結論:防火対象物点検と消防用設備等点検は、まったく別の制度です。防火対象物点検(消防法第8条の2の2)は「防火管理が適正に行われているか」を防火対象物点検資格者が1年に1回点検して報告する制度、消防用設備等点検(消防法第17条の3の3)は「消火器や自動火災報知設備がきちんと動くか」を点検して報告する制度です。対象になる建物も、点検する人の資格も、点検する中身も違います。消防用設備等点検を出しているから防火対象物点検は不要、ということにはなりません。
「毎年、消防設備の点検業者に頼んで報告書を出しているので大丈夫」——これが、この分野でいちばん多い誤解です。消防法第8条の2の2第1項には、わざわざ「ただし、第十七条の三の三の規定による点検及び報告の対象となる事項については、この限りでない」というただし書が置かれています。2つの制度が重複しないよう、条文自身が線を引いているのです。裏を返せば、重複しない部分は防火対象物点検でしか見ないということです。
本記事は、東京都内(東京消防庁管内)で飲食店・物販店・ホテル・病院・福祉施設・雑居ビルを管理・運営されている管理権原者の方に向けて、防火対象物定期点検報告制度の対象建物、点検資格者、点検基準、1年に1回の報告実務、防火基準点検済証の表示、3年間の報告が免除される特例認定、罰則、そして行政書士に依頼できる範囲までを、消防法・同施行令・同施行規則・東京都火災予防条例・東京消防庁の運用・総務省消防庁の資料に沿って整理した実務ガイドです。
防火対象物定期点検報告制度とは、一定の防火対象物の管理について権原を有する者が、防火対象物点検資格者に「防火管理上必要な業務」等が法令の基準に適合しているかを点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない制度です(消防法第8条の2の2第1項)。
「防火対象物」とは、消防法の対象になる建物や施設のことです。「管理について権原を有する者(管理権原者)」とは、その建物や区画を管理する法律上の権限を持つ人、つまり建物のオーナーやテナントの経営者を指します。報告義務を負うのは防火管理者ではなく、この管理権原者です。
まず、混同されがちな2つの制度を並べて確認します。この表の違いが分かれば、この記事の半分は理解できたことになります。
| 比較項目 | 防火対象物点検 | 消防用設備等点検 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 消防法第8条の2の2 | 消防法第17条の3の3 |
| 何を見るか | 防火管理のソフト面 防火管理者の選任届、消防計画の届出と実行、避難通路・防火戸の管理、カーテン等の防炎表示、危険物の届出など |
消防用設備等のハード面 消火器、自動火災報知設備、スプリンクラー設備、誘導灯、避難器具などの外観・機能・総合の状態 |
| 点検する人 | 防火対象物点検資格者 | 消防設備士/消防設備点検資格者(一定規模未満は関係者が自ら点検可) |
| 対象 | 特定用途の建物のうち収容人員300人以上、又は階段が1つの一定のもの | 原則として消防用設備等の設置義務がある防火対象物すべて |
| 頻度 | 1年に1回点検し、その都度報告 | 機器点検6か月に1回・総合点検1年に1回。報告は特定用途1年に1回/非特定用途3年に1回 |
| 表示制度 | 防火基準点検済証/特例認定で防火優良認定証 | なし |
| 報告義務者 | 管理権原者 | 関係者(所有者・管理者・占有者) |
消防法第8条の2の2第1項には、次のただし書があります。
消防法第8条の2の2第1項ただし書
「ただし、第十七条の三の三の規定による点検及び報告の対象となる事項については、この限りでない。」
つまり、消防用設備等点検で見る事項は、防火対象物点検からは外れるという趣旨です。二重に点検させないための整理であって、「どちらか一方をやれば足りる」という意味ではありません。消防用設備等点検で見ない部分——防火管理者を選任しているか、消防計画を届け出て実際に運用しているか、避難階段に物が置かれていないか、防火戸の前に什器が積まれていないか、カーテンや展示用合板に防炎表示があるか——こうした点が、防火対象物点検の中心になります。
消防用設備等点検報告制度そのものについては「消防用設備等点検報告制度とは|周期・報告期限・自分でできる範囲を行政書士が解説【東京】」で詳しく整理しています。
この制度がなぜ生まれたのかを知っておくと、点検基準の中身が腑に落ちます。
平成13年9月1日、新宿区歌舞伎町の雑居ビルで火災が発生し、44名が亡くなりました。このビルでは、防火管理者が選任されていなかった、避難階段に物品が置かれて避難経路がふさがれていた、防火戸が閉鎖できない状態だった、といった防火管理上の不備が重なっていました。消防用設備等が設置されているかどうかではなく、日常の管理がどうなっていたかが被害を拡大させたのです。
この火災を契機として平成14年に消防法が改正され、防火対象物定期点検報告制度は平成15年10月1日に施行されました。同じ改正では、立入検査の時間制限と事前通告の撤廃、措置命令の範囲拡大、命令を発した場合の公示の義務づけ、罰則の強化も行われています。
制度の狙いは「設備の有無」ではなく「管理の実態」を定期的に確認させることにあります。点検基準が届出の有無や日常管理の状況に集中しているのは、このためです。
点検義務があるかどうかは、消防法施行令第4条の2の2で定められた2つのルートのどちらかに当たるかで決まります。どちらか一方に当たれば対象です。
令別表第一の(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項に掲げる防火対象物で、収容人員が300人以上のものです(消防法施行令第4条の2の2第1号)。具体的には次の用途です。
| 項 | 用途 |
|---|---|
| (1)項 | 劇場、映画館、演芸場、観覧場/公会堂、集会場 |
| (2)項 | キャバレー、遊技場、性風俗関連特殊営業店舗、カラオケボックス等 |
| (3)項 | 待合、料理店/飲食店 |
| (4)項 | 百貨店、マーケット、物品販売業を営む店舗、展示場 |
| (5)項イ | 旅館、ホテル、宿泊所(住宅宿泊事業を含む) |
| (6)項 | 病院、診療所、助産所/老人短期入所施設等/保育所等/幼稚園、特別支援学校 |
| (9)項イ | 蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類する公衆浴場 |
| (16)項イ | 特定用途を含む複合用途防火対象物(雑居ビル) |
| (16の2)項 | 地下街 |
収容人員の数え方は用途ごとに定められています(消防法施行規則第1条の3)。従業者の数だけではなく、客席の面積や固定いすの数などから算定するため、体感より多くなることが珍しくありません。算定方法は「収容人員の計算方法|消防法施行規則第1条の3の用途別算定表【行政書士が解説】」で解説しています。
こちらが、小規模な雑居ビルで問題になるルートです。消防法施行令第4条の2の2第2号は、次の要件をすべて満たすものを対象としています。
ルート2の要件(すべてを満たすこと)
1 (1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イの特定用途に供される部分が存すること
2 その部分が避難階以外の階(1階及び2階を除く)に存すること。つまり地階、又は3階以上の階
3 その階から避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていないこと。ただし、その階段が屋外に設けられている場合、又は避難上有効な構造を有する場合は1でよい
「収容人員30人以上300人未満」という説明は、正確には少し違います。令第4条の2の2第2号の条文に「30人」という数字は出てきません。この30人は、消防法第8条の2の2第1項が「第8条第1項の防火対象物のうち」と限定していることから来ています。つまり、まず防火管理者の選任義務がある建物であることが前提で、その下限が消防法施行令第1条の2第3項に定められています。
そしてその下限は用途によって違います。(6)項ロ(自力避難困難者が入所する福祉施設等)を含む建物は収容人員10人以上、その他の特定用途は30人以上です。グループホームや障害者支援施設が入る建物では、10人から対象になり得ます。「30人未満だから関係ない」と判断する前に、(6)項ロの用途が入っていないかを必ず確認してください。防火管理者の選任義務については「防火管理者の選任が必要な建物とは|収容人員10人・30人・50人の判定基準」で整理しています。
東京消防庁は、このルート2を「地階又は3階以上の階に特定用途があり、かつ、階段が屋内1系統のみ」と表現しています。飲食店が3階に入っている、屋内階段が1本しかない小規模ビル——東京都内にはこの形の建物が数多くあり、収容人員が300人に遠く及ばなくても点検義務が生じます。用途の判定そのものは「消防法の用途判定とは?令別表第一の項の決め方・従属用途・みなし従属を解説」をご覧ください。
| 層 | 規定 | 定めている内容 |
|---|---|---|
| 法律 | 消防法第8条の2の2第1項 | 点検・報告義務。ただし書で第17条の3の3の対象事項を除外 |
| 法律 | 消防法第8条の2の2第2項 | 点検基準に適合した場合に表示(防火基準点検済証)を付すことができる |
| 法律 | 消防法第8条の2の2第3項・第4項 | 何人も虚偽・紛らわしい表示を付してはならない/消防長等の表示除去命令 |
| 法律 | 消防法第8条の2の2第5項 | 特例認定を受けた防火対象物には第1項を適用しない |
| 法律 | 消防法第8条の2の3 | 特例認定の要件・申請・検査・効力・取消し・防火優良認定証 |
| 政令 | 消防法施行令第4条の2の2 | 点検を要する防火対象物(第1号=300人以上/第2号=階段1つ) |
| 政令 | 消防法施行令第1条の2第3項 | 防火管理者の選任義務の下限((6)項ロ等10人/特定用途30人/非特定50人) |
| 省令 | 消防法施行規則第4条の2の4 | 点検は1年に1回/防火管理維持台帳への記録・保存/点検資格者の要件 |
| 省令 | 消防法施行規則第4条の2の6 | 点検基準(9項目) |
| 省令 | 消防法施行規則第4条の2の7 | 防火基準点検済証の様式・記載事項(点検日から1年後の年月日等) |
| 省令 | 消防法施行規則第4条の2の8 | 特例認定の基準・申請様式(別記様式第1号の2の2の2の3)・権原変更の届出 |
| 省令 | 消防法施行規則第4条の2の9 | 防火優良認定証の様式・記載事項 |
| 法律 | 消防法第36条第1項 | 第8条〜第8条の2の3を防災管理について準用(読替え) |
| 罰則 | 消防法第44条第11号・第45条第3号 | 報告をせず、又は虚偽の報告をした者/両罰規定 |
点検ができるのは「防火対象物点検資格者」だけです(消防法第8条の2の2第1項)。管理権原者が自ら点検することはできません。ここが消防用設備等点検(一定規模未満は関係者が自ら点検できる)との大きな違いです。
防火対象物点検資格者になるには、消防法施行規則第4条の2の4第4項が列挙する実務経験のいずれかを満たしたうえで、総務大臣の登録を受けた登録講習機関の講習を修了し、免状の交付を受ける必要があります。主なものは次のとおりです。
| ベースとなる資格・立場 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 消防設備士 | 消防用設備等の工事・整備・点検について3年以上 |
| 消防設備点検資格者 | 消防用設備等の点検について3年以上 |
| 防火管理者 | 3年以上その実務の経験を有する者 |
| 甲種又は乙種防火管理講習の修了者 | 防火管理上必要な業務について5年以上 |
| 一級建築士・二級建築士 | 建築物の設計・工事監理・建築工事の指導監督について5年以上 |
| 特定建築物調査員/建築設備検査員/防火設備検査員 | それぞれの調査・検査について5年以上 |
| 建築設備士 | 5年以上 |
| 市町村の消防職員 | 火災予防に関する業務について1年以上(その他の消防職員は5年以上) |
| 一級建築基準適合判定資格者検定合格者 | 建築主事又は確認検査員として2年以上 |
「消防設備士の資格があれば防火対象物点検もできる」というのは誤りです。消防設備士であることは入口の要件にすぎず、3年以上の実務経験に加えて登録講習の修了と免状の交付が必要です。免状には有効期間があり、消防庁長官が定める期間ごとに再講習を受けて免状の交付を受けなければ、資格を失います(消防法施行規則第4条の2の5)。点検を依頼する際は、免状の有効期限を必ず確認してください。
点検基準は9項目です。すべて「消防用設備等が動くかどうか」ではなく、「管理と手続が適正か」を問うものになっています。
防火対象物の点検基準(消防法施行規則第4条の2の6第1項)
一 防火管理者選任(解任)届出書、消防計画作成(変更)届出書が提出されていること
一の二 自衛消防組織の設置を要する防火対象物では、自衛消防組織設置(変更)届出書が提出されていること
二 消防計画に基づき、消防庁長官が定める事項が適切に行われていること(訓練の実施、火気の管理、避難施設の維持管理など)
三 高層建築物・地下街等で管理権原が分かれているものについて、統括防火管理に関する事項が適切に行われていること
四 避難上必要な施設および防火戸が適切に管理されていること(消防法第8条の2の4)
五 防炎対象物品に防炎表示が付されていること(カーテン、じゅうたん、展示用合板等)
六 圧縮アセチレンガス、液化石油ガス等を貯蔵・取扱いしている場合、その届出がされていること(消防法第9条の3)
七 消防用設備等が法令に従って設置されていること
八 消防用設備等の設置届出を行い、検査を受けていること(消防法第17条の3の2)
九 その他、法令に規定する事項に関し市町村長が定める基準を満たしていること
第1号から第3号までを見れば分かるとおり、この点検は「届出が出ているか」から始まります。防火管理者選任届や消防計画作成届が未提出のまま何年も経っている建物は、点検の入口で不適合になります。消防計画については「消防計画の作成手順と記載事項|届出義務者・様式第1号の2・訓練回数を条文で解説」、統括防火管理については「統括防火管理者とは|選任が必要な建物・協議会・全体についての消防計画を条文で解説」をご覧ください。
第2号の「消防計画に基づき適切に行われていること」には、自衛消防訓練の実施が含まれます。計画に年2回と書いてあるのに実施していなければ、ここで不適合になります。訓練の回数は「自衛消防訓練は年2回必要?総合訓練・部分訓練の回数を消防法と東京都火災予防条例から解説」で整理しています。
消防法施行規則第4条の2の6第2項は、特定用途に供されていない区画された部分などについて、第1号から第3号まで(一部は第4号まで)以外の規定を適用しないと定めています。令第8条の区画(いわゆる令8区画)で区画され、その部分が特定用途に使われていない場合や、特定共同住宅等の一定の部分がこれにあたります。ビル全体が一律に同じ深さで点検されるわけではありません。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| だれが | 防火対象物の管理について権原を有する者(管理権原者) | 消防法第8条の2の2第1項 |
| だれが点検するか | 防火対象物点検資格者 | 消防法第8条の2の2第1項 |
| 何を | 防火対象物点検結果報告書(点検票その1〜その5等を添付) | 消防法施行規則第4条の2の4第3項(様式は消防庁長官が定める) |
| いつ | 1年に1回点検を行い、その結果を報告 | 消防法施行規則第4条の2の4第1項 |
| どこへ | 消防長又は消防署長(東京消防庁管内では管轄の消防署又は出張所。窓口・郵送・電子申請) | 消防法第8条の2の2第1項 |
| 部数 | 原則1部 | 東京消防庁の運用 |
| 手数料 | 不要 | — |
見落とされやすいのですが、管理権原者には点検結果を「防火管理維持台帳」に記録し、保存する義務があります(消防法施行規則第4条の2の4第2項)。台帳には、甲種防火管理再講習の修了証の写し、防火管理者選任届・消防計画作成届・自衛消防組織設置届などの届出書類の写し、点検結果報告書の写し、特例認定申請書の写しなどを編冊します。立入検査ではこの台帳の提示を求められます。
雑居ビルのように管理権原が複数に分かれている場合、点検は「防火対象物全体」について行います(消防法第8条の2の2第2項かっこ書き。ただし特例認定を受けた部分を除く)。自分のテナント区画だけを点検して済ませることはできません。
報告は管理権原者ごとに行うのが原則ですが、東京消防庁では共同報告の取扱いがあり、その場合は共同報告を行う届出者等の一覧と、管理権原者ごとの管理権原の範囲を示した書類を添付します。ビル全体の取りまとめを誰が行うのかを、あらかじめ決めておく必要があります。実務では、この調整が最も時間のかかる部分です。
点検の結果、点検対象事項が点検基準に適合していると認められた防火対象物には、「防火基準点検済証」の表示を付すことができます(消防法第8条の2の2第2項)。「付さなければならない」ではなく「付すことができる」——義務ではなく、適合していることを利用者に示すための任意の制度です。
防火基準点検済証の記載事項(消防法施行規則第4条の2の7第3項)
一 点検を行った日から起算して1年後の年月日(=表示の有効期限)
二 管理権原者の氏名
三 点検を行った防火対象物点検資格者の氏名その他消防庁長官が定める事項
表示は防火対象物の見やすい箇所に付します(同条第2項)。
表示を付せるのは、1年に1回の点検を規定どおり行っており、かつ点検基準に適合している場合に限られます(同条第1項)。そして、これに該当しないのに表示を付すこと、また紛らわしい表示を付すことは、何人にも禁止されています(消防法第8条の2の2第3項)。消防長又は消防署長は、その表示の除去や消印を命ずることができ(同条第4項)、いずれの違反にも罰則があります。
管理が優良な建物については、申請により消防長又は消防署長の認定を受けることで、3年間、点検・報告の義務が免除されます(消防法第8条の2の3、第8条の2の2第5項)。認定を受けた建物には「防火優良認定証」の表示を付すことができます(第8条の2の3第7項)。
特例認定の要件(消防法第8条の2の3第1項)
1 申請者が当該防火対象物の管理を開始した時から3年が経過していること(第1号)
2 次のいずれにも該当しないこと(第2号)
イ 過去3年以内に、消防法第5条第1項・第5条の2第1項・第5条の3第1項・第8条第3項若しくは第4項・第8条の2の5第3項・第17条の4第1項若しくは第2項の命令がされたことがあり、又はされるべき事由が現にあること
ロ 過去3年以内に認定の取消しを受けたことがあり、又は受けるべき事由が現にあること
ハ 過去3年以内に点検・報告がされなかったこと、又は虚偽の報告がされたことがあること
ニ 過去3年以内の点検で点検基準に適合していないと認められたことがあること
3 法令の遵守の状況が優良なものとして総務省令で定める基準に適合すると認められること(第3号)
第3号の総務省令で定める基準は、消防法施行規則第4条の2の8第1項が定めています。点検基準に適合していること、消防用設備等が技術基準に従って設置・維持されていること、消防用設備等点検(消防法第17条の3の3)を遵守していること、その他市町村長が定める基準に適合することの4点です。ここでも消防用設備等点検の履行が条件になっている点に注意してください。
申請は別記様式第1号の2の2の2の3の申請書により、消防長又は消防署長に対して行い、検査を受けます(消防法第8条の2の3第2項、消防法施行規則第4条の2の8第2項)。申請書には防火対象物の管理を開始した日を記載し、それを確認できる書類を添付します(同条第3項・第4項)。
認定したとき、又は認定しないことを決定したときは、申請者に通知されます(消防法第8条の2の3第3項)。認定する旨の通知には認定が効力を生じる日が記載され、認定しない場合は遅滞なく理由を示して通知されます(消防法施行規則第4条の2の8第5項・第6項)。
ここが実務でいちばん事故の起きるところです。認定は次のいずれかで効力を失います(消防法第8条の2の3第4項)。
一 認定を受けてから3年が経過したとき(3年経過前に更新申請をしている場合は、その通知があったとき)
二 当該防火対象物の管理について権原を有する者に変更があったとき
つまり、建物を売却した、テナントの経営者が交代した、法人の代表者ではなく管理権原者そのものが変わった——この時点で認定は失効し、点検・報告義務が復活します。そして変更前の権原を有する者には、その旨を消防長又は消防署長へ届け出る義務があります(同条第5項、別記様式第1号の2の2の3)。届出義務を負うのは「変更前」の管理権原者である点に注意してください。
また、次のいずれかに該当するときは、消防長又は消防署長は認定を取り消さなければなりません(消防法第8条の2の3第6項)。偽りその他不正な手段により認定を受けたことが判明したとき、一定の命令がされたとき、遵守状況が優良という基準に該当しなくなったときです。
地震その他の災害に備える「防災管理」の側にも、同じ構造の点検報告制度があります。消防法第36条第1項が、第8条から第8条の2の3までの規定を防災管理について準用しているためです。読替えにより、防火対象物点検資格者は防災管理点検資格者に、火災の予防は火災以外の災害による被害の軽減に置き換わります。
防火対象物点検と防災管理点検の両方が義務になる建物では、消防法第36条第4項により、2つの点検を併せて行い、いずれの点検基準にも適合していると認められた場合に限って表示を付すことができます。実務上「防火・防災管理点検済証」と呼ばれるものです。特例認定についても同じく、両方の認定を併せて受けた場合に限って「防火・防災優良認定証」の表示ができます(同条第5項)。
片方だけ受けて表示することはできません。防災管理が必要な建物の要件は「防災管理が必要な建物とは|対象規模・防災管理者・届出・罰則を条文で解説」で解説しています。
| 違反の内容 | 根拠条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 点検結果の報告をせず、又は虚偽の報告をした | 消防法第8条の2の2第1項・第44条第11号 | 30万円以下の罰金又は拘留 |
| 法人の従業者等が業務に関して上記の違反をした | 消防法第45条第3号 | 両罰規定により法人にも罰金刑 |
| 資格なく防火基準点検済証・防火優良認定証を付した、又は紛らわしい表示を付した | 消防法第8条の2の2第3項・第44条第3号 | 30万円以下の罰金又は拘留 |
| 表示の除去・消印の命令に違反した | 消防法第8条の2の2第4項・第44条第17号 | 30万円以下の罰金又は拘留 |
| (参考)防火管理者を選任せず、選任・解任の届出を怠った | 消防法第8条第2項・第44条第8号 | 30万円以下の罰金又は拘留 |
| (参考)防火管理業務の措置命令に違反した | 消防法第8条第4項・第41条第1項第2号 | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(情状により併科) |
実務上の本当のリスクは罰則そのものではありません。点検で不適合が出るということは、防火管理者が選任されていない、消防計画が届け出られていない、避難階段がふさがれているといった状態が現にあるということです。それが立入検査(消防法第4条)で確認されれば措置命令の対象になり、命令が出れば公示されます。公示されれば、テナント誘致や融資、保険の引受けにも影響します。そして特例認定の要件(消防法第8条の2の3第1項第2号イ)にある「過去3年以内に命令がされたことがあり、又はされるべき事由が現にあること」に該当してしまえば、3年間は認定を受けられません。
別の制度です。消防用設備等点検(消防法第17条の3の3)は設備のハード面、防火対象物点検(消防法第8条の2の2)は防火管理のソフト面を見ます。消防法第8条の2の2第1項ただし書は、両者が重複しないよう線を引いているのであって、どちらか一方で足りるという意味ではありません。
収容人員300人以上はルート1にすぎません。地階又は3階以上に飲食店等の特定用途があり、屋内階段が1本しかない建物は、収容人員が30人((6)項ロを含む建物は10人)から対象になります。東京都内の雑居ビルでは、こちらのルートで対象になるケースが多数あります。
できません。防火対象物点検資格者による点検が法定されています(消防法第8条の2の2第1項)。消防用設備等点検は一定規模未満なら関係者が自ら点検できますが、防火対象物点検にその例外はありません。
管理権原が分かれている防火対象物では、点検は建物全体について行います(消防法第8条の2の2第2項)。他のテナントや共用部の状況が、自社の点検結果に影響します。
3年で失効します。さらに管理権原者が変わった時点で即失効し、変更前の管理権原者には届出義務があります(消防法第8条の2の3第4項・第5項)。ビルの売却やテナント交代のタイミングは、必ず確認してください。
表示は「付すことができる」ものであって義務ではありません(消防法第8条の2の2第2項)。ただし要件を満たさないのに付すことは禁止されており、罰則もあります(同条第3項、第44条第3号)。有効期限は点検日から1年後ですので、期限切れの表示を貼り続けないよう注意してください。
この制度は、行政書士が関与できる部分と、できない部分がはっきり分かれています。正確に理解しておくことが、事業者にとっても専門家にとっても重要です。
点検そのものは、防火対象物点検資格者でなければ行うことができません(消防法第8条の2の2第1項)。行政書士の資格では点検はできません。
一方、特例認定の申請書(別記様式第1号の2の2の2の3)や、管理権原者変更の届出書(別記様式第1号の2の2の3)は、消防長又は消防署長という官公署に提出する書類ですので、その作成は行政書士の業務です(行政書士法第1条の3第1項)。官公署へ提出する手続の代理も、行政書士の業務範囲に含まれます(同法第1条の4第1項第1号)。点検基準の入口である防火管理者選任届出書・消防計画作成(変更)届出書・自衛消防組織設置届出書も同様です。
そして、行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業としてこれらの書類作成業務を行うことができません(同法第19条第1項)。違反した者は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます(同法第21条の2)。
【2026年最新】「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が条文に明記されました
令和7年法律第65号による行政書士法の一部改正が令和8年1月1日に施行され、第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言が加えられました。
総務省自治行政局長通知「行政書士法の一部を改正する法律の公布について」(令和7年6月13日 総行行第281号)は、この改正について、行政書士でない者が「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目であっても、対価を受領して、業として官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示したものだ、と説明しています。
「点検料金に届出書の作成も含みます」という説明であっても、実質的に対価を受け取っていれば違法になり得ます。
| 手続・作業 | 担当する専門家 |
|---|---|
| 防火対象物の点検そのもの、点検票の作成 | 防火対象物点検資格者(消防法第8条の2の2第1項で法定) |
| 特例認定申請書(別記様式第1号の2の2の2の3)の作成・提出 | 行政書士 |
| 管理権原者変更の届出書(別記様式第1号の2の2の3)の作成・提出 | 行政書士 |
| 防火管理者選任(解任)届出書の作成・提出 | 行政書士(防火管理者の資格取得は本人が受講する) |
| 消防計画作成(変更)届出書・消防計画書の作成・提出 | 行政書士(防火管理体制は事業者が決定する) |
| 自衛消防組織設置(変更)届出書の作成・提出 | 行政書士 |
| 圧縮アセチレンガス等・少量危険物等の届出書の作成・提出 | 行政書士 |
| 管理権原が分かれる建物での共同報告の調整・書類取りまとめ | 行政書士(点検内容の判断は点検資格者) |
| 消防用設備等の工事・整備、工事整備対象設備等着工届出書 | 消防設備士(消防法第17条の14で届出義務者が法定されている) |
| 消防用設備等の点検、消防用設備等点検結果報告書の点検票 | 消防設備士・消防設備点検資格者 |
| 避難階段・防火戸まわりの改修設計、建築確認手続 | 建築士・設計者 |
行政書士が力を発揮するのは、点検の前と後です。点検基準の第1号から第3号は「届出が出ているか」を問うものですから、未提出の届出を洗い出して整えておけば、点検はそこでつまずきません。そして点検で適合が確認できたら、3年間の免除につながる特例認定の申請に進めます。点検資格者・消防設備士・建築士との役割分担を最初に決めておくことが、結局いちばん早く進みます。行政書士法との関係は「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」で詳しく整理しています。
当事務所の報酬額は報酬額表に掲載しています(すべて税抜)。金額に幅を持たせているのは、建物の規模・用途、管理権原の分かれ方、未提出の届出の数、消防署との事前協議の回数によって作業量が変わるためです。正式なお見積りは、建物の状況を確認させていただいたうえでご提示します。複数物件を管理される不動産管理会社・ビルオーナー向けに顧問契約もご用意しています。
根拠も対象も点検する人も違う別の制度です。防火対象物点検(消防法第8条の2の2)は防火管理者の選任、消防計画の届出と実行、避難通路・防火戸の管理、防炎表示など防火管理のソフト面を防火対象物点検資格者が点検します。消防用設備等点検(消防法第17条の3の3)は消火器や自動火災報知設備など設備のハード面を消防設備士等が点検します。消防法第8条の2の2第1項ただし書は両制度が重複しないよう線を引いているだけで、どちらか一方で足りるという意味ではありません。
消防法施行令第4条の2の2により、次のいずれかです。(1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項の防火対象物で収容人員300人以上のもの。または、これらの特定用途部分が避難階以外の階(1階・2階を除く。すなわち地階又は3階以上)にあり、その階から避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていないもの(屋外階段又は避難上有効な構造の階段なら1でよい)です。
あります。防火対象物点検の対象は消防法第8条第1項の防火対象物に限られるため、下限は消防法施行令第1条の2第3項によります。(6)項ロ(自力避難困難者が入所する福祉施設等)の用途を含む建物は収容人員10人以上で防火管理者の選任義務が生じ、階段が1つであれば点検対象になり得ます。グループホームや障害者支援施設が入る建物では、30人未満でも対象になります。
点検は1年に1回行い(消防法施行規則第4条の2の4第1項)、その結果を消防長又は消防署長に報告します(消防法第8条の2の2第1項)。東京消防庁管内では管轄の消防署又は出張所へ、窓口・郵送・電子申請で提出します。手数料は不要です。
できません。点検は防火対象物点検資格者が行うことが法定されています(消防法第8条の2の2第1項)。防火対象物点検資格者になるには、消防設備士・消防設備点検資格者として3年以上、防火管理者として3年以上といった実務経験に加え、登録講習機関の講習を修了して免状の交付を受ける必要があります(消防法施行規則第4条の2の4第4項)。免状には有効期間があるため、依頼時に確認してください。
消防長又は消防署長の認定を受けると、3年間、点検・報告の義務が免除されます(消防法第8条の2の3第1項、第8条の2の2第5項)。あわせて「防火優良認定証」の表示を付すことができます(第8条の2の3第7項)。要件は、管理開始から3年経過していること、過去3年以内に一定の命令・認定取消し・無報告・虚偽報告・点検不適合がないこと、法令遵守の状況が優良と認められることです。
認定を受けてから3年が経過したときに失効します。さらに当該防火対象物の管理について権原を有する者に変更があったときも、その時点で失効します(消防法第8条の2の3第4項)。売却やテナント交代がこれにあたります。そして変更前の管理権原者には、その旨を消防長又は消防署長へ届け出る義務があります(同条第5項、別記様式第1号の2の2の3)。届出義務を負うのは「変更後」ではなく「変更前」の管理権原者である点にご注意ください。
報告義務を負うのは各管理権原者ですが、点検は防火対象物全体について行う必要があります(消防法第8条の2の2第2項)。自社の区画だけを点検して済ませることはできません。東京消防庁では共同報告の取扱いがあり、その場合は共同報告を行う届出者等の一覧と、管理権原者ごとの管理権原の範囲を示した書類を添付します。誰が取りまとめるかを事前に決めておくことが実務上いちばん重要です。
消防法第44条第11号により、30万円以下の罰金又は拘留です。虚偽の報告をした場合も同じです。法人の従業者等が業務に関して違反した場合は、同法第45条第3号の両罰規定により法人にも罰金刑が科されます。また、要件を満たさないのに防火基準点検済証等の表示を付した場合は同法第44条第3号、表示の除去命令に違反した場合は同法第44条第17号の対象です。
防火対象物点検と防災管理点検の両方が義務になる建物では、消防法第36条第4項により、2つの点検を併せて行い、いずれの点検基準にも適合していると認められた場合に限って表示を付すことができます(実務上「防火・防災管理点検済証」)。特例認定も同様に、両方の認定を併せて受けた場合に限って「防火・防災優良認定証」を表示できます(同条第5項)。片方だけで表示することはできません。
防火対象物点検は、対象かどうかの判定でつまずく制度です。収容人員300人以上だけでなく、地階や3階以上に飲食店等があって屋内階段が1本しかない建物も対象になります。しかも点検基準の入口は「防火管理者選任届と消防計画作成届が出ているか」——つまり点検を受ける前に整えておくべき届出があります。
建物の所在地・用途・階数・階段の数・収容人員・テナント構成・過去の届出状況をお知らせいただければ、点検義務の有無の判定、未提出の届出の洗い出しと作成・提出、防火対象物点検資格者との調整、管理権原が分かれる建物での共同報告の取りまとめ、そして3年間の免除につながる特例認定の申請まで、行政書士として一貫してご支援します。
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