」と明記しています。工事等計画届出書(工事着手の7日前まで・条例第56条)と使用開始届出書(使用開始の7日前まで・条例第56条の2)は別の手続で、内装工事を伴うテナント入居では両方を提出します。


Q5. 防火対象物使用開始届出書を提出しないとどうなりますか。罰則はありますか。

あります。東京都火災予防条例第67条の2第4号により、第56条の2第1項の届出をせず、もしくは虚偽の届出をし、または同条第3項の検査を拒み・妨げ・忌避して防火対象物を使用した者は、10万円以下の罰金に処せられます。さらに同条例第68条の両罰規定により、法人の代表者や従業者がその法人の業務に関して違反した場合は、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されます。なお、工事等計画届出書(条例第56条)については条例第67条の2に列挙がなく罰則はありません。消防用設備等設置届出書(消防法第17条の3の2)、工事整備対象設備等着工届出書(同法第17条の14)、防火管理者選任届出書(同法第8条第2項)の届出を怠った場合は、消防法第44条第8号により30万円以下の罰金または拘留の対象となります。あわせて、立入検査(消防法第4条)で未届が判明すれば是正指導の対象となります。


Q6. 防火対象物使用開始届出書にはどんな書類を添付しますか。

東京都火災予防条例第56条の2第2項が同条例第56条第2項を準用しており、火災予防条例施行規則第12条第2項により、防火対象物の概要表、平面図、立面図、断面図、室内仕上表、建具表および防火基準に適合することを審査するために必要な事項を記載した図書を添付します。東京消防庁は、これらに加えて案内図・詳細図・展開図等を求める旨を案内しています。火気使用設備等・火気使用器具等を設置(内容変更を含む)する場合は、その位置・構造等の状況を示した図書も必要です。


Q7. 防火対象物使用開始届出書を出したあとに消防検査はありますか。

指定防火対象物等に該当する場合は、使用開始前に消防署長の検査を受けなければなりません(東京都火災予防条例第56条の2第3項)。火災予防条例施行規則第12条の2の2は、この検査を工事等の完了後に行う「使用検査」と、隠蔽されるなど後から確認できない部分について工事等の完了前に行う「中間検査」に分けています。電子申請や郵送で届け出た場合でも検査は自動的には設定されないため、管轄消防署に連絡して日程を相談してください。


Q8. 居抜きで工事をしない場合も防火対象物使用開始届出書は必要ですか。

必要です。条文が求めているのは「使用しようとする」という事実であり、工事の有無は要件ではありません。工事がなければ工事等計画届出書は不要ですが、使用開始届出書は提出します。むしろ居抜きでは、前テナントと用途が変わることで必要な消防用設備等が変わる場合があるため、事前相談の重要度はより高くなります。


Q9. 「指定防火対象物等」とは何ですか。使用開始前の検査が必要になるのはどんな建物ですか。

指定防火対象物等は東京都火災予防条例第56条第1項第1号で定義されており、令別表第一各項((19)項・(20)項を除く)に掲げる防火対象物のうち、消火器具の設置が必要なもの(消防法施行令第10条第1項各号)、または自動火災報知設備の設置が必要な一定の類型のもの(同令第21条第1項第1号(令別表第一(13)項ロを除く)・第3号・第7号)をいい、同令第10条第1項第5号に掲げる部分(地階・無窓階・3階以上の階で床面積50平方メートル以上)を有する防火対象物も含まれます。東京都内のオフィスビルや飲食ビルのテナント区画は、これに該当することがほとんどです。該当すると、使用開始前に消防署長の検査を受けることが必要になります。


Q10. 東京以外の物件でも防火対象物使用開始届出書の手続は同じですか。

骨格は共通ですが、同一ではありません。この届出は各市町村の火災予防条例に基づくため、条番号・様式・添付図書・検査の運用は自治体ごとに異なります。総務省消防庁の「火災予防条例(例)」第43条が「令別表第一に掲げる防火対象物((19)項・(20)項を除く)を使用しようとする者は、使用開始の日の7日前までに消防長(消防署長)に届け出る」というひな形を示しており、東京都火災予防条例第56条の2もこれに沿った内容ですが、出店先ごとに管轄消防本部の条例と様式を必ず確認してください。


Q11. 防火対象物使用開始届出書の作成を行政書士に依頼できますか。費用はどのくらいですか。

できます。消防署長あてに提出する書類の作成は行政書士の業務であり(行政書士法第1条の3第1項)、官公署への提出手続の代理も業務範囲に含まれます(同法第1条の4第1項第1号)。他人の依頼を受け報酬を得て業として作成できるのは、原則として行政書士・行政書士法人に限られます(同法第19条第1項)。報酬額は建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって変わるため、当事務所の報酬額表(税抜)をご確認いただくか、物件情報をお知らせのうえお見積りをご依頼ください。なお、工事整備対象設備等着工届出書は消防法第17条の14により甲種消防設備士が届出義務者と定められているため、行政書士が代わって届け出ることはできません。


参考資料

※本記事は2026年8月18日時点で確認した法令および公表資料をもとにした一般的な解説です。法令・条例の改正、東京消防庁の審査基準の改正、所轄消防署の運用、個別の建物の状況により結論が変わる場合があります。具体的な案件は、対象建物を管轄する消防署および行政書士へご確認ください。

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