

この記事の結論
関係者不在施設の防火安全対策は、消防計画に書いて初めて実効性を持ちます。総務省消防庁「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」(令和8年3月27日付け消防予第115号)は、施設の火災危険性を確認し、対策を選び、それを消防計画に盛り込むという手順で使うことを前提に作られています。
無人・省人化でも、防火管理の義務は軽くなりません。消防法第8条第1項が管理権原者に課す業務(消防計画の作成、消火・通報・避難の訓練、消防用設備等の点検・整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難上必要な構造及び設備の維持管理、収容人員の管理)は、関係者が施設にいるかどうかで変わりません。
ガイドライン自体に罰則はありませんが、消防計画に書いた事項が守られていないときは別です。ガイドラインは消防組織法第37条に基づく助言です。一方、消防計画に定めた業務が行われていないと認められれば、消防長又は消防署長は消防法第8条第4項の措置命令を出すことができ、この命令に違反すると第41条により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第45条第3号で法人にも罰金)が科されます。
ガイドラインは「感知器の作動から早ければ2分程度で出火室が盛期火災に至る」ことを前提に、応急対策を時間で検証することを求めています。火災発生場所の確認・避難誘導・消防機関への通報が目標時間内に完了するかを、実際に訓練して確かめます。
東京消防庁は「関係者不在宿泊施設用消防計画追加事項例」を公開しています。ただしこの様式例は令和7年3月28日付け消防予第135号を引用したままです。135号は消防予第115号により廃止されているため、消防計画に根拠を書くときは115号を引用してください。
セルフ型のトレーニングジム、無人のコンビニエンスストア、フロントのない民泊、深夜だけスタッフがいなくなるインターネットカフェ。人手不足とデジタル技術を背景に、営業しているのに施設に人がいない時間帯を持つ建物が急速に増えています。
この記事では、そうした関係者不在施設について、消防計画に何を追加して書くのかを軸に整理します。用途判定や消防用設備等の設置義務(何項に当たるか、自動火災報知設備が必要か)は無人店舗・24時間ジム・民泊の防火管理|関係者不在施設ガイドラインと用途別の義務で解説していますので、あわせてご覧ください。
まず、用語と根拠を確認します。制度の出発点は消防法第8条であり、ガイドラインはその運用を具体化するものです。
関係者不在施設とは、消防法施行令別表第一に掲げる防火対象物のうち、営業時間中に施設関係者が不在となる時間帯があるものをいいます。常時不在の施設だけでなく、営業時間の一部だけ関係者がいなくなる施設も含まれます。ここでいう「関係者」は、消防法第2条第4項の関係者、すなわち防火対象物の所有者、管理者又は占有者(従業員を含む)です。
関係者不在施設の防火管理を支える条文
ここは実務で最も混同されるところです。消防法第8条第1項が名宛人としているのは管理権原者(建物やテナント区画の管理について権原を有する者)であり、消防計画を実際に作成するのは、その管理権原者が選任した防火管理者です。
運営代行会社や無人化システムのベンダーに運用を任せていても、この義務が移転することはありません。委託先が業務を行うのであれば、その事実と役割分担を消防計画に書くことが必要になります。
消防予第115号は、消防庁予防課長から各都道府県消防防災主管部長・各消防本部消防長等に宛てて発出された通知で、消防組織法第37条に基づく助言です。したがって、ガイドラインに適合していないこと自体を理由に処罰されることはありません。
ただし、ガイドラインの内容を消防計画に定めた場合、それは「消防計画に定められた防火管理上必要な業務」になります。消防法第8条第4項は、防火管理上必要な業務が法令の規定又は消防計画に従つて行われていないと認めるときに、消防長又は消防署長が管理権原者へ必要な措置を命ずることができると定めています。この命令に従わなければ、第41条により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
「助言だから守らなくてよい」ではなく、書いた以上は実行する必要があるというのが正しい理解です。
対象の切り分けは、業種名ではなく「営業時間中に関係者が不在となる時間帯があるか」で判断します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 消防法施行令別表第一に掲げる防火対象物のうち、営業時間中に施設関係者が不在となる時間帯があるもの |
| 主に想定されている施設の例 | インターネットカフェ/カラオケボックス/ホテル・旅館/簡易宿所/民泊/コンビニエンスストア/冷凍食品販売店/屋内ゴルフ練習場/書店/衣料品店/貸し会議室/ワーキングブース/レンタル収納スペース/トレーニングジム/サウナ など |
| 対象外 | 小規模な施設であって、利用者が立ち入ることが想定される場所のすべてにおいて、安全な場所に通ずる避難口を容易に見通し、かつ、識別できるもの |
| 準じた対策が求められるもの | 関係者不在とはならないまでも省人化を進めている施設で、消火・通報・避難誘導等の効果的な自衛消防活動に配慮する必要がある場合 |
「対象外」とされているのはガイドラインの適用についてであって、消防法や東京都火災予防条例の義務が免除されるわけではありません。防火管理者の選任、消防計画の作成・届出、消防用設備等の設置・点検といった義務は、収容人員と用途によって別途判断されます。
関係者が完全に不在にはならないが人数を絞っている施設については、ガイドラインが手薄になりやすい初動対応ごとに参照すべき対策表を示しています。
| 手薄となる初動対応 | 取り入れる対策 |
|---|---|
| 消防機関への通報 | 表2-1、表2-2、表2-3、表2-6、表2-7 |
| 避難誘導 | 表2-1、表2-2、表2-4、表2-6、表2-7 |
| 初期消火 | 表2-1、表2-2、表2-5、表2-6、表2-7 |
ガイドラインは読み物ではなく、手順書として使う資料です。次の6ステップで消防計画に落とし込みます。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 手順1 | 施設の特性と火災危険性の確認(表1)。該当する特性にチェックを入れる |
| 手順2 | 手順1の結果を踏まえ、消防計画に取り入れる防火安全対策を検討する(表2-1〜表2-7) |
| 手順3 | 取り入れた対策を盛り込んで消防計画を作成(変更)する。統括防火管理が必要な建物は全体についての消防計画にも記載する |
| 手順4 | 表1で出火危険・延焼危険、火災発生の覚知の遅れ、避難困難のいずれかが1つでも確認された場合、応急対策の実効性を検証する |
| 手順5 | 検証結果により見直すべき点があれば、防火安全対策の充実・強化を行う |
| 手順6 | 充実・強化した内容を消防計画(全体についての消防計画を含む)に反映して変更する |
表1は、施設の利用形態と建物構造から潜在的な火災危険性を洗い出すチェックリストです。チェックの数が多いほど、手厚い対策が必要になります。
| 種別 | 火災危険性に関係する特性(例) | 注意すべき危険性 |
|---|---|---|
| 利用形態 | 商品や段ボールなど、可燃物が多い(コンビニエンスストア、書店、衣料品店) | 出火危険・延焼危険 |
| 利用形態 | 調理器具の使用や喫煙など、火気の使用がある | 出火危険・延焼危険 |
| 利用形態 | 高出力の電気機器を使用している(ドライヤー、ランニングマシンなど) | 出火危険・延焼危険 |
| 利用形態 | 不特定の人が利用する(インターネットカフェ、カラオケボックス、宿泊施設) | 避難困難 |
| 利用形態 | 多数の人が利用する | 避難困難 |
| 利用形態 | 利用者が就寝のために利用する(インターネットカフェ、宿泊施設) | 火災覚知の遅れ |
| 利用形態 | アルコールの提供がある | 火災覚知の遅れ・避難困難 |
| 利用形態 | 脱衣状態で利用することが考えられる(サウナ) | 避難困難 |
| 利用形態 | 入退出管理用のセキュリティ機器により出入口が施錠されている(トレーニングジム、貸し会議室) | 避難困難 |
| 建物構造 | 木造の建物である | 出火危険・延焼危険 |
| 建物構造 | 地上に通じる階段が1か所のみである | 避難困難 |
| 建物構造 | 避難経路が複雑である | 避難困難 |
| 建物構造 | 狭い個室が複数ある(インターネットカフェ、カラオケボックス、宿泊施設) | 火災覚知の遅れ・避難困難 |
表2-1から表2-7までが、消防計画に落とし込む対策のメニューです。それぞれに「消防計画チェック欄」が設けられており、採用した対策を計画本文へ具体的に書くという構成になっています。
| 表 | 分野 | 消防計画に書く主な内容 |
|---|---|---|
| 表2-1 | 利用者に対する情報の提供 | 関係者が不在となる旨とその時間帯の周知方法(ホームページ、予約時のWebページ、予約確認メール、会員登録時、利用規約、受付端末の表示、客室の掲示、リーフレット等) |
| 表2-2 | 平時の火災予防 | 喫煙ルールの周知、調理器具・レンジフードの清掃、電気機器・配線の定期点検、防炎製品の使用、避難経路の維持管理、ごみ置場の施錠など放火防止 |
| 表2-3 | 早期覚知と通報 | 自動火災報知設備の遠隔移報装置、共用部カメラによる遠隔監視、自動火災報知設備と連動した火災通報装置、同一建物内の事業所間連携。利用者には「避難最優先」と通報協力を周知 |
| 表2-4 | 避難誘導 | 遠隔放送・デジタルサイネージによる避難の呼びかけ、入退出管理用セキュリティ機器で施錠された出入口の速やかな解錠、避難経路図の掲示、誘導灯に沿った避難の周知 |
| 表2-5 | 初期消火 | 早期覚知から消火活動につなげる体制、危険箇所周辺への消火器の増設、消火器等の設置位置と使用方法の周知(利用者が速やかに使える場所へ設置) |
| 表2-6 | 消防隊への情報提供 | 駆けつける体制の構築、出火場所・避難者・逃げ遅れた者の氏名等を収集して提供する要領、消防隊が施設側に連絡する緊急連絡先の明確化、屋外の一時避難場所の設定と周知 |
| 表2-7 | 教育・訓練 | 関係者がいる時間帯と不在の時間帯の双方を想定した教育・訓練、アルバイトを含む全従業員への体制、オンライン研修・動画視聴の活用、訓練結果の記録と改善内容の計画への反映 |
関係者不在施設の消防計画で抜けやすいのが、次の2点です。どちらも設備の有無ではなく運用の取り決めなので、計画に書かなければ実行されません。
1 入退出管理用セキュリティ機器の解錠
会員カードや暗証番号で出入口を施錠している施設では、火災時に施錠を速やかに解除する対策が必要です。自動火災報知設備と連動して解錠する方法のほか、停電時に自動で解錠状態となるか、手動で解錠できる措置を確認します。消防隊が到着したときに受信機まで容易に到達できるようにしておくことも、表2-6の要請に含まれます。
2 消防隊が施設側に連絡するための緊急連絡先
関係者が現場にいない以上、消防隊は電話で施設側と連絡を取ることになります。緊急連絡先を消防計画に定め、施設内のわかりやすい箇所に掲示します。入口が常時施錠されている施設では、セキュリティの外側にも掲示しておかないと、消防隊が見ることができません。
避難誘導の順序も決めておきます。ガイドラインは、原則として出火区画の避難誘導を優先し、次に隣接区画、火災階の上階、その後に下階という順序を示しています。
ガイドラインで最も特徴的なのが、この検証の考え方です。消防計画に書いた応急対策が、時間内に間に合うかどうかを実際に測ります。
一般に、火災発生の際に感知器が作動してから早ければ2分程度で、出火室は盛期火災に至るおそれがあるとされています。この2分(120秒)から、利用者が安全な場所へ避難するのに要する時間を差し引いた残りが、施設関係者の対応行動に使える目標時間です。
目標時間の計算方法(ガイドラインの例)
この100秒以内に、次の対応行動を完了できるかを検証します。
| 検証する対応行動 | 内容と測定の考え方 |
|---|---|
| 1 火災発生場所の確認 | 自動火災報知設備、非常警報設備等の警報設備の作動後、火災の発生場所を確認する |
| 2 避難誘導 | 警報設備の作動に続いて、放送による呼びかけ、または警報設備以外の音声による周知を行う(遠隔からの機械操作による呼びかけを含む) |
| 3 消防機関への通報 | 模擬通報を行う。時間の測定は、電話機により119番を押下するまで。火災通報装置と自動火災報知設備の作動が連動している場合は省略できる |
対応行動に要する時間の設定は、「個室型店舗等における消防訓練マニュアル」(平成21年6月策定)等を参考に、施設の実情に即した値とします。
次のいずれかに当たる施設は、この検証の対象外です。
ただし、検証の対象外であっても、消防法施行規則第3条に基づく定期的な消火・通報・避難の訓練は必要です。ここを取り違えて訓練そのものを省略している事例があるため、注意してください。訓練の回数は、特定用途の防火対象物であれば消火訓練・避難訓練をそれぞれ年2回以上(規則第3条第10項)、実施にあたってはあらかじめ消防機関へ通報が必要です(同条第11項)。
繰り返し訓練しても目標時間内に対応行動が完了しない場合、ガイドラインは次のような対策の追加を示しています。
| 区分 | 対策の例 |
|---|---|
| 防火管理体制(ソフト面) | 初動対応が迅速に行えるように常駐勤務者を配置する/警備会社等へ火災の初動対応に係る防火管理業務を一部委託する |
| 設備等(ハード面) | 放送設備のスピーカーを各利用スペースに設置/遠隔からのアナウンス機器を導入/自動火災報知設備と連動したデジタルサイネージを設置/自動火災報知設備の遠隔移報装置を設置/遠隔監視設備(カメラ等)を設置/自動火災報知設備と連動した火災通報装置を設置(事前に管轄消防機関と協議)/スプリンクラー設備などの自動消火装置を設置 |
なお、自動火災報知設備と火災通報装置を連動させる運用は消防機関により取扱いが異なるため、事前に管轄する消防署との協議が必要です。
検証の結果を、そのまま消防計画に書き足せていますか
訓練をして時間を測ったところまでは進んでいるのに、その結果と改善策が消防計画に反映されていない——これは関係者不在施設で非常に多いパターンです。ガイドラインの手順5・手順6は、検証結果を計画の変更につなげるところまでを一続きの手順として求めています。
消防計画作成(変更)届出書の作成は、行政書士の業務です。当事務所では、ガイドラインのチェック表を施設ごとに埋めるところから、消防署との事前相談、届出書の作成・提出まで一貫してお引き受けしています。初回のご相談は無料です。お問い合わせフォームはこちら
東京消防庁は、関係者不在の宿泊施設向けに「関係者不在宿泊施設用消防計画追加事項例」(Word・PDF、作成例・解説つき)を公開しています。宿泊施設向けの様式ですが、記載項目の立て方は他の関係者不在施設にもそのまま応用できます。
| 項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 1 関係者不在時間 | 常時不在か、一部不在か。一部不在の場合は不在時間帯を特定して記載 |
| 2 利用者への情報提供 | 関係者不在であることの周知方法(利用開始前・利用開始時)、喫煙ルールと火気使用器具・電気機器の取扱い、火災時は避難最優先であることと通報・初期消火への協力 |
| 3 日常の防火管理業務 | 自主検査の実施者(防火管理者/関係者/外部事業者/監視カメラ・センサー等)と巡回頻度、防火管理者への報告要領。監視カメラ・センサーによる場合でも、おおむね月に1回は目視で現場を確認 |
| 3(2) 防炎製品 | ふとん・マットレス、カバー類、毛布・タオルケット等への防炎製品の使用 |
| 4 火災発生時の応急対策 | 駆けつけて避難誘導・情報把握を行う体制、早期覚知の対策(遠隔移報装置、遠隔監視)、早期通報の対策(事業所火災直接通報・代理通報)、安全な避難のための対策(遠隔放送、デジタルサイネージ)、緊急時の連絡先と掲示箇所 |
| 5 自衛消防訓練 | 雇用形態を問わない訓練の実施(「ネットで自衛消防訓練」等の活用)、関係者不在時を想定して駆けつけ・応急対策を行う訓練 |
| 6 外部事業者との連携 | 日常の点検を外部事業者が行う場合の委託契約での明確化と、消防計画に定める自主検査項目の周知 |
実務上、必ず確認していただきたい点があります。東京消防庁の「関係者不在宿泊施設用消防計画追加事項例」の3(3)には、次の記載があります。
「防火管理者は定期的に『関係者不在の宿泊施設における防火安全対策ガイドライン』(令和7年3月28日消防予第135号総務省消防庁予防課長通知)への適合状況を確認する。」
この消防予第135号は、令和8年3月27日付け消防予第115号によって廃止されています。135号の内容は新しいガイドラインに包含されました。したがって、これから消防計画を作成・変更する場合は、引用する通知を「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」(令和8年3月27日消防予第115号総務省消防庁予防課長通知)に置き換えてください。様式例を何も考えずにそのまま写すと、廃止済みの通知を根拠として掲げた消防計画ができあがってしまいます。
東京消防庁の119番自動通報制度には次の区分があり、関係者不在施設の早期通報策として消防計画に書き込めます。
| 区分 | 仕組み |
|---|---|
| 事業所火災直接通報 | 事業所に設置された自動火災報知設備が作動すると、火災通報装置から自動的に所在・名称等が119番通報される。自動火災報知設備の適正な設置・維持管理、非火災報防止対策、火災通報装置の適正な設置・維持管理が要件。通報承認申請が必要 |
| 代理通報 | 自動火災報知設備等と連動して送信される信号等を受けた者(警備会社等)が、現場を確認することなく行う通報 |
東京消防庁管内では、消防用設備等の設置・維持に関する技術上の細目や届出書の審査・検査の運用は、東京消防庁「予防事務審査・検査基準」によって具体化されています。自動火災報知設備の感知器の設置、誘導灯、非常警報設備といったガイドライン上の対策を実際の設備として整備する場面では、この基準に沿った設計が求められます。
また、防火管理体制の指導(防火管理者の資格・選任、消防計画の記載内容、重複選任の取扱い等)は、東京消防庁の防火管理指導基準に基づいて運用されています。次の章で扱う重複選任も、この運用の一部です。
無人店舗を複数展開している事業者から最も多く受ける質問がこれです。
防火管理者の重複選任とは、複数の防火対象物において同一の防火管理者を重ねて選任することをいいます。消防法施行令第3条第1項は、防火管理者の資格について「当該防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にあるもの」と定めており、原則は防火対象物ごとに選任するのが本来の姿です。
そのうえで、東京消防庁は、重複選任が認められる場合の類型を次のとおり公表しています。
| 建物の用途や管理形態が要因となるもの |
|---|
| 1 2以上の建物を持つ貸ビル業者等の防火対象物で、貸ビル業者等が管理する拠点が東京消防庁管内に存するもの |
| 2 同一管理権原者の管理する区域内に存する公共機関の庁舎及び鉄道駅舎等 |
| 3 一の防火対象物において外部選任される防火管理者が、他の防火管理義務対象物の防火管理者として外部選任される場合 |
| 4 同一団地内において、一の共同住宅等(又は令別表第一(16)項の共同住宅部分)で内部選任される防火管理者が、他の棟の共同住宅等で外部選任される場合 |
| 5 共同住宅等(賃貸用に限る。)の所有者が、自らを防火管理者として選任する場合 |
| 6 事業所の防火管理者に選任されている者が自己の居住する共同住宅等の防火管理者に選任される場合、またはその逆の場合 |
| 7 公営住宅等又は社宅で、所定の適用範囲を満たすもの |
| 8 近接地に存する場合等、社会通念上、一体的な防火管理体制により防火管理上必要な業務が適正に遂行できると認められる場合 |
上記に当たらない対象物で防火管理者を選任できない場合は、対象物を管轄する消防署(複数署の管轄にまたがる場合は防火管理課)へ相談することとされています。
上記の類型に該当する場合でも、次の要件を満たす必要があります。3番目は消防計画への記載を求めるもので、関係者不在施設の実務では特に重要です。
関係者不在施設で重複選任を検討するとき、実務上の壁になるのが2番目の要件です。各施設に常駐者がいないため、防火担当責任者を誰にするかが問題になります。
この場合、遠隔で監視・管理を行う担当者や、巡回を担当する従業員・外部事業者の担当者を防火担当責任者として位置づけ、その業務範囲・巡回頻度・報告経路を消防計画に具体的に書くことが解決の糸口になります。前述の東京消防庁「消防計画追加事項例」3(1)が、実施者・巡回頻度・報告要領を表形式で書かせているのは、まさにこの整理のためです。
なお、重複選任が認められた場合であっても、防火管理の最終的な責任が管理権原者及び防火管理者にあることに変わりはありません。重複選任の可否は所轄消防署の判断によりますので、複数店舗の展開を計画している段階で、早めに相談されることをおすすめします。防火管理者の内部選任・外部選任の考え方は防火管理者の選任は内部から?外部から?もご覧ください。
ガイドラインに沿って対策を追加したら、消防計画の内容が変わります。消防法施行規則第3条第1項は、消防計画を作成したときに加えて変更するときも同様に届け出ることを求めています。
| 届出書 | 根拠 | 期限 |
|---|---|---|
| 防火管理者選任(解任)届出書 | 消防法第8条第2項 | 選任・解任後遅滞なく |
| 消防計画作成(変更)届出書 | 消防法第8条第1項、消防法施行規則第3条第1項(別記様式第1号の2) | 作成・変更したとき(規則に日数の定めはなく、都度遅滞なく) |
| 統括防火管理者選任(解任)届出書 | 消防法第8条の2第4項 | 選任・解任後遅滞なく |
| 全体についての消防計画作成(変更)届出書 | 消防法第8条の2第1項、消防法施行規則第4条 | 作成・変更したとき |
| 自衛消防訓練実施結果報告書(通知書) | 東京都火災予防条例第55条の4、消防法施行規則第3条第11項(事前通報) | 訓練の実施にあわせて |
書類の名称にも注意が必要です。正式名称は「消防計画作成(変更)届出書」(消防法施行規則 別記様式第1号の2)であり、「消防計画変更届出書」という様式は存在しません。新規作成と変更は同一様式・同一手続です。
関係者不在施設の記事では罰則の説明が雑になりがちですが、ここは条文ごとにまったく異なります。
| 違反の内容 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 防火管理者の選任・解任の届出を怠った | 消防法第8条第2項 | 第44条第8号 30万円以下の罰金又は拘留 |
| 防火管理者選任命令に従わなかった | 消防法第8条第3項 | 第42条第1項 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(第45条第3号で法人にも罰金) |
| 防火管理業務の適正執行命令に従わなかった | 消防法第8条第4項 | 第41条 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第45条第3号で法人にも罰金) |
| 消防用設備等の点検結果を報告しない・虚偽報告 | 消防法第17条の3の3 | 第44条第11号 30万円以下の罰金又は拘留(第45条第3号で法人にも罰金) |
| 使用禁止・停止・制限命令に従わなかった | 消防法第5条の2第1項 | 第39条の2の2 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(第45条第1号で法人1億円以下) |
よくある誤解の訂正
消防計画作成(変更)届出書の不提出そのものを直接処罰する規定はありません。消防計画の届出義務は消防法施行規則第3条第1項という省令に置かれており、法律に届出義務の規定がないため直罰を置けない構造になっています。「消防計画の変更届を出さないと30万円以下の罰金」という説明は誤りで、それは消防法第8条第2項の選任・解任届の罰則(第44条第8号)と取り違えたものです。
ただし、届出をしていない実態は消防法第8条第4項の措置命令につながり、命令違反は第41条の罰則対象です。放置してよいという意味ではありません。
また「懲役」は、令和7年6月1日施行の刑法等一部改正により「拘禁刑」に一本化されています。
関係者不在施設は運営代行会社や無人化システムのベンダーが関与することが多く、消防署への届出書類の作成を一括で任せてしまいがちです。ここには法律上の制限があります。
消防計画作成(変更)届出書、防火管理者選任(解任)届出書は、いずれも官公署に提出する書類です。行政書士法第1条の3は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することを行政書士の業務と定めています。そして同法第19条第1項は、行政書士又は行政書士法人でない者が、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業としてこの業務を行うことを禁じています。
違反した場合の罰則は、同法第21条の2により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。令和8年1月1日施行の改正で第23条の3の両罰規定が新設され、法人にも100万円以下の罰金が科されます。
総務省は改正の趣旨について、「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目であっても、対価を受領して業として官公署提出書類を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示するものだと説明しています。改正が新たに違法行為を作ったのではなく、従来から違法だったことを条文で確認したものです。
したがって、運営代行費や管理委託費に含める形で届出書類の作成まで請け負うことは、行政書士法第19条第1項に違反します。「業として」「報酬を得て」に当たるかどうかは個別の事実認定によりますが、契約に基づき継続的に対価を得て作成しているのであれば、該当すると考えるべきです。詳しくは消防署への提出書類作成と行政書士法違反の防止についてをご覧ください。
関係者不在施設の消防計画は、ガイドラインのチェック表を埋めるところから、対策の選定、消防計画への落とし込み、消防署との事前相談、届出まで一続きの作業です。当事務所では、行政書士としてこの全体をお引き受けしています。
消防計画作成(変更)届出書、防火・防災管理者選任(解任)届出書、全体についての消防計画作成(変更)届出書、自衛消防訓練実施結果報告書(通知書)などの報酬額は、報酬額表をご参照ください。
金額に幅があるのは、建物の規模・用途、図面作成の要否、消防署との事前協議の回数によって作業量が変わるためです。別途消費税を申し受けます。
無人店舗・24時間ジム・民泊の消防計画、そのままで大丈夫ですか
店舗を出したときのまま消防計画を一度も見直していない、ガイドラインが出たことは知っているが何を書き足せばよいかわからない、複数店舗の防火管理者を兼任させてよいか判断がつかない——そうしたご相談を東京消防庁管内で数多くお受けしています。
建物の所在地・用途・面積・平面図と、関係者が不在となる時間帯をお知らせいただければ、ガイドラインの表1・表2に沿った火災危険性の洗い出しから、消防計画に追加すべき記載事項のご提案、消防署との事前相談、消防計画作成(変更)届出書の作成・提出までご支援します。
初回のご相談は無料です。お問い合わせフォームはこちら/お電話 03-6783-6727(平日 9:00〜18:00)
ガイドライン自体は消防組織法第37条に基づく助言であり、これに適合しないことを直接処罰する規定はありません。ただし、ガイドラインの内容を消防計画に定めた後にそれが実行されていない場合は、消防法第8条第4項の措置命令の対象となり、命令に従わなければ第41条により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科されます。
いいえ。様式は通常の消防計画作成(変更)届出書(消防法施行規則 別記様式第1号の2)です。関係者不在施設で必要になるのは、通常の消防計画に関係者不在時の対応に関する事項を追加して記載することです。東京消防庁は宿泊施設向けに「関係者不在宿泊施設用消防計画追加事項例」を公開しており、追加部分の書き方の参考になります。
感知器の作動から早ければ2分程度で出火室が盛期火災に至るとされることを前提に、120秒から利用者の避難時間を差し引いて算出します。ガイドラインの例では、歩行速度1メートル毎秒、避難口までの最も遠い距離20メートルとして避難時間20秒、目標時間は100秒となります。この時間内に、火災発生場所の確認・避難誘導・消防機関への通報を完了できるかを訓練で確かめます。
いいえ。施設全体にスプリンクラー設備が設置されている場合や、消防法施行規則第12条の2・第13条によりスプリンクラー設備の設置を要しない構造に該当する場合は、応急対策の検証は対象外となります。しかし、消防法施行規則第3条に基づく定期的な消火・通報・避難の訓練は引き続き必要です。
入退出管理用のセキュリティ機器で出入口が施錠されている場合、火災時に施錠を速やかに解除する対策を講じ、その内容を消防計画に定める必要があります。自動火災報知設備と連動して解錠する方法が代表的です。停電時に自動で解錠状態となるか、手動で解錠できることも確認してください。あわせて、消防隊が到着したときに受信機まで容易に到達できる措置と、セキュリティの外側への緊急連絡先の掲示も必要です。
消防法施行令第3条第1項が防火管理者を「当該防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にあるもの」と定めているため、原則は防火対象物ごとの選任です。東京消防庁は近接地に存する場合など一体的な防火管理体制により業務を適正に遂行できると認められる場合等の類型を示していますが、重複選任するときは、甲種防火管理者であること、対象物ごとに防火担当責任者を定めること、報告の内部事務手続きの要領を消防計画に定めることが求められます。可否の判断は所轄消防署が行います。
実施を委託すること自体は可能ですが、消防法第8条第1項の義務が管理権原者から移転することはありません。委託する場合は、点検項目・巡回頻度・報告体制・異常時の対応を委託契約で明確にし、その内容を消防計画にも記載したうえで、防火管理者が実施状況を確認する必要があります。東京消防庁の消防計画追加事項例は、監視カメラやセンサーで管理する場合であっても、おおむね月に1回は目視で現場を確認することを求めています。
使えません。令和7年3月28日付け消防予第135号は、令和8年3月27日付け消防予第115号によって廃止されています。内容は新しい「関係者不在施設における防火安全対策ガイドライン」に包含されました。東京消防庁の様式例には135号を引用したままの箇所がありますので、消防計画に書くときは115号に置き換えてください。
速やかに消防計画作成(変更)届出書を所轄消防署へ提出してください。届出の不提出そのものを直接処罰する規定はありませんが、消防法第8条第4項の措置命令の対象となり得ます。また、立入検査の際に指摘を受ける事項でもあります。訓練の実施内容や自主検査の体制が実態と合っていない場合は、この機会にあわせて見直すことをおすすめします。
報酬を得て業として行うのであれば、行政書士法第19条第1項に違反します。同法第21条の2により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、第23条の3により法人にも100万円以下の罰金が科されます。管理権原者や防火管理者が自ら作成することは問題ありません。第三者に依頼する場合は行政書士へご依頼ください。
関係者不在施設の防火管理は、「無人だから何か特別な制度がある」という話ではありません。消防法第8条第1項が求める防火管理を、関係者がいない時間帯を前提に組み直し、それを消防計画という書面に落とすという、きわめてオーソドックスな作業です。
要点は3つです。第一に、ガイドラインは読み物ではなく消防計画に書き込むための手順書として使うこと。第二に、対策は時間で検証すること——感知器作動から2分という制約のなかで、確認・誘導・通報が終わるかどうかが分かれ目になります。第三に、検証の結果と改善策を消防計画に反映して届け出るところまでを一続きで行うことです。
東京消防庁管内で無人店舗・24時間ジム・民泊・個室型店舗の開設や、既存施設の消防計画の見直しをご検討の方は、当事務所へご相談ください。初回相談は無料です。
※本記事は2026年8月24日時点の法令および総務省消防庁の通知に基づいて作成しています。用途判定や重複選任の可否など、個別の判断は所轄消防署が行い、消防本部によって運用が異なる場合があります。個別の案件は所轄消防署の予防課または当事務所にご確認ください。
萩本 昌史(はぎもと まさし)
特定行政書士/消防設備士/防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者
行政書士萩本昌史事務所 代表
東京の消防手続支援ステーション 運営
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