テナント入居・内装工事の消防法チェックポイント|届出一覧

テナント入居・内装工事の消防法チェックポイント|届出一覧

テナント入居と内装工事で確認すべき消防法令のチェックポイントを、用途判定・収容人員・無窓階・消防用設備等・防炎物品・避難通路・届出スケジュールの7点に整理しました。工事着手の7日前までの防火対象物工事等計画届出書(東京都火災予防条例第56条)と、使用開始の7日前までの防火対象物使用開始届出書(同第56条の2)を軸に、条文根拠つきで行政書士が解説します。

結論:テナント入居と内装工事で確認すべき消防法令のチェックポイントは、「用途判定」「収容人員」「無窓階」「消防用設備等の追加」「防炎物品」「避難通路と避難施設」「届出と検査のスケジュール」の7点です。このうち届出は、工事に着手する日の7日前までに提出する防火対象物工事等計画届出書(東京都火災予防条例第56条第1項)と、使用を開始する日の7日前までに提出する防火対象物使用開始届出書(同条例第56条の2第1項)が骨格になり、内装工事を伴うテナント入居では両方を提出します。
「内装業者に任せていたので消防の届出は出ていると思っていた」「オープン1週間前に消防署の検査が受けられないと言われた」——オフィス移転や店舗開設のご相談で最も多いのが、この工程の取りこぼしです。消防の手続は、建物を使い始めてから直すことができません。壁を立て、天井を張り、什器を入れたあとで「この間仕切りでは自動火災報知設備の感知器が未警戒になる」「この配置では避難通路の幅が足りない」と指摘されれば、内装をやり直すしかなくなります。
本記事は、東京都内(東京消防庁管内)でテナントに入居し、内装工事を行う事業者の方に向けて、工事の計画段階でつぶしておくべき消防法令のチェックポイントを、消防法・同施行令・同施行規則・東京都火災予防条例・建築基準法および総務省消防庁の通知に沿って整理した実務ガイドです。条文の根拠と、東京消防庁が公表している運用を条番号付きで示します。

この記事でわかること
・テナント内装工事に関係する法令が「消防法」「東京都火災予防条例」「建築基準法」の3層に分かれていること
・工事の内容によって消防用設備等の設置基準が変わる4つの分岐(用途・収容人員・無窓階・区画)
・提出すべき届出の一覧と、それぞれの根拠条文・期限・届出義務者・罰則
・オープン日から逆算した工程の組み方
・行政書士に依頼できる範囲と、消防設備士でなければできない手続の切り分け


1. テナント内装工事に関わる法令は3層に分かれている

テナント入居・内装工事に関わるルールは、「消防法(+政令・省令)」「東京都火災予防条例(+施行規則)」「建築基準法」の3つの層に分かれています。どれか1つを見ても答えは出ません。実務で混乱が起きるのは、この3層の役割分担が整理されていないためです。

主な内容 テナント内装で問題になる場面
消防法・同施行令・同施行規則 消防用設備等の設置基準(法第17条)、防火管理者の選任(法第8条)、防炎物品(法第8条の3)、設置届・着工届(法第17条の3の2・第17条の14) 用途や面積が変わることで、消火器・自動火災報知設備・誘導灯などの設置義務が増える
東京都火災予防条例・同施行規則 工事等計画の届出(第56条)、使用開始の届出(第56条の2)、火気使用設備等の設置届出(第57条)、少量危険物等の届出(第58条)、避難通路・避難施設の基準(第48条〜第54条) 届出の期限と消防検査。飲食店の客席レイアウトや厨房設備の容量
建築基準法・同施行令 内装制限(法第35条の2)、用途変更の確認申請(法第87条第1項)、消防同意(消防法第7条を通じた連動) 天井・壁の仕上材の制限。用途変更で確認申請が必要になる場合

💡 ポイント:「内装制限」は建築基準法、「防炎物品」は消防法です。名前が似ているため現場で混同されますが、根拠も対象物も所管も違います。詳しくは第7章で整理します。


「工事をする人」と「使う人」で義務者が分かれる

もう1つの分かれ目が、だれが義務を負うのかです。テナント内装工事では、ビルの所有者・テナント(使用者)・内装業者・消防設備業者の4者が関わりますが、法令上の義務者はそれぞれ異なります。

手続 根拠 義務を負う者(届出者欄に記載される者)
防火対象物工事等計画届出書 東京都火災予防条例第56条第1項 当該行為(工事)をしようとする者。東京消防庁は「工事業者等に対して依頼した方」と案内している
防火対象物使用開始届出書 同条例第56条の2第1項 その部分を使用しようとする者(=テナント事業者本人)
工事整備対象設備等着工届出書 消防法第17条の14 甲種消防設備士(資格者本人が届出義務者)
消防用設備等設置届出書 消防法第17条の3の2 防火対象物の関係者(所有者・管理者・占有者)
防火管理者選任(解任)届出書 消防法第8条第2項 管理権原者

📌 ここが盲点:工事等計画届出書の届出者は内装業者ではなく、工事を発注したテナント側です。「業者が出しておいてくれる」という前提は、法令上の建て付けと合っていません。実務では業者が代書・使送することも多いのですが、他人の依頼を受け報酬を得て業として官公署提出書類を作成できるのは、原則として行政書士または行政書士法人に限られます(行政書士法第19条第1項)。この点は「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」で詳しく解説しています。


2. チェックポイント1|用途判定(令別表第一の「項」)が変わらないか

消防用設備等の設置義務は、建物や部分の「用途」によって決まります。用途は消防法施行令別表第一の各項に区分され、テナントが入れ替わると、その区画の項が変わり、必要な設備が変わることがあります。ここを確認せずに内装を進めるのが、最も高くつく失敗です。

業態の例 令別表第一 区分
飲食店・カフェ・バー(風俗営業等に当たらないもの) (3)項ロ 特定用途
物品販売店舗・小売店 (4)項 特定用途
カラオケボックス・インターネットカフェ・漫画喫茶等の個室型店舗 (2)項ニ 特定用途
ホテル・旅館・簡易宿所・民泊(原則) (5)項イ 特定用途
クリニック・診療所 (6)項イ 特定用途
事務所・オフィス、トレーニングジム、貸会議室、コインランドリー等 (15)項(前各項に該当しない事業場) 非特定用途
倉庫 (14)項 非特定用途
上記の複数用途が同一の棟に存するもの (16)項イ(特定用途を含む複合用途)/(16)項ロ


オフィスビルに飲食店が入ると建物全体の扱いが変わることがある

これまで(15)項の事務所ビルだった建物に飲食店テナントが入ると、その棟は(16)項イの複合用途防火対象物になり得ます。(16)項イは特定用途を含む複合用途であるため、設備基準も、後述する遡及適用の扱いも変わります。
ただし、他用途の部分が小さければ主たる用途に含めて扱う運用があります。根拠は総務省消防庁の通知「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和50年4月15日消防予第41号・消防安第41号。最終改正 平成27年2月27日消防予第81号)です。同通知は、消防法施行令第1条の2第2項後段にいう「従属的な部分」を次の2類型に整理しています。

類型 要件
機能従属 通知の別表(イ)欄の主たる用途に機能的に従属する(ロ)欄の用途で、(ア)管理権原者が同一、(イ)利用者が同一または密接な関係、(ウ)利用時間がほぼ同一、の3要件をすべて満たすもの
みなし従属 主たる用途部分の床面積の合計が延べ面積の90パーセント以上であり、かつ主たる用途以外の独立した用途部分の床面積の合計が300平方メートル未満であるもの

⚠️ 注意:みなし従属には適用除外があります。同通知は、(2)項ニ、(5)項イ、(6)項イ(1)から(3)まで、(6)項ロ、および利用者を入居・宿泊させる(6)項ハの用途に供される部分を、みなし従属の対象から除外しています(平成27年2月27日消防予第81号による改正後)。つまり事務所ビルに小規模な民泊・簡易宿所や個室型店舗が入る場合、面積が小さくても複合用途として扱われます。

用途判定そのものの考え方は「消防法の用途判定とは?令別表第一の項の決め方・従属用途・みなし従属を解説」、住宅部分がある場合の扱いは「店舗併用住宅の用途判定|50平方メートル以下なら一般住宅扱いになる条件とは」で整理しています。

💡 実務の順序:用途判定は内装の設計に着手する前に、所轄消防署の予防課に確認してください。用途判定は最終的に消防機関が行うため、設計が固まってから判定が覆ると、設備の追加と内装のやり直しが同時に発生します。


3. チェックポイント2|収容人員がしきい値を超えないか

収容人員とは、その防火対象物に出入し、勤務し、または居住する者の数をいい、算定方法は消防法施行規則第1条の3が用途ごとに定めています。「実際に何人働く予定か」ではなく、用途ごとの算定式で機械的に算出する数値である点が重要です。内装のレイアウト(席数、床面積の使い方)が変われば、収容人員も変わります。

用途 算定方法(規則第1条の3第1項)
(3)項(飲食店等) 従業者の数+客席部分ごとに、固定式のいす席は席数(長いす式は正面幅を0.5メートルで除した数。1未満の端数は切捨て)、その他の部分は床面積を3平方メートルで除した数
(4)項(物品販売店舗等) 従業者の数+主として従業者以外の者の使用に供する部分のうち、飲食・休憩の用に供する部分は床面積を3平方メートルで、その他の部分は4平方メートルで除した数
(15)項(事務所等) 従業者の数+主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3平方メートルで除した数
(16)項・(16の2)項 各項の用途ごとに1の防火対象物とみなして算定し、合算する(同条第2項)

収容人員は、次の義務のしきい値になります。

義務 しきい値 根拠
防火管理者の選任 特定用途((1)項〜(4)項、(5)項イ、(6)項イ・ハ・ニ、(9)項イ、(16)項イ等)は30人以上/非特定用途((5)項ロ、(7)項、(8)項、(9)項ロ、(10)項〜(15)項、(16)項ロ、(17)項)は50人以上/(6)項ロ系は10人以上 消防法施行令第1条の2第3項第1号
統括防火管理者の選任(管理権原が分かれている場合) 高さ31メートルを超える高層建築物のほか、階数と収容人員の組合せで判定 消防法第8条の2第1項、令第3条の3
避難器具の設置 用途と階により10人・20人・30人・50人・100人・150人 令第25条第1項
防火対象物点検の実施・報告 特定防火対象物で300人以上等 法第8条の2の2第1項、令第4条の2の2

📌 テナント区画の面積が同じでも、用途が事務所(15)項から飲食店(3)項ロに変われば、収容人員の算定式が変わり、防火管理者のしきい値も50人から30人に下がります。「前のテナントは防火管理者を置いていなかったから不要」という判断は成り立ちません。算定の詳細は「収容人員の計算方法|消防法施行規則第1条の3の用途別算定表」、選任の要否は「防火管理者の選任が必要な建物とは|収容人員10人・30人・50人の判定基準」をご覧ください。


4. チェックポイント3|内装工事で「無窓階」になっていないか

無窓階とは、建築物の地上階のうち、避難上または消火活動上有効な開口部を有しない階をいいます(消防法施行令第10条第1項第5号かっこ書き)。判定基準を定めているのは消防法施行規則第5条の5です。

消防法施行規則第5条の5第1項(避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階)
令第十条第一項第五号の総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階は、十一階以上の階にあつては直径五十センチメートル以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の三十分の一を超える階(以下「普通階」という。)以外の階、十階以下の階にあつては直径一メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。

同条第2項は、この開口部が満たすべき要件として、床面から下端までの高さが1.2メートル以内であること、道または道に通ずる幅員1メートル以上の通路等に面していること、格子等がなく外部から開放または容易に破壊して進入できること、常時良好な状態に維持されていること、の4点を定めています(11階以上の階については第2号を除く)。

内装工事で無窓階になる典型パターン

  • 窓の内側に壁や造作を立てて開口部をふさいだ
  • 窓の前に厨房機器・什器・バックヤードを配置し、内部から避難できない状態にした
  • 防犯や日射対策でガラスにフィルムを貼り、外部から容易に破壊できなくなった
  • 窓の下端が高い位置にある造作を新設し、床面から1.2メートル以内という要件を満たさなくなった

無窓階に該当すると、次のとおり設備基準が一段階上がります。

設備 無窓階で加わる基準 根拠
消火器具 前各号に該当しないもののうち、地階・無窓階・3階以上の階で床面積50平方メートル以上のものに設置 令第10条第1項第5号
自動火災報知設備 (2)項・(3)項および(16)項イの地階・無窓階で床面積100平方メートル以上のものに設置(第10号)。そのほか、前各号に該当しないもののうち、地階・無窓階・3階以上の階で床面積300平方メートル以上のものに設置(第11号) 令第21条第1項第10号・第11号
誘導灯 (5)項ロ、(7)項、(8)項、(10)項から(15)項まで、(16)項ロの防火対象物では、地階・無窓階・11階以上の部分に避難口誘導灯および通路誘導灯を設置 令第26条第1項第1号・第2号

💡 事務所(15)項は、通常の階であれば誘導灯の設置対象になりません。ところがその階が無窓階と判定された瞬間に、避難口誘導灯と通路誘導灯が必要になります。内装で窓をふさぐ判断が、そのまま設備工事の追加につながるということです。判定の詳細と東京消防庁の運用は「無窓階とは?判定基準・消防設備・東京消防庁の運用を解説」で解説しています。


5. チェックポイント4|消防用設備等の追加が必要になる分岐

消防用設備等の設置単位は、原則として「棟」です。総務省消防庁の通知「消防用設備等の設置単位について」(昭和50年3月5日消防安第26号)が、建築物である防火対象物については原則として棟を単位として設置すべきことを示しています。テナント区画だけを見て判断できない、というのが出発点です。

区画されていれば別の防火対象物とみなされる(令8区画)

例外が消防法施行令第8条です。防火対象物が、開口部のない耐火構造の床または壁で区画されているとき、または防火設備等のうち防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたもので区画されているときは、その区画された部分はそれぞれ別の防火対象物とみなされます。実務で「令8区画」と呼ばれるものです。

複合用途では用途ごとに1の防火対象物とみなす(令9)

(16)項の複合用途防火対象物の部分で、各項の用途に該当する用途に供されるものは、消防用設備等の基準の適用についてはその用途に供される1の防火対象物とみなされます(令第9条)。ただし条文は適用除外を列挙しており、誘導灯に関する令第26条は除外されています。つまり誘導灯は用途ごとに切り分けず、棟単位で判断します。

既存の建物に工事をすると、既存不適格が解消される場合がある

消防用設備等には、基準改正時の既存建物を保護する規定(既存不適格。消防法第17条の2の5第1項)と、用途変更時の同様の規定(同法第17条の3第1項)があります。ただし、次に当たるときは保護されず、現行基準への適合が求められます

遡及適用される場合 根拠
基準時以後の増築・改築に係る部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上となるとき 令第34条の2第1項第1号
同じく、増築・改築に係る部分の床面積の合計が基準時の延べ面積の2分の1以上となるとき 令第34条の2第1項第2号
主要構造部である壁について行う過半の修繕または模様替えをするとき 令第34条の3
特定防火対象物であるとき、または用途変更後の用途が特定防火対象物の用途であるとき 法第17条の2の5第2項第4号、法第17条の3第2項第4号
現に基準に違反しているとき 法第17条の2の5第2項第1号、法第17条の3第2項第1号

⚠️ 見落としやすい点:事務所ビルの一室を飲食店に用途変更する場合、変更後の用途は特定防火対象物の用途なので、消防法第17条の3第2項第4号により既存不適格の保護が及びません。「昔からある建物だから今の基準は関係ない」という理解は、特定用途への転換では通用しません。なお、消火器・避難器具など法第17条の2の5第1項かっこ書きで政令が定めるものは、そもそも既存不適格の対象から外れており、常に現行基準が適用されます。

基準への適合がどうしても困難な場合、消防法施行令第32条の特例の適用を所轄消防署に相談する余地があります。特例の考え方は「民泊開設の消防「基準の特例申請」完全ガイド|自動火災報知設備・スプリンクラーの免除と緩和」で扱っています。

間仕切りを立てたら、感知器とヘッドの位置を必ず確認する

自動火災報知設備の感知器は、有効に火災の発生を感知できるように設けなければなりません(令第21条第2項第3号)。間仕切り壁を新設して個室や会議室をつくると、その室が感知器の未警戒区域になります。スプリンクラー設備がある建物では、間仕切りや吊り天井、背の高い書庫が散水を妨げる「散水障害」も同様に問題になります。
いずれも図面上で確認できる事項です。内装図(平面図・天井伏図)と消防用設備等の設計図を重ねて確認する工程を、工事の着手前に必ず入れてください。


6. チェックポイント5|防炎物品(消防法第8条の3)の対象かどうか

防炎規制とは、一定の防火対象物で使用するカーテン・じゅうたん等について、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならないとする消防法第8条の3第1項の規制です。内装工事の仕様書に直結する規制であり、テナント側で選定する備品にもかかります。

対象となる建物

法第8条の3第1項は高層建築物(高さ31メートルを超える建築物)と地下街を明記し、そのほかを政令に委ねています。消防法施行令第4条の3第1項は、令別表第一の(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(12)項ロ、(16の3)項に掲げる防火対象物(防炎防火対象物)、および工事中の建築物その他の工作物を対象としています。(16)項の部分でこれらの用途に該当するものは、その用途の1の防炎防火対象物とみなされます(同条第2項)。

💡 事務所(15)項は、それ自体では防炎防火対象物ではありません。ただし、入居先が高さ31メートルを超える高層建築物であれば、用途にかかわらず法第8条の3第1項の規制がかかります。都心のオフィスビルでは、この経路で対象になることがほとんどです。

対象となる物品

令第4条の3第3項が定める防炎対象物品は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕、舞台において使用する大道具用の合板、工事用シートです。じゅうたん等の範囲は消防法施行規則第4条の3第2項が定めており、じゅうたん、毛せん、タフテッドカーペット等のほか、ござ、人工芝、合成樹脂製床シートも含まれます。

📌 工事用シートも防炎物品です。内装工事の期間中に足場や開口部に張るシートは、工事中の建築物に対する規制として法第8条の3第1項の対象になります。着工前の資材手配の段階で確認してください。

表示と明示の義務

防炎性能を有する物品には、総務省令で定めるところにより防炎表示を付することができます(法第8条の3第2項)。何人も、これと紛らわしい表示を付してはならず(同条第3項)、違反は消防法第44条第3号により30万円以下の罰金または拘留の対象で、第45条第3号により両罰規定も適用されます。
また、関係者が防炎処理をさせたり、防炎表示のある生地からカーテン等を作製させたときは、その旨を明らかにしておかなければなりません(同条第5項)。現場で確認されるのは「防炎ラベル」です。納品時にラベルの有無と、内装業者から受け取る証明書類を必ず保管してください。
なお、防炎物品を使用していないこと自体を直接処罰する規定は置かれていません。ただし、使用開始前の消防検査や立入検査で是正を求められ、改善が必要になります。


7. チェックポイント6|内装制限は消防法ではなく建築基準法

「内装制限」は建築基準法第35条の2に基づく規制であり、消防法の防炎規制とは別制度です。壁および天井の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない、というもので、対象は同法施行令第128条の4が定めています。

制度 根拠 対象 所管の窓口
防炎規制 消防法第8条の3、令第4条の3 カーテン、じゅうたん等、工事用シートなどの物品 消防署
内装制限 建築基準法第35条の2、令第128条の4・第128条の5 壁・天井の仕上材 建築主事等・指定確認検査機関

内装制限がかかる主な場合

  • 一定規模以上の特殊建築物(令第128条の4第1項第1号の表。たとえば法別表第一(い)欄(四)項に掲げる用途では、耐火建築物等で当該用途に供する3階以上の部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上、その他の建築物では当該用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートル以上など)
  • 自動車車庫・自動車修理工場(同項第2号)
  • 地階または地下工作物内に設ける居室で、法別表第一(い)欄(一)項・(二)項・(四)項の用途に供するものを有する特殊建築物(同項第3号)
  • 階数が3以上で延べ面積が500平方メートルを超える建築物(同条第2項。学校等を除く)
  • 窓その他の開口部を有しない居室(法第35条の2、令第128条の3の2。床面積50平方メートルを超える居室で、天井または壁の上部にある開放できる部分の面積の合計が床面積の50分の1未満のものなど)
  • かまど、こんろその他火を使用する設備または器具を設けた室(令第128条の4第4項。ただし特定主要構造部を耐火構造とした建築物に存するものは除かれる)

⚠️ ここも取り違えが多い箇所です。事務所は建築基準法の特殊建築物ではないため、内装制限は原則としてかかりません。ただし、階数3以上で延べ面積500平方メートル超の建築物に該当する場合や、無窓の居室・火気使用室に当たる場合には、事務所であっても制限を受けます。逆に、消防法の防炎規制は事務所であっても高層建築物なら対象です。「消防で言われなかったから内装制限もない」「建築で問題なかったから防炎も不要」という推論は、どちらも成り立ちません。

用途変更で確認申請が必要になる場合

建築物の用途を変更して建築基準法第6条第1項第1号の特殊建築物のいずれかとする場合は、同法第87条第1項により確認の手続が準用されます(政令で指定する類似の用途相互間の変更を除く)。そして建築確認をするには消防長または消防署長の同意が必要です(消防法第7条第1項)。この同意の過程で消防用設備等や避難施設の適合性が審査されるため、建築側と消防側の手続は連動しています。


8. チェックポイント7|提出すべき届出と期限を洗い出す

テナント内装工事で問題になる届出は、東京消防庁管内では最大で9本あります。期限の起算点が「着手前」と「完了後」に分かれるため、1つの工程表にまとめて管理しないと必ず抜けます。

届出書 根拠 期限 届出義務者 罰則
防火対象物工事等計画届出書 東京都火災予防条例第56条第1項 工事に着手する日の7日前まで 当該行為をしようとする者(工事を依頼した者) なし
工事整備対象設備等着工届出書 消防法第17条の14、規則第33条の18 工事に着手しようとする日の10日前まで 甲種消防設備士 法第44条第8号(30万円以下の罰金または拘留)
消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置計画の届出 東京都火災予防条例第58条の2第1項 設置に係る工事に着手する日の10日前まで 設置しようとする者 なし
火を使用する設備等の設置届出書 東京都火災予防条例第57条第1項 工事に着手する日の7日前まで 設置しようとする者(内容を変更しようとする者を含む) 条例第67条の2第5号(10万円以下の罰金)
少量危険物・指定可燃物貯蔵取扱所の届出 東京都火災予防条例第58条第1項 設置しようとする日(工事を伴う場合は着手する日)の10日前まで 設置しようとする者 条例第67条の2第6号(10万円以下の罰金)
消防用設備等設置届出書 消防法第17条の3の2、規則第31条の3第1項 工事が完了した日から4日以内 防火対象物の関係者 法第44条第8号(届出を怠った場合)・第4号(検査の拒否等)
消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置の届出(条例分) 東京都火災予防条例第58条の3第1項 設置に係る工事が完了した日から4日以内 指定防火対象物等の関係者 条例第67条の2第7号(10万円以下の罰金)
防火対象物使用開始届出書 東京都火災予防条例第56条の2第1項 使用を開始する日の7日前まで 使用しようとする者 条例第67条の2第4号(10万円以下の罰金)
防火管理者選任(解任)届出書/消防計画作成(変更)届出書 消防法第8条第1項・第2項、規則第3条第1項 選任・解任後、遅滞なく(消防計画は作成・変更したとき) 管理権原者 選任届は法第44条第8号。消防計画の届出には直罰の規定がない

📝 罰則の並びを見ると、条例の設計思想がわかります。工事の入口の届出(工事等計画届出書・設置計画届出書)には罰則がなく、実際に使い始める段階の届出(使用開始届出書・火気使用設備等設置届出書・少量危険物等の届出・条例分の設備設置届出書)には10万円以下の罰金があります(東京都火災予防条例第67条の2)。さらに同条例第68条の両罰規定により、法人の代表者や従業者が業務に関して違反した場合は、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されます。


工事等計画届出書が不要になるただし書に注意

東京都火災予防条例第56条第1項にはただし書があり、建築基準法第6条第1項および第6条の2第1項の確認を受けた場合、ならびに同法第18条第2項および第4項の通知をした場合(同法第87条第1項において準用する場合を含む)は、工事等計画届出書の提出を要しません。東京消防庁も、建築確認申請手続を要する工事の場合は本届出を要しない旨を案内しています。

⚠️ このただし書は第56条(工事等計画)だけの規定です。第56条の2(使用開始)には同じただし書がありません。建築確認を受けた工事であっても、防火対象物使用開始届出書は必要です。また第56条の2第1項は、届出義務者に「前条第一項各号(新築を除く。)に掲げる行為をしたのち使用しようとする者を含む」と明記しているため、工事等計画届出書を出していても使用開始届出書は別途必要です。詳しくは「防火対象物使用開始届出書とは|期限7日前・添付書類・罰則を解説」をご覧ください。


工事等計画届出書が必要になる工事の範囲

条例第56条第1項各号は、届出が必要な行為を次のとおり定めています。対象は指定防火対象物等です。

行為
第1号 指定防火対象物等の建築(増築後に指定防火対象物等となる場合を含む)
第2号 指定防火対象物等の修繕、模様替え、間取り又は天井高さの変更その他これらに類する工事
第3号 指定防火対象物等の客席または避難通路の変更(条例第48条・第49条・第50条・第51条の適用がある劇場等、キャバレー等・飲食店の階、百貨店等の階、地下街の物品販売店舗の一の構えに限る)
第4号 防火対象物の用途変更その他これに類する変更(変更後に指定防火対象物等となる場合に限る)

「指定防火対象物等」とは何かという点も押さえておく必要があります。条例第56条第1項第1号が定義しており、令別表第一各項((19)項および(20)項を除く)に掲げる防火対象物のうち、消火器具の設置が必要なもの(消防法施行令第10条第1項各号)、または自動火災報知設備の設置が必要な一定の類型のもの(同令第21条第1項第1号((13)項ロを除く)・第3号・第7号)をいい、同令第10条第1項第5号に掲げる部分(地階・無窓階・3階以上の階で床面積50平方メートル以上のもの)を有する防火対象物も含まれます。東京都内のテナント区画は、これに該当することがほとんどです。


添付図書

条例第56条第2項は、指定防火対象物等の所在、用途、使用形態、収容人員、避難施設その他必要な事項を記載した図書の添付を求めており、同条例第56条の2第2項がこれを準用しています。東京消防庁は、具体的な添付書類として防火対象物・製造所等の概要表、案内図、平面図、詳細図、立面図、断面図、展開図、室内仕上表および建具表等を挙げています。

💡 室内仕上表と建具表が求められる意味を押さえてください。消防機関は、これらの図書で内装の仕様と開口部の状況を見ています。無窓階の判定も、避難施設の適否も、この図面段階で判断されます。図面が固まる前に相談へ行くほど、手戻りが小さくなります。


9. チェックポイント8|内装レイアウトで違反になりやすい箇所

東京都火災予防条例は、避難通路と避難施設について具体的な基準を置いています。什器のレイアウトを決める前に確認すべき条文です。

飲食店・キャバレー等の避難通路(条例第50条)

キャバレー等および飲食店が存する階のうち、当該用途に供する店舗ごとの客席の床面積が150平方メートル以上の店舗の客席には、有効幅員1.6メートル(300平方メートル未満の飲食店にあっては1.2メートル)以上の避難通路を設け、かついす席、テーブル席またはボックス席7個以上を通過しないでその1つに達するようにしなければなりません。

📌 席数を詰めたいという要望と真正面からぶつかる条文です。座席計画は、この基準を満たす形で最初から引いてください。後から席を減らすことになれば、想定していた売上計画そのものが変わります。

百貨店等・地下街の主要避難通路(条例第51条)

百貨店等の階または地下街の物品販売店舗の一の構えで、その売場または展示部分の床面積が600平方メートル以上のものには、1.8メートル以上(150平方メートル以上300平方メートル未満は1.2メートル、300平方メートル以上600平方メートル未満は1.6メートル)の幅員の主要避難通路を保有しなければなりません。

避難施設の管理(条例第54条)

令別表第一に掲げる防火対象物の関係者は、避難施設を有効に管理しなければならず、条例第54条は次の5点を定めています。

  • 避難施設には、火災の予防または避難に支障となる施設を設け、または物件を置かないこと
  • 避難施設の床面は、避難に際しつまずき、すべり等を生じないように維持すること
  • 避難口または地上に通ずる主たる通路に設ける戸は、容易に開放できる外開き戸とし、開放した場合に廊下・階段等の幅員を有効に保有できるものとすること(劇場等以外では、支障がないと認められる場合は内開き戸以外の戸とすることができる)
  • その戸は、公開時間または従業時間中は、規則で定める方法以外の方法で施錠してはならない
  • 階段には敷物の類を敷かないこと(消防総監が定める基準に適合する場合を除く)

⚠️ 立入検査で最も多く指摘されるのが、廊下・階段への物品の存置避難口の施錠です。内装工事の段階では守られていても、営業が始まると在庫や什器が通路にはみ出します。「置き場所がないから通路に置く」という状態を生まないレイアウトを、設計の時点で確保してください。

個室型店舗の戸の管理(条例第50条の2の2)

カラオケボックス、インターネットカフェ、漫画喫茶等の個室型店舗の関係者は、避難通路に面して設ける個室の戸(外開きに限る)について、開放した場合に自動的に閉鎖するものとすること等により、避難上有効に管理しなければなりません。個室のドアが開いたまま通路をふさぐ状態を防ぐための規定で、内装の建具仕様に直結します。


10. チェックポイント9|ビル全体・貸主との関係を確認する

テナントの手続は、テナント区画だけで完結しません。

統括防火管理者と全体についての消防計画

管理権原が分かれている一定の防火対象物では、統括防火管理者を協議して定めなければなりません(消防法第8条の2第1項、令第3条の3)。そして各テナントの消防計画は、全体についての消防計画に適合するものでなければなりません(同条第3項)。新しく入居するテナントは、自社の消防計画を作るときに、ビル側の全体消防計画(避難経路、自衛消防組織、通報連絡体制)と整合させる必要があります。

所有者側の努力義務

東京都火災予防条例第56条第4項は、防火対象物またはその部分の所有者に対し、工事等をしようとする者へ届出を適正に行うよう求めるよう努力義務を課しており、第56条の2第4項がこれを準用しています。オーナー・管理会社側にも、テナントの届出状況を確認する立場が条例上想定されているということです。

工事中の防火管理は原則として不要

「工事中の建物には防火管理者が必要ではないか」というご質問をよくいただきますが、消防法施行令第1条の2第3項第2号が防火管理者の選任を求める新築の工事中の建築物は、地階を除く階数11以上かつ延べ面積1万平方メートル以上、延べ面積5万平方メートル以上、または地階の床面積の合計5,000平方メートル以上のいずれかに該当する大規模なものに限られます。既存ビルのテナント内装工事は、通常これに当たりません。ただし、工事期間中の火気管理・工事用シートの防炎・避難経路の確保は、ビル側の防火管理の一環として求められます。


11. オープン日から逆算した工程の組み方

期限の起算点が「着手前」と「完了後」に分かれているため、工程は必ずオープン日から逆算してください。以下は、内装工事を伴う飲食店テナントの標準的な組み方です(実際の日数は工事規模と消防署の混雑状況によります)。

時期 やること 根拠・注意点
物件契約の前 用途判定・無窓階の可能性・既存の消防用設備等の状況・遡及適用の有無を確認 設備の追加が必要な物件かどうかで初期投資が変わる
基本設計の段階 所轄消防署の予防課へ事前相談。平面図・室内仕上表の案を持参 用途判定と避難通路の基準は、この段階で確定させる
着工の10日前まで 着工届(甲種消防設備士)、設置計画届(条例第58条の2) 法第17条の14、条例第58条の2第1項
着工の7日前まで 工事等計画届出書、火を使用する設備等の設置届出書 条例第56条第1項、第57条第1項。建築確認を受けた場合、工事等計画届出書は不要
設置・工事の10日前まで 少量危険物・指定可燃物貯蔵取扱所の届出 条例第58条第1項
使用開始の7日前まで 防火対象物使用開始届出書。あわせて消防検査の日程を調整 条例第56条の2第1項・第3項
工事完了から4日以内 消防用設備等設置届出書(法第17条の3の2)、条例分の設備設置届出書(条例第58条の3) 規則第31条の3第1項。設置届は検査とセット
オープン前 指定防火対象物等の使用開始前検査、火気使用設備等の使用開始前検査、少量危険物等の開始前検査 条例第56条の2第3項、第57条第4項、第58条第4項
オープン後遅滞なく 防火管理者選任(解任)届出書、消防計画作成(変更)届出書 法第8条第1項・第2項、規則第3条第1項。防火管理者の講習受講には日程の確保が必要

📝 実務上の目安:条例が定める「7日前」「10日前」は下限です。審査で図面の補正を求められることも、検査で是正指摘を受けることもあります。逆算のうえ、さらに2週間から3週間の余裕を見込んでください。防火管理者の資格が社内にない場合は、講習の申込みから修了までの期間(東京消防庁の甲種新規講習は複数日程)も工程に組み込む必要があります。

届出全体の一覧と依頼できる範囲は「消防届出は行政書士へ|東京消防庁管内の届出一覧・期限・依頼できる範囲を徹底解説」に、設置届の詳細は「消防用設備等設置届出書の作成代行は行政書士法違反?届出者・4日以内の期限・罰則を解説」にまとめています。電気設備やキュービクルを新設する場合は「電気設備設置届出書とは?対象設備・届出手順・検査まで徹底解説」「キュービクル新設時に必要な消防署への届出を徹底解説」もあわせてご覧ください。


12. 罰則の整理

テナント内装工事に関係する罰則を、根拠ごとに整理します。「届出義務違反」と「命令違反」では適用条文も刑の重さもまったく違う点に注意してください。

違反 根拠 罰則 両罰規定
防火対象物使用開始届出書の不提出・虚偽届出、使用開始前検査の拒否等 東京都火災予防条例第56条の2第1項・第3項 10万円以下の罰金(同条例第67条の2第4号) あり(同第68条)
火を使用する設備等の設置届出書の不提出・虚偽届出、検査の拒否等 同条例第57条第1項・第4項 10万円以下の罰金(同第67条の2第5号) あり
少量危険物・指定可燃物の届出の不提出・虚偽届出、検査の拒否等 同条例第58条第1項・第4項 10万円以下の罰金(同第67条の2第6号) あり
条例分の消防用設備等設置届出書の不提出・虚偽届出、検査の拒否等 同条例第58条の3第1項・第3項 10万円以下の罰金(同第67条の2第7号) あり
防火対象物工事等計画届出書の不提出 同条例第56条第1項 罰則なし(第67条の2に列挙がない)
消防用設備等設置届出書・着工届・防火管理者選任届の不提出 消防法第17条の3の2、第17条の14、第8条第2項 30万円以下の罰金または拘留(法第44条第8号) なし(第45条第3号に列挙がない)
消防用設備等設置届出書に係る検査の拒否・妨害・忌避 消防法第17条の3の2 30万円以下の罰金または拘留(法第44条第4号) なし
防炎表示と紛らわしい表示を付した 消防法第8条の3第3項 30万円以下の罰金または拘留(法第44条第3号) あり(第45条第3号)
消防用設備等の設置命令に従わなかった 消防法第17条の4 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法第41条) あり(法人3,000万円以下)
消防用設備等の維持命令に従わなかった 消防法第17条の4 30万円以下の罰金または拘留(法第44条第12号) あり
使用禁止・停止・制限命令に従わなかった 消防法第5条の2第1項 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法第39条の2の2) あり(法人1億円以下)

📌 本当に怖いのは罰金ではなく、消防検査が通らないことです。指定防火対象物等は使用開始前に消防署長の検査を受けなければならず(条例第56条の2第3項)、是正が終わるまで使用を開始できません。オープン日が動くことの損失は、罰金の額とは比較になりません。「拘禁刑」は、令和7年6月1日施行の刑法等の一部改正で「懲役」と「禁錮」を一本化した刑名です。


13. 専門家の役割分担と、行政書士に依頼できる範囲

テナント内装工事の消防手続は、1つの資格で完結しません。だれが何をできるのかを整理しておくと、見積りの妥当性も判断できます。

専門家 できること 根拠
行政書士 官公署に提出する書類の作成、および自ら作成した書類の提出手続の代理。工事等計画届出書・使用開始届出書・防火管理者選任届出書・消防計画作成(変更)届出書・少量危険物届出書等 行政書士法第1条の3第1項、第1条の4第1項第1号
甲種消防設備士 消防用設備等の工事、および工事整備対象設備等着工届出書の届出(資格者本人が届出義務者 消防法第17条の5、第17条の14
建築士 設計・工事監理、建築確認申請、内装制限の適合確認 建築士法
防火管理者 消防計画の作成と、これに基づく訓練・自主検査・火気管理の遂行 消防法第8条第1項

⚠️ 着工届は行政書士が代わって届け出ることはできません。消防法第17条の14が「甲種消防設備士は……届け出なければならない」と定め、資格者自身を届出義務者としているためです。逆に、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として官公署提出書類を作成できるのは、原則として行政書士または行政書士法人に限られます(行政書士法第19条第1項)。違反には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法第21条の2)が定められ、令和8年1月1日施行の改正で新設された同法第23条の3の両罰規定により、法人にも100万円以下の罰金が科されます。

総務省は、この改正について「『手数料』や『コンサルタント料』等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示する」ものと説明しています(令和7年6月13日総行行第281号)。改正が新たに違法行為を作ったのではなく、従来から違法だったものを条文で確認したものです。詳しくは「消防法令に基づく各種手続における行政書士法違反の防止について」をご覧ください。
当事務所の報酬額は、建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって変わります。最新の料金は報酬額表をご確認ください。継続的にご相談いただく場合は顧問契約もご用意しています。


オープン日から逆算した消防届出のスケジュール、無料でお作りします

テナント内装工事の消防手続は、届出が1本抜けているだけで消防検査が受けられず、オープン日そのものが動きます。逆に、設計の初期段階で用途判定と無窓階の可能性を確認しておけば、設備の追加も内装のやり直しも避けられます。
建物の所在地・用途・使用する階と床面積・工事の内容・使用開始予定日をお知らせいただければ、必要な消防届出の洗い出し、提出期限を逆算したスケジュール表の作成、所轄消防署への事前相談、届出書の作成・提出、検査日程の調整まで、行政書士として一貫してご支援します。
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☎ 03-6783-6727/FAX 03-6750-2225 受付時間:平日 9:00〜18:00(土日祝日はお問い合わせフォームで受付)
行政書士 萩本昌史事務所|東京の消防手続支援ステーション


14. よくある質問


Q1. テナント入居で内装工事をする場合、消防署への届出は何本必要ですか。

東京消防庁管内では、最低でも防火対象物工事等計画届出書(工事着手の7日前まで。東京都火災予防条例第56条第1項)と防火対象物使用開始届出書(使用開始の7日前まで。同条例第56条の2第1項)の2本です。これに加えて、消防用設備等の工事をするなら工事整備対象設備等着工届出書(着手の10日前まで。消防法第17条の14)と消防用設備等設置届出書(完了後4日以内。同法第17条の3の2)、厨房設備等を設けるなら火を使用する設備等の設置届出書(着手の7日前まで。条例第57条第1項)、防火管理者の選任義務があるなら防火管理者選任(解任)届出書消防計画作成(変更)届出書が必要です。最大で9本になります。


Q2. 建築確認を受けた工事なら、消防への届出は不要ですか。

不要になるのは防火対象物工事等計画届出書だけです。東京都火災予防条例第56条第1項ただし書は、建築基準法第6条第1項および第6条の2第1項の確認を受けた場合、ならびに同法第18条第2項および第4項の通知をした場合を除外していますが、同条例第56条の2(使用開始の届出)には同じただし書がありません。したがって使用開始届出書は必要です。消防用設備等の着工届・設置届(消防法第17条の14・第17条の3の2)も建築確認とは無関係に必要です。


Q3. 居抜きで内装工事をしない場合も、消防署への届出は必要ですか。

防火対象物使用開始届出書は必要です。東京都火災予防条例第56条の2第1項が求めているのは「使用しようとする」という事実であり、工事の有無は要件ではありません。工事がなければ工事等計画届出書(同条例第56条)は不要です。ただし居抜きでは前のテナントと用途が変わることで必要な消防用設備等が変わることがあり、用途変更後の用途が特定防火対象物の用途であれば、消防法第17条の3第2項第4号により既存不適格の保護が及びません。事前相談の重要度はむしろ高くなります。


Q4. 内装工事で窓をふさぐと、消防法上は何が変わりますか。

その階が無窓階と判定される可能性があります。判定基準は消防法施行規則第5条の5です。10階以下の階では、(1)直径50センチメートル以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の30分の1を超える階(=普通階)であり、かつ(2)直径1メートル以上の円が内接することができる開口部、またはその幅および高さがそれぞれ75センチメートル以上および1.2メートル以上の開口部を2以上有すること、という2つを両方満たさない階が無窓階になります。11階以上の階は(1)だけで判定します。無窓階になると、消火器具は床面積50平方メートル以上で必要になり(令第10条第1項第5号)、自動火災報知設備は床面積300平方メートル以上((2)項・(3)項および(16)項イでは100平方メートル以上)で必要になり(令第21条第1項第10号・第11号)、事務所等の非特定用途でも誘導灯が必要になります(令第26条第1項第1号・第2号)。


Q5. 事務所ビルの一室を飲食店にすると、建物全体の用途の扱いはどうなりますか。

その棟は(16)項イの複合用途防火対象物になる可能性があります。ただし総務省消防庁の通知「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和50年4月15日消防予第41号・消防安第41号。最終改正 平成27年2月27日消防予第81号)は、主たる用途部分の床面積の合計が延べ面積の90パーセント以上であり、かつ主たる用途以外の独立した用途部分の床面積の合計が300平方メートル未満であれば、その独立用途部分を従属的な部分として扱う(みなし従属)としています。ただし(2)項ニ、(5)項イ、(6)項イ(1)から(3)まで、(6)項ロ、および利用者を入居・宿泊させる(6)項ハの用途は、みなし従属の対象から除かれています。最終的な用途判定は所轄消防署が行います。


Q6. 内装制限と防炎規制は同じものですか。

別のものです。内装制限は建築基準法第35条の2に基づく壁・天井の仕上材の規制で、対象は同法施行令第128条の4が定めています。防炎規制は消防法第8条の3に基づく物品の規制で、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、どん帳、舞台の大道具用の合板、工事用シートが対象です(消防法施行令第4条の3第3項)。事務所は建築基準法の特殊建築物ではないため内装制限は原則かかりませんが、高さ31メートルを超える高層建築物に入居していれば防炎規制はかかります。


Q7. 内装工事で使う工事用シートにも防炎の規制がありますか。

あります。消防法第8条の3第1項の防炎対象物品に工事用シートが含まれており(消防法施行令第4条の3第3項)、同条第1項は工事中の建築物その他の工作物を対象に含めています。したがって、内装工事中に足場や開口部に張るシートは防炎性能を有するものでなければなりません。納品時に防炎ラベルを確認してください。


Q8. 飲食店の客席をできるだけ多く配置したいのですが、消防法令上の制限はありますか。

あります。東京都火災予防条例第50条は、キャバレー等および飲食店が存する階のうち、当該用途に供する店舗ごとの客席の床面積が150平方メートル以上の店舗の客席について、有効幅員1.6メートル(300平方メートル未満の飲食店は1.2メートル)以上の避難通路を設け、かついす席、テーブル席またはボックス席7個以上を通過しないでその1つに達するようにしなければならないと定めています。また収容人員が増えると防火管理者の選任義務(特定用途は30人以上)や避難器具の設置義務(消防法施行令第25条第1項)にも影響します。


Q9. 厨房を設ける場合、火を使用する設備等の設置届出書はいつでも必要ですか。

すべての厨房で必要になるわけではありません。東京都火災予防条例第57条第1項第3号は、届出対象の厨房設備から「入力の合計が120キロワット未満のもの」を除いています(ただし排気取入口から下方に排気する方式の厨房設備は、この除外の対象外です)。同項は、固体燃料を使用する炉、据付け面積1平方メートル以上の炉、入力70キロワット以上の温風暖房機・ヒートポンプ冷暖房機・ボイラー・給湯湯沸設備、サウナ設備、変電設備、蓄電池設備(20キロワット時超)なども対象としています。届出が必要な場合、期限は工事に着手する日の7日前までで、使用開始前に消防署長の検査を受けなければなりません(同条第4項)。


Q10. 東京以外の物件でも、テナント入居・内装工事の消防手続は同じですか。

骨格は共通ですが同一ではありません。工事等計画の届出・使用開始の届出は各市町村の火災予防条例に基づくため、条番号・様式・添付図書・検査の運用は自治体ごとに異なります。総務省消防庁が示す「火災予防条例(例)」(昭和36年11月22日自消甲予発第73号)がひな形になっており、東京都火災予防条例もこれに沿った内容ですが、出店先ごとに管轄消防本部の条例と様式を確認してください。一方、消防用設備等の設置基準、着工届、設置届、防火管理者の選任は消防法・同施行令・同施行規則に基づくため全国共通です。


Q11. テナント内装工事に伴う消防署への届出を行政書士に依頼できますか。

できます。消防署長という官公署に提出する書類の作成は行政書士の業務であり(行政書士法第1条の3第1項)、自ら作成した書類の提出手続の代理も業務範囲に含まれます(同法第1条の4第1項第1号)。他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として作成できるのは、原則として行政書士または行政書士法人に限られます(同法第19条第1項)。ただし工事整備対象設備等着工届出書は、消防法第17条の14により甲種消防設備士が届出義務者と定められているため、行政書士が代わって届け出ることはできません。報酬額は建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって変わりますので、報酬額表をご確認いただくか、物件情報をお知らせのうえお見積りをご依頼ください。


参考資料

※本記事は2026年8月23日時点で確認した法令および公表資料をもとにした一般的な解説です。法令・条例の改正、東京消防庁の審査基準の改正、所轄消防署の運用、個別の建物の状況により結論が変わる場合があります。具体的な案件は、対象建物を管轄する消防署および行政書士へご確認ください。

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